あの日に戻った俺は、同じ選択をしない   作:kujira_works

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虎杖悠仁が指を20本飲み込み、五条に処刑された場面から始まります。


・無断転載、無断利用はやめてください

・AI学習も受け付けません


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⚠️注意書き

※原作捏造

※転生逆行

※解釈不一致

※オリキャラ注意

※不満は受け付けません

→大丈夫な人は本編へ!




あの日に戻った俺は、同じ選択をしない 第一章

 

1

 

暗い、何も見えない。

目を開けることができず視界は黒に染まったまま呆然とする。何も聞こえない、なんの匂いもしない。ここはどこなのだろうか。俺は何をしているのだろうか。

 

水のような生ぬるい液体に体を浮かせ、状況確認をしようとした矢先何かに引っ張られる感覚がした。

 

 

 

「おめでとうございます。生まれましたよ!虎杖さんー!」

 

 

周りを見渡そうとするがうまく体が動かない。重たい瞼をなんとか開き、薄めで捉えることができたのは、真っ白なベット。そして空間を区切るよに垂れたカーテンだった。

消毒液のようなどこかツンとした馴染みのある匂いを感じ感覚的にここが病院だと感じる。己の小さな手を観察し、過去の記憶に振り返った

 

思い出すのは部屋一面にお札が貼られた風景だ。初めに連れられた監禁所と似たような場所に、同じように腕を縛られ、目隠しをされた。そして五条悟からの「ごめんね」と言う一言で終わってしまったのである。

 

して、今どんな状況なのだろうか?

あの時宿儺とともにこの世から消えたはずなのだが、、、

術式にやられたか?

いや、処刑の場で第三者の介入など不可能だ。ましてはあの五条悟。あの男を出し抜ける呪術師などいるはずがないのだから。

と考えると、完全なる自然現象ということになってしまう。情報源が少なすぎる。真実は神のみぞ知るということか。

 

 

体を布で包まれ台車に乗せられた。柔らかい毛布の感触を肌で感じ、外の景色を垣間見る。髪をまとめ白い服を着た女性が大多数を占め、白衣を着た男は時々見かける程度だ。

2×5号室と書かれた部屋の前で止まり看護師が扉を開ける。そして、母親と思わしき人物の前まで台車を動かし、看護師は優しい声を出した。

 

「虎杖さんお疲れ様です。ご出産おめでとうございます、ここで寝ているのが虎杖さんのお子さんですよ。お体の方は大丈夫ですか?」

 

母親と看護師との会話などまったく頭に入らず、考えるのは今の状況についてのみだ。

 

何か手掛かりになるものはないのだろうか。

新しく着いた部屋を見渡し、カレンダーらしきものを見つけた。ちょうど開かれたページに一つ丸がついている。出産日を記したものだろう。

 

今日という日を待ち侘びていただろうに、中身はあと数年で成人する男子高校生なのだ。

可哀想な両親に目を瞑り、カレンダーをよく見る。なんせ生まれて間もないのだから視界が悪いのだ。ピントを合わせて見えた数字は、

 

2003年3月20日

 

まさしく虎杖悠仁と生年月日共に一致しているのである。

 

「赤ちゃん、抱いてみます?」

 

看護師の声が聞こえてハッとした。目の前にいる女は、一呼吸起き落ち着いた声で喉を震わせる。

 

「はい。どう抱いたらいいですかね?」

 

「頭を手で支えて足を反対の手で、そうです、上手ですよー」

 

女の腕に抱かれ、ようやく顔を見ることができた。顔の整った黒髪の女。しかし、注目すべきは額だ。

開けた前髪からしっかり見える額の縫い目。

含みのある笑みを浮かべ、見つめられる。実験動物になったかのような緊張感が走った。

 

背中に薄寒いものを感じ、瞼を閉じた

 

 

2

 

産まれてから何年か経った。母親(羂索)はいまだに観察してくるだけで、害意はない。たまに体を触られ何か確認されるが、体調不良になるわけではないのであまり気にしないようにする。

 

身長もぐんぐん伸び、走ることもできるようになった。第二の幼稚園ライフを満喫中である。

5歳にもなりもう少しで小学生に上がる頃合いだ。母親と父親が亡くなったのもこのぐらいだった気がする。少なくとも小学生に上がる前には消えていた。顔なんかまともに覚えていない。

 

両親共通しているのはどこか壊れているところだ。母は俺や父を人間としてみていないし、爬虫類のような感情の読み取れない表情ばかり。父はというと母に向ける視線が宗教めいているというか、ぶっ壊れているというか、正直怖い

あまり関わりたい人種ではないのは確かだ

 

今の俺に呪術師の才能は全くない。幸か不幸か、前回と同様完全なる非呪術師らしい。呪霊の姿を見ることもできず、呪力を練ることも出来ない。

再び呪術師として生きるのならば宿儺の指を飲むのは絶対条件だろう。

 

身体能力は今も変わらず大人顔負けだ。

バク転、バク宙なんかはお手のものである。

 

高専側とは一度コンタクトをとっとおきたい。目指すは東京。五条悟の元である。

 

 

流石に5歳児が仙台から東京に一人で行くのは厳しかった。そのため東京に行きたいと家族に申し出て、今現在東京タワーにいる。

 

今回が初東京タワーだ、いい景色だなー

思わず見惚れてしてしまう。さすが標高336メートル、景色も圧巻である。本来の目的も忘れてはしゃいでしまうのだ。

 

東京タワーを降りるとお土産屋さんが見えた。東京タワーをモチーフにしたクッキーやら煎餅やらある。

その中でも一際輝くは黄色の東京バナナ!

俺が幼児の時にもあるんだ。ちょっとだけ驚いた。

 

 

お次はスクランブル交差点だ。これまた人が多い。信号が赤になっても渡りきれていない人がちらほら見える。田舎民には少し刺激が強い。他のメンバーも人の多さに圧倒され、

すごいねーとお父さん声が聞こえた。

高専に向かうとしたらこの時しかないだろう。

 

交差点をを通る時両親やじいちゃんには申し訳ないがダッシュで距離を取った。手を繋いでいたお父さんは「わっ!」っと情け無い声を出して人の波に流れていく。後ろから聞こえる自分の名前に多少の罪悪感を感じながらも自分の学び舎だった場所に向かったのだった。

 

 

目の前に見えるは東京高専。虎杖悠仁の学舎であった場所だ。

流石の山道。東京とは思えない。最寄駅からいくら時間がかかったことか。流石に疲れを感じてしまった。体の調子を整えると同時に心を落ち着かせ、意を決して門を潜ろうとした時。

 

後ろから服をつかまれた。

 

 

「ガキがここでなにやってんの?」

 

グラサン姿で現れた幼さが残る俺の元担任

五条悟である。

 

「おい、聞いてんのかよガキ」

 

あまりの衝撃に硬直してしまった。今から会おう会おうと覚悟を決めた矢先ご本人から登場してきたのだ。思ってもない再会の仕方で驚愕してしまう。

 

そして何より記憶の齟齬、、、!

俺の記憶の中にある五条悟とはいつも余裕で飄々としている大人だ。確かに三枚目でおちゃらけてばかりいるがそれでも大人だ。そういう線引きができる人間なのだ。

 

しかし今の五条悟を見てみてほしい。余裕は感じられず小さなイラつきがこちらに伝わってくる。口調も荒々しく、ガキだとこちらを完全に見下しているのだ。中学なりたての反抗期か?まさかこんなになるとは、確かに28歳と高校生だもんな。そりゃね違うよな、うん。

 

「おい、何無視してんだよ?聞いてんのか?」

 

不思議そうに、そして苛立ちながら聞いてくる姿に本当に記憶がないんだなと改めて実感した。心の奥底ではこの人には記憶があるではないかという期待があったのかもしれない。

 

何か言葉を口にしようと思ったが上手く言葉を紡ぐことができなかった。口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返し。心に何かじんわりと広がるものを感じた。

 

訝しむように先生の眉にシワが増えていく。

 

「悟、こんな小さな子相手にカツアゲなんて感心しないよ?」

 

後ろから聞こえてきた声に思わず振り返る。

本物の夏油傑、、、、

思わず凝視してしまう。

 

「おや?どうしたんだいそんなに見つめて。

私の顔に何かついてるかな?」

 

「お前の前髪があまりにも変だから固まってんだろ」

 

「うるさいよ悟」

 

ゆっくりと近づいてくる夏油傑。羂索でないと分かってはいるが身に染みた体験が警戒心を剥き出しにする。さっと後ろに下がり一挙手一投足をじっくり観察した。

 

「、、、悟?ほんとに何したのこの子に?」

 

「なんもしてねぇーーよ!!」

 

「あ、あの!、えっと!迷子に、なっちゃってて、、、」

 

「迷子か。大変だったね。名前、言える?」

 

やっとでた言葉にほっとしながら夏油傑をみた。綺麗にまとめられた髪、塩顔の整った顔立ちをしている。上半身だけ見れば優等生に見える。

 

しかし、ぼんたんだ。当時の高校生とはそういうものだろうか。こんな不良じみた格好をこんな好青年がするものなのか?羂索じゃないことはわかっているのだが、これはまた不思議な感じが。

 

「えっと、大丈夫かい?」

 

「あ、ごめん。考えごとしてて」

 

「お?俺たち相手に無視とはいい度胸だな、お前?」

 

「やめな、悟。そう子供を威嚇するのは良くないよ。怖がってるじゃないか」

 

「威嚇ってなんだよ、やかましいわ傑ママ」

 

「表出ようか。悟」

 

今の五条悟は高校生。顔立ちもそうだが口調や態度にも幼さがよく見える。

俺を殺した先生。いや、俺が殺させたんだ。初めからずっと気にかけてくれていたのに恩を仇で返してしまったな。生徒を殺めるだなんて嫌だっただろうに。

 

でも、お互いああするしかなかった。そういう約束だった、俺の選んだ道でもあった。本来、初めに殺されててもおかしくなかったのだ。

釘崎と伏黒と生きていられて幸せだった。だから、あれでよかったんだと思う。

 

しかし、不思議に思うのは夏油傑と五条悟の仲がとても良いという点だ。最強と名高い五条悟と近い位置にいるのに関わらず、何があって呪詛師となり、何があって羂索に体を奪われたのだろうか。情報が少なすぎる。

五条悟が覚えていないのならば他のメンバーが覚えているとは正直思えない。

俺は、1人だ。

 

「おっと、すまない。置いてけぼりだね」

 

「あ、うん。」

 

「改めて。私の名前は夏油傑。こっちのグラサンかけたのが悟ね」

 

夏油は目線を合わせるため少し屈みこちらに語りかけてきた。名を名乗られたので、こちらも返そうとする。隠す必要もないか。

 

「オレの名前は虎杖悠仁。」

 

「悠仁君ね。お母さんどこにいるかわかる?」

 

「えっと、スクラ、、、」

 

、、、ん?待てよ。迷子だったらおかしくないか?俺はスクランブル交差点からここまで来た。もちろん電車にも乗ったし。なんなら最寄駅から結構な時間をかけて高専に着いたわけだから、、、

 

「、、、交番どこか分かる?」

 

「えっと、お母さんのとこじゃなくて?」

 

「う、うん!迷子になったら交番にいけって言われてて、、、」

 

勢いで押そうと思ったが夏油の瞳が僅かに狭まったことで一歩後ろに引いてしまう。

 

「、、、うん。わかった。一緒に行こうか。悟も着いてくるかい?」

 

「おおー。行く行く。」 

 

仁王立ちをした五条が答え。虎杖達3人は高専を後にしたのだった。

 

 

 

「あと10分程度で交番に着くよ。」

 

特に詮索をしてこない夏油さんには感謝しかない。隣にいる五条先生とは大違いだ。明らかに異端者とでも言いたいように、こちらをじっくりとみてくる。

そんな睨まんでよー、五条先生。美人が台無しよ、、?

やはり迷子作戦はむりがあったか

 

「ありがと。夏油さん」

 

「ふふ。気なしなくていいんだよ。小さな子供を守るのも私たちの役目だからね」

 

夏油はふわりと万人受けする笑みを浮かべた。

本当にいい人だ。

目指すは、師堕ちさせないこと。そして羂索に体を取られないことだな。夏油さんの話は五条先生から聞いたことは無い。この問題では2回目のアドバンテージじゃ足りないだろう。

これも要チェックだな。

 

「歩き疲れただろ?公園でもよらないかい?ジュース奢るよ」

 

「え、えっと。」

 

 

カシュッ

 

「はいどうぞ」

 

「、、、ありがと」

 

素直に受け取ったら五条さんと夏油さんにちょっと驚かれた。なんでだよ!夏油さんが奢ってくれたんじゃん、、!

 

それでもスマートだ。モテるだろうな夏油さん。五条先生とはまた違ったイケメンだし。

肝心の五条先生はというと

 

「傑!!俺には奢ってくんねぇーのかよ!!」

 

と一人叫んでいた

 

 

 

公園のベンチに手招きされ大人しく座る。

イチョウと椛が綺麗に彩っている。

 

「、、、五条さんと夏油さんは仲がいいんだね」

 

懐を探るわけではなく素直に思ったことを口にした。

 

「当たり前だろ?俺と傑は二人で最強なんだからなんだから」

 

「プリキュアかい?」

 

「黙れ」 

 

あの五条悟が"二人で"最強と言っている。

あの五条悟が!

 

五条先生は一人で最強だ。五条悟に並べるものなどいなくて、みんな後ろをついていくだけ。正直五条悟一人でも呪術界は回ってしまうと思ったほどだ。

 

仮に五条悟と同等の力を持つものとしたら、

特級呪霊 両面宿儺だろうか。この両者はぶつかることなく、俺が指を20本飲み込んだことで終わってしまった。どちらが強いかなんて見当もつかない。結局五条悟はいつまで経っても孤独のままだった。

 

「、、、"高専"で出会ったの?それとも幼なじみとか?」

 

「"高専"でだな」

 

「相性がすごくいいんだね。」

 

「ふふ。私も初めて会った時はこんなに悟と仲良くなれるとは思わなかったな。」

 

「あ"なんでだよ?」

 

わかる。今の先生クソガキ感半端ない。

 

「だって初対面の時、悟めっちゃクソガキだったよ?」

 

思ったことをそのまま言われつい吹き出してしまった。

 

「あ"?何笑ってんだよ、クソガキ」

 

「いや、ごめん笑うつもりなくて」

 

そうだ。この五条悟は良くも悪くも高校生なのだ。大人の五条悟になるには夏油傑が関係してるのは間違いないと思う。

 

「いや。初対面はクソだったけど、考えられないくらい仲良くなれたなっていうことだよ。そんな送ることじゃないだろ?ましては悠仁くんに。」

 

一呼吸置いて、また口を開いた

 

「、、誰だって初めは仲良くなれないと思う人がいると思うけど決して蔑ろにしちゃいけない。人生何があるかわかんないもんだからね。人生の先輩からのアドバイス」

 

人生何があるかわからない、か。

 

「、、、もし、もしもの事だよ?夏油さんと五条さんが離れるとしたらどんな時だと思う?」

 

「俺と?傑が?なんで?」

 

「こんなに仲良いなら離れることなんてないと思うけど、でも人間関係って何があるかわかんないじゃん。、、、どうしてあんなことになっちゃったのかなって」 

 

「お友達と喧嘩でもしたのかい?」

 

「、、、」

 

「何かあった時は仲直りすればいいだけだろ?

お前も相手も、思ってること全部いって仲直り!」

 

簡単に言ってくれる。呪術師という職業についているなら尚更それが難しいことか、わかるだろうに。夏油傑に対して絶対的な信頼があるのだろう。

なんだか嬉しくなってしまった。

 

「アハハ」

 

「交番まで急ごうか。お母さん心配してるんじゃない?」

 

差し出された大きな手を繋ぎ、もう一度歩き出したのだった。

 

 

(夏油side)

 

少年を見送ってから悟に向き直る。

 

「悟。君はどう思う?」

 

「あのガキについて?」

 

虎杖悠仁くん。悪い子に見えたわけではないが

 

「、、、ああ。この呪術高専には天元様の結界があるのは知ってるだろ?普通の人ならまず辿り着けないのだよ。結界に認識を物理的に誤らせ、迷い込ませる作用があって、非術師や敵対する呪詛師・呪霊からこの場所を隠しているんだ。それなのにどうして悠二君は、、、」

 

そう。彼自身が非術師であれば、辿り着くことなど到底不可能だ。かなりの山道であるし、近くのコンビニ行くまでにも30分以上かかってしまう。呪詛師から命令されたお目付け役だろうか。それともまた別の。

 

「少なくとも呪術師ではないことは確定だな。ジュース渡す時呪霊近づけてただろ?そん時になんの反応もなかったし。通り道にいた呪霊も気にした様子はなかったしな」

 

「本当に偶然なのだろうか」

 

「こっちの世界に入ってんのは本当かもな。高校じゃなくて、高専って言ってたし。俺たちが呪専にいる生徒だってわかった上で接してんだろ」

 

「悟から見てどうおもう?」

 

「うーん、そうだな。悪い奴ではないのは確かだと思うけど、ま、大丈夫じゃね?俺たち"最強"だし!」

 

こんな簡単に済ませていい問題なのは確かだ。本来なら担任に即報告ものなのだが、最強と言う言葉に私もつい浮かれてしまったようだ。

 

「、、、そうだね、私たちは"最強”なんだ」

 

 

3

 

家に帰ってから羂索に明らかに警戒されているのが分かる。

どこに行ってたの?

なにか危険なことしてない?など一見心配してそうに見える発言だが声音や視線に圧力を感じる。

元々放任主義で前世含めあまり関わりがなかった分、不安が煽られる。

近いうちに宿儺の指を呑まされるかもしれない。夏油傑の体も見つけていないし、肝心の宿儺の器をまだ産んだばかりではあるが、用心するに越したことはない。

 

近いうちに家を出よう

 

 

家出をするにあたって問題は二つある。一つはお金だ。家事や自炊は前世の経験でなんとかなるがお金はそうはいかない。お金を得るためにも職業が大事だ。もう一つは、羂索のことだ。たとえ前世での経験があったとしても、20年程度の人生経験しかない。しかし、相手は千年以上の化け物だ。

 

呪力の気配も感じないため、いつ攻撃を仕掛けられでもおかしく無い。少しでも違和感を持たれたら終わりだ。すでに違和感を持たれているだろうから、これ以上の接触は避けたいのだ。

 

今世も変わらず呪術師の道を選ぶことにする。今はもう誰も頼れる人がいない。自分が自分を守れるようにならなければならない。そのためにも、宿儺の指をもう一度飲み込む。

 

 

高専に行く前に通っていた仙台の高校に来た。グラウンドには野球部がいて、活気に溢れた声で練習に励んでいる。練習風景を横目に流し目的の場所へ急いだ。

目の前にあるは百葉箱。あの日この場所から運命が目まぐるしく回ったのである。扉を開けると中に小さな箱が。箱を取り出す。

家に持ち帰る訳にもいかないので山に入ることにした。

 

「相変わらず禍々しいなぁ、おい」

 

蓋を開け封印が施された指を見る。呪力がなくてもわかる異物感。深く考えると飲み込むために作った勇気がなくなってしまうので、すぐに取り掛かる。

切れ目を探し指で引っ掻くが中々取れない。封印されているものがそう簡単に取れたら大問題なのだが。

まだあの時の10年以上も前だ。取れるだろうか?

 

 

かれこれ1時間ほど格闘しているがこれがまた取れない。切れ目があるのはわかる。そこから次のステップに入るのが難しいのだ。引っ掻いても引っ張っても、投げても、蹴っても一向に変化がない。どうしたものか。

 

ガサッ

 

今回は諦めるべきか?また百葉箱に置くのはダメだろう。この森に捨ててもここが呪霊の巣窟になってしまう。

 

ガサガサ

 

固いけどもうちょい粘ろう。またカリカリカリカリやったらとっかかりができた。一気にべりっとめくる。これはいける!

 

____バクッ

 

食われる寸前に化け物の姿が見えた。

非呪術師は本来呪霊の姿は見えないけど死に際は別。

どこかで聞いたうろ覚えの知識が頭に浮かんだ瞬間、高くジャンプして木に登る。

高い身体能力が己を守ってくれたようだ。

 

「ヒエ〜〜、まだ食ってねぇよ、、」

 

襲いかかる化け物に足場が揺れ。木が倒れそうになり慌てて別の木に移る。避けて飛んでを繰り返し、かすり傷を作る。

そう簡単には逃げられるものではないのだ。呪霊の数は五匹程度。やれるだろうか

 

目の前に現れた攻撃を体を逸らしてよけ、地面に降りる。木が不自然に折れ曲がれ、耳に痛みが走る。体を捻ったせいか背中も少し痛い。

 

次の攻撃に構え、下半身に重心を置く

 

「流石に特急は居ねぇけど、この数は、、、ハハ。やるしかねぇよな」

 

呪力はないためひたすら逃げる。呪霊を連れて住宅街に行けるわけが無いので、ひたすら山の中でだ。早く取れろよ、封印!食べる前に死ぬわ!

 

指で引っ掻くが取れる気配は、、、ない。

 

クソッ!クソッッ!クソッッ!!

こんなところで!!

 

「死ぬ訳には行かねぇんだわ!!」

 

次の枝に飛び移ろうと足を深く曲げる。手を振るい勢いをつけ、着地しようとした瞬間だった。

 

_________ぱくりと開いた大きな口。

 

あぁ。あっけないものだなぁ

 

 

間一髪で宿儺の指の封印がとけた。

死に物狂いで飲み込み。

 

視界は黒一色に染まる

 

 

 

気がつくと辺り一面赤い風景に変わっていた。

喉の違和感ががあるのを感じ、体が小さいと飲み込むのきついよなと一人納得した。

 

「ここは?宿儺の生得領域?」

 

「気味が悪いな小僧。やけに落ち着いている。」

 

聞き馴染みのある声の主は、やはり呪いの王だ。

 

「いや、まぁ。慣れてますから。んな事よりあの後どうなったんだよ。」

 

「心配せずどもあの雑魚など皆

まとめて殺してやったわ。ケヒッ。」

 

「、、、人、殺してないよな?」

 

「貴様の図体は体力がないから、嬲った後は寝ている」

 

「そっか、、、」

 

ほっと胸を撫で下ろす。よかった。

 

「2度目の人生とはご苦労なものだ。」

 

「お、おま!?どういうことだよ!!」

 

「うるさいわ」

 

眉をひそめ1呼吸置いた後話し出す。

 

「肉体の記憶はある程度読める。貴様が寝こけている間に見させてもらった」

 

「はぁ」

 

「つまらんな。もっと恐れおののけ」

 

「お前は俺に協力してくれるの?」

 

「ハッ俺が貴様に?笑わせてくれる」

 

「だろうな、1回死んだからあの縛りも消えてることだし。お前は特に害はないからそのままでいいか、早く戻してくれ」

 

「チッ死ね」

 

ピシッ

 

*

 

目が覚める。辺りはすっかり暗くなり周りの木は薙ぎ倒され酷い惨状だ。警察のサイレンが聞こえる。

 

「やっべぇ。にーげよっと」

 

それにしても

 

「最後殺す必要なかっただろーー!」

 

 

 

4

 

俺は今東京にいる。本格的に呪術師となるために。生活を保障させるためにも呪術師になることは最優先。早い段階でなるに越したことはないのだ。しかし今は5歳児、相手をしてくれるはずはない。しかし、例外はいる。お金さえ渡せば何でもやってくれる守銭奴が。

 

 

高専に行く道で電話している女の姿が見えた。

一人でいる。好都合だ。

記憶にある風貌とはまた違い、前髪を二つに分けたポニーテールだ。電話している最中に話しかけるのは失礼だと思い。終わるまで傍にそっと身を潜めた。電話が終わりに話しかけようした時。

 

「そこ、着いてきているのには気づいているよ。私に何か用かい?」

 

結構な距離離れてるはずが、気づかれたようだ。呪力も隠していたから周りのカラスを使ったか?

特に隠れる必要もなかったのでそのまま顔を出す。

 

「初めまして冥冥さん」

 

「おや、随分とかわいらしいお客さんじゃないか」

 

「アハハ。口が上手いね。今日は冥冥さんに頼みたいことがあってここに来たんだよ」

 

値踏みするようにじっと俺を見つめ口を開く 

 

「、、、聞くだけ聞こうじゃないか」

 

「ありがとう。と言ってもそんなハードなこと頼む訳じゃないよ?そう疑わないで。」

 

「、、、」

 

警戒されてしまったようだ。

 

「呪術師になりたいんだ。見ての通り5歳児。誰も相手してくれなくてさ。でも貴方は違うだろ?お金は払うよ。協力してくれない?」

 

肩を竦め苦笑する冥冥が目に入る

 

「、、、フフ。こんな小さな子から取引を持ちかけられるなんて、人生何があるかわかったもんじゃないね。」

 

「さっきも言った通り俺は呪術師になりたいんだ。理由は話せない。ごめん。」

 

「構わないよ。私は金の味方だからね。君がそれ相応の対価を払うというのならばこちらから求めることはないさ。さて、お代はいくらにしようか。日本人らしくお気持ちでどうぞ?」

 

無言でカバンを置き。中身を見た冥冥が目を見開く。

 

「、、、フフフ。ハハハハハッ。

あぁー、面白いね君。こんなに笑ったのは久しぶりだよ」

 

「これでも足りない?」

 

「いいや、十分すぎるくらいだ。ちなみにこれはどうやって?」

 

「金さえ払えば仕事してくれるんでしょ?」

 

「フフフ。聞かないでおくよ」

 

「そうして貰えると俺も助かる」

 

上機嫌な冥冥さんが少し屈み目線を合わせ口を開た

 

「金の亡者の私からアドバイスをあげよう。商いの場では決して自分の立場を低くするような発言は控えた方がいい。ごめんと謝るなんてもってのほか。腰を低くしている相手に付け上がる大人なんてゴロゴロといる。気をつけたまえよ。そして賢く生きたまえ、少年。しかし私はその意地らしさにやられてしまったよ、フフフ」

 

「、、、そりゃどうも」

 

「私のアドバイスは君の色眼鏡には合わなかったようだ。若者を見ると無性に話したくなってしまってね。つまらなかったかい?」

 

「いいや、いいアドバイスだったよ」

 

「君名前は?」

 

「虎杖悠仁、よろしく」

 

「よろしく、虎杖君。その名前で登録させてもらってももいいかい?」

 

「えっ?偽名でもいいものなの?」

 

「私の冥冥という名だって立派な偽名じゃないか」

 

「確かに、、」

 

夏油達に会った手前本名はまずい。偽名を考えておくべきか。

 

「そう悩むものでも無いよ。適当でいいのさ」

 

「じゃあ、仁(じん)でお願い」

 

「わかった階級は四級からで大丈夫かい?」

 

「うん、じゃ、それでよろしく」

 

高専に近いところで長居はしたくない。必要な手続きを終えた後そのまま解散した。カラスをつけていたのに気づいたので、威嚇がてら追い払ってやった。ようやく呪術師としての生活が始まる。生き残らなくては

 

余談だが、虎杖悠仁は未来からやってきたのだ。それにパチコン好きのギャンブラー。昔の宝くじの番号ぐらいそれとなく覚えているものだろう。

 

 

 

5

 

「次はここ行けばいいの?」

 

「はい。時間がかかると思うので報告書は明日出してもらっても大丈夫ですよ。」

 

「りよーかいっ」

 

呪術師となり1年が経過した。幼少期の成長とは素晴らしいもので、たった1年でも身長が随分と伸びた。幼い頃から呪術師をやっているせいか前回よりも動きがいい。

今日の任務は地方の病院に現れた"二級"相当の呪霊の討伐だ。

 

「じゃ、チャチャッとやっちゃいますか」

 

目の前にいる呪霊を"斬って"払う。

 

単独任務が許されていない階級の際は、他の呪術師と共に行動をしていた。子供扱いされるのは御免だ。歳のせいか邪魔者扱いをされ、階級上げに苦労している。こうして二級になれたのが嬉しい限りだ。

 

補助監督の元に戻り、全て終えたと報告すれば、早いですねと優しい笑顔で笑った。呪術界に滅多にいない優しい性格の青年。

手渡されたのは報告書とコーヒー牛乳。ぐいっと飲みきり心地よい甘さが口に広がった。

 

「お疲れ様です。結構な量でしたが大丈夫ですか?」

 

気遣いに感謝し大丈夫と伝え、チラリと報告書に目を向けた

 

「報告書ここで書いちゃっても大丈夫?」

 

「助かりますけど、疲れてませんか?」

 

青年を見ると目元に薄くクマがある。最近は特に呪霊が多いから補助監督も大変なのだろう

 

「お互い大変だよなー、呪霊が虫のようにわんさか出るし。それに比べて呪術師は慢性的な人手不足だしさー」

 

「ホントですね。呪術師の方なんて特に。補助監督は呪術師の方をサポートするためにあるのですから安心して休んでくださいね。その小さな体だと何かと困ることがあるでしょう。私共々頼ってくれて構いませんから」

 

「ありがとう。そう言ってもらうと助かるよ。でも補助監督といえど無理のし過ぎはやめなよ?倒れちゃうから」

 

「お気遣いありがとうございます」

 

本当に補助監督の人には助けられてきた今世でも前世でも、、、

 

ありがとう伊地知さん。また会えるかな?

伊地知に似た優しい青年を笑顔で見送った。

 

 

「仁(じん)さーん!お疲れ様でーす!」

 

以前よりもどっぷりと呪術界に染まり、他の呪術師との関係も少しづつ改善してきた。階級が上がったからなのか存在が認められたのか定かではないが、邪険にされることがなくなり過ごしやすい。

 

「そっちもお疲れ様。報告書ある?早めに書いておきたいんだよ」

 

元気よく挨拶をするのは、新人の補助監督だ。帳を下ろすのに時間がかかったり、ミスをよくやらかすが、真剣なのがよく伝わる良い子なのだ。呪術界に稀に見る光属性である。

何より俺が児童だからと偏見することがない。

 

「報告書ですねー。ちょっと待っててください!取り出します!」

 

カバンをゴソゴソ探し、青ざめた顔をし。ポケットも漁り出した。ポケットに報告書など入るはずがないのに。ジャケットを脱いだり、頭を触ったりとアワアワしているのが見える。

 

「え、えぇっと、、、」

 

「、、、忘れた?」

 

申し訳なさそうな顔をして、ひたすらすんません!すんません!と謝っている姿を温かい目で見つめておいた。

 

「忙しいわけじゃないから大丈夫。忘れないうちに書いておきたいから着いて行っても良い?」

 

「大丈夫です、、。ほんとすんません。車乗ってください」

 

「ふふっ」

 

しょぼしょぼする姿がなんだが面白くてつい吹き出してしまった。補助監督は「、、、すんません」と顔を赤くしていたので大丈夫大丈夫と言い、車に乗り込んだ。

 

 

 

 

この補助監督は高専所属だと言う。上層部に直接雇われているという立場なのに公平に接っしてくる。良くも悪くも呪術界に染まりきっていないようだ。

 

「すんません、俺まだ補助監督になったばっかで。仁さんのほうがお若いはずなのに全然力になれんくて」

 

「年が若くても年老いてたとしても結局は経験値の差だよ。俺は今年でもう2年はこの呪術界に入ってんの。だから慣れみたいなもん」

 

「ほんとです?俺帳も満足に下せないんすけど」

 

「そのうち慣れるよ。新人の時にたくさん迷惑かけとこ。3年も立つと指摘もしてもらえなくなるよ」

 

「そうですよね、言われてるうちが花っすよねー」

 

素直でいい人だ、好感が持てる。

 

「でも良いじゃん。ベテランとかお偉いさんとか、俺のこと差別してくる人ばっかだよ?

こんなガキに何ができるんだっ!っとか。少なくともあんたはそう言うことしないじゃん。そう言うの尊敬できる」

 

「えっ!そんなの人として当たり前じゃないですか!変なこと言いますね」

 

「それが呪術界なんだよ、、、。はぁ、そのままでいてくれると助かるよ」

 

「、、、よくわかんないすけど、任せてください!」

 

後ろを向きガッツポーズで、綺麗な笑顔を見せる。しかしハンドルももたずにガッツポーズとはなかなかにあぶない

 

「前!前ちゃんとみて!」

 

「すんません!すんません!」

 

電信棒に当たりそうになり悲鳴を上げた。

これについては流石に、呪霊よりタチ悪いわ!とキレてしまった

 

 

「これが報告書っすねー」

 

「ん、ありがとう」

 

あれから会話より安全運転を心がけよと叱り。なんとか目的地に辿り着いた。返事がアイアイサーなのは腑に落ちない。

手渡された報告書の記入をささっと終わらしサインをした。再度確認してから紙を手渡す。

 

「ありがとうございまーす」

 

報告書にハンコを押し、こちらにグッドサインを向けてファイルに入れた。

もう一度スマイルを作りこちらに向き直る

 

「これからラーメン食いに行きません?ミスしちまったし、俺奢るっすよー」

 

思ってもない提案だったが特に断るわけでもなく二つ返事でOKしたのだった。

 

 

「ここが行きつけのラーメン屋っす。うまいんですよー」

 

店員さんがお辞儀をしてカウンターに案内された。醤油豚骨二つで!という元気な声を耳にしてテンションが上がってしまった。

 

「仁さんはなんで呪術師になったんすかー?」

 

児童の俺にその質問とは、かなりデリケートな部類だが悪意はなさそうなので素直に答える

 

「生活を安定させるためかな。訳あって家族に頼れない状況でさ。自分で生きていくためにはある程度金が必要だろ?この歳で生きていくとしたら呪術師だけだったっつー話だよ」

 

「へー、大変っすね」

 

運ばれてきたラーメンの湯気の向こうで、彼はしみじみと呟いた。目の前の熱いどんぶりを見つめながら、俺も問いかける。

 

「そう言うお前はなんで?」

 

「えっとすね。実家が呪術家系なんすよ。由緒正しきといえば聞こえはいいっすけど、結局は外面よくしたいだけで、、残念ながら俺は呪術師の才能はなかったみたいで、一族の恥だとかなんだとか。それこそ差別されてた側で、、、

なんとか補助監督としてこの業界に残らせてはもらってますがまだペーペーでして、ハハ」

 

「、、、」

 

「すんません、暗い話で。せっかくのラーメンす のに。」

 

「、、、いやいいよ、お前も苦労してんだな」

 

「全然そんな、星漿体様じゃありませんし」

 

「星漿体?」

 

「知らないっすか?天元様と同化する星漿体っす。結構有名な話っすけど」

 

「いや、全く、、」

 

せいしょーたい?については聞いたことがない

 

「ふふん、じゃあラーメンついでにお話しさせてもらいましょうか!仁さんは特別っすよ!」

 

「はぁ」

 

「、、、聞きたくないんすか?」

 

「わー。うれしー」

 

「棒じゃないっすか!」

 

「ま、いいや。天元様っつー、呪術界の守護神みたいな人がいて、その人はなななんと!千年以上生きてんすよー!不老不死の術式を持つらしいっす!どんぐらいすごいかって言うともう世界の大黒柱っつーかー!とにかくすんごい人なんす」

 

ノリよくツッコミをして、自慢げに話している。得意げになるのはわかるが天元様とは面識もあるので

「うん」

この返事に尽きる。ちょっと不満そうな顔をされたが、また大きく口を開いた

 

「そんでー、星漿体さまってゆーのがですよ!不老不死をリセットして暴走を防ぐためにあるんす!500年に一度天元様とどうかできる特別な人間が生まれるんすよ。それが星漿体様っつー話っすよー!」

 

そこまで話すと一度しゅんとして肩を窄めた

 

「、、、でも、それって死ぬために生きてるみたいなもんじゃないすか。それに比べたら俺なんてまだ可愛いものっすよ。みんなのために死ねって言われても俺なら嫌って言っちまいますから。それが俺よりも年下の子で、なんなら今年同化するっつー話っすけど。嫌っすよね、、、」

 

「、、、そうだな、嫌な生き方だよな、、、」

 

素直に共感する。死ぬために生きるだなんて、そんな人生あっちゃいけない。幸せになるために人は生まれるのだ。

自分の人生を客観視しているみたいで心が痛い。俺は間違っていただろうか?

 

「、、、てか今年同化するとか、結構重要そうな話しなんだけどどこで知ったんだよ」

 

「談話室でお偉いさんが話してて、扉からコッソリ」

 

「本当に消されるぞ」

 

「聞くつもりはなかったんす」

 

一度止めてから、キリッと顔を作り

 

「扉の向こうで勝手に話してたんす」

 

「言い訳になってねぇよ」

 

つい突っ込んでしまった。

 

 

 

ポンコツ補助監督と別れ、家に帰る途中

 

「あれ?悠仁くん?久しぶりだね」

 

声をかけられた

 

「えっ!夏油さん?」

 

任務後なのか、髪はおろし服装は緩い格好をしていた。右手にはビニール袋をぶら下げている

 

「ふふ、ついアイスが食べたくなってしまって、コンビニでちょっとね」

 

にっこりと笑い、袋の中からパピコをを一つ取り出し封を開けた

中から取り出された二つのセットを半分に割る

 

「一緒に食べよう?」

 

そのうちの半分を手渡され、ありがとうと言い受け取った

 

「悠仁くんは今小学生?」

 

「う、うん!そうだよー」

 

呪術師をしていて、学校に通ってません!

と馬鹿正直に言えるわけないので嘘をつく

 

「小学校では今何やってるの?」

 

「ど、ドッジボールが流行ってるかなー」

 

苦しまげれにドッジボールを捻り出した

小学生の定番の遊びなので納得してくれるだろう。

次はこちらからの攻撃だ!

 

「そういう、夏油さんはどうなの?どんなこと学校でしているか気になる!」

 

呪霊を祓ってるだなんて言えないだろう。どう言い訳するのかきになり、少しワクワクしてしまう

 

「ふふ、また今度ね」

 

ずるい大人だ、、、

 

頭上に四級程度の呪霊がいるのに気がづく。

対して害があるわけではないし、夏油さんがいるので無視をすることにする。

夏油さんもその呪霊に気づいたらしくパピコを口で頬張りながら上を見上げていた。俺が近くにいるのだし、同じく祓うことなどないと思う。

 

しかし意外なことに、腕を伸ばす動作で呪霊を祓ったのだ。

 

おそらくその姿を見てからなのだろう。夏油さんと仲良くなりたいと思ったは。

 

無意識なのか、意識的なのか会話をするために無難な質問を入れた

 

「夏油さんって好きな食べ物ってなに?」

 

「お見合いみたいな質問するね、悠仁くん」

 

「茶化さんでよ」

 

意地悪な夏油さんに少し剥れる。夏油さんは嬉しそうに笑う

 

「ふふ、ごめんね。私はそばが好きだよ」

 

「蕎麦かー。確かにそんな感じするかも。夏油さんって中華とかイタリアンよりも日本食が一番似合うイメージあるかも」

 

「そういう虎杖くんはお肉とか好きなんじゃない?」

 

「肉はもちろん好きだよ。他には丼ものとか麺類とかも好きだよ!」

 

「結構幅広いね、そばも好きかい?」

 

「好き!天ぷら蕎麦うまいんだよねー!」

 

「おっとっと、私はざる蕎麦派の人間なのだよ、これは争わなくてはならないね」

 

おっとっと、、、!

 

「じゃあ俺は、天ぷら蕎麦の代表としてその勝負、かったー!」

 

ノリが合いつい長話をしてしまう。

好きなゲームの話になったり、小学校の頃好きだったことなど、夏油さんと会話を心から楽しんだ。

楽しい時間も短いもので、時刻を確認すると子供は家に帰る時間になっていた。

 

「早く帰りなよ、ご両親が心配するだろう」

 

「、、、うん、またね」

 

 

この日をきっかけに夏油さんとは任務終わりにたまに会うような関係になった

 

 

 

6

 

高専の結界に手をあて口を開く 

 

「天元様、開ーけーて?」

 

抵抗がなくなり、前に進めるようになった。あっけなく通れた高専の門を静かに眺める。

 

門をくぐると、懐かしい景色が目に映った。

和風建築の校舎、広いグランド、高専の寮。

ひどく懐かしい。

周りを見渡していると。遠くに誰の気配がした。咄嗟に身をかがめ物陰からコッソリ覗く。

 

学生時代のナナミンだ。

以前とは違い、眼鏡は着けず、スーツは学ランに、髪はオールバックから七三分けになっている。十年も前だとわかっているが、びっくりしてしまう。体にギズあとも何も無い。綺麗な姿でたっていた。

 

ぼーっとしていると駆け足が聞こえてきた

 

「ごめーん。七海、自販機のジュースが中々取れなくて。」

 

黒髪のエネルギッシュな好青年だ

仲が良いのか七海の雰囲気も心なしか柔らかくなっている

 

「構いませんよ。行きましょう。灰原」

 

「うん!てかさ昨日の番組見た?あのお笑い芸人めっちゃ面白くなかった?」

 

「すみません。お笑いはあまり好きではなくて。代わりに聞かせてくれますか?」

 

「もちろん!」

 

遊びに行くのか任務に行くのか、目的はわからないが高専の門を通って行った。

 

「、、、ナナミンってあんな顔できるんだ。」

 

、、、生徒に見つかっては困る。ひとまず天元様の元へ急ごう。

 

 

 

 

「初めまして、そういうべきかな。宿儺の器よ」

 

場面は変わり、ここは高専の地下深く。薨星宮である。以前、天元様が羂索に利用されたのを見るに同化は失敗したと言って良いだろう。簡単に会える相手ではないがなんせ情報が少なすぎる。星漿体には悪いが同化は成功させなくてはならない。

 

「早速だけど天元様。色々聞きたいことがあるんだ」

 

「、、、聞こう」

 

「まずは俺が逆行してることには気づいてるんだよね?何か知ってることはある?」

 

「分からぬことの方が多い。、、、だが、意図されたものでないと断言出来る。時間への干渉は禁忌だ。人の領域ではない」

 

「、、、天元様は記憶はあるの?一回目の」

 

「無い」

 

「俺以外に似たような人がいる可能性は?」

 

「ゼロに等しいだろう」

 

「なるほどね。」

 

「聞きたいことはそれだけか?」

 

「あ!そうだ、忘れてた。星漿体のことについて聞きたいんだ。協力するから、お願い」

 

「、、、星漿体の対象の人物の名は天内理子。

不死の術式を持つ私と同化して、初期化を担う体質を持った少女だ。

その特別な体質から、「Q」や「盤星教」に命を狙われている。

同化当日まで彼女を護衛する任務にあたるのが呪術高専2年の五条悟と夏油傑である。」

 

天内理子、ねぇ、、、

 

「、、、五条さんと夏油さんね。この二人だったら失敗しなさそうだけど、どうのなの?実際」

 

「盤星教の者が伏黒甚爾に星漿体の暗殺を命じた。伏黒甚爾は術式や呪力を一切持たぬことを引き換えに、強靭な身体能力を持つ天与呪縛だ。私の結界は、呪力を持たぬ伏黒甚爾に効くことはない」

 

つまり、高専内でということか

 

「五条悟や夏油傑に伝えるべきだが、情報が行かない。恐らく上層部が絡んでいる。」

 

なるほど、羂索と繋がってるのなると厄介だな

 

「そして、お前の母親もとい羂索についても。彼奴は手強い。あれは止めねばならぬ存在だ。だが理解ができぬわけではない。理解はできるが絶対に許してはならないのだ。

、、、お前は母親を殺せるか?」

 

「、、、殺すよ。そのために、止めるために来たんだ。」

 

天元の目をじっと見て背を向ける。

 

「健闘を祈る、宿儺の器よ」

 

 

 

7

 

「あれが星漿体の女か、中学のガキかよ」

 

いつものターゲットはドブ野郎とクソ野郎しかいないためゲンナリしてしまう。いつもの仕事は殺しがいがあるやつばっかだが、見るからに善人オーラーを漂わせるのがわかり、やる気が無くなっていくのを感じる。

 

「まー頭金は貰っちまってるし、恨むなら天元様と自分の運命を恨めよ」

 

高専の近くに潜伏するは禪院家の落ちこぼれの伏黒甚爾。高専に向かう4人の影をじっとみつめて標的を見定める。

星漿体の天内理子。付き人の黒井美里。護衛の夏油傑に五条家の坊、"五条悟"

 

狙うは五条悟が無限を解く時。

 

「もうちっと近くによるか」

 

「こんにちは、お兄さん。そんなにあの子たちのこと見つめちゃってどうするの?」

 

「あ"?」

 

なんだ?此奴。気配がしなかった。それに、小学生じゃねぇか。あまりの異質さに少し身を引いたが、冷静に考えたら同業者だと気づき力を抜いた

 

「星漿体のガキを殺しに来たんだわ。テメェも同じだろ?」

 

1拍置いてからガキは話し出す

 

「いや、俺は天内理子を同化をさせる為にここに来たんだ」

 

そう言い切り、伏黒甚爾が戦闘態勢に入る前に術式を放った

 

「"解"」

 

「、、は?」

 

間一髪で避け、後ろを振り向く。視界に移るのは木や地面がえぐれた姿だ。

考えるている暇などない。身の前のガキは次の攻撃の構えを取っている。

 

「赤血操術_______穿血」

 

音速を超えるスピード

これは、、避けられない、、

 

「グッ、、!」

 

肩を血液が貫いた。

 

「、、チッ、クソガキが」

 

 

 

 

今ので仕留めたはずなのによく避けたな

穿血が肩に当たるだけで済ませた伏黒甚爾に、思わず感心してしまう。

さて、次の攻撃は

 

 

________目の前に現れたナイフ。

      頬を掠めて避ける。

 

「考え事とは随分と余裕じゃねぇか。ぶっ殺してやる」

 

相手もなかなかの手練。油断出来ない。

もう一度解を

 

「と、言いてえとこだが。俺の任務は星漿体の殺害だ。ガキに構ってる暇はねぇんだよ。」

 

そう言い残した伏黒甚爾は高専に向かって走り出す。

 

「待て!!」

 

「待ってって言われて待つバカがどこにいんだよ」

 

五条悟が高専結界の中に入る

かなりリラックスした状態だ。確実に油断している

 

「赤血操術・穿血!!」

 

見きったように最小限の動きで避けられ、放った攻撃は木に当たる。

 

目の前の木が倒れたことで、反応が遅れてしまった。

 

____ドン

 

痛みは木が倒れたと同時にやってきた。

脇腹を刺されたのだ

 

「オイオイ、油断してんじゃねーよ。詰まんねぇな」

 

臓器には当たっていない。

この男の技量が低いわけない。わざとなのだ。

 

「穿血!!」

 

せめて隙が欲しい思いで穿血をもう一度繰り出す

 

「同じ技を何度も喰らうわけねぇーだろうが、クソガキ」

 

繰り出したはずの血液は操ることができず、地面に落ちていった

 

術式の強制解除

 

________天の逆鉾

 

まずい完全に予想外だった。

天の逆鉾を持っているだなんて。

“前回”は五条悟が破壊したため、今回もそうだと、、、

 

仕方ない。体に負荷がかかるのも承知で解をを放とう

 

「解____」

「だから、同じ技が何度も聞くわけねぇつってんだろ」

 

顎を殴られ、膝をつく

 

これはまずい

 

 

あれから数分経った頃だろうか。

顎を殴られてから記憶がない。短いスパンで解を打ったからか体が妙に怠い。ボヤけた視界が元に戻るのを感じてからまた動き出す。

 

星漿体の同化をするために行くんだ、場所は薨星宮だろう。屋根の上に上り全力で走りぬけた

 

 

ふと前の光景を見て足を止めてしまった。

30近くの呪霊の姿。

よりにもよって全員2級以上

 

「、、、クソッ!ほんと最悪だよ!あのオッサン、、、!」

 

実践経験とはこういうところに使われるのか。とんでもない置き土産を残して行きやがった。よく見たら辺り一面に撒菱も置かれていやがる、忍者かよ

 

「、、、ハァ。、、、"解"」

 

音もなく呪霊が崩れた

 

_______________グラリ

 

 

視界が歪み、足元が揺れる

 

、、、頭いてぇ。クソ。何でこうも上手くいかねぇんだ、、、

 

フラフラと覚束無い足取りで歩き出す。

 

いそ、がねーと。夏油さんと天内理子が、、

 

鼻血を拭き取り再度前を向き、走り出した。

 

 

 

 

 

 

俺が薨星宮に着いた頃には、すでに頭を撃たれた天内理子と気絶した夏油傑がいた。

疲労感がすごくてふらつきながらも天内理子の首元を触った。

 

________脈が動いていない。

 

しかしまだ暖かい。脳はは死んでいないのだ。

ほんの僅かだか細胞が生きている。

 

まだ間に合う

 

呪力を最大にして、反転術式を回す

頭が焼き切れるような感覚がするが、無視をして治療を続ける。

 

ダラリと鼻血が出た。

グラリと視界が揺れた。

手足が痙攣するのを感じた。

それでも反転術式を回し続けた。

 

 

_________スゥ、ハァ。

 

息がふきかえった。

呼吸が安定したのを確認したら今度こそ動けなくなってしまう。

 

「、、、天元様、後はよろしく」

 

「、、、よくぞ間に合わせた」

 

 

世界の境界線が歪んでゆっくりと闇に沈んでいった

 

 

(夏油side)

 

目が覚めた頃、私は悟を探しに行った。つけられた傷を無視し、引きずるようにして歩く。

壁にもたれかかり、小休憩を挟もうとすると後ろから声を掛けられた。

 

「傑?天内は?」

 

「悟、良かった。無事だったん、、、さとる?」

 

いつもと雰囲気が異なる悟を前に少し違和感を感じてしまう

 

「どったよ傑?腹痛てぇーのか?」

 

「いや、なんでもない。それより、すまなかった。理子ちゃんを守ると約束したばかりなのに、守れなかった、、、すまない」

 

目を合わせることができずに頭を下げたまま悟が話すのを待つ。

 

「、、、傑で失敗したんだ。他の誰だって同じ結果になったに決まってる。天内のことは、忘れないように」

 

「その必要は無い」

 

 

目の前に現れたのは、私達が守ってきた少女、天内理子の姿だった。

 

 

「り、理子、ちゃん?」

 

「初めまして、夏油傑、五条悟。私の名は天元だ。同化は成功した。」

 

「どう、して?あの時確かに、目の前で撃たれたんだ、、、!」

 

「ある者が応援にきた。その者によって同化は成功した」

 

「ある者?」

 

「問うな」

 

「良かったじゃん傑。同化成功してて。これで結界も安定する」

 

「、、、あぁ。そう、だね、、、」

 

、、、悟それでいいのかい?理子ちゃんは大切な仲間だろう?

 

 

 

8

 

悟は最強になった。

反転術式を使えるようになり、常時無下限を使えるようになった。

、、、悟は一人で最強になったんだ。

 

「傑ー!飯くいに行こうぜ」

 

「、、、あぁ。行こうか」

 

二人で食べに行くのはファミリーレストラン。

実家の太い悟はこういった場所に来たことがないらしく、1年生の時に連れ行ったきり食事はファミレスに行くのが定番となった。

 

「俺はー、ステーキにする!傑は?」

 

「私はパスタにしようかな。」

 

「うっわ。女子かよ。男子高校生だろ?俺は男らしく肉ー!!」

 

「、、、ハハハ。最近胃もたれするようになってきて、肉は重たいかな」

 

「ジジィかよ!」

 

「アハハ、、、」

 

会話をするのがなんとなく苦痛で、任務の連絡が入ったと嘘をついた。液晶が暗いままのガラケーをじっと眺める。

 

しばらくすると運ばれてくるのは、ジェノベーゼパスタ。ステーキは人気商品なため、お昼時は少し遅れてしまう。悟の食事が来るまで待ってようと思ったが、悟がいいなーと目をキラキラさせていたので一口分けてやった。おいし〜もう一回!と言われ、もう一度口に放り込んでやった

 

バジルペーストに、ナッツが入っている。濃厚なジェノベーゼパスタ

 

、、、こんなに油の匂いキツかったっけ?

 

悟の料理が運ばれ、ステーキに夢中になっている。軽いものを選んだつもりだが口に入れるのを少し躊躇ってしまう。お腹を空かせているのは感じているのに。

 

生臭さを感じながら口に運んだ。

しつこいむせ返るような、蒸れた匂いが口いっぱいに広がる。

いやな顔を作ることはせず、自然な笑顔で語りかけた

 

「、、、美味しいね。悟は?」

 

「めっちゃ美味い!すげージューシー。肉汁が止まんないぜ!!」

 

悟がステーキに夢中になっている。

せっかく楽しんでくれているというのだから、

私が「まずい」と言うことは許されない

普段から呪霊玉を吸収しているのだ、この程度の味なんてどうということはない。残りのパスタを口の中に運び、飲み込む作業を繰り返してなんとか食べ終わる。

 

会計は悟がした。珍しく今日は俺が払うと言ってくれたから。

、、、何かあっただったろうか?

 

 

 

 

ゲーセンに行こうという悟の誘いに笑顔で了承し、2人で歩いていく。近道をしようと言われ人気の少ない道には行った。

そうすると悟の様子が急におかしなり、ソワソワし出す

 

「どうしたんだい?」

 

素直に思ったことを口にした。悟は私の顔見てそっぽを向いたかと思えば、もう一度私の顔を見る。意を決したのか言いずらそうにしながら口を開けた。

 

「、、、そのさ、傑は、なんか疲れてたりする?」

 

顔に出ていただろうか。気を使わせてしまった、申し訳ないことしたな。

悟の顔を見て笑顔を作って言葉を紡いだ

 

「任務続きでちょっと疲れてるだけだよ。気にしないでくれ。」

 

そう笑顔で言ったはずなのに悟は私の目を見ない。視線は下に落ちているが声音だけはやけに上機嫌だった

 

 

「だよなー!天下の傑ママも疲れちまうもんなー。夜蛾センに言っとくわ。もっと休み増やせー!って」

 

「ハハハ、ありがとう、、、」

 

気を使わせてしまっている、、、

なんとなく気まずい空気の中、

悟はゲーセンでぬいぐるみ三体は取るぞー!とか千円でいくら取れるか勝負しよーぜ!

とか空元気な声を出す

 

理子ちゃんの同化に成功したが第三者の協力がなければ確実に失敗していた。私が気を許したばかりに理子ちゃんが目の前で打たれ、目の前にいた悪人を始末することすらできなかった。

 

いいや、同化に成功したとか、失敗したとかこの際どうでもいいのだ。私は理子ちゃんの告白を聞いた。生きたいと、星漿体の彼女自身がそう言葉にしたんだ。それを蔑ろにして。

 

私は、彼女の尊厳を踏み躙ったのだ

 

あの時私がもっと上手く動けていたのなら、天元様の元に行くまで油断しなければ、ああはならなかっただろう。

 

最近の私はまるでダメだな、悟になんて追いつける日など来ると思えない。あの任務の後、悟は見違えるように強くなった。反転術式を使ってでの常時無下限の発動だと?馬鹿げている!そんなことできるはずない!!

追いつくどころか、追いかけることすら。

私は、、、!私は!!

 

「傑?」

 

悟の声でハッとする。また、気を使わせてしまった。私のせいで

 

「大丈夫か?傑?」

 

「、、、ああ、大丈夫。ちょっと夏バテかな。疲れてるだけだよ、、、」

 

流石に今回は誤魔化されないそうだ

真剣な顔をして私の目を見つめる

 

「、、、傑!あのさ、俺に何か____」

プルルルル

 

悟の携帯から通知音がなった。

 

「、、、出なよ。任務でしょ?」

 

渋々電話に出て話し出した。会話の内容を察するに任務というのはあたっているのだろう。

 

「、、、ワリィ傑。任務入っちまった。また、埋め合わせする、、、」

 

「、、、いいよ、気にしないで。任務なんだから仕方ないだろ?気をつけてね、、、」

 

「おう、、、」

 

後味が悪い

 

 

 

高専に帰る、帰り道。公園があった。

そこにいたのはピンク色の髪をした少年。

元気に半袖半ズボンを履いていた。

 

会えると思っていなかった知り合いにたまたま会ってしまったので、なんとなく目で追ってしまう。自然に気づいた少年が振り返りバッチリ目が合ってしまう。話す気にもなれないが失礼だと思い少年の元へ歩いた

 

「、、、やあ、久しぶり」

 

「うん、久しぶり」

 

手をひらひらと振り、歓迎のポーズを取られる

少年は年相応の笑顔を向けた。そのまま手招きをされたので大人しくベンチに座った

 

「最近会えなかったよねー。やっぱ忙しいの?高専って」

 

「少しね」

 

低い声が出た。隠さなくては

 

「どったの?元気ないけど」

 

「アハハ、ちょっとね」

 

我ながら下手くそな笑い方だと思う。少年はそんな私を許してくれる気はないようだ

 

「嫌なことでもあったの?」

 

まっすぐ見つめられ、そう尋ねてくるので思わずたじろいでしまう。

 

「う、うまくいかないことがあっただけだよ。そう言う時って、むしゃくしゃするだろ?」

 

責められている感覚がして、必死に無実を主張する。罪人になったような気分だ。

少年はとくに気にする様子はなくへーと相槌を打ち、その姿で私も脱力した

 

「そうだよねー。俺も最近うまくいってなくてさー」

 

おや、この少年にもこういった悩み方があるのか

 

「何かあったのかい?」

 

「聞いてくれる?」

 

ニヤリと笑顔を作られた

無言で頷く

 

「本当にくだらないことなんだけどね。朝出す予定の書類を家に置いてきちゃったり、砂糖入れようとしたら塩入れちゃったり、お風呂の栓をするのを忘れちゃったりってさ感じでね。

こう言うちっぽけな問題が積み重なってさ、最近忙しいし、ちょっと疲れてんだよねー」

 

青い空を眺め少年は続けた

 

「夏油さんはどう?こんなちっぽけなことでも、誰かに話すのが大事なんじゃない?それこそ見ず知らずの他人でも案外相談に乗ってくれるもんだよ。とくにこの公園のじいちゃん、ばあちゃんは優しいからオススメ!」

 

予想外な話の持って行き方が少し面白く、吹き出してしまった

 

「ふふ、参考程度に知っておこうか。頼ることはないと思うけどね。」

 

なんとなく私も、何か話したくなってしまい、気づけば口を開いていた

 

「、、、私も最近うまくいってないんだよね。それこそ悠仁くんが言ったみたいな小さいことばっかりさ。人に頼るほどでもないんだけどね」

 

そう言うと悠仁くんは嬉しそうな顔をした

 

「じゃあ!俺たちお揃いだね。

ちっぽけなお悩み仲間!そして、普段頑張ってる夏油さんにはこれを贈呈しよう」

 

手渡されたのは、ビンに入ったコーラだった

 

「普段は夏油さんが奢ってくれるでしょ?たがらこのジュースは俺からの日々のお礼ってことで!」

 

悠二くんは優しい笑顔だった

 

「人間誰だって辛いことなんてあるよ。悩みだって人に言う必要がないようなちっぽけなものかもしれない。でも悩む内容より悩んだ時間が俺は大切だと思うな」

 

そう言葉にされた

 

「、、、私はもういくよ、ありがとう。悠仁くん」

 

「うん!またねー!」

 

少し、心が暖かくなかった気がする

 

 

 

 

9

 

灰原が亡くなった。

葬式が終わり、自分の部屋に着くと力が抜け座り込んでしまった

 

「はぁー」

 

七海の声が頭に木霊する。

 

_____『もうあの人1人だけでいいじゃないですか』

 

、、、結構効いてしまったなぁ。

 

 

実際そうだろう。

今の私と悟では天と地ほどの差がある。

 

一般人とは違い呪霊が見え、そしてそれを払い取り込むことができる。悟に親友だとか、二人で最強だとか言われて、自分自身に酔ってしまっただけらしい

 

「私はもう、君の隣に並ぶことはできないんだな」

 

_______雨が降っている

 

テレビをつける。

面白味のないお笑い芸人の漫才。頭を空にして長い間ずっと眺めていた。

 

悟や硝子、後輩達にも繁忙期で会えない日が続いた。悟とは仲違いに近いものをして以来、会話らしい会話はができていない。したくないのではない、時間がないのだ。会えたとしても、おはようや、おやすみの二択になってしまう。その後はすぐ任務。流石に葬式があったので今日は貴重な休みなのだが、こんな日に悟と話ができるほど私は大人じゃない。

 

 

朝起きるのがしんどい。

明日も朝から晩まで任務だらけなのだろう。

ずっと休みも無いまま。仕事に出かける準備をした。

 

「すみません、少し遅れました」

 

任務があるのを知っていたため、前もってタイマーをかけておいたのだが、それすらすっぽかして寝坊してしまった。

急いで服を着替え、顔を洗い、ご飯を食べる時間はなかったのでそのまま走って現場に着いたのだ。

 

「夏油さん。忙しいのは分かりますけど、時間はきっちり守りましょうね。緊張感が足りてないんじゃないですか?特級呪術師なのでしょう?もっとしゃんとしてください。」

 

「、、、すみません」

 

この人の言うことは正しい。間違っていない

 

「行きましょうか。今日の任務は放置されていた廃病院に1級相当の呪霊が_______」

 

いつもならこんなミスしないのに、、、

 

 

 

「はい。お疲れ様でした。次の任務は心霊スポットで有名な_______________。」

 

、、、ぼーっとする

 

「_______?_______!___さ_!!夏油さん!?」

 

「あ、すみません、、、」

 

いけない、いけない。話を全く聞けていなかった。悟にちゃんと人の話を聞くよう叱るくせに、気が緩みすぎていた

 

「大丈夫ですか?休みます?」

 

不思議そうに見つめてくる補助監督にまた罪悪感が私を襲う

 

「、、、みんな忙しいのは一緒ですし私だけ休むだなんて。次は何処ですか?」

 

「本当です?はぁ、次の任務は__________」

 

 

 

 

寮に帰り布団に横たわる。

お風呂入らないと、汗かいたし、、、

 

「う"ぅ〜」

 

体が重くて動かない

 

、、、お風呂

 

 

、、、嘘だろ?あのまま寝てしまったのか?

 

髪や体にネチャネチャと不快感が走り、思わず眉を顰める

シャワーだけでも浴びよう

 

冷たい水を頭から被り、一度目が冴え、また鈍くなる。

 

そんな自分に嫌気がさし、重くなる頭を無理やり上げ、鏡を目の前にして訴えかける。

 

「ブレるな、、、!」

 

 

 

 

今日も任務が始まる。

 

「おはようございます」

 

「おはよう、夏油くん。そういえば聞いた?五条くんのこと!」

 

「え?、、、なんでしょう?」

 

「五条くんすごいのよー、ほんと!もう300体もの呪霊を祓ったらしいの。最近領域展開を習得したのをきっかけに躍起になって任務をやっているだとか。さすが現代最強なだけあるわね。キャーーー!!」

 

やっぱりもう、ダメなのかー。

 

「、、、、ふふふ、はははっ。ああー、すみません。悟はすごいなって思ったんです」

 

「次の任務は?」

 

「えっとね、次の任務はある村の任務なんだけど_______________」

 

 

 

10

 

星漿体の件から3ヶ月ほど経過した頃だろうか。虎杖悠仁は繁忙期により任務に身を削っていた。

 

後から知ったのだが、灰原雄は死亡し夏油傑は呪詛師に落ちたのだとか。

 

夏油傑とは、あの一件以来会っていない

 

止まっていたであろう歯車が強制力を持ち急速に回り始めたのを感じる。

 

特級呪術師が呪詛師に落ちたことで呪術界の噂話はそれで持ち切りになった。

 

繁忙期など言い訳だ。

俺がもっと踏み込めていたらと後悔するのも後の祭りだ。

 

五条は落ち込んでいたが、ある日を境に教師になることを目指したとかどうとか

 

「、、、多分夏油さんのおかげだよな。教師を目指したのって」

 

やるせない気持ちとは反比例して増えていく報奨金は俺のことを嘲笑っているかのように感じた。

 

「、、、次は、次こそちゃんとやらなきゃ。あんなにいい人が追い詰めるような世界なんてあっちゃいけない。努力する人が、それ相応に報われる世界に俺はしたいんだ。」

 

 

固い決意を結ぶ虎杖悠仁は今年で6歳になった。

 

 

夕方の公園。

ブランコが風で、きい、と鳴る。
子どもはいない。
少し寂れたベンチに、一人の男が座っていた。
背中が、少しだけ丸い。


「、、、久しぶりだね」

見知った姿に思わず声をかけてしまった。
ゆっくりと振り向く彼と目が合う。

「、、、久しぶり?
、、、!悠仁くん!!」

以前と変わりキッチリとまとめられた髪は下ろしてあった。長い髪であるが手入れが綺麗にされているのがわかる。痩せこけているわけでもクマがあるわけでもない、彼なりによくやっているのだろう。

「、、、覚えててくれて嬉しいよ、夏油さん」


「久しぶりだね。私も君に会えて嬉しいよ。
、、、学校は楽しいかい?」

今日は嘘をつく気にはなれなかった

「呪術師になったから、学校には行ってない」 

場の空気が一気に下がったのを肌で感じた。

「、、、私を捕まえて上層部にでも突き出す気かい?それとも今ここで殺すのかな?」

両手を挙げて戦う意思がないことを表明する

「どうしてか、聞いてもいい?」

「、、、何についてかな?」

「夏油さんについて」

「、、、おいで、ゆっくり話そうか」

彼のすぐ隣に手招きをされたので素直に従った

 

 

時計は午後五時を回る

 

「五条さんと夏油さんあんなに仲良かったのにさ、どうして?」

 

聞きたかった事を隠そうともせず素直にぶつける。すると、夏油さんは少し意外そうに目を見開いた。

 

「えっ、そっちなんだ、私が呪詛師になったとかじゃなくて」

 

「だ、だってスゲェー仲良かったじゃん!」

 

食い気味にそういうと1呼吸置いて口を開き

 

「、、、そうだね、私の人生の中でもトップレベルでの仲の良さだったと思うよ」

 

思いの外するりと言葉を紡がれ呆気にとられる。本当にそう思っているのか嘘であるかは定かではないがまっすぐこちらを見据える姿にこちらがたじろいでしまう。

 

「じゃあ、さ、なんで?

五条さんは今もなお夏油さんのこと親友だと思ってんだよ」

 

そう尋ねずにはいられなかった。

 

夏油さんは少し困ったような泣きそうな顔をしてすぐに下を見る。眉間にシワがよって自分の感情を必死に咀嚼している最中なのだろう。

手のひらで顔を覆い「あー」だの「うー」だの言って頭を少し振る。頭を上げた時には少し気が晴れたような、しかしまだ物足りないような顔をした。

開こうとする口をじっと見つめ相手の言葉を待つ。

 

「、、、悟は私のこと親友だとまだ思ってくれてるのかい?」

 

不安げに見つめる瞳に自信満々に答える

 

「うん。絶対そうだよ、これは嘘じゃない」

 

そう答えたらまた困ったような泣きそうな顔をされた。でも、さっきのような寂しさや苦痛を感じる表情ではない

次に返ってくるのは意外な問いだった

 

「、、、悠仁くんって、後悔したことってあるかい?」

 

「あるよ、いっぱいある」

 

「、、、じゃあ、他人に対して劣等感を持ったことは?」

 

「あんまないかな。自分は自分、他の人は他の人だし」

 

「ふふ、強いねぇ。多分、私はそう割り切って考えるほど強くなかったみたいだね、、、」

 

夏油さんが見つめる先は赤く光る夕焼け空だった

 

「、、、昔ね。ある女の子がいたんだよ。どこにでもいる明るい女の子。私はその子の護衛を任されたんだ

、、、しかし、彼女は星漿体だったんだよ。これで大体察しがつくんじゃないかな?

予定通り彼女は天元様の元に同化しているよ。でも私が守ったわけじゃない。それどころか酷い目に遭わせてしまったの私だ。私は彼女の本音を語らせてた。生きたいとそう願ったのを口に出させた。それなのに肝心の私が守ることができなかった。約束したのに」

 

「、、、」

 

「悟についてもそうだ。その任務の前まで私達は確かに対等だった。まさしく二人で最強だったと思い込んでいたんだよ。それも結局。私が、私に酔っ払っていただけだった。

、、、悟は天才だ。誰も追いつくことなんてないだろう。追いつくものがいたとして、それは呪術師側には絶対にいない。

悟は一人で最強になる、特別な人間なんだよ。

私は凡人にすぎなかった。さすが、天才は影響力が違うよね。半端な凡人なんてすぐに潰されていく。正直言って私はもう悟のことを親友だと思えなんだ。なのに悟が私のことを親友だと思ってくれていることに少しでも喜んでしまった。こんな私が、一番気持ち悪い」

 

「、、、っ」

 

「、、、ごめんね、悠仁くん。私は呪術師に戻ることはないよ。少なくともあの場所では私は幸せになれなかった。今の方が幾分か呼吸がしやすいんだ」

 

彼は諦めたように笑った

俺は思わずカッとなり、怒鳴ってしまう

 

「、、、俺は夏油さんと五条さんにはずっと仲良くいて欲しい。呪詛師だってやめて欲しい。夏油さんには五条さんにはない強みがあるでしょ!?五条さんガキだよ?五条さんには、夏油さんがいなきゃダメなんだよ!?」

 

未来を変えたい。それは本当だ、あんな世界にしたくないし。でもそこに人情が関わると、どうしても1歩踏み出すことができない。色んな人と関わりそこにどんな感情があるのかそれを知る度に、自分が弱くなっていくのを感じる。止めなきゃ行けないのは分かってる。でも、それでも。

 

「、、、ごめんね」

 

今、この人を止めなければダメだ。

 

「、、、夏油さん、、ねえ!?」

 

いや、違う。未来を変えたいから止めたいんじゃない。羂索に利用されないようにするためでもない。俺は、夏油さんだから。優しくてかっこいい夏油さんだから、、!

 

「だったら、、、だったら!!

俺と一緒に生きようよ!俺、頼れる人もいないし、ずっと一人で生きていくの正直寂しい。だから、夏油さんと一緒に生きたい!!夏油さんとだったら寂しくない!!呪詛師になるくらいだったら、俺を選んで!!」

 

これは多分、本心だ。

俺は今日までずっと一人で生きてきた。大人に頼れる状況じゃなかったし、仕方ないと言えば仕方ない。しかし、結局は一人で生きられない弱虫だったのだ。ずっと誰かに甘えたかったんだ。

 

「ちょ、ちょっと、悠二くん?」

あまりの剣幕に、流石に夏油さんがたじろいだのを感じる

 

どうせ、私にはそんな権利なんかないとでも思っているのだろう。

そんなのもお構いなしに、次の言葉のために大きく息を吸い込む

 

 

_____スゥゥ

 

「俺は夏油さんがいい!優しくて!かっこよくて!大人な!!夏油さんがいい!!

他の誰でも嫌だ!夏油さんがいい!!夏油さんと一緒に生きたいと!そう思ってんのー!!!」

 

はぁ、はぁ、はぁ、

思い切り叫んだからか、体力の消費がすごい。肩で息をし呼吸を整えるのを待つ

夏油さんは目をぱちくりと大きく開け、次の瞬間に吹き出していた

 

夏油さんの笑い声が聞こえ、こちらにまたアドレナリンが強く出る

 

「な、何笑ってんの!こっちは本気なんだけど!!」

 

興奮のしすぎか、頭が痛い。

額を抑え座り込んでしまった。

夏油さんはそんな俺の頭を優しく撫でてくれる

 

「ありがとう、、、私のことでこんなに一生懸命になってくれたのは、本当に嬉しかったよ。

、、、でも、君は私のことを買い被りすぎだ。私はそんな立派な人間じゃない」

 

なにを今更なことをさっき思いっきり伝えたではないか

 

夏油傑というものは変なところでものすごい頑固らしい。こちらがいくら真っ直ぐに伝えたとして彼に届く頃には捻じ曲がってしまうようだ。しかし、これで折れるような俺ではない

 

「夏油さんだから、一緒にいたいんだよ。俺が一緒にいたいの。今大事なのは俺がどうとかじゃなくて、夏油さんがどうかなの。」

 

この際もう気合いだ。断られたとしてもきっと後悔なんてしない

 

「夏油さんは、俺と一緒に生きたいって思ってくれる?」

 

夏油さんは目を見開き、ゆっくりと閉じた。

再度開ける頃には意地の悪い笑顔になる

 

「、、、虎杖くんってば、性格悪いね!」

 

続けて返ってくる言葉はありがとうだった。

 

 

 

 

 

第一章・完




余談
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
小説って本当に難しいですね……!特にキャラクターの心情描写とテンポのバランスに悪戦苦闘しました。
書いている皆さんは、普段どんなことに一番苦労されていますか?「ここが一番難しい!」というポイントがあれば、ぜひコメントで教えていただけると嬉しいです。
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