機動戦士ガンダム外伝 斬凶戦記   作:野武士山芋侍

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●★●★●作者からの重要なお知らせ●★●★●

タグはR-15ですが、今回は以下の過激な表現を含みます。
故に実質R-18寄りです。

・暴力、流血
・夢オチかつボカシ気味とはいえ性的な描写
・ザビ家に対するキツめの罵倒

苦手な方はブラウザバックを推奨します。
また、未成年の方は閲覧をお控え下さい。

●★●★●重要なお知らせおわり●★●★●



第九話 最悪の日:ホバートラック奪還編

連邦軍ポイント情報「G(ゴルフ)4」、ホバートラック鹵獲から数時間が経過……。

東西を岩に囲まれたこの地点に、地球連邦軍侵攻部隊は仮拠点を構えていた。

補給物資や武器弾薬が満載されたコンテナや各種支援車両、トラック等がミデア輸送機から降ろされ、雑然と並べられている。

その合間を縫うように動き回り、作業に従事する整備兵や補給要員。

片隅には、立膝をついて並ぶ陸戦型ジム3機と61式戦車7輌。

開放式の大型テントも複数設置され、そのうちの一張にシンイチ達41中隊の面々は集合していた。

…ホバートラックに乗っていた二人と、サラとナザレンコを除いて。

 

状況は最悪といって差し支えない。

あの後、パーシヴァル中尉達によるホバートラック追跡・捕捉は失敗に終わった上に、森林地帯に入ったところでサラの61式戦車が地雷を踏んで行動不能となり、そのまま連絡がとれなくなった。

ゆえに、生死は不明。

「クソッッッ………タレがァ!!!!」

テント内で、パーシヴァル中尉の怒号が響いていた。

指揮官たる彼は悔恨と自責の念に苛まれ、仮設テントに戻ってくるなり設置された折り畳み式の木製机に両拳を叩きつける。

机が大きくひしゃげるのも構わず、さらに殴り続けた。

木片が飛び散り拳に血が滲んでもお構い無し、完全に冷静さを失っている。

「中尉殿…!!」

シンイチが慌てて制止しようと近づいた、その時。

感情に任せて振り回したパーシヴァル中尉の肘が、意図せずシンイチの左頬を直撃。

「がッッッ…はっ……!!」

とたんに吹っ飛ばされ、危ういところでバーリングが支える。

「うぉわ?!大丈夫かよ!!!」

パーシヴァル中尉はハッと我に帰り、血の気が引いた顔で吹っ飛ばされたシンイチを見る。口内を切ったのか、彼の口元からは血が流れていた。

パーシヴァル中尉が謝ろうと口を開こうとしたが、シンイチはすぐに手を掲げて開口一番に言い放つ。

「中尉、中尉殿!!!………大丈夫です、気にせんで…下さい。俺が中尉の立場なら、間違いなくそうなります。いや、……もっと、酷いかも。」

ニカッと笑ってみせた。

「…………すまん、モリタ曹長。全く俺らしくない、情けない…。」

肩を落とすパーシヴァル中尉。

バーリングに支えてもらいながら、立ち上がる。

「…それに…まだ二人が死んだと決まったワケじゃない。タチバナ伍長とサブリナにしたってそうです。根拠は無いし、無責任だとはわかってますが…」

口元の血を拭い、さらに続ける。左頬には紫色の痣ができていた。

「まだ、できる事はある筈です。そこから考えましょう。」

「………そうだ、全くもってそうだな。」

「…そうしたいがな。」

しかし、ここでバーリングが水を指す。

「今度ばかりは切れるカードが無さすぎる。そもそもの話、ホバートラックは何処に向かったんだ?」

黙り込んでしまった。ああ言ったシンイチすら、腕を組んで視線を落とす。

「心配はいらないぞ、朗報だ。」

そこへ、ダンカン大尉とバレンツィーノ中尉が急ぎ足でやってきた。

「現地付近で作戦展開中の、捕虜救出専門の特殊部隊が協力を申し出てきた。先行して潜入させた工作員が、まもなく行動を開始するとの事だ。」

とたんに沸き立つ中隊の面々。しかしシンイチが不思議に思い、質問する。

「し、しかし…何故そんなところに特殊部隊が?事前情報には何も…」

バレンツィーノ中尉が答える。

「『別件』だよ。数週間前にこの近辺で『キシリア機関』に関わりのある者が動いている、という情報を掴んでいたらしい。そいつらが得た我が軍の捕虜の存在もな。彼らは今回その尻尾を掴むために、既に展開中だったというわけだ。」

「キシリア機関」という言葉に面々はどよめくが、バーリングだけは臆する事なく堂々と罵倒する。

「キシリア機関……紫ババアの子飼いのクソ虫野郎共か、潰し甲斐は抜群だな。」

もはや映画の小悪党のような言い回し。

朗報は続く。

「また、つい先程カミナンデス准尉から連絡が入った。ナザレンコも無事だ。あれから徒歩で追跡したところ、然程遠くない森の奥の農場でホバートラックを見つけたらしい。………いつでも出られるよう、各員搭乗待機!!」

力強い、揺るぎない指示。

絶望に暮れていた中隊の面々は、息を吹き返したかのように各々の愛機に向かう。

スピードが命の、時間との戦いが始まった。

 

そして、ジオン公国軍ポイント情報「G5(グスタフ・フュンフ)」付近の農場。

 

……古ぼけた納屋の中。

両手を後ろ手に縛られたサクラは、色を失ったモノクロの世界に居た。

すえた匂い。

すぐ側には、裸にされたサブリナが力無く横たわっている。何度穢されたかわからない彼女の目は死んだ魚のように濁り、かつての面影は最早皆無。

次は間違いなく自分の番……そう思い震えていると、納屋の扉が開き、入り込んでくるジオン兵3人。

乱暴に服を破かれ、下着まで剥ぎ取られる。

素肌を這い回る、ざらついた不快な手の感触。

粘着質で下品な、男達の荒い息遣いと下品な笑い声。

屈辱と不快感、奪われる純潔。

絶望、そして絶叫。

最後に残された手段は…………

 

(……このまま、穢されて壊れるくらいなら……)

 

覚悟を決めた。

歯の間に舌を挟んで力を込める………が、次の瞬間。

 

「サクラ、駄目だ!!!!」

 

聞き覚えのある、頼もしい誰かの声。

 

ここで目が覚めた。

「はッッッ?!?!あぁっ、うっ………?!?」

世界が色を取り戻す。どうやら悪い夢を見ていたらしい。

やはり古ぼけた納屋のような場所。埃っぽい、土と草の匂い。

サクラは両手を後ろ手に縛られて柱に固定され、その状態で壁にもたれかかって座っていた。

服も身体も大丈夫。嫌な手の感触ももうない。

隣にはサブリナ。同じように拘束されているが、彼女も何かされた様子は無い……今のところは。

「サクラちゃん…大丈夫?魘(うな)されてたけど。」

「………ここ、は?この人達は?」

キョロキョロと周りを見渡すと、すぐ側には同じように拘束された友軍の兵士と思しき男3人。

皆憔悴しきった顔で、一人は髭が伸び放題だった。

「…わからない、でも彼らは友軍の捕虜よ。皆独房仲間ってワケ。」

「………あ、あたし達は…ホバートラックに何か、投げ込まれて……それから…うっ…ぷ………」

先程の悪夢の感覚が蘇り、嘔吐(えず)く。とたんに目眩と吐き気。

「ホバートラックごと捕まってここに連れて来られたのよ……大丈夫、きっと助けが来てくれる。」

励まされ、ほんの少しだけだが溜飲が下がるサクラ。

「…それに言ったでしょ、アレにはアタイが『細工』をしてあるから、そのまま持ち去られる事はまずないわ。」

出撃前の話を思い出した。サブリナには何らかの策があるらしい。

「…でも、それも時間稼ぎに過ぎない。万が一の時は…………ごめん、『これ』しかないかも。」

舌を歯の間に挟み、噛み切る真似をする。

サクラが再び絶望に顔を歪め、身震いした。

「………大丈夫よ、あくまでも万が一。それにもしそうなったとしても………アタイも一緒だから、なんにも怖くないよ。」

サブリナの声と目が少し潤む。

拘束されたまま、身を寄せあう二人。

「そんなの、ダメですよ………生きて、絶対に皆のところに還りましょう。」

「フフフ、そうね……アタイも勿論そのつもり。」

すると突然、納屋の扉が乱暴に開く。

「何を、コソコソお話してるのかしら?」

キリレンコ中佐が兵士を伴い、二人に近づき中腰で屈む。

横目で睨みつけるサブリナの顎に手を添えて、グイッと持ち上げた。

「仲が良いのね…私も貴女達とお話、したいわぁ。ねぇ何のお話だったの?教えてよぉ。」

サディスティックな感情と歪んだ性格が滲んだ、妖艶な声。そして階級相応の威圧感。

しかしサブリナは全く怯むことなく、顔面に唾を吐きかけて啖呵を切る。

「……息、クセェんだよ阿婆擦れが。死ねば?」

キリレンコ中佐の顔が歪み、即座に渾身の平手打ちが飛ぶ。

サブリナの右頬が赤く腫れるが、全く怯むことなく罵倒する。

「………ハッ、ハハハハハ、効かねぇンだよクソビッチ!!その汚ねぇ手でドズルのチンコでもしごいてな、便所虫が!!!!」

「…………覚えてなさい!!」

キリレンコ中佐は顔を拭い、怒りに震えながら踵を返し兵士とともに立ち去る。

「キシリアのアソコを舐めてやがれ、腐れキツネ女!!!!テメェでかかって来いやオラァ!!!!」

完全にスイッチが入ったサブリナは、立ち去る背に向けてなおもどぎつい罵声を浴びせ続けた。もはや留まることを知らない。

キリレンコ中佐は去り際、入り口の兵士達に冷たい声で告げる。

「……何か隠している。『丁重に扱う』こと。必ず聞き出せ。」

「了解。任せてくださいよ。」

彼らはニヤリと、下品で不気味な笑みを浮かべていた………。

 

同時刻、ジオン公国軍ポイント情報「G5」に繋がる森林道。

マインプラウ(地雷除去用の鋤)を装備した61式戦車3輌を先頭に、陸戦型ジム3機が続く。

先頭の61式は地雷原を次々と掘り起こしながら、また木々をへし折りながら森の奥へと進んでいた。

《……頼むぞベイビ〜、無事でいてくれよォ〜!!》

チャーリー3、バーリングが無線でぼやく。おそらく何か喋っていないと平静を保てないのだろう。

《どうしたバーリング、そんなにサブリナが心配か?》

珍しくシンイチが茶化すと、バーリングが照れ隠ししながら答える。

《だッッッ………ちっげぇ、ホバートラックだよ!!機密の塊だぞアレ!!………いやまぁ、サクラちゃんやサブリナももちろん心配だけど……》

《二人とも大丈夫さ、何たってサブリナが一緒だ。今頃ジオンの奴らにバチバチに啖呵切ってるぞ、きっと。》

シンイチの予想は見事に当たっていた。

《そりゃそうだよ……だがその前に、色々としゃぶらされ……いや、喋らされてたらマズい…。》

パーシヴァル中尉の声が引く響く。

《こちらオスカー1、俺としてはどちらも心配だ。何たって奴らは腐れ外道だからな。》

《まぁ、もしもの時は………奴らにイヤという程『分からせて』やりましょう。コイツでね。》

バーリングの陸戦型ジムがロケットランチャーに左手を添える。

《…そいつは名案だな、チャーリー3。》

《チャーリー1から各機、そろそろ無線を封止するぞ………奴らに、報いを。アウト。》

バレンツィーノ中尉からの、静かで力強い指示。

41中隊は、確実に拠点化された農場に近づいていた………。

 

そして再び、農場納屋内…

相変わらず彼女達は拘束されていた。

薄暗い納家の中、サクラがサブリナに話しかける。

「……サブリナ、さん。」

「うん?」

「………さっきはありがとうございます、少しスッキリしました。」

先程の凄まじいまでの「啖呵」は、サクラだけでなくその場にいた皆に少しばかりの勇気を与えていた。

「事実を述べたまでよ。ザビ家やその子飼いどもなんて、皆んなして残らずクソ野郎だからね。」

「フフフ、あたし……サブリナさんのそういう強気なところ、好きだなぁ。」

男性捕虜3人のうち、アジア系の顔立ちのソムチャイ兵長が話に入ってくる。

「あぁ、俺たちもけっこう気が晴れたぜ。アンタなかなか肝が座ってるなぁ。」

続けて、髭が伸び放題の作業着姿の男性、ロイセウィッチ上等兵が口を開いた。

「ホントだぜ、ありがとうよ嬢ちゃん。………いや、姐(あね)さんと呼ばせてくれ。」

赤面し、戸惑いを隠せない様子のサブリナ。

「何よ、みんなして………今は何も出せないわ、残念ね。」

談笑していると、納家の扉の外で声。

「………おい、そろそろいいだろ?」

「…そうだな。手短に済ませろよ、ノリス…」

外で見張りをしていた兵士のうちの一人が、扉を開けて入ってきた。完全武装で、背にはアサルトライフルを担いでいる。

虜囚の身の全員が、彼を睨みつけた。

「さぁ、て。お前ら、仲良さそうなところ悪いが………ちょいと楽しませてもらうぜ。」

おもむろにサクラに近づいて彼女の口元を鷲掴みにし、吟味するように顔を近づける。

「んぐっ?!い、痛…」

「お前………男を知らねぇって顔だな。俺好みだ。胸も結構ある、へへへ………」

拘束されたままのサブリナが牙を剥いた。

が、後ろ手に縛られているだけでなく柱に固定されているため動けない。

「テメェ…!!その子にそれ以上何かしたら、チンコ噛みちぎってブチ殺す!!!!」

「できるもんならやってみろよ。大体お前、何か隠してるだろ……言わないお前が、悪いんだぜ。」

兵士はズボンのベルトのバックルを外した。

サクラは恐怖で声が出ない。今しがた見た悪夢が、正夢になろうとしていた。

「お、おい!!」

と、ここで捕虜のうち一番大柄なカーマイケル伍長が怒鳴る。彼だけは手首をワイヤーで拘束されているためそこが血まみれになっていた。

「捕虜の虐待は南極条約違反だろう!!何のつもりだ、やめろ!!!」

「何だとぉ?生意気なデカブツがぁ………!」

立ち上がってアサルトライフルを両手持ちし、銃床部分でカーマイケルを激しく殴打する。

「こ、れ、は!!尋問、なんだよ!!オラァ!!黙って、ろ!!!」

「………ぐっ、がっ……はっ…」

顔中痣だらけになった彼は、ぐったりと首を垂れた。

サブリナの怒りが爆発し、激しくもがきながら大声で罵倒する。

「腐れ……外道!!卑怯者!!殺してやる……殺す、絶対殺す!!!ヤるんならアタイからヤれ!!クソ野朗!!!」

彼女の手首にもロープが食い込み、血が滲む。

「せいぜい吠えてな…こちとら時間が無いんだ、手短に済ませるぜ。」

股間のチャックを下ろす。下着をモゾモゾとまさぐり出した。

サクラはいよいよ震えに震えて、もはや声も出せない。

絶体絶命の危機……

 

ーの、筈だった。

 

突如、兵士の背後に音もなく何者かが降り立つ。

「痛ぇのは最初だけだァ、そのうち気持ちよくな…る゛ぅぐッッッ?!?!?!」

その何者かは彼の首に素早くワイヤーをかけ、背中合わせで背負って持ち上げる。

「ごッッッ…………コ゜ェッッッ?!………カッ…………はっ…………」

ワイヤーを外さんと首元を必死に掻いていた手の力が抜け、だらんと垂れて動かなくなった。

その場にいた全員が固まる中、静かに囁く。

 

「……あなたがたはもうじき助かります、連邦軍の救出部隊がここに来ている。でも、皆で助かるために少しだけ協力してください。いいわね?」

 

優しく、しかし凛としたおそらく工作員と思しき女性の声。ポニーテールに纏めた長髪が、納屋に吹き込んだ夜風に揺れている。

その姿を見たサクラに、衝撃がはしる。聞き覚えのある懐かしい声、その佇まい。

(まさか…まさか、よね?でも、そんな事……)

女性工作員は、素早い手つきで各々の拘束を解いていく。

拘束を解かれた者から順次、今しがた動かなくなった兵士から武器装備を奪った。

最後にサクラの拘束を解く、その最中…。

「久しぶり、サクラ………怖い思いをしたわね、もう大丈夫よ。」

「ね…………姉さん?!やっぱり、キョーコ姉さん!!な、何で………?!どうしてここに?!」

感激で声が潤む。本当に思わぬところで、姉妹は再会を果たしてしまった。

「話は後よ。まだ戦えるわね?銃は撃てる?」

キョーコは腰のホルスターからサプレッサー(消音器)の付いたハンドガンを取り出し、サクラに託した。

受け取ったサクラは、力強く頷く。

「もちろん。私も……戦うわ、一緒に。」

その目には決意が宿っていた。

 

「……?ノリス、どうしたァ?」

納屋の外で待機していた兵士が相方に呼びかける。返事が無い。

代わりに、中に押し込んでいる男性捕虜の声。

「お、おい……外で待ってるアンタ、相方が急に倒れちまったぞ。ちょっと手を貸してやれよ。」

「……あぁ?何だと…?」

不審に思い、アサルトライフルを構えて扉を開け、中に入る。

直後。

扉の裏側に潜んでいたカーマイケルが即座にスリーパーホールドをかける。同時に、その反対側に控えていたソムチャイが素早くライフルから弾倉を外し、薬室から初弾を排莢した。

そのまま締め落とされた兵士はやはり装備一式を奪われ、先程まで捕虜を縛っていたロープで逆に拘束される。

と、ここで爆発音。戦車砲弾が炸裂する音。

救出部隊の先鋒の61式戦車が主砲の有効射程に入ったらしく、仮設テントを一張吹き飛ばした。

炎上するテントからは、火だるまの兵士が叫び声を上げながら飛び出す。

「なっ……なんでここが分かったんだ?!擬装してたのに、どうなってやがる?!」

「てッッッ……敵襲、敵襲!!!連邦が来たぞ、敵襲〜〜〜!!!」

兵士達が口々に叫び、慌てふためいて右往左往する。

敷地の北西端、ここにはサラとナザレンコが潜んでいた。

状況は逐一彼らから連邦軍の仮拠点に送られており、救出部隊が到着したと同時に陽動を行うため待機していたのだ。

「いよいよね…私達も、始めるわよ。」

「………!!」

ナザレンコが無言で頷く。

暗闇から現れたサラは、右手に61式から外した分隊支援機関銃を持ち、左手でその弾帯を支える。

そして、拠点内の敵兵達に向けて容赦なくぶっ放した。

飛び交う弾丸、彼女の足元に散らばる無数の薬莢。次々と撃ち倒される敵兵。その威容は、さながらスクリーン上の英傑。

ナザレンコも自前のショットガンをラピッドファイア(引き金を引いたままフォアエンドを前後させる撃ち方)で撃ちまくり、サラが撃ち漏らした敵兵を片っ端から射殺する。

「相手はキシリア機関の外道どもだ、容赦するな!!!」

農場を「接収」する一部始終を見ていた二人に、最早躊躇いはなかった。

大混乱に陥る拠点。

サラとナザレンコが暴れ始めた地点の反対、東側に駐車されたホバートラックにはキリレンコ中佐と部下数人が居た。

敵襲をうけ逃げの一手に移ろうとした彼らだが、ここでサブリナの「細工」が功を奏した模様。エンジンの起動に悪戦苦闘している。

「何故エンジンがかからない?!どうなっているか?!」

「わ、わかりません……急にキーが、回らなくなって……」

「そんなバカな事があるか、すぐにやれ!!!」

兵士を突き飛ばし、自分はガンナー席に座る。

「なっ、何よ……コレも、動かないじゃない!!」

ガトリング砲のトリガーを引いたりセフティを何度も操作するが、銃身は回転せず撃発もしない。

そしてそこに、死角から近づいて車体によじ登るサブリナ。手には先程奪ったアサルトライフル。

フォアエンドとマズル付近を両手で持ち、バットのように構える。

「地獄にッッッ………堕ちろぉ!!!!!」

立ち上がるなり思いっきり振りかぶり、ガンナー席に居たキリレンコ中佐の横顔にフルスイングで叩きつけた。

「あ゛ッッッ…………が?!?!うぅ、いっ、だい…………な、なに………が………?!」

衝撃と激痛。

殴打された側頭部を押さえる。

さらに兜割りの要領で、脳天にダメ押しの一撃。

たちまち鼻血を吹き出し、キリレンコ中佐はそのまま白目をむいて気絶した。

「あの世で……ハァ、ハァ、ガルマの筆下ろしでも、してなッッッ!!!」

その顔にもう一度唾をひっかけたサブリナは、彼女をガンナー席から車内に蹴落とした。

「ちっ、中佐殿?!?!そんな……!!」

車内に居た兵士は驚いて駆け寄ろうとするが、ハッチから突入してきたカーマイケルとソムチャイが怒鳴りながらアサルトライフルを突きつける。

「どけぇ!!どけクソ野朗!!!そこは姐さんの席だ、殺すぞゴラァ!!!!」

また同時に突入してきたサクラも、通信手席に座っていた兵士の後頭部にハンドガンを突きつけて一喝。

「どきなさい、すぐに!!…どけ!!!…うっ、撃ちますよ!!本気です!!!」

彼らの凄まじい剣幕に、兵士達はたちまち降伏。ここにホバートラック「アルマジロ」は奪還された。

直ちにサブリナが操縦席につく。

「あぁん♡♡♡会いたかったわ、アタイの愛しい坊や!!んむ〜〜〜、チュッ!!!」

メインのコンソールパネルに熱いキスをぶちかました。

と、改めてガンナー席に付いたカーマイケルが彼女を呼ぶ。

「姐さん、ガトリング砲が撃てませんぜ!!」

「あっ?!あぁ大丈夫、それはね…」

素早く撃発回路のパネルを開け、慣れた手つきで外れたコネクタを繋ぐ。配線に余分にコネクタを設けて、そこを外すと撃てなくなる仕組みだった。

エンジンキーは、拠点に連れてこられた際に敵兵の目を盗んで本物を引き抜き、その上で予め用意しておいた偽物を差し込んでいた。

本物のキーは、彼女の靴下の中にあった。

抜け目のない、実にサブリナらしい「細工」。

サクラも通信手席に座る。解析用の端末が繋がれてはいるが、機能は失われていない。

「…よし、大丈夫!!」

と、ここで、車内に姉のキョーコが居ない事に気づく。見回すと、彼女はまだ車外でアサルトライフルを撃ちつつ殿を務めていた。

「………キョーコ姉さん!!」

思わず席を立ち、駆け寄ってハッチから身を乗り出し手を伸ばす。

それに気づいたキョーコは、振り返ってやはり手を伸ばした。

姉妹の目が合い、互いに笑顔を向け、手と手が触れ合おうとした刹那ー

 

乾いた銃声が響く。

 

キョーコの左胸と、首筋を敵弾が貫いた。

 

「……………え?」

 

サクラの目に映る世界が、再び急速に色を失っていく。

まるでスローモーションのように、キョーコの体がゆっくりと傾き、その場に倒れ伏した。

 

「ねっ…………姉さぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」

 

絶叫。

車内に響き渡る、絶望の声。

 

「やッッッ………野ッッッ朗おぉぉぉ!!!!」

カーマイケルが即座にガトリング砲を指向し、キョーコを撃った敵兵に猛然と撃ち返す。

20ミリ弾が直撃し、たちまち血飛沫となって消滅する敵兵。

「畜生ォ!!!一名負傷!!ソムチャイ、眼鏡のコに手を貸せ!!!」

「あぁ!!何てこった……!!」

車内に引き上げられたキョーコは左胸と首筋を真っ赤に染め、ぐったりと倒れていた。

サクラはキョーコにすがりつき、号泣しながら悲痛な叫び声をあげている。

キョーコの身体は、どんどん冷たくなっていく……。

「…うっ、うあぁぁぁ、姉さん、姉さん!!…嫌、嫌だぁぁ、姉さん、姉さぁぁん……!!!姉さぁぁん!!!こんな、こんなぁ、嫌だぁ……!!!!」

ホバートラックのエンジンが始動する。

一部始終を見ていたサブリナは、即座にロイセウィッチに指示を飛ばす。

「……!!ロイセウィッチ……ロイスでいいわね!!多分ウチのMS部隊が近くに来てる、そこの通信機ですぐに連絡を!!」

「分かった!!」

ホバートラックは濛々たる砂煙をあげて発進。一路、南東に進路をとる………。

 

同時刻、拠点西側。

「そろそろ潮時ね…ナザレンコ、ずらかるよ!!」

「………!!」

しかし、彼女達の行く手を塞ぐように機関砲を備えた装甲車が躍り出る。

「…?!まずいッッッ!!!」

素早く身を隠す…が、装甲車は横合いから突撃してきた61式戦車に激突され、派手に横転し炎上。

砲塔上のハッチが開き、そこから顔を出したダンカン大尉が大声で呼びかける。

「乗れ!!!早く!!!」

同時に開け放たれた車体後部ハッチに、二人はすぐさま滑り込んだ。

操縦席に座るザジーが振り返り、不適な笑みを浮かべて二人の帰還を祝う。

「おかえり、お二人さん!!どちらまで?!」

《ザジー、180°回頭!!急いでずらかれ、空軍が一帯を焼き払うぞ!!》

「合点承知!!」

パーシヴァル中尉の号令一下、61式は脱兎の如く駆け出す。

そしてシンイチ達は、キリレンコ中佐を「迎えに来た」敵MS部隊の対応に追われていた。

《クソッッッ……!!ホバートラックは、まだ動かないのか?!》

ビームサーベルでザクを真っ二つに斬り裂きながら、シンイチが無線で叫んだ。

シンイチの背後に迫るグフをバレンツィーノ中尉が狙撃し、コクピットに大穴を穿つ。

《今連絡があった、乗客は多少増えているようだがな!!………来たぞ!!!》

木々の切れ目から、見覚えのあるホバートラックが飛び出してきたのが見えた。その後ろに、砲塔を真後ろに向けた61式が続く。

間違いなく「アルマジロ」と、パーシヴァル中尉の車輌だ。

《よッッッしゃああぁぁ、あとはズラかるだけだぜ!!》

なおも近づこうとする敵MS部隊に向けロケットランチャーの残弾を全てぶち込むバーリング。ザク1機が脚部を破壊され、擱坐した。

と、ここで空軍のコールドウェル中尉から通信。

《こちらユニフォーム1、カタは付いたようだな。……一帯を焼き払う、仕上げは任せろ!!》

ジェットコアブースターの編隊が超低空単縦陣で突入し、ナパーム弾を投下してたちまち両軍の間に凄まじい爆炎の壁を作る。

 

…その業火の向こう側で、こちらを見やるグフに気づいたシンイチ。

それは彼の「第二の懸念」たる、コマツ大尉のグフであった。

100ミリマシンガンの砲口を向けて正対する………が、グフはすぐに踵を返して立ち去った。

《チャーリー2何をしている?!退くぞ、急げ!!》

バレンツィーノ中尉からの無線で我に帰ったシンイチも、その場を離れた。

 

ホバートラックからの無線を受けた際、シンイチはその背景音で確かに聞いていた。

サクラと思しき女性の、泣き叫ぶ声。

そして、はっきりと聞こえた言葉。

「……………姉さん………!!」

息が詰まり、心臓の鼓動が急激に早まる。

バレンツィーノ中尉から救出部隊の話が出た時点で、なんとなく懸念はあった。

そして脳裏に浮かぶ、最悪の事態。

サクラの姉、キョーコ。

シンイチは彼女の素性を知っていた。もしこの作戦に、彼女が関わっていたとしたら……。

「だとしたら…だとしたら、いくらなんでも、そんな事が……!!」

無意識に、操縦桿を握る手に力が入る。

その予想が外れることを心の底から願いつつ、彼は重い足取りで帰路につくのであった…………。

 

第九話 最悪の日:ホバートラック奪還編 終幕

 




おはようございますこんにちはこんばんは、芋侍です…!!
えーと今回もですね、タチバナ姉妹が可哀想すぎて幕間ネタが書けません、こんな空気でおちゃらけた話は無理です!!(爆)
代わりと言っちゃなんですが裏設定を少し。

・カーマイケル伍長が兵士を咎めてなかったらキョーコは間に合わず、サクラちゃんはヤられてました。なので今回の真のヒーローは彼です。痣だらけの彼の顔はまさに「漢の勲章」。
・空軍は、ホバートラック離脱の如何に関わらず一帯を焼き払うつもりでした。離脱を確認するまで投弾しなかったのはコールドウェル中尉の独断です。
・夢の中でサクラちゃんに呼びかけた人物は………皆様の想像にお任せします。

さて次回、重苦しい雰囲気を引きずったまま第十話。
サクラちゃんは立ち直れるのか、立ち直る鍵を握るのは誰か、41中隊はこのままオペレーター不在となってしまうのか?

次回第十話「生還の痛み」
お楽しみにッッッ!!!!

…え、「キョーコが間に合わなかった世界線も見たかった」って?
ダ メ で す ! ! !

追記:第十話一通り書けて最終チェック中…だけど、大丈夫かコレ(汗)
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