《もらったァ!!!!》
雄叫びとともに、バーリングの陸戦型ジムがアッガイに向けてロケットランチャーを撃つ。背面に直撃し、バックパックが吹き飛んでうつ伏せに倒れ込んだ。
立ち上がろうとする背中をすかさず踏みつけ、さらに後頭部からビームサーベルを深々と突き刺してトドメを刺す。
《チャーリー3、さらに1機片付けた!!残りは?!》
《こちらタワー、今見失っている…あと貴様も基地内でそんなもん撃つなボケ!!》
やはり威勢のいい男性管制官が一喝した。が、素直なシンイチと違ってバーリングは怯まない。
《…んだとコラァ!!直にブチ込むぞタコ!!》
《いいから敵に集中しろ!!……基地内に工作員が侵入している、こっちは手一杯なんだ!!》
背景音では銃声らしき音が響いていた。管制塔近くにまで工作員が迫っているらしい。
《…なんだと?!…………ヤバいな、いっそ降りて戦うか…?》
そこへ、バレンツィーノ中尉が合流。
《チャーリー3、無事か?!チャーリー2は?!》
《今もう1機を捜索中だそうです!!北西の予備格納庫あたりかと…しかし、基地内に工作員が…》
工作員侵入の報せに狼狽するバーリングをよそに、バレンツィーノ中尉は迷わず指示を飛ばした。
《すぐ向かうぞ、とにかくMSを排除だ!!》
《チャーリー3了解!!……死んでんじゃねーぞ、モリタよ……!!》
2機は一路、基地北西に進路をとる。
そして、基地内。
ジオン公国軍の特殊工作員が司令棟の一角に陣取り、守備隊と激しい銃撃戦を繰り広げていた。
「…格納庫に向かった班はどうした?!」
「現在交戦中、抵抗が激しいようです!!」
雨あられと飛び交う弾丸の中、工作員が怒鳴りながら状況を確認する。
その足元に、一発のフラッシュバンが転がり落ちた。
「………?!?!フラッシュバン……」
爆発、強烈な閃光。
直後、天井の通気口からサブマシンガンを構えたサラが降り立ち即座に2人を撃ち倒した。目が眩んで壁づたいにヨロヨロと歩く残りの1人も背後から容赦なく射殺。
「……タワー、こちらカミナンデス。司令棟フロア1階北西はクリア。他には?」
《…あー、待ってくれ…営倉ブロックにも敵が近づきつつある。急いで向かってくれ。オーバー。》
「…了解、至急。」
サラに続いて、通気口から危なっかしくザジーが降りてきた。
「……よっ、と…営倉ブロックにご用って事は…捕虜の奪還とか?」
「かもね。あるいは……」
冷静に分析する。
営倉ブロックには、先のホバートラック奪還作戦にて捕えたキリレンコ中佐とその部下数名が収容されていた。
今回の相手はおそらくその時のキシリア機関の敗残兵、彼らは必要とあらば味方への攻撃も厭わない。つまり…
「…永久に口を封じるため、『処理』に来たか。」
ザジーが身震いした。
「ひょえぇ、そんな奴らとは一生他人でいいな!」
「…私もそう思う。」
丁度その時、廊下の反対側からショットガンを携えたナザレンコと守備隊の兵士達、さらにパーシヴァル中尉が合流する。
「サラ、無事か!!………この辺は、あらかた始末したようだな。」
パーシヴァル中尉は分隊支援機関銃を掲げ、周囲を確認した。
「おそらく…しかし、営倉ブロックにまだ何人か。また、格納庫の方は膠着状態です。」
「よし、サラとナザレンコは営倉ブロックへ。ザジーは俺と来い、61式を出すから守備隊の皆も着いてきてくれ。いいか?」
「合点!」「「「了解!!」」」「…………!!」
思い思いの返答とともに、分散してそれぞれの目的地へ向かった。
基地外周を走るシンイチの陸戦型ジム。
(……くそッッッ、残りは何処だ……?!)
北西方向に遁走したアッガイを追って孤立してしまったところに、管制塔から通信。
《……チャーリー2、奴らの侵攻ルートからさらに07及び06各1機が出現、接近中!!》
またもやグフとザクの混成……冷や汗が噴き出す。
(違う……よな?!まさか、違うだろう………そう何度も、出会うことは!!)
「第二の懸念」ー「例のグフ」ではない事を祈るシンイチに、今度はバレンツィーノ中尉から連絡が入る。
《……こちらチャーリー1、増援の情報について傍受了解。チャーリー2、基地西側の破壊された外壁で合流だ。了解か?》
《了解、まもなく外壁部分に到達………ッッッ?!》
見覚えのあるグフと鉢合わせた。
今まさに、破壊された外壁を乗り越え基地内に入らんとしている。
「……ぬあぁぁぁッッッ!!!!」
気合いとともに、即座にビームサーベルを引き抜き叩きつける。しかし、同時に抜かれたヒートサーベルで易々と受けられた。角度を変えて再度打ちつけるが、捌かれる。
何度か打ち合うも、次々と受け流されて有効打を与えられない。前蹴りを放つが、体捌きで躱された。
振り下ろされる上段の一撃を、なんとか左腕の小楯で受ける。
(……この、体捌き、あしらい方……まるで、まるで………!!!)
高校時代。
サイド6での留学先で世話になった剣道師範の姿が脳裏に蘇った。
何度打ち込んでも捌かれ、時に返し技を決められる。掛かり稽古では体当たりを喰らい、たちまち転ばされた。
(………どうした、それで終わりか!?立て!!………)
負けじと、すぐに立ち上がる自分。
(………まだ、やれます!!やります!!もう一本!!………)
実力で負けても、気力で負けるつもりは無かった。
厳しくも、懸命に指導してくれた師範ーその技と気配が、重なった。
強力なタックルが炸裂し、たちまち体勢を崩すシンイチのジム。
「ぐっ………おぉぉッッッ!!!」
スラスターを噴かしてなんとか立て直す。ヒートサーベルを構えて再び迫るグフに小楯を投げつけた。
距離をとりつつビームライフルを撃って牽制。グフの足元にビームが着弾し、土砂が舞い上がった。
ここで、グフの右後方から飛来するバズーカ弾。すんでのところで回避し、バズーカ弾は外壁に着弾した。
おそらく僚機の、バズーカを携えたザクが現れる。
(なんてこった、もう1機!!…ここまでか…?!)
《チャーリー2、退け!!》
バレンツィーノ中尉の声。さらにシンイチの頭上を飛び越えてロケット弾が飛来、グフとザクの間に着弾した。
《チャーリー3、奥のザクを牽制しろ!!チャーリー2、二人で正面の07に対処するぞ!!》
《チャーリー3了解!!モリタ、生きてるかァ!!》
シンイチのジムの脇に立つバレンツィーノ中尉のジム。
《…強敵のようだな。必ず仕留めよう、我々ならそれが可能だ。》
頼もしい声にシンイチは冷静さを取り戻し、またそれまでの自分を恥じた。
これは剣道の試合などではない。
戦場の兵士同士の生存を賭けた「真剣勝負」であり、生き残って「皆で」勝つための戦い。
互いに助け合い、全力を尽くすしかない。
ひとつ深呼吸をして、真正面から敵機を睨みつける。
敵は敵、ただ斬り伏せるのみ。余計な感情は不要。
《……やれます、俺たちなら。必ず勝ちましょう!!》
改めてビームサーベルを握り込み、姿勢を低くした。
バレンツィーノ中尉もライフルを構え、バーリングもロケットランチャーを再装填。
《………行くぞ!!!!》
スラスター全開、三位一体で突貫する……!!
基地内、営倉ブロック。
その中の一つ、厳重に施錠された独房内でキリレンコ中佐は虚ろな表情で座り込んで震えていた。
目に光は無く、かつての妖艶さや威厳は欠片も残っていない。そして、サブリナにライフルで殴られた側頭部は赤紫色に腫れ上がったまま。
「キシリア様………どちらに居られるのです……」
血の気が失せた唇から、微かな声が漏れる。
「助けて………キシリア様………どちらに………キシリア様………怖い………キシリア様…………」
ブツブツと、延々と呟く。もはや心は完全に壊れ、助けに来る見込みのない主君の名を繰り返すのみ。
隣の独房の兵士が壁越しに告げた。
「……中佐殿、同志達が行動を始めているようです。コマツ大尉も動いているかと……」
「……うっ、うるさい!!!!黙れ、黙れ黙れ役立たず共がぁ!!!!」
とたんに大声をあげ、癇癪を起こして暴れ出すキリレンコ中佐。手付かずの食事のトレーがひっくり返り、けたたましい音を立てた。
そこへ、営倉の出入り口が開く音。
「………ハァ、ハァ、ハァッッッ………?!?!誰………?!」
独房の扉の小窓に駆け寄り、外の様子をうかがうと、息を呑んだ。
紫色の装束、口当て、白い陶磁器のようなヘルメットーキシリア・ザビその人であった。
「…………キシリア、様………?!?!」
「………キリレンコ中佐、此度はご苦労であった。私自ら、褒美をとらせよう………」
腰のレーザーガンに手をかける。
「………あっ、あっ、あぁぁぁぁぁ、キシリア、様ぁ……!!!!」
感激のあまり泣き崩れ、ひれ伏すキリレンコ中佐。
「……私は、私は、嬉しゅうございます……!!キシリア様自らお慈悲を、授けてくださるのですね………!!!!」
しかし、次の瞬間。
彼女が見えていた筈の「キシリア・ザビ」は何者かに撃たれて蜂の巣になり、力無く倒れ伏す。
キシリアに幻視したその人物は彼女を始末するために送られてきた工作員であり、後を追ってきたサラに即座に射殺されたのだった。
「……こちらカミナンデス、営倉に侵入した敵兵を射殺。他も片付けた。あー………」
幻視とはいえ、敬愛する主君が射殺される様を目の当たりにしたキリレンコ中佐は少しの間呆然とする。が、やがて失禁しながらパニックに陥り発狂した。
「…あ゛ッッッ………?!?!あ゛あ゛あぁぁぁぁぁ!!!!キシリア様、キシリア様、キシリア様あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!!ゔあ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!!!!」
サラはその無様極まりない姿に顔を顰めながらも、冷静に報告。
「……力自慢の番兵を何人か寄越してほしい、それから衛生兵も。あと………ハァ、鎮静剤がしこたま必要になると伝えて。」
キリレンコ中佐の狂気に満ちた叫び声が、営倉中に響く。
工作部隊による第一の作戦ーキリレンコ中佐の救出もしくは殺害ーは、失敗に終わった………。
基地内、格納庫。
銃撃戦は既に収束していた。
倒れ伏した工作員達を、アサルトライフルを携えた整備兵達が入念にチェックしている。
そのうちの一人を見て、サブリナが低く呟いた。
「……コイツら、見覚えがある。やっぱりこの前の…」
うつ伏せに倒れた兵士を足で乱暴にひっくり返しながら、襟章を見やるロイス。
「あぁ、キシリア機関の残りカス共だな。ザマぁねぇぜ…」
唾を吐きかけた。
整備班長の注意を促す声が響く。
「皆気をつけろ、まだどこかに潜んでるぞ。必ず二人以上で動くんだ!!」
再び奪われかけたホバートラックは無傷だった。車内からカーマイケルとサクラが降りてくる。
「サブリナさん!!」
「サクラちゃん!!カー君も!!大丈夫だった?!」
安堵の表情で二人を出迎える。
「はい、何とか…カーマイケルさんも、機銃で応戦してくれたので…」
「へぇ〜カー君、サクラちゃんの前でまた漢を見せたの?やるじゃん!コイツゥ!!」
意地悪く笑いながらカーマイケルを小突くサブリナ。
「やッッッ、やめてくださいよ姐さん……」
和やかに無事を喜び合う彼女達の背後に、物陰から生き残りの工作員がゆっくりと姿を現す。
素早く身を乗り出し、サブリナの背後に立ってナイフを振り上げた。
「………?!サブリナさん、伏せてッッッ!!!!」
「えっ?!…うわッッッ!!!」
サブリナが姿勢を低くすると同時にサクラが腰のホルスターからサプレッサー付きハンドガンを抜き、サブリナの肩越しに工作員を撃つ。
乾いた静かな銃声が響いたのち、たちまち仰向けに倒れ伏した。
しかし彼はまだ息があり、腰の手榴弾に手をかける。
「ジッッッ……ジーク!!!!ジオ…………」
すかさず眉間に一発、ついに動かなくなった。
「………はっ、ハァ、ハァ、ハァッッッ…………フーッ、フーッ、フウゥゥゥッッッ……!!!!」
歯を食いしばり、残弾を全て撃ち込む。弾切れになってもなお引き金を引き続け、空撃ちの音だけが響いた。
その場にへたり込んでもなお引き金を引き続けるサクラに、サブリナが駆け寄ってしっかりと抱きしめる。
「……サクラちゃん、もういい!!もういいから……そいつ死んでるから、もう大丈夫よ……!!!」
工作部隊の第二の目標ーホバートラック再奪取ーも、失敗に終わった………。
シンイチ達とコマツ大尉達の激しい戦闘はまだ続いていた。
二刀流でグフに襲いかかるシンイチのジムは、さながら鬼神の如き勢いだった。彼の中の迷いは完全に断ち切られている。
その合間を縫うような的確な狙撃。横っ飛びに逃げたかと思うと、その背後からライフルを構えたバレンツィーノ中尉のジムが狙う。
《…こいつは……!!少々、面倒だな……!!》
急激な回避機動からくる猛烈なGに耐えながら、コマツ大尉が呟く。
左手のフィンガー・バルカンを牽制に撃つがまるで当たらず、2機の陸戦型ジムは集合と離散を繰り返して着実に追い込む。
スコーネルト少尉のザクが援護しようとするがこちらも狙いが定まらない。さらにその隙を与えない猛烈な射撃。
《………ぐっ、う、撃てない…!!狙えない!!》
《バズーカの扱いはまだまだ三流だなぁジオンのクソボケ共ォ!!》
バーリングが煽りながらロケットランチャーを撃つ。彼の陸戦型ジムは左手にも100㍉マシンガンを持っており、こちらも遠慮なく撃ちまくった。
《…もう少し、あと少しで……仕留められる
!!》
ビームサーベルを激しく振るいながら、コマツ大尉のグフに迫るシンイチ。
《チャーリー2突貫しすぎるな、距離を保て!!》
《…いけます!!このまま仕留める!!!》
さらに一歩踏み込む。
《…このッッッ、青二才どもがァ!!!!》
ここにきてコマツ大尉は冷静さを失いつつあった。
((…ここしか、無いッッッ!!!!))
シンイチとコマツ大尉の狙いは全く同じ。
互いのスラスターが最大出力で咆え、間合いに入った刹那真っ直ぐに剣を突き出す。
「「突きッッッイィぃぃぃぁぁぁぁ!!!!!!」」
ほぼ同時。
陸戦型ジムの左肩をヒートサーベルが焦がしながら焼き切った。またビームサーベルがグフの左肩装甲をバターのように溶かしてその機能を完全に奪う。
「……ぐッッッ!!………うぬぅぅぅぅッッッ!!!」
ヒートサーベルをその胸に突き立てるべく、グフは残った右腕を振り上げた。
「ゔッッッあ゛あ゛ぁぁぁッッッ!!!!」
しかし、陸戦型ジムはすぐに横薙ぎに切り払ってその右腕を切断。
トドメとばかりにビームサーベルを逆手に持ち、両腕を失ったグフのコックピットを狙う…………
と、そこへー
《コマツ大尉殿ォ!!!!》
どこからともなく横合いから現れたアッガイが、体当たりでシンイチのジムを押し倒す。
「…なっ?!うおぉッッッ!!!!」
互いに激しく倒れ込む2機。
《チャーリー2!!……しまった、最後の1機か!!》
突然の出現に援護が遅れるバレンツィーノ中尉。グフに集中するあまり、完全に意識の外だった。
シンイチのジムに覆い被さりながら、アッガイのパイロットが必死に叫ぶ。
彼の機体にアイアンネイルは無く、弾薬は尽きていた。
《たっ……大尉殿、作戦は失敗です!!工作部隊は全滅しました!!貴方がただけでも、どうか脱出を………がわ゛ッッッ………zzzgzzggz……》
逆手に持ったまま突き立てられたビームサーベルがアッガイの脇腹からコックピットを貫通、パイロットはたちまち蒸発した。
《……ッッッ!!!スコーネルト少尉、煙弾ッッッ!!撤退だ!!!!》
《はいっ!!》
素早くクラッカーをばら撒くスコーネルト少尉、たちまち濛々たる煙幕が広がる。
《なっ…また逃げるのか、ヘタレ共がゴラァ!!!!》
煙幕に向けて猛然と撃ちまくるバーリング。バレンツィーノ中尉もライフルを放つが、スコーネルト少尉のザクのシールドを掠めただけに留まる。
両腕の無いグフとほぼ無傷のザクは素早く、地下の鍾乳洞へ逃げ込んだ………。
静寂が訪れた基地。
戦いを終えた41中隊のもとに、ホバートラック「アルマジロ」が駆けつけた。
車体横のハッチが開くと同時に、血相を変えたサクラが飛び出す。
「………シンイチさん?!?!そんな……そんな、………あっ、あぁ……」
アッガイの下敷きになり倒れ伏すシンイチの陸戦型ジムを見るや、両手で顔を覆って途端に泣き崩れた。
《サクラちゃん、心配しなくていい!モリタなら大丈夫だ、生きてるよ!》
バーリングが呼びかける。
「………えっ?!でも、これ……下敷きに……!!」
《…まぁ、コイツのジムは処女を失ったっぽいけどな。……さぁ、このデカブツを退けるから下がった下がった!》
シンイチが即座にツッコミを入れる。
《どアホゥ、何もヤられとらんワイ!!…とにかく早くやってくれ、本当に押し潰されそうだ!》
元気そうなその声に、涙で濡れた顔を上げるサクラ。
《いくぞ、せぇのッッッ…………!!》
バレンツィーノ中尉とバーリングのジムがアッガイの脇腹に足をかけて押し、強引に退ける。
轟音とともに、巨体が地面に転がった。
シンイチのジムはゆっくりと上半身を起こし、コックピットハッチを開いた。
安堵のあまり再び涙をこぼし、駆け寄るサクラ。乗降用クレーンで降りてきたシンイチにそのまま勢いよく抱きついた。
「うッッッお?!?!……あぁ、サクラ……還ったよ。心配、かけたな。」
「もう、シンイチさんのバカッッッ!!無茶するんだから!!!…あたし、ずっと心配で………でも良かった、本当に無事で良かった……うっ、うあぁぁぁぁん……」
シンイチの胸に顔を埋めて再び泣き出すサクラの頭を、顔を真っ赤にしながら不器用に撫でる。
「きっ、君こそ……無事で良かった。格納庫もやられたって聞いてたから、サ。」
バレンツィーノ中尉とバーリングも、機体から降りてきた。
「…ま〜た、逃げられたなァ。今度こそデルタの連中やアークライト中尉達の仇を取れたのに。」
「生きていれば、どうにかなるさ。どうにでもできる。……それまでは、生き残ろう。」
「そうですね………必ず。」
再戦の決意を固めるシンイチ達。
ホバートラックからダンカン大尉やサブリナも降りてきて無事を祝い、さらに61式戦車に跨乗した基地の面々が次々と駆けつけて出迎える。
夕陽はすでに地平線の向こうへと沈みかけ、空には一番星が瞬き始めていた………。
第十二話 真剣勝負 終幕
幕間 だって気になったんだもん!!
格納庫内、損傷した機体の修理が進む。
「……なぁモリタ、こっそり教えてくれよ。」
愛機の前に立つシンイチに、バーリングが小声で問いかけた。
「ん?何を?」
「こないだの事だよ!…サクラちゃん、立ち直った後シャワー浴びてたけどサ…」
彼は先日サクラが立ち直った際のシンイチの「手腕」が気になっている模様、どうやら「寝技」を使ったと思っているらしい。何のつもりだこいつは…
「その…『抱いた(性的な意味で)』のか?あの時…」
少し考えたシンイチは、平然と答える。
「…ん、まぁ確かに『抱いた(ハグ的な意味で)』よ?なんか彼女が落ち着くってんで…」
「ホホーゥ!!!!」
素っ頓狂なリアクション。ホホーゥ?
「ホホーゥ?!?!どうしたお前?!」
「ガッッッッッッデム、マジか…!!お前、あの空気からサクラちゃんの純潔を?!凄いな…武士だよお前…」
イマイチ要領を得ず、シンイチの脳内が再び「?」で満たされる。朴念仁…
バーリングがさらに興味津々で聞く。
「で?で?で?サクラちゃんは、どうだったんだ?その………抱き心地は???」
「ん?抱き…何??まぁ体温は暖かかったけど…」
「暖かかった!!いいねぇ!!」
「何が『いいねぇ』なんですか?」
背後から声。いつのまにかサクラが二人の背後に立っていた。
「ホッッッ……?!ホギャァァァ!?!?」
とたんに飛び上がって驚くバーリング。シンイチも驚いて仰け反る。
「サ…サクラ?!いつからそこに?!」
「シンイチさんの『ん?何を?』のあたりからですね。」
「ホホーゥ、割と序盤ッッッ!!!!」
笑顔で答えるが、目は笑っていない。何かを察したバーリングは途端にしどろもどろになる。
「…あっ、あぁ…いや、ごめんねサクラちゃん違うんだ、ちょっとシンイチの、立ち直らせる話術というかテクニックというか、それが少〜しだけ気になったもんでね…」
「違わないですよね?」
突如、感情を込めない冷徹な声でバーリングの言い訳を遮る。
恐怖で固まるバーリングに向け、サクラが淡々と早口で捲し立てた。
「…あの時シンイチさんからやらしい事は何もされてません。シャワーを浴びる時も入り口まで支えてもらっただけだし服は自分で脱いだし何ならその前にシンイチさんはわざわざ部屋から出てくれました。あたしが辛かった時に必死に支えてくれたシンイチさんに何邪な事聞いてるんですか?」
語気が一段と強まる。
「シンイチさんはそんな節操の無い人じゃないです、とっても紳士的です。……それに比べて貴方はどういうつもりなんですか?そんなだからサラさんに蹴られたりサブリナさんに呆れられたりするんじゃないんですか?本気で去勢とか考えてみたらいいんじゃないですか?その辺のところ自分自身どう思ってるんですか???」
正論の集中砲火、さながら連邦宇宙艦隊の一斉射。相変わらず目は一切笑っておらず、こめかみには青筋が浮かんでいる。
「……………ゴメンナサイ、以後自重します…。」
肩をすくめて二回りほど小さくなったバーリングは、トボトボと自身の愛機に向かって歩き出した。
そんな彼の肩にナザレンコが手をやり、首を横に振るのが見える。
「………んもぅッッッ!」
ひとしきり思いを吐き出し、スッキリした様子のサクラ。
「は、ははは…そういう事ね、なんか…ゴメンね。」
目が点状態のシンイチが頬を掻きながらサクラに謝った。鈍感な彼も漸く何の事か理解した模様で少し顔が赤い。
「いいんです!シンイチさんは関係無いし。でも………」
サクラの脳内で、プール遊びの時のシンイチの逞しい体躯が浮かぶ。
(シンイチさんになら…………『抱かれて』も、いいかも………なんて。)
一瞬、良からぬ妄想がよぎる。
「ん?でも…何?どったの?」
「何でもないですッッッ、ご飯行きましょ!!」
顔を真っ赤にしながら背け、シンイチの手を引いて食堂に向かうのであった…………。
(…ちゃんと段階を踏まないと、姉さんに殺されちゃう…!!)
幕間 だって気になったんだもん!! 終幕
ハァーイ、ハーメルンの皆とその読者達ィ(道端の用水路の隙間からヌッと現れる)
第十二話を読んでいただきありがとうございます!!また毎度の如く最後まで深くお読みいただいている方々にはまことに恐縮の至り、感謝の気持ちでいっぱいですッハッハッハァァァァァン↑!!!!!!(号泣)
今回ジオン水泳部が初お目見えとなりました。今後はアッグやアッガイのみならず他にもまだまだ出てきて酷い目に遭ってもらうつもりです(爆)
ところでアッグって割と色んな外伝でちょいちょい見かける気がする、アレもう量産機って事で良いんじゃない?
陸戦型ジムのビームライフルは悲しいかな原作の第08小隊において敵に炸裂する事がついぞ無かったので、こちらで大いにブチかまさせてもらいました。今後もどんどんブチかますのでお覚悟を(?)
次のお話では暫く音沙汰無かったアイツが新型を携え復活します!!
次回第十三話「宿敵、再臨」
お楽しみにッッッ!!!!
…え?キリレンコ中佐がもっと酷い目(性的な意味で)に遭う様も見たかったって?
ダ メ だ っ つ っ て ん で し ょ ! ! !
可哀想なのは✖️けないッッッ!!