あの日に戻った俺は、同じ選択をしない   作:kujira_works

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虎杖悠仁が宿儺の指を20本飲み込み、五条悟に処刑された世界からの逆行です!第一章、第二章読了後お読みください。


・無断転載、無断利用はやめてください

・AI学習も受け付けません

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⚠️注意書き

※前作読了推奨

※原作捏造

※転生逆行

※解釈不一致

※不満は受け付けません

→大丈夫な人は本編へ!


あの日に戻った俺は、同じ選択をしない 第三章

第三章

 

1

 

「ここが悠仁の部屋ね。好きに使いな」

 

五条さんに案内された場所は高専の男子寮の一屋だった。避けていたはずの高専がまさかこんな形で再会する事になるとは。

案内してくれた五条さんにお礼を言い、部屋を眺める。以前と変わらず、隣は伏黒。

 

昔ポスターを貼ってあったであろう場所に手を当てて窓の景色を見た。

二匹のヒヨドリが巣を作っているのが見える。番なのだろう。地面からせっせと細い枯れ枝を運び形を作る。位置を調整し固定できたらもう一度枝を拾いに行く。まさしく夫婦揃っての共同作業なのだ。これから雛が生まれ、雛が育ち、いつしか飛び立っていくのだろう。俺はそんなヒヨドリ達の人生の一部を覗き見する。

 

部屋のノック音が聞こえた

 

「虎杖、入るぞ」

 

ガチャリとドアの音がし、予想通りの人物が現れた

 

「伏黒、、、」

 

「これから隣人になる、よろしく」

 

丁寧に挨拶をされ、久しぶりの再開を感じる

 

「、、、よろしく」

 

気前のいい挨拶が出来ず申し訳ない。伏黒は特に気にした様子はなくそれだけだからと部屋を後にした。

 

二匹のヒヨドリはいまだに巣を作り続けている。これが私達の幸せだと言うように生き生きとした姿を俺に見せつけてくるのだ。そんなヒヨドリを横目に小さくため息をついた。

 

何もする気が起きずベットに横になる。

しかし目を瞑ろうとすると余計な嫌な考えばかりが出てくる。胸の中の気持ち悪さを誤魔化すように部屋を飛び出し、高専内を歩き始めた。

 

グランドから笑い声が聞こえるが、見ないように歩く。

何も考えずひたすら前へ前へと歩くのを続けていくと見覚えのある人物がいた。

 

「おや、君が虎杖悠仁くんで間違いないかな?私はこの学校の養護教諭をしている家入硝子だ。よろしく」

 

「、、、よろしくお願いします」

 

「せっかくだし茶でもどうだい?寮から遠かったろう」

 

保健室まで戻り椅子に案内された。机に置かれるは湯呑みに入った暖かいお茶だった。

 

「、、、ありがとうございます」

 

礼を言い湯呑みに口をつける。

スッキリとした味わいの甘いお茶だった。

後味がいい。

 

「気に入ってもらえたようで何よりだよ」

 

見透かしたように家入さんは言った

 

「いいお茶だろう?私も気に入っているんだ。静岡県産のいい茶葉を使っているらしいよ。貰い物なんだけどね、これを飲むとお茶にこだわる人の気持ちがわかる気がするんだ」

 

家入さんも湯呑みをじっと眺めてから、ぐいっと傾けた。

俺は俯いたままぽつりと呟いた。

 

「何も言わないんだね、俺のこと」

 

家入さんは少しだけ目を細める。

 

「まず君と私は初対面だからね。君だって形だけの慰めは嫌だろう」

 

「、、、家入さんは俺のことをどこまで知ってるの?」

 

「五条が知ってる事は私と学長は大体知ってるって解釈で構わないよ。
生徒は呪力のコントロールが苦手な転校生候補が来た。という認識になってるね」

 

あっさりした答えに、俺は少し肩の力を抜く。

 

「そっか、、、」

 

短い沈黙が落ちる。

 

「、、、なんかさ、俺逃げてばっかだね。

本当は、早く美々子にも菜々子にも、謝らなきゃいけないのに」

 

口から出た声は己を自嘲するようだった。

家入さんはそんな様子を見ながら静かに答える。

 

「、、、そう急ぐべきでもないと思うよ。

実際仲直りにとても時間がかかったバカが二人いただろう?大人だってあんなにカッコ悪いんだ。君一人が生き急ぐ必要はない。」

 

「言ってる事はわかけどね、、、」

 

複雑な表情を浮かべる俺に、家入さんは続けた。

 

「それじゃあ、君自身が納得出来る答えを見つけてみな。それが一週間で済む者も10年以上かかる者もいる。」

 

俺は考え込むように視線を落とした。

 

「だからあのバカどもは、ようやく答えを見つけられたんだよ」

 

どこか呆れたような口調に、俺は少しだけ口元を緩める。

そして家入さんは穏やかな声で締めくくった。

 

「焦らなくていい。自分なりの答えを見つけてきな。大事なのは今日ちゃんと寝られるか、明日ご飯を食べられるかだよ。」

 

その言葉を胸の中で反芻しながら、俺は静かに頷いた。

 

 

2

 

数日後

 

「あんたが話題の転校生候補ってやつね。

私は釘崎野薔薇、よろしく」

 

扉をノックもせずに豪快に登場したのは釘崎だった。後ろには申し訳なさそうにする伏黒が見えた。

 

「悪い虎杖。やめろって言ってもこいつ聞かなくて」

 

「何が悪いのよ。噂になってる転校生見にきただけじゃない」

 

「ノックもせずに部屋に入るんじゃねぇよ。

てかここ男子寮だし。せめて談話室とかにしろよ」

 

「うるっさいわね。細かい事はいいのよ。いくわよ新入生。私達の授業を見せてあげるわ。感謝しなさい」

 

「釘崎、、、」

 

呆れ顔をしている伏黒に悪いやつではないからと耳打ちをされた。運命というものは凄まじく心の準備ができぬまま先へ先へと進んでいく。俺だけ自己紹介ができていないことを考えながら教室まで手を引かれた

 

「五条せんせー、転校生連れてきたー。このジャガイモ野郎も一緒でいい?」

 

「野薔薇おはよー、転校生ー?」

 

五条さんは転校生という言葉にピンときておらず首を横に傾けた。実際転校生ではないのだし。

部屋に入ってきた俺を見るなり五条さんはびっくりしたような仕草を作った。目があって何もしないわけにもいかないので挨拶をしてみる。

 

「、、、うす」

 

「、、、おはよう」

 

両者はてな状態の中動き出すのは釘崎だった

 

「あそこにパイプ椅子あるからそこ座んなさい」

 

「連れてきたのは、野薔薇?」

 

「なによ、そんなやばいことなの?

なんの事情があるかは知らないけど転校生なんでしょ?世話焼いてやってんじゃない、感謝しなさい」

 

「釘崎、、、」「野薔薇、、、」

 

あまりの強引さに五条さんも伏黒も何も言えなくなっている

点呼を終えると釘崎が立ち上がった

 

「今日は体力づくりがあるんでしょ?ほら、いくわよ。外にでるの」

 

手を引かれ外にでる。ついた場所はグラウンドだった

 

「ようこそ転校生。ここが呪術高専よ!」

 

釘崎は胸を張って言い切る。まるで自分の縄張りを紹介するみたいに堂々としていた。

 

「今日は何するんですか?」

 

「体力作りって言っちゃったしグラウンド20周ね」

 

「げっ」

 

「こら、そんな嫌な顔しないの」

 

軽く頭を小突かれて、釘崎はむっとする。

 

「悠仁はやる?」

 

視線がこちらに向く。
一瞬だけ風の音が大きくなった気がした。

 

「俺は____」

 

「やるでしょ転校生」

 

「釘崎流石に」

 

「大丈夫、伏黒。俺も走る」

 

伏黒は小さくため息をつく。呆れているのか諦めているのか分からない顔だった。

五条さんも特に反対するわけもなく、ストレッチを始める。

そして三人揃ってスタート地点まで歩いた。

 

準備が完了した合図を送ると五条さんはその場で立ち上がった

 

「そんじゃ、位置についてー、よーい、ドンッ」

 

「長距離走にその掛け声いらねーだろ!」

 

釘崎が思わず突っ込むと、五条さんがニヤッと笑う。

 

「ほら釘崎。転校生に抜かされてるよー?」

 

「は?まちやがれ!!」

 

砂を蹴る音が一斉に響く。
三人の足音がグラウンドにばらばらに散っていった。

 

数十分ほどだった頃だろうから。

二人よりもずっと早く終わり、ゴール地点でクルクルと歩く。呼吸が追いついてきた頃、五条さんが顔にポカリを当ててきた

 

「速かったね」

 

五条さんの座っていたであろう場所にはクーラーボックスとカフェラテが入ったペットボトルが置いてあった

 

「これでも宿儺の器だから」

 

そう言うと五条さんはあからさまに顔を顰めた

 

「すんごいブラックジョーク、笑えねーよ」

 

五条さんは少し引き気味だった

 

「口調戻ってるよ?」

 

「うるさい」

 

「はいはい。二人はあと何周?」

 

五条さんは空を一度見上げてから答える。

 

「恵はあと三周。野薔薇はあと五周だね」

 

「そう」

 

視線をグラウンドに戻すと、二人の背中がまだ遠くに見えていた。

 

「悠仁はこれからどうすんの?」

 

五条さんが何気なく言う。


「どうするって?」

 

「呪術師として生きるのか一般人として生きるのか」

 

足元の砂を軽く蹴る。

 

「、、、正直どっちでもいいかなって」

 

言った瞬間、自分でも少しだけ軽く感じた。

しかし、五条さんはそんな曖昧な俺を許すはずもなく突っ込んでくる

 

「それは自分の意見?それともミミナナを怪我させたのも関係ある?」

 

図星だからだろうか。

背中に嫌なものが走るを感じた。

 

自然と視線は下に向かう。
 

「、、、ドストレートに聞くじゃん」

 

五条さんは意地悪そうに笑う

 

「アハ、泣いちゃう?」

 

「、、、」

 

俺の顔を見ると、五条さんはめんどくさそうな顔をして口を開いた

 

「はぁ、ミミナナも傑も話せばちゃんとわかってくれると思うけどなー」

 

「、、、この間夏油さんとの件で散々泣いてたくせによく言うわ」

 

あまりにも無神経な発言に少し苛立ちを感じ、意地悪な発言をする。

 

五条さんは図星だったのか口籠っていた。

 

「、、、泣いてないから」

 

「、、、」

 

「泣いてないから!!」

 

「なんも言ってないよ、、、」

 

めんどくさい大人は置いておき、二人の様子を眺めた

 

「あ!伏黒終わったっぽいよ」

 

ゴール地点でゆっくりと歩く伏黒を発見し、側にかけよる。

呼吸が安定してきてからクーラーボックスにあったポカリを手渡した。

 

「、、、はぁ、、ありがとう」

 

五条さんはゆっくりと近づきながら話す

 

「恵は早く体力つけないとね。中距離や遠距離が得意な分長期戦が向いてるからね。

他にも近距離戦になると一気に弱くなるのも課題かなー」

 

「わかりました。がんばります」

 

五条さんからのアドバイスを受けた伏黒は日陰に座りポカリを開けようとする。思ったより力が入らないらしく上手く蓋が開かないようだ。代わりに俺が開けてやると悪いと言って、

ぐいっと中身を煽った

 

「虎杖、釘崎来るまで待とう」

 

その言葉を聞き伏黒の隣に座る

伏黒は広いグラウンドを眺めて口を開いた

 

「高専きたんだな」

 

思わずぴくりと体が動く

対する伏黒は思ったことを口にしただけのようで、探りを入れてる訳ではないようだ

 

「ちょっと、、色々あってね」

 

"今の"伏黒に言っても困らせるだけだと思い言葉を濁す

そちらも特に気にした様子もなく「ふーん」と相槌を打ち、ポカリに口をつけ、飲み込む。

そして、

「本当は来たくなかったんだよな」

 

そう言葉にした

 

「、、、っ」

 

「悪い。ネガティブな意味で言ったわけじゃない。、、、この間帰りを待つ家族がいるって言ってただろ、だから来たくなかっただろうにって思っただけだ」

 

その家族も今では、、、

俺は視線を下に向けた

 

「、、、その家族を傷付けちまってな。それで高専来た感じなんだと思う」

 

「思う?曖昧な表現だな」

 

「あんま記憶ねーんだよ。傷つけて、ダメんなって、気がついたらここにいた。」

 

 

特に同情することもなく、伏黒はゆっくり目を閉じた。

しばらく悩んだ様子で腕を組み、左右に頭が軽く揺れる。その後髪をガシガシとかき、ため息をついて口を開き始めた。

 

「俺、姉貴がいるんだよ。」

 

予想もしない返事に顔を上げ伏黒を見た

彼の視線は下に下がり眉に皺がよっている

 

「、、、うまくいかなくて、むしゃくしゃしたまま帰った時があった。姉貴はそんな俺を心配して声をかけてくれたんだ。

だが、その態度にもイラついてきて、気がついたら式神が姉貴のことを引っ叩いてた。」

 

「、、、」

 

「、、、式神にも術者の感情がある程度共有される。この事故は俺の制御不足が原因だ。

ひたすらに申し訳なかったし、全て失う感覚がして怖かったよ」

 

話し終えた伏黒は俺をまっすぐ見つめた

 

「虎杖は、今怖いか?」

 

「、、、すっごく」

 

「、、そうか、時間を置くほどハードルも上がる。早めに解決するのがいいかもな。」

 

「、、、」

 

やるせない気持ちを小石に込めて思い切り蹴り上げた。

 

しばらくすると釘崎も合流する

みかねた五条さんはビニール袋を手にさげてこちらに近づいてきた

 

「皆んなお疲れー、アイス買ってきたよー」

 

中に入っているのはガリガリ君

釘崎が真っ先に手に取り嬉しそうにしていた。

伏黒も受け取り、続いて俺も封を開ける。

夏にぴったりな爽やかな味だ。

 

「ガリガリ君食べると夏が来たって感じするわ〜」

 

「美味いよな」

 

「わかる、夏といったらこれって感じするわー」

 

釘崎と伏黒の会話に混じり俺も釣られて笑顔になる。

冷えたアイスが心地よい。

 

俺たちから少し離れたところで五条悟は一年生の姿をじっと見つめていた。

楽しそうにアイストークを繰り広げる様を見ている。

 

彼は眩しそうに目を細めゆっくりと口を開いた。

 

「、、、いい笑顔じゃん」

 

 

3

 

「悟。悠仁はどんな感じだい?」

 

傑がブラックコーヒーを飲みながらそう口にした。

 

「順調に回復してるよ。恵と野薔薇がいい刺激になってるみたい」

 

対して僕はカフェオレにこれでもかと砂糖を投入し、さらにクリームをたっぷりと乗せている

 

 

僕の言葉を聞くと傑は安心したように目を閉じた

 

「会いにいかないのか?」

 

そう傑に問いかける

 

「うーん、会いに行ってもいいものなのかな。君も悠仁の取り乱した姿を見ただろう?だから私が近づいても混乱するだけかなって」

 

「そうか?大丈夫だと思うけど」

 

「悠仁がそうとは限らないし無理に会うのもさ」

 

「まあ、お前がいいならそれで構わねーよ」

 

カップに口をつける

 

「悠仁の近況を聞かせてくれるかい?」

 

「もちのろん」

 

悠仁の姿を思い出し口を開いた

 

「初めは本当に生気がない感じだったんだけどね、クラスメイトと話すうちに笑えるようになってるよ。そこについては大丈夫。」

 

一呼吸おきまた口を開いた

 

「ミミナナについてはまだ無理かな。

今の悠仁には全部自分が悪いとか、合わせる顔がないとか、そんな感じだからね。少なくとも自分から会いたいって言い出すまではここにいさせたほうがいいかも」

 

「良かった。、、、少し不安ではあってね。

一度高専に行くのを渋った時があったし。

でも、悠仁が苦しんでないなら良かったよ、

本当に。」

 

「、、、ミミナナはどうなの?」

 

気になっていた所を傑に質問した

傑は少し難しそうな顔をする

 

「うーん、、、悠仁に会いたいとは言ってるよ。一発殴ってやるって怒ってはいるけどね」

 

傑は困ったように笑った

 

「美々子も菜々子も怪我をさせられたことより、何も話さず出て行ったことに怒っているみたい。ちゃんと話したいって言ってるけど呪術界のことは教えたほうがいいかな?」

 

「パンピーなのか?」

 

「いや、呪霊も見えるし術式だって持ってる。しかし呪術界とは関わりを持たないようにしてきたし、呪霊もここ10年は見てないと思うしね」

 

「ふーん」

 

軽い反応をする僕に傑は困った顔をする

 

「どうするべきか少し迷っているんだよ」

 

「聞きたいって言ってんだから聞かせたほうがいいと思うよ」

 

僕は素直に思ったことを口にした

僕の答えが気に入らないのか傑は渋い顔になる

 

「それはそうなんだけどね、、、

危険なことに関わらせたくないんだよ。」

 

傑の視線が下に向き、眉間に皺ができる。

カップを持つ手も力が入ってるようにみえた。

 

「、、、傑の言うことも分からなくはないよ。

でも、守ることと縛ることは僕は違うと思う」

 

僕の言葉を聞いた傑は前傾姿勢になり項垂れた

 

「、、、そうなんだよねぇ。難しいなー、、」

 

机に肘を置き額を触る傑を静かに見つめた。

 

人の心情を真に理解することはできない。下手に手を加えても崩れるだけだし、何もしなくても良くなるとは言えない。

 

彼らを見守る立場の僕たちは、いったい何ができるのだろう。

 

「、、、そう急がなくてもいんじゃない?

悠仁も少しづつ成長してんだから。傑もゆっくり心の準備をしていけば?」

 

そう口にすると傑は納得したのか眉間の皺はなくなっていた

 

「そうだね。一番は三人が納得できる形にすることだし。私が急かすわけにもいかないよね。」

 

傑は残りのコーヒーを飲み干し僕に笑顔を見せる。

 

そして、

「悟。今日は相談に乗ってくれてありがとう。

ここのお代は私が払うよ。悠仁をお願いね」

 

そう言葉にした

 

___________

 

______

 

 

一方その頃高専では一年生が組み手をしていた

 

釘崎が審判をし虎杖と伏黒が術式なしの体術で戦う。フィジカルも経験も俺が数段上なので伏黒ではまるで相手にならない

 

「、、、虎杖。お前マジで強いな」

 

「え?そう?ありがと」

 

疲れた様子の伏黒が息を切らしてそう言う。褒められて入るので素直に受け取ることにした。

 

「本当ね。伏黒がずっと防戦一方だったわよ。虎杖、あんたもしかして不良?」

 

「ちげーよ。でも、身体能力は高い方だしな、スポーツでも負けなしだったし」

 

「ゴリラね」

 

「ゴリラだな」

 

「ゴリラ言うのヤメテネ」

 

話に一区切りついたところで釘崎が口を開いた

 

「次は私とね」

 

「え?釘崎と?」

 

思ってもみなかった発言に首を捻る

 

「動き見るだけよ。伏黒、審判よろしく」

 

止めても無駄だとわかったのか伏黒は素直に応じた。両者が構えを取るのをみてから口をひらく

 

「よーい、スタート」

 

次の瞬間、釘崎は鋭く踏み込み拳を飛ばす。

半歩だけずらして避け、反撃のパンチを釘崎が避けれる程度に加減して放つ。

 

釘崎は体を逸らして避けた

 

「今の、わざとだろ」

 

「いや、当てたら危ないかなって」

 

「手加減すんな!」

 

釘崎は怒声と同時に回し蹴り。それも軽く受け流すが、それがまた釘崎の逆鱗に触れた。

 

「ムカつくんだけど!こっちは本気なんだけど!もっとかかってきなさいよ!!」

 

彼女は踏み込みを強めて距離を詰める。しかし、体をずらした瞬間

 

_________バランスが崩れた。

 

「あ」

 

短い声と同時に、釘崎の足が空を切る。

そしてそのまま土の上に、派手に転んだ。

 

「いった、、、!」

 

「ごめん!!」

 

釘崎がおれのせいで、怪我をした。俺の、せいで。

 

「こんなのなんてことないわよ。てか、転んだの私だし、謝んないでくれる?」

 

「え、あ、ごめ、あ」

 

「ちょっと、あんた大丈____」

 

「虎杖!?」

 

____________________

 

______________

 

虎杖が走っていくのを眺め釘崎の肩を叩く

 

「何よ、伏黒」

 

虎杖には悪いが釘崎には知らせておくべきだ

 

「虎杖のことちゃんと説明する」

 

釘崎は一度固まり無言でこちらに向き直った

 

「、、、あいつが高専きた理由が、家族を怪我させちまったのが原因なんだよ。」

 

釘崎は一度目を大きく見開いたが、すぐに戻してまた真剣な顔になった

 

「もともと家族思いのやつなんだ。高専にいくのを渋ってたくらいだし、相当きてるぞ」

 

「、、、はぁ、それで転校生"候補"ってわけね」

 

そう言った釘崎はゆっくりと瞬きをし、ため息をつく。そして次には屈伸をし出した

 

「何やってんだよ?」

 

「何って、追いかけにいくに決まってんでしょ」

 

「は?」

 

「ほっといたら余計拗れることになんでしょう。さっきも顔ヤバかったし。

、、、だから、ガツンと一発ぶん殴って、アンタに守られるほど弱くねぇって言ってやんのよ!」

 

準備運動を終えた釘崎はこちらを向いて話し出す

 

「別にアンタはついてこなくていいわ、私一人で行くから」

 

そう言って釘崎は虎杖がいた方向に走り出した。

 

釘崎が走って行くのを眺め、グラウンドに残るのは俺だけになった。

 

俺は行っても意味がないと思い、追いかけずに部屋に戻ろうと踵を返すのだが、

歩くたび、虎杖と釘崎の顔が浮んでくる

 

「、、、はぁ、、、ったく」

 

ため息をつき釘崎が向かった方向に足を運んだのだった。

 

 

4

 

 

「虎杖ーーー!!」

 

途中で合流した伏黒と一緒に私は高専内を走り回った。

グラウンドに近いトイレにはもちろんおらず、手当たり次第建造物の中を回っている。

 

「ほんとにアイツどこにいんのよ」

 

思わずため息をついてしまう

 

「建物の中はだいたい回った。次は屋外を探すぞ釘崎」

 

「わかってる!」

 

グラウンドにもう一度戻りまだ見ていないところをもう一度探した。

 

風が強くなり身を守るように体育館裏に回った時、偶然にも人影が見えた。

 

「、、、虎杖?」

 

赤いパーカーとピンク色の髪が見える

 

「伏黒ー!虎杖いたー!」

 

近くにいた伏黒に声をかけ虎杖を見る。

虎杖は下を向きながら私に向き直った。

表情は見えない。

 

「ご、ごめん釘崎。いきなり逃げ出して、、」

 

初めにくるのはやはり謝罪。謝罪すれば全て丸く収まると思っているのだろうか。

 

説明のない謝罪など、突き放していると同意義なのに。

 

「伏黒から事情は聞いてる。その上で言わせてもらうわ。私はアンタに守られるほど弱くない。、、、人を勝手に“かわいそうな人間”にすんな」

 

言いたかったことを、高らかと宣言する。

 

「、、、確かに私はアンタより弱い。近距離戦に持ち込まれれば抵抗することだって出来ないでしょうね。」

 

これは弱音でもなんでもないただの事実だ。

 

しかし私の価値がそれだけでないのは、私が一番分かってる。

 

「、、、でも、それは近距離戦で一対一に限る話でしょ?私に味方が一人でもいればそれだけで私の価値は大きく跳ね上がる。」

 

頭を上げて大きく口を開いた

 

「つまり言いたいことは、人それぞれ役割があるってことよ。あんたが危ない時は私が助ける。私が危ない時はアンタが助ける。そんだけでしょ。」

 

言いたいことをはっきりと話し、少しスッキリした気分になる。

しかし、なかなか相手には伝わらないもので、

虎杖はずっと下を向いたままだった。

 

次に口を開くのは伏黒だ。

 

「俺も、釘崎と言いたいことは同じだ。命を預けるもの同士、まず味方の能力を信用しなきゃならねぇ。相手の出来ないとこだけ見て評価するのは違うと思うぞ」

 

虎杖の様子も気にせぬまま言葉を続けた

 

「お前の気持ちもわからなくはない。でも、全て自分が悪いで終わらせるのは自分にも相手にも失礼だと俺は思う」

 

虎杖はいまだに沈んだままだ。

返事どころか反応すらろくに見せない。

 

伏黒は痺れを切らしため息をつく。

 

「、、、一旦自分一人で考えてみろ。結論を早く出すのが正しいことだとは思わん。

釘崎もそれでいいか?」

 

「構わないわ。帰るわよ伏黒」

 

今だに縮こまったままの虎杖を見て、その場を後にした。

心にモヤモヤした気持ちが溜まっていくのを感じていく。

 

「正直意外だった。お前が大人しく帰るだなんて」

 

伏黒は私にそう問いかける

 

「これ以上は私たちには何も出来ないわよ。それも虎杖次第ね」

 

「いい方向に転べばいいんだがな」

 

彼は視線を下に下げそう答えた

 

「そうね、、、あーもう!ムカつくわ本当!

伝わってんだか伝わってないんだか!」 

 

私達の言葉を聞いてもずっと下を向いたままの姿を思い出し腹が立ってきた。

 

伏黒も同意するように私に声をかける

「あれは全部自分が悪いにシフトしちまってるからな。」

 

まさしくその通りだ。自己嫌悪と言うものは恐ろしいもので相手の善意ですら脅威に感じて行く。こちらが必死に伝えているというのに。

 

「全部ねじ曲がるものね。

こっちは本心で言ってんだってのに!」

 

あまりの歯痒さにそう口にした。

伏黒は少しの間黙り、口を開く

 

「、、、あいつが悪いやつじゃないのは分かってんだろ?」

 

それは、その通りだ。気遣いができるし謝罪も感謝もちゃんとする。案外ノリが良く、受け止めてくれる安心感がある。でも、

「、、優しいとは思えないわ。」

 

「、、、どうして?」

 

首を傾げる彼をみる。

 

虎杖は、相手を受け止めることしかしないのだ。自分の意見は決して出さない。

そういう優しさを感じてきた。

 

でも、大切なのは受け止めることだけじゃない。

 

「優しさってのは、相手のために何かしてあげたい気持ちだと私は思うの。あれは自分が傷つきたくないだけよ。」

 

伏黒は納得していないようで微妙な顔をする。

 

「、、、俺はそれも虎杖の優しさだと思うんだが」

 

「それも一つの考え方じゃない?

私とは合わないけどねー」

 

「お前は、真っ直ぐすぎるからな」

 

呆れたような声だったが、褒め言葉して受け取っておく

 

「それが、私のいいことでしょ!」

 

「、、まーな」

 

 

 

伏黒と別れ一人になる。

そうすると、またふつふつと怒りが湧いてくる

 

「、、、ほんとむかつく。一人で勝手に終わってんじゃないわよ」

 

 

5

 

俺はどうしたらいいんだろうか。

釘崎と伏黒に言われたことを思い返す。

 

「、、、私をかわいそうな奴にするな、ね。」

 

俺は無意識の中で自分以外の人間を守るべき対象としてみていたのかもしれない。

俺自身、"前回"の記憶があるのだし。

 

釘崎に対しては、特級呪霊・真人に顔を触られ、崩れていくのを実際に見た。

だから俺は、相手が不幸な目に遭うのがわかるので遠ざけようとしてしまう。でもそれ自体が相手を見れていない証拠だと言うのだろうか。

 

「、、仕方ないじゃん、傷ついてほしくねーもん。俺は、みんなが大切だから守りてーだけだし」

 

誰もいない空虚な部屋に愚痴を漏らすと

 

__________コンコン

 

 

 

突然ノックの音が聞こえた

 

 

 

 

「悠仁、入るよ」

 

外から聞こえてくる声は五条さんだった。

仕事が終わったのかアイマスクを外し少し緩い格好をしている。

扉から入ると遠慮もなしに机の前に腰掛けた。

 

不安な気持ちを抑え込み、口を開いた。

「、、どうかしたの?」

 

そう問いかけると五条さんは体を伸ばしながら答える

 

「いやー、恵も野薔薇も元気なくてさー。とりあえず事情聴取ってことで。

あ、プリンもあるよ」

 

手に提げたビニール袋からプリンとプラスチック製のスプーンを取り出した

 

「事情聴取って言われても、、」

 

遠慮気味に言うのだが五条さんはそんなことなどお構いなく、笑顔で話す。

 

「詳しく聞くわけじゃないよ。悩んでることを知りたいの。ほらほら、このG LGこと五条先生に任せなさい!」

 

「、、、別になんもないよ。先生の勘違いじゃね?」

 

人と話したい気分でも話せる内容でもなかったため誤魔化した。

俺の言葉を聞いた五条さんは納得のいかない顔をして口を開いた。

 

「僕たちに腹割って話せって言ったくせに」

 

痛いところを突かれる

 

「それは、、、」

 

「そうやって隠すのはよくないよ。隠された側って結構傷つくんだからね。」

 

五条産の話を聞き、釘崎や伏黒、ミミナナを思い頭が重くなってくる。

 

俺だって自分がどうしたいのかなんてわからない。

 

俺は思わず頭を枕に埋めた。

五条さんは俺の反応を待ち黙っている。

 

辺りに沈黙が落ちた。

気まずさや圧力を感じない、優しい沈黙だった。

 

それに甘えて、俺は目を閉じた。

 

頭に浮かんでくるのは俺がどうあるべきなのか、正解はなんなのかという問いばかり。

 

夏油さんの家族を傷つけた申し訳なさとミミナナに謝ることすらできない不甲斐なさが俺を襲ってくる。

 

こんな俺のことなんか夏油さんは、許してくれないだろう。

 

そう思った途端。

 

いきなり心臓がぐわっと鷲掴みされた気持ちになった。

 

目を瞑る力が思いっきり入る。

 

「、、、ごめ、ごめん、なさ」

 

夏油さんの家族になれなのに、夏油さんを幸せにしたいのに。

 

夏油さんと生きたかったのに

 

__________『悠仁だから信じたいんだよ』

 

耳の奥で聞こえた言葉はそれだけ残して消えていった。

 

 

「、、、夏油さん。俺のこと嫌いになってないかな?」

 

五条さんは呆れたようにため息をつき、はっきりと言葉にする。

 

「嫌いになるわけないでしょ。あの傑だよ?

悠仁のこと心配してたし、昨日だって会いって言ってたくらいだし」

 

安心したのか力が抜け身体が軽くなるのを感じた。

 

「、、、ほんと?」

 

涙目で情けない声だった。

五条さんは気にせず頭を撫でてくれた。

 

「そんじゃあ、今度の日曜日でもどう?」

 

その優しい口調に、顔を隠すこともせず泣きながら返事を答えた。

 

 

そこからは記憶が曖昧だ

 

気がつくと朝になっており、ソファにもたれかかる形で毛布が掛けられていた。

 

テーブルには封が空いていないプリン。

あとは殺風景な部屋が広がっている。

 

どうやら泣き疲れたうちに寝てしまったらしい。目元が痛痒くなっている。

 

洗面台へ急いだ。

 

 

「うわー、、、目元真っ赤じゃん、、、」

 

鏡に映る自分についそう言葉にした。

 

すぐに蛇口を捻り、水を出す。

顔に当たる水がやけに気持ちいい。

壁にかけたタオルでゴシゴシと顔を拭いた。

 

朝食を作るためキッチンに向かう。

疲れていたし簡単なものでいいだろうと思い、足を向けた時。

 

その足はリビングで止まってしまった。

 

改めて生活感のない自分の部屋を眺めてみる。

今までは気にする余裕すらなかったのだろう。

 

静かでとても広い

 

俺は何も考えずテレビをつけた。

流れてくるのは朝の天気予報。

 

誰もいない部屋に、アナウンサーの声だけが響いていた。

 

 

6

 

 

普段は職員室に近いキッチンを使っていたが、今日はなんとなく寮に近いところで料理をしたいと思った。

 

「、、、アンタ」

 

フライパンの上で卵がじゅわっと音を立てる。

朝日が窓から差し込み、小さなキッチンを柔らかく照らしていた。

 

「お、おはよ。釘崎」

 

「、、、おはよ。何作ってんのよ」

 

「えっと、今作ってんのが卵焼き、、、」

 

菜箸で手際よく卵を巻きながら答える。

ふわりと甘く香ばしい卵の匂いが部屋に広がっていた。

 

「へー、美味しそうじゃない。私の分も作ってよ」

 

「えっ」

 

思わず振り返ると、釘崎は腕を組んだまま当然のような顔をしている。

 

「嫌ならいいわよ」

 

「いや、別にそういうわけじゃ」

 

「じゃあ作りなさいよ」

 

「、、、はい」

 

諦めたように笑い、冷蔵庫からもう一つ卵を取り出した。

 

釘崎は反対の向きで椅子に座り、背もたれに腕を乗せてリラックスしながら俺を見つめていた。

 

「手際いいのね」

 

「うん。ずっとやってきたから」

 

卵を割る音が静かな部屋に響く。

菜箸で手早く混ぜると、黄色い液体がさらさらと揺れた。

 

「甘いやつ?」

 

「いや、しょっぱいやつ。嫌い?」

 

「どっちも好き」

 

「そりゃよかった」

 

ほどなくして卵焼きと味噌汁、ご飯が食卓に並ぶ。

どれも特別豪華ではないが、どこかほっとする朝食だった。

 

「「いただきます」」

 

箸を伸ばし、釘崎は卵焼きを一口頬張る。

 

「美味しいわね!アンタ見かけによらず料理上手じゃない!」

 

「それ褒めてる?」

 

「褒めてるに決まってんでしょ!この野薔薇様が美味しいって言ってんのよ、喜びなさいよ」

 

「わー、うれしー」

 

「棒じゃねーかよ!」

 

ぺしっと額を軽く叩かれ、俺は思わず頭を押さえる。

 

「うわっ、いってー」

 

その様子を見た釘崎は、小さく鼻で笑った。

 

「、、、少しはマシな顔になったじゃない」

 

虎杖は少し照れくさそうに笑う。

 

「、、、色々、考えたから。

ごめんな釘崎。、、、そんで、ありがとう」

 

釘崎は湯呑みを口元まで運び、一口だけお茶を飲んだ。

 

「、、、別に私は何もしてないわよ」

 

「俺が勝手に感謝してるだけだから」

 

一瞬だけ目を合わせると、釘崎は肩をすくめる。

 

「はぁ、じゃあ勝手にしなさい」

 

「、、っ!うん。」

 

朝食は静かに続く。

 

しばらく経った頃。

釘崎がお茶碗を持ち上げ俺に向かって差し出した。

 

「おかわり」

 

遠慮のない行動に思わず笑みがこぼれる。

 

「はいはい」

 

差し出されたお茶碗を持ち炊飯器まで足を運ぶ。

 

炊飯器の中の蒸気が外に広がり中の米は白く輝いていた。

 

 

7

 

 

「、、、傑。そんな身構えると悠仁が怖がるよ。ほら、リラックスリラックス」

 

ソファの背にもたれたぼくは、肩の力を抜くように両手をひらひらと振る。

 

その向かいでは、傑がマグカップを両手で包み込んだまま苦笑していた。

 

「ごめん、悟。柄にもなく緊張してるみたいで

、、、」

 

「おいおい、まだ三日もあるだろうが」

 

「もう三日しかないんだよ」

 

傑は小さく笑うが、その笑みはどこか硬い。

 

その時、ドタドタと足音が廊下から近付いてきた。

 

勢いよく扉が開く。

 

「げっ。また来たの? 白髪男」

 

「まだ来るんだね、目隠し男」

 

息ぴったりに言い放つ二人に、僕は思わずは肩をすくめる。

 

「ひどくない?」

 

傑は思わず額に手を当て、小さくため息をついていた。

 

「こら、美々子、菜々子。

すまない、いつもは大人しいんだけど」

 

「親似たんじゃね?」

 

「悟も同レベルだからね?」

 

すかさず返され、五条は「ぐっ」と言葉を詰まらせる。

 

そんなやり取りをよそに、菜々子が一歩前へ出た。

 

「そ、それよりも! 悠仁は? 悠仁はどうなの!」

 

不安を押し隠せない声だった。

 

僕と傑は一瞬だけ視線を交わす。

 

「だいぶマシになってきたよ。そろそろ会えるんじゃないかな?」

 

その言葉を聞いた途端、菜々子の肩から力が抜けた。

 

「、、、良かった」

 

安心したように小さく息を吐く。

 

僕は菜々子を見て口を開いた

 

「、、、悠仁のことが大切なんだね」

 

「当たり前でしょ!」

 

菜々子は顔を上げ、迷いなく言い切る。

 

「私と美々子と悠仁と傑さんで家族なの! それ以外認めない、、、!」

 

強い言葉だった。

けれど、その拳は何かに耐えるように震えていた。

美々子もゆっくりと頷く。

 

「、、、悠仁が私たちのことを思うように、私たちだって悠仁のことを大切に思ってるから」

 

美々子は唇を噛み、それでも視線だけは逸らさなかった。

そして言葉を続ける。

 

「、、、だからこそ嫌なの。隠し事なんてしてほしくない。、、、私に一言でも話してくれれば、なんだって信じてあげるのに」

 

やがて菜々子が一歩踏み出し僕たちに問いかけた。

 

「、、、ねぇ、傑さん、ご、五条さん。

悠仁が隠してることって何?」

 

傑はが口を開きかける。

 

「、、、そんなこと——」

 

「あるよ!」

 

「昔見た化け物のことと関係あるんでしょ!? 私わかってるもん!」

 

菜々子は溢れ出す感情を飲み込むのに必死で肩で呼吸をしていた。

 

今度は美々子が続ける。

 

「、、、夜中によく傑さんと悠仁で話してたよね。呪霊の発生率がどうのこうのって。

私たちこっそり聴いてたんだよね。呪霊がどんな存在なのかはわからないけど何を指しているのかはなんとなくわかるよ。」

 

僕たちのことをまっすぐ見つめて彼女は言った。

 

「ねぇ。ちゃんと教えてよ。」

 

その声は震えていた。

 

怒っているのか、悲しいのか、分からないような声だった。

 

「私たち、家族なんだよ。」

 

 

8

 

 

「悠仁、、」

 

「、、、夏油、さん」

 

約束の日曜日になり約束の人物が目の前に現れた。わかっていたはずなのだが実感がわかない。

 

俺は何をどうするべきかわからず、ただじっと夏油さんを眺めた。

夏油さんは何も言わずにゆっくり近づいてきた。そして俺を強く抱きしめた。

 

そこでようやく目の前の人物が夏油さんだと感覚で感じ自然と涙が溢れ出したのだ。

 

啜り泣く俺の声が部屋に響き、背中に回る力が強くなるのを感じた。

 

 

「、、、そろそろ、座ろうか」

 

涙が止まり、お互いに感情が落ち着いた頃、

対面になるように椅子に座り本題に入る。

 

何を話せばいいのかわからない。

会えば何か言えると思っていた。

でも、いざ本人を目の前にすると、口が動かなくなる。

 

「、、、悠仁」

 

「、、、なに」

 

「少し、痩せたね」

 

「え?」

 

思わず顔を上げる。

夏油さんは困ったように笑った。

 

「ちゃんと食べているかい?」

 

「、、、食べてるよ」

 

「、、、そっか」

 

俺の返事に何を感じたのか悲しい顔をする夏油さんは視線を下に下げた。

そしてもう一度俺に対して問いかけてくる。

 

「高専はどうだい?」

 

「、、、」

 

「楽しいかい?」

 

その言葉に少しだけ迷う。

 

「、、、うん」

 

自然と口から出た。

 

「伏黒がいて。釘崎がいて。五条さんがいて。家入さんも、優しくて。みんな俺によくしてくれる。」

 

夏油さんは静かに聞いていた。

 

「そっか、、、良かった。」

 

夏油さんは安心したように微笑み優しい眼で俺を見つめる。

俺は夏油さんをみて、胸の奥が痛くなった。

 

「、、、夏油さん。ごめんなさい。」

 

反射的に頭を下げる。

 

「俺。いっぱい迷惑かけた。心配かけた。

勝手にいなくなって、何も言わなくて。

本当に、ごめんなさい。」

 

「謝らなくていい。家族に対して迷惑だなんて思うはずがないだろう。なんなら迷惑かけて欲しいんだよ。」

 

「悠仁は昔からずっと頑張ってきてくれたじゃないか。私が連れてきた美々子と菜々子にも良くしてくれて。私を助けてくれたのだって一度や二度じゃない。」

 

「悠仁がいたから私はずっと楽しかったんだよ。だから少しは頼られる側じゃなくて頼る側になっていいって私は思うな」

 

「でも、俺。人生をや、やり直してて。精神年齢だってみんなよりずっと高くって」

 

「だとしてもそれが悠仁なことには変わりはないだろ。私を助けてくれていたのは他でもない君なんだ。そんなのが理由で私は悠仁と家族になったわけじゃないよ。」

 

「、、、ミミナナ達も傷つけちゃった。

謝らなきゃいけないのに。」

 

「うん」

 

「謝りたいのに、、、家族なのに、、!」

 

「それじゃあ一緒に謝りに行こう。一人じゃ怖いだろう。ついていってあげるよ。」

 

「、、、夏油さん。」

 

「なんだい」

 

「、、、どぉーしよおぉぉ。」

 

泣き崩れる俺に夏油さんは優しく手を握ってくれた。

 

「美々子にも菜々子にも怪我させちゃってぇぇ。」

 

「うん」

 

「本当はそんなつもりながったのにいぃぃぃぃい。嫌われてたらどおーしよおおぉ。うわああぁぁぁぁん。」

 

「嫌われることなんてないよ。大丈夫。」

 

「でもおおぉぉぉぉぉぉ」

 

「ふふふ」

 

「な、なに、ヒック、、わらって、んの?」

 

「私は嬉しいよ。悠仁が私達のために泣いてくれて。」

 

「、、、ヒック、、ごめん、なさ、い。」

 

「謝らなくていいだろう。それに謝る相手が違うよ。私が悠仁に怒ろうだなんて思ってないよ。」

 

「ヒック、、、違う、、心配、かけて、ごべん、なざい。」

 

「、、、うん。ずっと心配してた。私も怖かったよ。、、、勝手に諦めないで欲しかった。

私たちは四人で家族なんだから。

、、、家族なんだから、ちゃんと相談して欲しかったな、」

 

「、、、お、れも、同じ立場になったら、絶対、怖いだろうから。ごめん、なさい。」

 

ある程度呼吸が治ってから夏油さんをしっかりと見つめる。

 

「そして、、ありがとう、、夏油さん。」

 

「俺、ちゃんと美々子と菜々子に謝るよ。

、、、二人にちゃんと話したい。このままなのは俺が嫌なんだ。」

 

夏油さんはうなずき優しく微笑む。

 

「うん。応援してる。」

 

励ましの言葉をもらい。勇気がうちから湧いてくるのを感じた。

 

その勢いに乗るように、夏油さんに話したかったことを本題に出す。

 

「、、、夏油さん」

 

「なに?」

 

「俺さ、呪術師になるよ」

 

いきなりの爆弾発言に夏油さんは目を丸くし、眉を顰める。

そして俺を真剣に見つめた。

 

「、、、どうしてだい?」

 

「、、、"前"は俺の持つ力のせいでたくさんの人を傷つけた。、、、夏油さんは今の俺とは関係のないことだって、言うかもしれない。

 

「、、、でも、俺はもう逃げたくない。

たくさんの人を傷つけられるこの力で、俺はたくさんの人を助けたいんだよ。

、、、それに、じいちゃんに言われてんだよ、

『大勢に囲まれて死ね』ってさ!」

 

はっきりと宣言する俺に対して夏油さんは厳しい顔ばかりしている。

しばらく考える素振りをしてから大きなため息をつかれた。

 

「、、、はぁ、、、これだけは約束して。

絶対に死なないこと。、、、これが最低条件」

 

「うん。わかってる」

 

「、、、なら、私は反対しないよ」

 

「ありがとう、夏油さん。」

 

夏油さんは苦しそうな顔をして俺を見つめた

 

「、、、本音を言うと反対したいんだ」

 

「うん」

 

「あんな世界に家族を入れるだなんて」

 

「でも、もう決めたことだから」

 

俺の固い意志を見て諦めたのかまた大きなため息を吐かれた。

 

「はぁ、、わかってるよ。少し子供染みてたね。さあ、帰ろうか」

 

差し伸べられた手に力強く捕まり大きな声で返事をする。

 

「うん!」

 

向かう先は俺たちの、大切な家族たちの家だった。

 

 

9

 

目の前に見えるのは田舎にある和風建築の広い家。

 

一歩仕切を跨ぎ玄関に入る。

その瞬間二人の家族から思い切り抱きしめられた。

 

その場にいる全員が目に涙を浮かべ、二人は怒り、一人は喜んでいた。

 

ようやく落ち着いた頃だろう。

仲の良い双子は上手く息を合わせて俺に言ってくれたのだ。

 

「「お帰りなさい」」

 

 

あの日に戻った俺は、同じ選択をしない・完結




余談

ここまで読んでいただきありがとうございます。
本作品は今回をもちまして区切りとさせていただかます。

まずは今作の補足ですね

前作との間の期間
前作ではミミナナを虎杖が傷つけ発狂し夏油が五条に電話をかけたところで終わりましたね。そこからは虎杖は極度のストレス状態の疲れで眠っている間に車に運び込み東京の高専まで行きました。途中で目覚めたりもしましたがほぼ頭が動いていない状態なので意識がはっきりしたのは高専についた後です。

キッチンについて
部屋の間取り的に部屋にキッチンがあるタイプではないと踏んで移動形式ですね。釘崎との接点を作りたかったという意図もあります。

今後について
幸せに暮らします!以上!!

続いてはぼつ案を紹介します。

まず今作の初めでは夏油傑は殺す予定でした。その後死体だけ回収し、渋谷事変にて五条悟に宿儺の器だと明かし、処刑してもらい、夏油傑の遺骨を渡すラストにしようと思っていましたね。伏黒たちとは少年院で出会い、助っ人として再開する予定でした。

せっかくですし渋谷事変まで今作も続けようかと思いましたが、流石に力尽きましたのでここで終わりにします。
個人的には綺麗な終わりだと思うので満足してます。
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