月の魔女の弟子と転生少女   作:六原

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01.屋敷にて

少女が目覚めたのはベッドの上だった。見慣れない天井に驚いて飛び起き、事情を思い出す。

 

「確か、リゼッテさんに風をかけられて……」

 

そこから先の事を少女は思い出せなかった。いい夢が見られますよ、と彼女に言われたような気がしたが、記憶には残っていなかった。

 

「昨日はすみません。きっとあれこれ考えて眠れないだろうと思ったので。夢見はいかがでしたか?」

 

少女が起きたタイミングを見計らったようにリゼッテが部屋に入ってきた。

 

「…おはようございます。そういえば、悪夢を見なかったです」

 

ここ最近、少女は悪夢を見ていて、あまりよく眠れていなかったのだ。

 

「ではここで問題!私が使ったのは何属性の魔法だったでしょうか?」

 

突然の質問に驚きながらも、

 

「『風よ』って言ってたので風属性ですか?」

 

と少女が答えると、リゼッテは悪戯っぽく笑った。

 

「正解は風属性と月属性。月属性は弱化させるのに向いてるって言うのは聞いた?」

 

少女は頷く。確か月属性は希少属性で、回復と相手の弱化に向いている、と聞いた。

 

「相手って言うのは敵以外も含まれるし、眠らせるのは弱化の1つだから、月魔法と風魔法を合体呪文だったってわけ。さあ、服を用意したから着替えてね。私は部屋の外にいるから、着替えが終わったら出てきてくださいね」

 

 

少女がリゼッテから服を受け取る。まさか服をもらうとは思っていなかったので、とても驚いていた。

服は一目見ただけで上質な素材でできていると分かるほど、光沢があった。少女が今着ている服は所々継ぎはぎされている。

 

「着替え終わりました」

 

と部屋から出て、リゼッテに声をかける。

 

「ではアルフェシア様が呼んでいますので、さっそく向かいましょうか」

 

 

2人で並んで歩く。

 

「一つ話をしましょうか。アルフェシア様がどんな方か、知っていますか?」

 

「いえ。特に何も自分の事について話していませんでしたし、私も知りません」

 

「アルフェシア様はこの都市を治めている方です。国からこの国を治めてみないかというお誘いがあり、それを断りたくて、自分で都市を作り上げたんですよ」

 

アルフェシアの話に少女は目を丸くした。

 

「何というか…面白い方ですね」

 

断りたいから都市をつくるなんて考えは私じゃきっと思いつかない、と少女は思った。

 

「私が初めて出会った時も、噂と実際の姿が違いすぎて驚きました。1000年に一度の優秀な魔女だと噂されていましたから。実際会ってみたら、貴女も思ったでしょうけどいつでも楽しそうで、自由で、見飽きない方でしたから」

 

そう主について話すリゼッテは、誇らしげで、どこか楽しそうであった。

 

「さあ、書斎に着きました。今回は私も同席させてもらいますね」

 

そう言ってリゼッテは書斎の扉を開けた。

開けた瞬間、華やかな香りが部屋から溢れ出てきた。

 

「おはよう。いい夢は見られたかしら?」

 

紅茶を片手に持ちながら、アルフェシアが言った。

どうやら香りは紅茶の香りだったらしい。

 

「はい」

 

「リゼッテが魔法を使ったんでしょう?」

 

「はい。でも、適切でしたよね?」

 

「そもそも、魔法で眠らせて欲しくてリゼッテを呼んだもの」

 

主と従者が微笑み合う。この2人はきっと長い間共に生きてきたのだろう、と少女は思った。傍にいるものがいる、ということを少女は少しだけ羨ましく思った。

 

「今日は昨日の話の続きをするわ。取り敢えず座って」

 

少女はリゼッテの向かいに座った。リゼッテは少女の後ろで立ったままだ。

 

「私は従者ですので」

 

不思議そうに見る少女にリゼッテが言った。

 

 

「突然なのだけれど、貴女には明日行われる式に出てもらうわ」

 

式、とは昨日話していた魔女になるための式の事だろう、と少女は思った。

その式には毎年多くの魔法使い・魔女が集まる。この日までに13歳になった者が基本的には対象となる。

つまり、13歳になった年の式典までの間は、自分の属性を知らないで生きている、と言うことだ。

 

「明日、ですか?」

 

「そう。でも大したことはしないから特に準備は要らないのだけれど……」

 

「問題は式の後、ですよね」

 

リゼッテが頷きながらアルフェシアの言葉に続けて言った。

 

「そうなのよね。式で自分の属性が明らかになるの。そこで2つ以上の属性があれば、式の後、魔術学校へ行くことが決まるのよ。魔術学校の入学式までの間に貴女に魔法の基本を教えきれるかがちょっと不安で」

 

まるで少女が魔法学校に通うと決まっている様にアルフェシアは話した。

 

「でも、2つあるかなんて、事前には分からなくないですか?」

 

「そうなのだけど、貴女は確実に2つ以上の属性を持っているわ」

 

「私もそう思います」

 

2人にそう言われ、取り敢えず少女は信じてみることにした。

 

「魔術学校には名家の人が多くてね。そこに魔法界出身ではない貴女が行くとなると大変でしょう?」

 

何が大変なのだろう、と少女が首を傾げていると、

 

「大変っていうのは、身分の違いで優遇されたりとかがってことですね」

 

とリゼッテが補足した。

 

「だから私の弟子になることで他の人と位を同じぐらいにすることが出来ると思うの」

 

「同じぐらいって言うか超えると思いますけどね」

 

都市を治め、全属性を扱う魔女はこの魔法界にたった一人しかいない。生ける伝説レベルである。

もっとも、アルフェシアはそのことについてあまり深く考えていないので、本心から、他と位が一緒になると思って言った。

 

「そのためには今の名前を捨ててもらって、私が名を与える必要があるの。これに賛成するかどうかは貴方に任せるのだけど...どうかしら?」

 

「弟子になります」

 

少女はアルフェシアに着いていくかを決めた時よりも早く答えた。

 

「あら、そんなに早く決めて大丈夫?後悔しない?」

 

「大丈夫です。危害を加えてきたりしないってことはよく分かりましたから。それに名前が変わればまっさらに、新しく生きていけると思うんです」

 

少し魔法に興味がわいた、というのも決めた理由の一つであった。

 

「じゃあ後でやりましょうか。私に何か質問があれば言って?」

 

「あの、アルフェシアさんはこの都市を治めていると聞いたのですが...」

 

「リゼッテから聞いたのね。ええ、そうよ。だから仕事で忙しいってわけね」

 

なるほど、と少女は頷いた。

 

「それと言い忘れてたけど、弟子になったら私の事はアルフェシア様、リゼッテのことは呼び捨てで呼ぶようにね」

 

「魔法界は呼び方に厳しいですから、早く定着させて慣れていきましょうね」

 

「あとは何かあるかしら?」

 

「えっと、そもそもここはどこなんですか?あの、貴女の家、という意味ではなくて、地名的に……」

 

少女はこれまでずっと知りたかったことを聞いた。アルフェシアによって一瞬で連れてこられたので、場所を理解できていなかったのだ。

 

「そういえば言ってなかったか。ここは、貴女のいた国とは遠く離れた国よ。ここは“ヴェスパーティナ”という国の、 “セリニス”という街よ」

 

ヴェスパーティナもセリニスも、少女が初めて聞く言葉だった。

少女が住んでいた町はまた別の国の領地であった。

 

「ヴェスパーティナ王国は魔法に長けたものが多く住む、大魔法王国と言われます」

 

「ヴェスパーティナは夕暮れを意味して、セリニスは月を意味するの。」

 

「他にも多くの都市がこの国にはあって、学校ではあらゆる都市出身者がいます」

 

「つまり、貴女はセリニスから来た新入生になるってことね」

 

なるほど、と少女は頷いた。

 

 

「他に何もないなら、早速あなたの名前を考えましょうか」

 

「そういえば、名字はどうするんですか?」

 

リゼッテがアルフェシアに聞いた。

 

「私と同じにしちゃうのはだめ?」

 

「うーん、今までにそれはなかったですし、師弟関係とは思われなさそうなので、変えた方が良いんじゃないですか?」

 

「じゃあ、名字はリゼッテが考えて」

 

「私がですか?」

 

リゼッテが驚いたように言った。

 

「だって、名前を考えるのって大変なのよ?」

 

「まあ、それはそうでしょうけど……じゃあ、 “ネアセリニ”というのはどうですか?」

 

「 “新月”か。いいんじゃないかしら?貴女はどう?」

 

「私も特に異論はないです」

 

「月って入れたらこの街の人っぽさが出ますし、何より師となるアルフェシア様は月の魔女ですからね」

 

自分に月と付けられるなんて恐れ多いな、と少女は思った。けれど満月ではなくてよかったなとも思った。

さすがにそれはちょっと恐れ多すぎる。満月にふさわしいのはアルフェシアだろうと少女は思っていた。

 

「アルフェシア様は満月ですから、新月にすれば裏と表になりますし」

 

「私は別に満月ではないわよ?まだまだ足りないところがあるんだから」

 

とアルフェシアは言ったが、リゼッテも少女もそんなことないだろうと言いたげにアルフェシアを見た。

 

 

「じゃあ、名前はどうやって決めましょうか」

 

「私は頑張って考えましたからね」

 

「私も今頑張ってるのよ」

 

「属性が分からないから、属性系の名前は駄目だし…うーん」

 

とアルフェシアは中々いい名前が思いつかないようで考え込んでいる。

 

「あの、じゃあ、見た目とかどうですか?」

 

少女は黒髪を持ち、瞳はほとんど白の水色だった。

自ら見た目からを提案したものの、自分の容姿に対してはあまりいい印象を持っていなかった。

特に少女は自分の瞳の色が好きではなかった。水色は珍しく、それだけで周りからは魔女の瞳だと言われ、距離をとられていた。実際魔力を持っていたので、当たってはいたのだが。

それでも自分からすべてを奪ったと言える魔女と同じであると言われることは、少女にとって耐えがたいことであった。

 

「いいわね!!貴女の瞳の色、とっても素敵だもの」

 

「そう...ですか?」

 

「ええ、とても綺麗な色をしているわ」

 

そう言ってアルフェシアは少女の瞳を見つめて微笑んだ。

 

アルフェシアはしばらく少女の瞳を見ていたが、

 

「よし、名前を決めたわよ!」

 

と突然立ち上がった。

 

「あら、速かったですね。私の時は一日かかったのに」

 

「これも成長よ!」

 

「それで、私の名前は?」

 

少女は自分の名前が知りたかった。早く自分の名前を捨てたかったのだろうか。それとも早く魔女になりたかったのだろうか。

やはり、魔法と言うものは人々を魅了する。少女もそんな魔術にかかった者の一人になっていた。

 

「式の時に発表するわ。楽しみにしてて」

 

アルフェシアは悪戯っぽく笑った。

 

「で、えっと、他にもすることがあってね」

 

と言って仕事用の机に向かった。積みあがった書類の中から、一枚の便せんを持ってきた。

便箋を見つめながら、

 

「式では名前が呼ばれて、自分の属性が分かるだけだから、特に貴女がすることは無いわ。指示に従ってね。で、式が終わっても会場に残ることになっていて、校長が魔法学校に招待しに選んだ人のものへ来るのよ。で、入学について話をされて終わりね」

 

と言って便箋を折りたたんだ。

 

「今日は7月23日で、入学までは2か月ほどありますから、その期間に準備を整えましょう」

 

「よし、決めることも話すことも全部終わったわよね?」

 

「そうですね」

 

「じゃあご飯にしましょうか。その後にこの屋敷を案内するわね。時間があれば、この街も」

 

「では食堂へ案内しますね」

 

とリゼッテが少女に微笑みかけながら扉を開いた。

少女は椅子から立ち上がり、着いていく。

アルフェシアは少女の後ろを着いていく形で、3人で食堂へ向かった。

 

「リゼッテさんが料理を作るんじゃないんですね」

 

リゼッテが案内しているので、つくっているということではないのだろう、と少女は判断した。

 

「この屋敷には私以外にもメイドがいますから」

 

「この屋敷には10人のメイドがいるのよ。従者はリゼッテだけだけどね」

 

従者はリゼッテだけ、と言う言葉に少女は首を傾げた。

従者とメイドは同じものではないのだろうか。

 

「従者とメイドは違うんですね」

 

「従者は生涯その身を主に預けるの。メイドは別に仕える人を変えてもいいのよ」

 

「この屋敷にいるメイドの多くは屋敷が出来た時から一緒ですけどね」

 

ほぼ全員従者みたいなものですよ、とリゼッテが笑った。

 

 

「はい、ここが食堂です」

 

扉の先からは美味しそうなにおいがしている。

扉が開いた先には大きなテーブルがあり、ずらっと料理が並んでいた。

 

「メイドたちを全員紹介した方がいいかしら?」

 

「そうですね。でも、屋敷を案内するときに会えますよ」

 

「それもそうね。まずは座ってくれる?」

 

アルフェシアが椅子を引き、ここに座るよう少女に促す。

アルフェシアは少女の右隣に一席空けて座った。

 

少女の目の前には魚料理から肉料理まで様々な料理が大皿にのって並んでいた。

 

「じゃあ、料理担当のメイドを紹介するわね」

 

そうアルフェシアが言うと、3人のメイドが机を挟んで少女の前に一列に並んだ。

 

「まず、ジリナ」

 

「はい。料理長をしています。属性は土と水です」

 

と、一番左に立っている3人の中で一番背が高いメイドが頭を下げた。暗い赤色の髪をまとめて丸めている。

 

「よろしくお願いしますね」

 

と赤色の瞳で少女に微笑みかけた。

はきはきとしたしゃべり方で、快活そうだなと少女は思った。

 

「次に、シャント」

 

「主にデザートを作ります。いっぱい食べてくださいね。あ、属性は風と月です」

 

真ん中のメイドが頭を下げた。彼女は薄紫色の髪をハーフアップにしていた。目の色は桃色だ。

柔らかい雰囲気を持っている人だなと少女は思った。

 

「最後にラシェラ」

 

「私は2人の補助をメインにしています。あと、館内の掃除も担当しています。属性は水と風です」

 

右に立っている濃い紫色のボブヘアーのメイドが頭を下げた。

 

「ジリナとシャントの2人は同級生―あ、私の同級生ってことじゃなくて、2人が同い年って意味ね。ラシェラはメイドたちのなかでは最年少なのよ」

 

「はい!アルフェシア様に仕えることを目標に魔法学校での日々を頑張りました!」

 

ラシェラの黄色の瞳が輝く。

 

「ということで、食堂にはこの3人がいるわ。さあ、さっそく食べましょうか」

 

アルフェシアがそう言うと、3人は一礼してから、少女が食堂に入る時に使った扉とは別の扉から、部屋を後にした。

 

 

少女にとっては久しぶりのちゃんとした食事だった。そして料理は、どれもとても美味しかった。なので、料理の皿はすぐに空になってしまった。食後にデザートがある食事も、少女にとっては初めてだった。

 

「じゃあ、食べ終わったことだし、屋敷を案内するわね」

 

 

 

アルフェシアは食堂を出て右手に進んだ。

その後ろを少女とリゼッテがついていく。

 

「食堂横のこの部屋は空き部屋で、その隣の部屋には図書館に収めれない分の魔導書があるわ」

 

と食堂に向かって左側にある2つの部屋を紹介した。

 

「ここが図書館。様々な魔導書が集まっているの。この街には、こことは別にもう一つ図書館があって、そこは誰でも利用することが出来るわ」

 

と図書館の扉を開いた。

 

「で、図書館の管理を任せているのがこの2人」

 

「ミレーニアと言います。この図書館の蔵書の管理をしています」

 

ミレーニアは緩やかにウェーブしている黄色の髪を2つに結んでいた。

少女と同じ水色の瞳だったが、少女よりも濃い色だった。

 

「エドナと言います。同じく図書館の本の管理をしています」

 

エドナはエメラルド色の髪を三つ編みにして、濃い青色の瞳を持っている。

この2人はメイド服ではなく黒色のローブを着ていた。

 

「この2人は2人とも風属性と土属性を持っているわ。何か本を探すときにはこの2人を頼ってね」

 

「昨日来た時にはいませんでしたね」

 

確か誰もいなかった気がする、と少女は思った。

 

「ああ。だって、深夜だったからね」

 

まだ不思議そうな顔をしている少女に、

 

「日が落ちてきたらその日の私達の仕事は終わらなければいけないので」

 

とミレーニアが説明した。

 

随分とホワイトな職場である。

アルフェシアはメイドたちに無理をさせないように考えて仕事を与えたりスケジュールを考えたりしている。だからメイドたちが辞めないんですよ、とリゼッテは心の中で思った。

 

 

 

図書館を後にして次の部屋へ向かう。

 

「図書館の正面から廊下を挟んで少し左に進んだここが貴女の部屋。家具とかの希望があったら準備するから言ってね。まあ魔法学校は寮制なのだけど」

 

そう言って少女が昨日寝た部屋の前を通り過ぎる。

少女の部屋を通り過ぎて少しすると、階段が現れた。

 

「この階段からは2階に上がれるわ」

 

こんなに広かったのにそれがもう一階分あるなんて…と少女は驚いた。

 

「この階段の正面の3部屋と、突き当りを左に曲がった先の廊下の両側にある7部屋、合わせて10部屋が、メイドたちの部屋になっているわ。」

 

と多くの扉の前を通り過ぎる。昨日図書館から書斎まで行くのに通り過ぎたのはどうやらここだったらしい、と少女は思った。

 

「で、さらに突き当りを左に曲がった先にあるこの部屋が私の寝室。私の左隣の部屋がリゼッテの部屋になっているわ」

 

「メイド一人一人にここまでの広さの部屋を与える人は中々いませんよ」

 

と2人の後ろを歩くリゼッテが言った。

 

「私にとっては別に特別なことじゃないけどね。で、リゼッテの部屋の向かい側にあるのが私の書斎。リゼッテの部屋の左が玄関よ」

 

アルフェシアは玄関ホールの扉を開けた。

 

「ここには警備をしているデフィネとフェリアがいるわ」

 

とアルフェシアが言うと、玄関ホールで立っていた2人が3人の方を向いた。

 

「警備を担当しているフェリアと申します」

 

「同じくデフィネです」

 

「基本的には私が前線を担当して、デフィネが援護する形で戦います」

 

と、青色の髪を一結びしている女性が言った。

青髪で茶色の目をしている方がフェリアで、薄い黄緑色の髪で青に近い紫色の目をしている方がデフィネだな、と少女は理解した。

 

「フェリアは火・光属性、デフィネは水・風・月属性よ」

 

フェリアは火属性だけれど青髪で、属性と髪色は関係ないんだなと少女は思った。

そしてこの2人は属性が補い合えるようにと考えて、アルフェシアが警備に選んだのだ。

 

「リゼッテさんと同じ属性ですね」

 

と、後ろに立つリゼッテを振り向いて少女が言った。

確かリゼッテさんも水・風・月だったような...と少女は思い出していた。

 

「よく覚えてたわね」

 

とアルフェシアが驚いたように少女を見た。

 

「偶々2人は一緒なのよ。それと、デフィネは援護を基本とするけれど、戦いもちゃんと強いからね」

 

と言われて、

 

「恐れ入ります」

 

とデフィネが頭を下げた。

 

「引き続き警戒をお願いね」

 

とアルフェシアが言って、3人はさっき開いた扉から館内に戻った。

 

 

「この正面の扉から、中庭に出られるわ」

 

と言ってアルフェシアが玄関ホールの正面の扉を開いた。

図書館は中庭の真ん中にあり、木々が図書館をぐるっと囲んでいた。

 

「彼女が庭の手入れを任せているウェリーンよ」

 

と花に水をあげていた女性を見ていった。

ウェリーンは両手から霧のように水を出していたが、水を止めて、3人の方を向いた。

 

「この庭の手入れをしているウェリーンです。属性が水・土・風なので庭仕事を任されています」

 

薄い赤茶色の髪は腰まであり、瞳は深緑色をしていた。

 

「ウェリーンはメイドの中で最年長なのよ」

 

「アルフェシア様よりも年上なんですよ」

 

「お2人は、大して変わりませんけどね」

 

リゼッテがウェリーンの言葉に補足した。

 

ウェリーンは最年長とは言えども、少女の目には30代ぐらいに見えた。

大して変わらないのなら、アルフェシアは20代と言うことだろうか。

けれど昨日、アルフェシアは自分は100歳超えだと言っていた。

どちらの言葉を信じればいいのだろう、と少女は考え込んだ。

 

「で、庭から図書館に入れて、2階に上がれるのよ」

 

3人は図書館内の階段を昇って2階へ向かった。

 

アルフェシアは

 

「まあ、2階は1階の半分しかないんだけどね」

 

と言って図書館から廊下に出た。

 

「図書館の前にある部屋は休憩室……実際は多目的室みたいなものだけどね」

 

この部屋はメイドたちがお茶を飲んだり、多くの客人が来るときには応接室としても使われたりする。

 

「で、この廊下の先が浴室。こっちの部屋は研究室。よし、これで全部回れたわね!」

 

とアルフェシアが喜びの声をあげた。

 

「街の紹介はまた後日しましょうか。明日は早いし、シャワーを浴びてご飯を食べましょう。リゼッテ、浴室を案内してあげて」

 

「分かりました。さあ行きましょう」

 

と言ってリゼッテが歩き出し、少女がついていく。

アルフェシアは書斎に戻ることにした。

 

 

少女はシャワーをして夜ご飯を食べ、自室へ向かった。

結局夕食の席にアルフェシアはやってこなかった。

 

部屋に戻ってからそのことをリゼッテに言うと、

 

「明日の事で忙しいですからね」

 

と答えられた。

 

「アルフェシアさんも何かすることがあるんですね」

 

「この街を治めていますからね。まあ、それ以外にも理由はあるんですけど、どうやら貴女には言わないでおくつもりみたいなので、私も秘密にするわね」

 

2人が話していると、少女の部屋に2人のメイドが入ってきた。

 

「そういえばこの2人には館内巡りの時に会えなかったわね」

 

「はい。そういうわけですからご挨拶に参りました。アルフェシア様の傍仕えをしております、クイントです」

 

「同じく傍仕えをしていますへスターです。弟子になられるということはアルフェシア様から聞いております。これからどうぞよろしくお願いします」

 

「クイントはシャントの妹なのよ」

 

とリゼッテが言った。

 

「あまり似ていないと言われますが。髪色も目の色も違いますからね」

 

クイントは悲しそうにため息を吐いた。

少女も、言われるまで2人が姉妹だということに気づかなかった。

クイントは水色の髪に黒色の瞳。薄紫色の髪に桃色の瞳のシャントとは色の系統が全く違う。

 

「でも、属性は近いんじゃない?確か、水属性があるかないかの違いだったでしょう?」

 

「リゼッテともデフィネとも、私の属性の組み合わせは同じなのよ?属性で判断するなら全く同じな2人と姉妹ってことになるじゃない?」

 

「確かにねえ…」

 

とへスターもため息を吐いた。

 

「あの、声が似ている、というのはあると思いますよ」

 

と少女が言うと、

 

「本当?」

 

と嬉しそうにクイントが言った。

 

「結構似てるかもね。」

 

「じゃあ、私は誰と姉妹か、分かるかしら?」

 

へスターが少女に問いかけた。

へスターはエメラルド色の髪に緑色の瞳。

 

「エドナさんですか?」

 

「この質問、今のところ全員正解の問題なのよ?私なんて、誰も正解してくれたことないのに…」

 

「お姉さんがお好きなんですか?」

 

「好きよ。でも似ていたい理由はまた別だけど。魔法学校でずっと隣でこれをされ続けたら、姉妹だってこと、誰かに当てて欲しくもなるわよ。だから、似てたらよかったのになあ…って思うのよ」

 

「3人は同級生だったのよ」

 

とリゼッテが補足した。

つまり魔法学校に通っている間、ずっと隣にいて今同じ屋敷にいるということは、かなりの間一緒にいるのでは?

エドナとへスターが姉妹であるということと、3人が同級生であると言うことは、

 

「エドナさんとへスターさんは双子ってことですか?」

 

2人が双子ということになる。

 

「そうよ。その割には似てないでしょう?」

 

「私の隣でその話をしないでって言ってるでしょう!?」

 

とクイントがへスターに向かって叫ぶ。

 

「はいはい。2人が部屋に来たのはそれが目的?」

 

「あ、違います。アルフェシア様には傍仕えの我々がいますが、貴女にはいないですよね?入学までの間は私達がお2人の傍仕えとして働きますよ、と言うことと…」

 

クイントがへスターに目配せした。

へスターが続けて言う。

 

「学校に通っている間は傍仕えを連れて行った方が良い、ということをアルフェシア様から伝言で頼まれまして。一応私の妹が候補になっていて、そのうちここに来るので、知っておいて欲しい、ということでした」

 

「えっと、私、傍仕えが付くような人じゃないと思うんですけど...」

 

少女はただの一般人だ。しかも魔法界生まれではない。

普通、そのような者に傍仕えが付くなどありえない。

 

「アルフェシア様の弟子ですからね。理由は充分ですよ」

 

アルフェシアの弟子という理由1つで傍仕えが必要なぐらいの魔女になるのだ。

 

「まあ、今すぐにという話ではありませんから気にしないで下さいね」

 

「はい...」

 

気にしないで、と言われてもやはり気になるものは気になるので、少女は傍仕えについて考え始めた。

 

「明日は忙しいですから、ご就寝なさってくださいね」

 

「それでは、いい夢を」

 

リゼッテがそう言って、3人が部屋から出ていく。

 

「傍仕え、かあ......。私に傍仕えが付くなんて思ってもなかったなあ……」

 

そう呟いて、少女は枕に頭をのせた。

程よく沈み込んでいくマットレスに、少女は意識を預けた。

 




お屋敷探検と、名前決めと式に関する話。
メイド多!!って感じですが、覚える必要はありません
『いい夢を』はこの国の寝るときの挨拶みたいなもの。

アルフェシア
1000年に1人の優秀な魔女
王都からの誘いの断り理由として都市をつくった。

魔術学校
魔法学校とも呼ばれる。2属性以上持っていないと入れない。

現在地
ヴェスパーティナ王国のセリニス。

月日
1月から12月まで。時間は0時から23時まで。数の数え方は考えるのが大変なので同じです。
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