月の魔女の弟子と転生少女   作:六原

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式典のお話。


02.魔色鑑定

「おはようございます」

 

ベッドの上で薄っすら瞳を開いた少女に、リゼッテが声をかけた。

リゼッテは当然のように部屋にいるが、そのことについて少女は気にしないことにした。

 

「あ、えっと、もう朝ですか......?」

 

と少女が瞳をこすりながら言うと、

 

「はい。式典まであと2時間です」

 

とリゼッテが答えた。

 

「2時間ですか!?」

 

少女は慌ててベッドから降りて立ち上がった。

 

「えっと、それはかなりまずいということですか?」

 

「朝食をとって身だしなみを整えたら直ぐに式に向かいましょう。」

 

リゼッテは笑っていたが、オーラが笑っていなかった。目は笑っていない、と言う奴だ。

実際、式典使用の身だしなみにはかなり時間がかかるので、焦らなければいけない時間であった。

 

 

「はい、これでどうでしょうか?」

 

髪を結っていたクイントが正面に置かれた鏡越しに少女の目を見る。

 

「とっても素敵です」

 

式典仕様に、少女の金色の髪は緩く巻かれてハーフアップになっていた。

黒色のローブに金色が映える。

 

「ここにこれを挿したら完成です」

 

へスターが結び目に宝石のついた簪を挿した。

 

「これはアルフェシア様が選ばれたものなんですよ」

 

宝石は少女の瞳と同じようにほのかに青い、透明な色をしていた。

 

「その、アルフェシアさんはどこにいるんですか?起きてから見かけていないですけど」

 

「ああ。もう式の会場に向かわれましたよ」

 

「アルフェシアさんは式で何をされるんですか?」

 

「それは秘密です」

 

と、クインタがへスターと目配せする。

 

「行ってからのお楽しみですよ!それに、名前も言われるでしょうから、私達も楽しみにしています!」

 

少女がアルフェシアの弟子になるためにはアルフェシアから名を与えられなければならない。

故に少女はまだ、『少女』なのである。

 

「では時間も近づいてきましたし、行きましょうか」

 

そう言ってリゼッテが少女の手を取る。

少女の視界が歪んだ。

ああ、私が町からここへ連れてこられた魔法か、と目を閉じて考えている間に、目的地へ到着した。

 

「ここが会場です。ここから先の案内はデフィネが担当します」

 

リゼッテが少女に説明して、その場を離れる。

 

「本日護衛を担当させていただきます、デフィネと申します」

 

「よろしくお願いします。えっと、私は......」

 

名前を紹介されると、反射的に名乗りたくなってしまう。

 

「これから名前が分かるんですよね?」

 

「はい......」

 

少女は名乗れないと言う問題に悩んでいた。

礼儀として名乗り返すべきなのに、名乗り返せないというのはいかがなものかと悩んでいたのだ。

 

「アルフェシア様から直接言われますから、楽しみにしていてくださいね。では、部屋まで案内しますね」

 

デフィネが廊下を歩きだす。

廊下は真っ白で、歩く度に音が反響する。

 

「ここは神殿なんですか?」

 

「そうです。よくお分かりになりましたね」

 

「一度、神殿に行ったことがあるので」

 

少女が家を失った後、魔法使い達に神殿へ運ばれ、手当てを受けたことがあるのだ。

 

「ここはこの、『魔色鑑定』専用の神殿なんですよ」

 

「ましきかんてい、って何ですか?」

 

「今から行う式の正式名称です。属性ごとに色があるので、魔色。それを調べるので魔色鑑定、と言う訳です」

 

「そうなんですね」

 

「そしてそれを行うのが......」

 

デフィネが立ち止まる。

どんな扉よりもはるかに大きな扉の前に立つ2人。

 

「この先にいる方です」

 

「扉の向こう側で、自分の属性が判明するんですね」

 

少女はつばを飲み込んだ。

 

「では参りましょうか」

 

デフィネが扉を開ける。

 

 

扉の先には大きなステンドグラスがあった。赤、青、黄、緑、紫、金、白の7色で分割されている。

その手前にある祭壇に誰か白い服の人が立っているようだが、逆光でよく見えない。

祭壇から扉までカーペットが引かれており、その両側には多くの魔法使いと魔女が立っている。

 

「真っすぐ進んでください。私は後ろからついていきますので」

 

デフィネから囁かれ、少女は小さく頷いた。

 

 

少女に目線が集まる。やっぱりこの瞳の色は特殊なのだろうか、と少女は思った。

しかし魔法使いの、「デフィネ様が警護をなさっている......!?」と言う囁きが聞こえてきた。

 

そう、少女ではなく、アルフェシアの専属の護衛であるデフィネに少女が警護されている、ということに驚いているのだ。

 

少女は視線を感じながらも、祭壇まで歩いた。

白い服の人物の顔は、布で隠されていて見えない。

 

「そんなに緊張しないで」

 

アルフェシアの声が布の中から聞こえ、少女は顔をあげた。

 

「アルフェシアさん、ですか?」

 

「ええそうよ。分からなかったでしょう?」

 

なるほど。アルフェシアはこの魔色鑑定を行う一番重要な役割を持っているから、昨日も遅くまで書斎に居たし、今日も早くに屋敷を後にしたのだな、と少女は思った。

 

「もしかして彼女は......」

 

「でも、そんなことあるのかしら......」

 

魔法使い達のざわめきは、少女が祭壇についても止まなかった。

生ける伝説とさえ評されるアルフェシアの弟子になるかもしれないのだから、ざわつくのは当然である。

 

「静かに。これより――」

 

アルフェシアの声に部屋が静まる。全ての目がアルフェシアに向く。

誰もがアルフェシアの言葉を聞き逃すまいと見つめた。

 

「我が弟子となる、セレステ・ネアセリニの、魔色鑑定を執り行います」

 

アルフェシアの声が部屋中に響きわたり、再びざわめきが起こる。

 

「やっぱり、弟子なのね」

 

「今になって弟子を?」

 

「魔法学校では彼女との関係を築かせねば......」

 

 

あちこちで囁く声が聞こえたが、少女はそのどれもが耳に入らなかった。

セレステ・ネアセリニという言葉が脳内で響いていた。

セレステ、これが少女に向けてアルフェシアが与えた名前だった。

 

「貴女にこの名を与えましょう」

 

「はい、確かに受け取りました」

 

自然と、少女の口から言葉が流れ出た。

 

「では、これを持つように」

 

アルフェシアがセレステに杖を差し出す。身長ほどもある、大きな金製の杖だ。

差し出されるがままにセレステは杖を受け取った。

 

セレステが杖を受け取った瞬間、ステンドグラスの青、黄、緑、紫、金の部分が強く光り始めた。

同時に、ローブの内側の生地が薄い紫色に変わった。

 

再びざわめきが起きる。セレステの後ろに立っていたデフィネも、驚いたように目を見開いた。

 

「水属性、土属性、風属性、月属性、光属性。これが貴女の属性です。属性が無くならぬ様に、日々魔法を愛するように」

 

「はい」

 

セレステは杖を返した。

 

「右手の扉から部屋を出て」

 

とアルフェシアに囁かれ、セレステとデフィネは右手の扉へ向かった。

 

「5属性だなんて何年ぶりだ!?」

 

「やはりアルフェシア様が弟子に取るだけあるわね」

 

「月属性を一番持っているなら、月の魔女の名を継ぐのかしら......」

 

部屋のあらゆる場所から聞こえてくる囁き声を聴きながら、2人は部屋を後にした。

 

 

 

部屋を出た先には、リゼッテとフェリアが立っていた。

4人で、また別の部屋に向かって歩き出す。

 

「やっぱり、弟子になるってことで注目を集めましたね」

 

とフェリアが話しかける。

 

「なんせアルフェシア様の弟子ですからね。それに5属性持ちでしたし」

 

魔色鑑定の結果をデフィネが2人に伝える。

 

「5属性でしたか!思ったよりも多かったですね」

 

リゼッテが驚く。

5属性はこの魔法界でもレアで、毎年、一学年で10人ほどしかいない。

ちなみに全属性は50年に1人いたら珍しいと言われるぐらいにはそうそういない。

 

 

部屋に着き、椅子に座ったところで、

 

「あの、取り敢えず今の状況を説明してもらえませんか?アルフェシアさんがいる理由から」

 

と、部屋を出てからずっと困惑顔をしていたセレステが言った。

 

「この神殿ではこの街の魔法使いの儀式を執り行っているため、ここを治めているアルフェシア様が担当していたんです」

 

治めている者――領主が担当するので、街ごとに担当者が異なる、と言うのがこの式典の特徴になる。

そして、実施される日付も領主が決める。セリニスでは7月24日に行われることになっている。

領主となった時に、継承の儀が行われ、それによって式を執り行う力が与えられるとされているが、詳細は元もしくは現領主達しか知らない。

 

 

「杖を渡されましたよね?あれを持つことで属性が鑑定できるんです。ステンドグラスは属性を人々に伝えるためのもので、光った色と対応する属性を持っているということが分かるようになっています」

 

かつては杖のみで行われていたのだが、もっと見やすくした方が良い、面白いということで変わったそう。

つまり、ステンドグラスが無くとも儀式は行えるということだ。

 

「そもそも、色の説明がまだでしたね。赤色が火属性、青色が水属性、黄色が土属性、緑色が風属性、紫色が月属性、金色が光属性です」

 

と、デフィネの説明にリゼッテが付け足した。

 

「つまりセレステ様は赤色以外が光ったので、火属性以外の5属性と言うことになります」

 

デフィネの言葉を聞いて、セレステは安堵した。もし自分に火属性があれば、自分からすべてを奪った魔女と同じ存在になってしまうような気がしていたのだ。

 

「ローブの内側の色も、属性と関係があるんですか?」

 

杖を持つ前までは両面黒色だったローブが、内側の生地だけ薄い紫色へ色を変えた。

それを言うなら、アルフェシアのローブは両面白色である。

メイドたちは皆支給された服を着ている様で、属性とは関係がなさそうだ。

 

「属性が多いほど、ローブの色は白に近い色になります」

 

デフィネが答えた。

 

「つまり、アルフェシアさんのローブが白いのは、多くの属性を持っているから、と言うことですか?」

 

「もう一つローブの色には規則性がありまして、それはその人が一番多く持っている属性の色になる、ということです」

 

「つまり私が一番持っているのは、月属性だということですか?」

 

薄い紫色と言うことは、紫色である月属性と言うことになる。

そして、セレステは5属性持ちであるので、薄くなったのだろう。

 

「そうです。アルフェシア様は全属性を均等に持っていらっしゃるので、白色なのです」

 

「外側が黒色なのは未成年である証で、成年以上のものは黒色のローブを羽織れないんですよ」

 

「そうだったんですか」

 

つまりアルフェシアのローブが白色な訳は、全属性を均等に持っているということと、成年以上であるという理由からだったということだ。

 

 

 

「それよりも、先ほどはスルーしてしまいましたけど、セレステと言うのがアルフェシア様から与えられたお名前ですか?」

 

部屋に入っていなかったリゼッテがセレステに聞いた。

 

 

「はい。アルフェシア様からセレステという名前を与えられました」

 

「『セレステ』、ですか!!素敵ですね」

 

セレステはまだ、自分の名前に慣れていない。けれど、きっとこれからセレステとして幸せに生きていける予感がしていた。なんてったって、月の魔女アルフェシアが師となるのだから。

そして、その魔女が私の為に考えてくれた名前なのだから。

 

「これでもう、私は弟子になったのですか?」

 

「いえ。屋敷に戻ってから魔術を使って契約を交わす必要があります」

 

「なるほど......」

 

早く弟子になりたいな、とセレステが思った時、辺りが白く輝いた。

 

「うわあっ!」

 

あまりの眩しさに、セレステは咄嗟に目を瞑った。

 

 

暫くすると、その光は収まった。

 

「今のは?」

 

とセレステが聞くと、3人は驚いたように息を吸った。

 

「あの、」

 

ともう一度セレステが声をかけると、

 

「こんな事があるなんて......」

 

とリゼッテが感嘆の息を漏らした。

 

「さっきの光は何か凄いことだったんですか?」

 

「はい。あの光は、全属性の魔法使い、或いは魔女が魔色鑑定を受けた、ということです」

 

「全属性って、アルフェシア様もそうですよね?」

 

「はい、アルフェシア様の時も辺りが輝きました。……そして、全属性が現れるのは、アルフェシア様以来です」

 

アルフェシアの年は分からないが、相当珍しいことだということはセレステにも伝わった。

前述したように、全属性は50年に1人いたら珍しいと言われるほどだ。

 

「アルフェシア様の弟子と、全属性持ちが同級生になるなんて、今年の魔法学校は大変そうですね」

 

「あの、どうして大変なんですか?」

 

「他の生徒より秀ですぎて、授業内容を考えるのが大変なんですよ」

 

「でも、別に私、弟子で5属性なだけですよ?」

 

「これからアルフェシア様から魔法についての教えがあるでしょうし、そして何より、属性が多い方が圧倒的に便利というか授業で有利なんですよ」

 

「魔法学校ではそれぞれの持つ属性の事は一切考慮せずに授業が進むので。私なんか風属性の授業じゃ、周りの魔女はみんな成功させる中で、私だけ一向に成功せずで、本当に恥ずかしかったですから」

 

と火・光属性持ちのフェリアがため息を吐いた。

残りの2人も大きく頷いた。

 

「それに全属性となれば、みな、繋がりを持ちたがりますから大変だと思いますよ」

 

それを聞いてセレステは全属性持ちじゃなくてよかった......と胸をなでおろした。

が、

 

「セレステ様もアルフェシア様の弟子と言うことで、かなり人が絡んでくると思いますよ。部屋の中で貴族たちが言っていたでしょうけれど」

 

とリゼッテに言われ、安堵の息は悲しみのため息となった。

 

「あの人たちは貴族の人たちだったんですね」

 

沢山人がいるな、とセレステは思っていた。そして彼らは結局最後まで見ているだけだったので、何をしに来たのだろう、と思っていたのだ。

 

「身分制度がこの街でもありまして、部屋に入って式を見られるのは貴族たちだけとなっています」

 

とリゼッテが説明した。

領主、次が貴族、その下に聖職者、続いて平民、という感じである。

 

「貴族たちはただ見るだけですか?」

 

「この街の貴族たちは代々、ほとんどが2属性以上持つから、まあ、同級生の事前調査、みたいな?」

 

「まあ、別にいてもいなくても変わらないんだけどね。野次馬精神みたいな感じで」

 

と4人で話していると、

 

「全員の儀式が終わったから、大部屋に来て」

 

とアルフェシアが扉を開いて声をかけた。

 

「分かりました」

 

リゼッテの答えを聞いて、アルフェシアは去って行った。

 

 

 

「じゃあ行きましょうか。大部屋に行ったら注目を集めると思いますが、あまり気にしないで下さいね」

 

と椅子から立ち上がりながら、デフィネがセレステに声をかける。

 

「全属性の(かた)に注目が集まりそうですけどね」

 

「確かにそうですね。どんな方なんでしょうか?」

 

と、予想しながら廊下を歩き、先ほど儀式が行われた部屋まで戻ってきた。

 

「失礼します」

 

と言って先頭を歩いていたリゼッテが扉を開いた。

 

 

部屋にいる人々がセレステを見た。

 

「やはり注目されていますね」

 

視線を受けながら、部屋の中へ入っていく。

 

「お疲れさまでした、アルフェシア様」

 

と、部屋の中央に立っているアルフェシアにデフィネが声をかけた。

 

「みんなもお疲れ様。セレステもね。名前、どうかしら?」

 

「素敵な名前をありがとうございます」

 

「いえいえ。そう言ってもらえて嬉しいわ」

 

とアルフェシアが嬉しそうに言った。

 

「そういえば、全属性持ちが現れたみたいですが」

 

セレステが言うと、

 

「ああ、そうそう。そこの彼女よ」

 

と銀髪の少女を指さした。

少女は貴族たちに囲まれ、何か話している様子だった。

 

「メイベルって言う子よ」

 

それを聞いて3人が驚く。

 

「名字が無いということは貴族じゃないんですか!?」

 

「名字は貴族にしか付かないものなんですね」

 

「はい。名字があるのは貴族か従者だけです」

 

「では、メイドの皆さんは貴族出身ではないということですか?」

 

確か全員名前だけを言っていた、とセレステは思い出した。

 

「自己紹介の時に名字を言わなかっただけで、貴族出身もいるわよ」

 

「シャントとクイントはフロール家、エドナとへスターはアストリア家だし、」

 

デフィネに続いて、

 

「私はパスティス家で、デフィネはキルシェ家。ウェリーンはキュリトス家です」

 

とフェリアが言った。

 

「そうだったんですね」

 

「私も貴族の生まれなので名字がありましたけど、従者になる時に家名は捨てました」

 

とリゼッテが付け加えた。

 

 

「ところで、全属性持ちが貴族でない方なのは初めての事ですね」

 

「そうね。だから、私もかなり驚いたわ」

 

と言いながらアルフェシアが銀髪の少女の方を見た。

つられて4人も少女を見た。

すると少女が5人の方を振り返り、視線に気づいて近寄ってきた。

 

「アルフェシア様、本日はありがとうございました。皆さんは初めましてですね。私、メイベルと言います」

 

と、少女はアルフェシアに一礼してから、笑顔で名前を言った。

 

「私はアルフェシア様の従者のリゼッテです。こちらの2人はアルフェシア様の警護のフェリアとデフィネです」

 

「「よろしくお願いいたします」」

 

と2人が頭を下げる。

 

「そちらの方は?」

 

「この子は私の弟子の、」

 

「セレステです」

 

セレステは自分で名前を言った。セレステと言う名前を貰ったのが嬉しかったので、口に出して言ってみたかったのだ。

 

「貴女が噂のアルフェシア様のお弟子さん?」

 

メイベルが藤色の目を丸くして言った。

 

「ええ。貴女の同級生になるわよ」

 

「そうなんですか!よろしくお願いしますね!!」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

と2人でお辞儀し合う。

 

「お弟子さんと言うことは、アルフェシア様がお名前を?」

 

「ええ」

 

「素敵なお名前ですね!私の名字も、楽しみにしていますので」

 

とメイベルが笑顔で言い、

 

「頑張るわ」

 

とアルフェシアは少し硬い笑顔で言った。

アルフェシアの苦手なものの一つが名付けなのだ。

 

「メイベル様はお一人でこちらに?」

 

とフェリアが聞く。

 

「様付けされるなんて初めて!はい、今日は一人でここに来ました」

 

「では私が傍についてもよろしいですか?貴族に囲まれるので対処が必要でしょうし」

 

「いいんですか!?」

 

とメイベルがフェリアの申し出に驚く。

 

「それがいいかも。お願いね、フェリア」

 

とアルフェシアが頷く。

 

「ありがとうございます、フェリアさん」

 

フェリアとメイベルは4人から離れていった。

 

 

「アルフェシア様が名字を付けるんですか?」

 

2人が去ってすぐ、セレステがアルフェシアに聞いた。

メイベルの、「私の名字も楽しみにしています」と言う発言からして、アルフェシアが名字を持たない彼女に名字を付けるのだろう。

 

「一応国で決まってるのよ。『貴族出身でないものが全属性持ちであった場合には、儀式を執り行った領主が名字を付けるように』ってね。これまで一度もこの規定が使われたことは無かったのだけど」

 

アルフェシアがため息を吐く。

 

「今年だけで名付けが2回もあるなんて……」

 

「頑張ってくださいね」

 

「2か月も考える期間はありますから」

 

リゼッテとデフィネがそれぞれ励ましの言葉をかける。

 

 

「お話し中のところ失礼します」

 

と濃い菫色の髪を持った女性が近づいてきた。

 

「ああ、スペンシア先生!お久しぶりです」

 

アルフェシアが声をかける。

 

「ええ。久しぶりですね、ミス・カレス」

 

「先生が魔法学校に招待しに来るんですね」

 

「はい。今年度から私が校長となりますので」

 

それを聞いてアルフェシアは笑顔を見せる。

 

「本当ですか!それなら安心ですね」

 

「と言う訳で魔法学校への招待の手紙を持ってまいりました。ミス・ネアセリニ」

 

と言って、アルフェシアの隣に立っていたセレステに手紙を渡す。

スペンシアの手にはいつの間にか封筒があり、どこから取り出したのかは誰にも分からなかった。

 

「ありがとうございます」

 

セレステが受け取った封筒は国立魔法学校と書いてあった。

 

「入学式は9月1日に行われます。詳しいことは手紙に書いてあるので、よく読んでおいてくださいね。では、私はこれで」

 

と言ってスペンシアは別の魔女の元へ向かった。

 

「アルフェシア様もさっきの方に教わっていたんですか?」

 

「ええ。30年ぐらい教員をしている方だから、教えてもらった人はかなりの数いると思うわ」

 

「私達も教わっていました」

 

と言って2人が頷いた。

 

「アルフェシア様、ミス・カレスと呼ばれていましたけど、名字ですか?」

 

「一応ね。領主は自分が治める街の名前を名字にするから、今はアルフェシア・セリニスよ」

 

その後はアルフェシアの元に貴族たちが挨拶をしに来た。

一通り挨拶が終わったところで、

 

「では、屋敷に戻りますか?」

リゼッテが言った。

 

アルフェシアは頷いて、

 

「そうね。その前にメイベルと話をしてくるわ」

 

と銀髪の少女の元へ歩いて行った。

 

 

しばらくして、アルフェシアはフェリアと共に3人の元へ戻ってきた。

 

「お待たせ。じゃあ屋敷に帰って、弟子になる契約をしましょうか」

 

そう言ってアルフェシアはセレステの手を取った。

 

 

「はい、到着。もうこれには慣れた?」

 

と、アルフェシアがセレステに聞く。

到着場所は前回と同じで図書館である。

 

「いえ、全然......」

 

「魔法学校ではこの転移魔法は使えないから心配いらないけど、将来的には多用することになる魔法だから、経験を積んで慣れた方がいいわね」

 

「う、頑張ります......」

 

「それじゃあ契約魔法の準備は整ってるから、早速やりましょうか」

 

と言って図書館の更に奥へ進んでいく。

本棚を向けた先には、床に大きく魔法陣が描かれていた。

 

「この魔法陣の上に立って魔力を流し込んだら儀式は終わり。簡単でしょう?」

 

「魔力を流し込むって、どうやって?」

 

「自分の体からこの魔法陣へ流れ込んでいくイメージを持てばいいのよ。魔法で一番大事なのは想像することだからね」

 

そう。魔法は全てイメージしなければ使いこなすことは出来ない。どんなに簡単な魔法も、どんなに難しい魔法にも同じことが言える。

 

「分かりました」

 

「それじゃあ私が先に魔力を流し込むから、その後から流し込んで」

 

セレステが頷いたのを確認してアルフェシアが魔法陣の上に立つと、模様が白く光り始めた。

続いてセレステも魔法陣の上に立つ。

セレステは自らの足元から魔法陣へと魔力が水のように流れていく様子をイメージした。

すると魔法陣の光が強くなり、そして収まっていった。

 

「えっと、これで終わり......ですか?」

 

儀式と言うほど何もしていない。本当にこれで契約されたのだろうかとセレステは疑わずにはいられなかった。

 

「ええ。これで貴女は私の弟子よ」

 

「これからもよろしくお願いします、アルフェシア様」

 

「よろしくね。後日渡すものがあるから、それを身に着けてね。そうすれば私の弟子だって一目瞭然だから」

 

セレステは

 

「はい」

 

と頷いて、それぞれ部屋に戻った。




セレステの話は一旦ここまで


魔色鑑定
属性を調べる儀式の名前。各都市の領主が担当する。
セリニスは7月24日に、13歳の者を対象として行われる。セリニスでは杖を持つとその人の持つ属性と対応する色のステンドグラスが光る。赤は火、青は水、黄は土、緑は風、紫は月、金は光、白は?。全属性が誕生すると辺りが光る。眩しい。

ローブ
内側の色は属性と対応している。属性数が多いと薄い色になる。かつ、その人の一番多く持っている属性の色になる。二つの属性を同じぐらいの量持っている場合は混色になる。

魔法学校
国立。入学式は9月1日。

セレステ・ネアセリニ
教会で拾われた少女。アルフェシアと出会い、自分が魔女であることを知った。
黒髪で、ほんのり青い白色の目。自分の目がコンプレックスだった。
属性は水、土、風、月、光。火にトラウマがある。

メイベル
全属性持ちの少女。セレステと同級生。
銀髪に藤色の目。

スペンシア
校長先生。長年教師をしてきた。
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