機動戦士ガンダム外伝 斬凶戦記   作:野武士山芋侍

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第十五話 譲れ得ぬもの

 

《………オストリッチ1から各機へ、IRSTが機影を探知。11時方向、方位245。高度3000、機数………9機。おそらくドップ、接近中…》

《…こちらユニフォーム1、合流まであと10分程度かかる。持ち堪えられそうか?!》

ガンペリーのパイロットから連絡、シンイチ達を乗せた輸送機部隊に脅威が迫っていた。

即座に、陸戦型ジムのコックピットに座るバレンツィーノ中尉がガンペリーのパイロットに伝える。

《オストリッチ1、こちらチャーリー1。コンテナを開いてくれ、迎撃を試みる。》

《…チャーリー1、それは許可できない。飛行に支障が…》

遮って、さらに続けた。

《黙って墜とされるわけにはいかない、10分くらいなら凌げる可能性はある…やってくれ。》

《……了解、幸運を祈ってるよ。》

バーリングが威勢の良い声で割り込む。

《ユニフォームフライトの仕事を奪ってやるさ、任しときな!!》

ガンペリー1、2番機のコンテナ側面が開き、仰向けに固定されていた陸戦型ジムがゆっくりと上体を起こす。

探知した方向、11時上空から迫る敵機。完全に上を取られて不利な状況。

《こちらチャーリー2、敵機が見えた!………撃ちます!!》

朝焼けの空に、ビームの光条が走った………。

 

そして、連邦軍某補給基地、ジオン公国軍襲撃下。

すでに外壁は突破され、外周の部隊は蹴散らされていた。

基地所属のジム小隊が、建物を背に負けじと撃ち返しつつ司令部に報告する。

《リマ1からHQ、外壁が一部突破された!!近隣の基地への応援要請は?!》

《こちらHQ、応援は要請済み。現在向かっているが……敵航空戦力に捕捉されたとのことだ、少し遅れるかもしれん。》

《………クソッ、なんでこんな時………ッッッ?!》

突如、横合いから現れるグフ。濃緑色のパーソナルカラー、大型の脚部はフライトタイプ。ハンスの乗機だ。

《………新型?!小隊各機デルタフォーメーション、囲め!!》

即座に距離をとる。僚機2機がグフの背後に回り挟撃を狙うが、大推力を活かして近づきリマ1との距離を一気に詰めた。

《……うぉ、マズい………!!》

盾をかざす。振り下ろされる大型ヒートサーベル………が、発熱量が足りないのか盾を切り裂く事なく受けられた。

すぐさま、ジム2機からの激しい集中射撃。

やむなくサーベルを引き抜いて盾にしつつスラスターを噴かし、左前腕の三連装ガトリング砲で牽制しながら後退する。

《……整備班どもめ、サーベルが出力不足だと……!!》

コックピット内で悪態をつくハンス。昨日自分をリンチした整備兵達への恨みが積もる。

(……こんな事で、還れなくなるのはごめんだ……アナ……)

連邦軍側の必死の抵抗もあり、ジオン側は攻めあぐねていた。

 

その頃、格納庫内では……。

「……やはり襲撃か、私も出る。」

松葉杖をつきながら現れる、茶色短髪の若い士官。

かつてハンス達とまみえて敗北し、この基地で療養とリハビリを行っていたアークライト中尉であった。

整備兵達は驚愕して駆け寄り、班長が心配そうに申し向ける。

「……ち、中尉殿……!!無理ですよ、その状態でMSは!!」

「なに、ワイルダー少尉のガンキャノンを借りて砲撃支援する。守備隊を少しばかり手伝うだけさ。それに怪我はもう……これだけだ。」

片足立ちして、松葉杖を少し持ち上げてみせた。

「……しかし、敵は結構な数で、手強いヤツも居るようですし…」

「ガンキャノンの重装甲なら怪我なく持ち堪えられるさ。それに増援が来るまでの辛抱だ。…『彼ら』が、来ているのだろう?」

期待を表しつつ、ニヤリと笑う。アークライト中尉には確証があった。

「…仕方ない、保証はできかねますよ。」

「私の独断だ、君達に何ら責任は無いさ。」

整備兵は渋々ながら、乗降用タラップへと彼を促す。戦闘は膠着の様相を見せはじめていた………。

 

基地上空まであと数10キロ地点に迫ったガンペリー小隊は、未だドップ部隊の猛攻に晒されていた。

シンイチの初撃により1機が墜ちたものの勢いは衰えず、不安定な機上からの射撃は転落や誤射の危険もあり、有効な反撃ができずにいたのである。

《……畜生、ハエどもが寄ってたかって…!!》

バーリングが悪態をつきながら撃ちまくるがまるで当たる気配がない。

《チャーリー3当てる必要はない、攻撃進路を逸らせるだけで十分だ!!》

バレンツィーノ中尉も撃ちまくりながら指示を出す。シンイチ以外の各機は、セカンダリ武器として用意した100㍉マシンガンを使っていた。

近接信管の類は無く直撃必須だが、それでも敵機を近寄らせない程度の効果はあった。

しかしー

《………?!チャーリー3、6時!!》

バーリングの背後、上空から迫るドップ。

《何………うぉっ!!!》

彼の陸戦型ジムが振り返った勢いでガンペリーが大きく傾く。あわや、落下寸前。

《………マヌケめ、もらった!!》

体勢を崩し無防備なMSを見逃さず、無誘導ロケット弾の照準を合わせるドップ。

と、そこへー

《……ユニフォーム1エンゲージ、待たせたな!!》

ユニフォームフライト、コールドウェル中尉率いるコアイージー(ジェットコアブースター)の中隊がついに合流した。横合いから突入し、稲妻の如き機銃の一撃でドップをバラバラに引き裂く。

《……ユニフォームフライトォォォ!!!》

バーリングが歓喜の声をあげ、フライパスするコアイージーにサムズアップを贈った。

開戦当初から地球の大気圏内で戦い続けている彼らは、ドップ部隊をほとんど寄せ付けない。コアイージーも性能を如何なく発揮し、瞬く間にジオン側を劣勢に追い込んでいく。

ーしかし。

黒煙と炎に包まれたドップが1機、ガンペリー小隊に迫る。闇雲に機銃を乱射し、1番機の推進用エンジンに命中弾を見舞った。

《……!!マズい、オストリッチ1被弾、左エンジンから出火!!》

《こちらチャーリー1、我々はここで結構だ、降下するから高度を落とせ!!》

必死に訴えかけるバレンツィーノ中尉。しかしオストリッチ1のパイロットは聞く耳をもたない。

《……何言ってる、ここで降ろしたら救援が間に合わんだろうが!いいから捕まってろ……降下まであと1分30秒……》

《自動消火作動せず、フラップが飛んだが……エレベーターはまだ無事だ、イケるぞ!!》

通信の背景にけたたましい警報音が混じる。そう長く飛べないのは明白であった。

《チャーリー1からオストリッチ1、無理はするな!!我々が降りたら直ちにベイルアウト(緊急脱出)を!!》

基地はもはや目と鼻の先、ガンペリー小隊が高度を下げ始める。ユニフォームフライトも並走しつつ降下。

目的地の友軍補給基地では数箇所から黒煙が上がっており、また時折小規模な爆発が起こるのが見えた。

《…オストリッチ1から最後の命令を伝える、2はこのまま一緒にフライパスしてジムを投下、3は基地北東エリアにランディング……zzgz…》

ノイズで通信が途切れるが、さらに続く。

《……生きて会えたら、またよろしくな……ggzzz…》

背景の警報音は、ひときわ大きくなっていく………。

 

再び、連邦軍某補給基地。

激しい戦闘が続いていたがついに連邦側が押され始め、彼らが陣取る基地北東部、つまり司令部のあるエリアにMS部隊が迫りつつあった。

ロケット弾ランチャーを両肩に装備したアークライト中尉のガンキャノンも必死に撃ち返すが、基地内を縦横無尽に動き回る見慣れない新型グフの機動力に翻弄され有効な支援ができない。

しかしここで、上空に迫るガンペリー3機の機影を捉える基地の面々。

《……ガンペリーが3機見える、増援か?!》

《中尉殿、11時!!》

歓喜の声をあげるアークライト中尉のガンキャノンに、ヒートホークを振り翳して迫るザクII。

《…!!舐めるなッッッ!!》

素早くその腕を掴んで抑え、空いた手でザクの肘に強烈な掌底を叩き込んで右腕をへし折る。そのまま脚を絡めて転倒させた。

《こいつは、返すぞ!!》

折れた腕から奪ったヒートホークを胸に叩きつけ撃破。彼の腕は全く衰えた様子を見せない。

しかし施設の陰からさらに旧ザクが現れ、バズーカを指向する。

《…ッッッ!!いかん……》

両腕でガードし備えるが、とたんに旧ザクの頭部が爆発し、ガンキャノンの面前でうつ伏せに倒れる。

バーリングの陸戦型ジムだった。マシンガンを右手に、ロケットランチャーを左手に携えている。

起きあがろうとする頭の無い敵機の背に、列機のキム伍長がさらにマシンガンを叩き込んで撃破した。

《久しいですねアークライト中尉殿!そいつは新車ですか?》

《……バーリング、やはり君か!…なに、新古車さ。状態は最高だがな。》

さらに降下する面々。ガンペリー1番機はよろめきながらも基地の外へ進路をとる。

《オストリッチ1恩に着る、幸運を……!!》

《チャーリー1、着地に注意!!》

実際、着地の瞬間を旧ザク2機が狙っていた。

接地する瞬間、体を捻って放たれたバズーカ弾を躱すシンイチのジム。

「ん゛ッッッ………ゔぅッッッ!!!」

限界ギリギリの急機動からくるGで目が眩む。が、そのまま気絶する訳にはいかない。

さらに、バズーカを放った敵機にスラスター全開で距離を詰める。旧ザクはバズーカを持ったままヒートホークを抜いたが、遅すぎた。

 

「胴オォォォォォォォーーーーッッッ!!!!」

 

ヒートホークが振り下ろされるより早く「抜き胴」が炸裂。瞬時に上半身と下半身に分断される旧ザク。

その死角を別の1機が狙うが、回り込んだバレンツィーノ中尉が銃剣で刺殺する。

わずかの間に4機の味方を失ったハンスは狼狽し、またその手際は彼に苦い記憶を蘇らせた。

(……ロングライフル持ちのジムに、何よりあの無茶苦茶な急機動……まさか?!)

地面を転がって大破するかつての愛機、屈辱の逃避行。

溢れ出す怒り。そして同時にー

(……こいつらを今ここで殺さないと、次はアナ…彼女が………!!)

考えるよりも先に、機体を動かしていた。大型ヒートサーベルを盾に全速で迫る。

(……発熱は、どこまで保つか……!!)

《例の新型だ!!チャーリー2そのまま行け、後方から援護する!!》

《リマ1から各機、チャーリーを援護!!》

バレンツィーノ中尉がライフルで脚を狙い、リマ小隊がマシンガンの一斉射撃で圧力をかける。素早い回避機動に命中弾は得られなかったが、ハンスのグフを大きく退がらせた。

《………泥人形共が、小癪な…うぉッッッ?!?!》

なおも胸部機銃を乱射しながら迫るシンイチのジム。叩きつけられたビームサーベルを受け止めるがヒートサーベルの発熱量が明らかに足りておらず、刀身が火花をあげながら徐々に溶け始めた。

《貴様はやはり、あの時の………!!!》

《どぉした新型!!斬れ味悪いんじゃないか、あぁ?!》

シンイチが柄にもなく接触回線で煽る。このままでは得物ごと切り裂かれるのは必定。

《打って、来いやあぁァ!!!!》

雄叫びとともに、さらに気勢を示す。威嚇するように閃く陸戦型ジムのカメラアイ。

ふいにハンスの脳裏に浮かぶ、いつしか聞いた敵の声。

(………一緒に、休暇といこう………)

「…………ッッッ!!!」

一気に襲いかかる死の恐怖。

気圧されて思わず後ろっ飛びに逃げ、残った味方にも退避を呼びかける。

《……ぜっ、全隊退がれ!!南東の倉庫エリアまで退け!!》

と、ここで緊急通信。

《コマツから補給基地攻撃中の各隊、誰でもいいから応答しろ。》

シンイチ達からさらに距離をとりながら、基地の施設に身を隠した。

とたんに強烈な集中砲火、残ったザク数機とマゼラアタックが後退しながら撃ち返す。

《……こちら攻撃隊指揮官ブレンドレ少尉、なんです大尉?!忙しいんだ!!》

《ポイントD9(ドーラ・ノイン)の物資集積所を抑えた、座標を送るからそこまで後退しろ。》

とたんに顔を顰めるハンス。

《……ふざけるな!!!あと少しなんだ、後退などするかァ!!!》

上官である事を忘れて怒鳴る。

「あと少し」が苦しまぎれに過ぎない事は彼自信痛感しており、コマツ大尉もまた見抜いていた。

冷静に返す。

《命令だ。………別の、極めて重要な作戦への参加要請が我が隊に来ている。キシリア閣下直々のな。……背くつもりか?》

とたんに、隣で起こる大爆発。マゼラアタックが撃破され爆散した。

モニターに映る爆炎の照り返しを受けながら、苦々しい表情のまま決断を下すハンス。

《………生き残った各機へ。遺憾ながら、次の座標へ一時撤退する。動ける者は続け!!》

シールド裏に装着した煙幕弾を全てばら撒く。

《…?!小隊長、後退ですか?!今更ここまで来て……確かなので?!》

訝しみ、思わず口調を荒げる旧ザクのパイロットに冷ややかに告げる。

《それなら貴様はここに残って殿をやるか?》

《な…んだとォ!!そんな、ふざけ……》

突如、旧ザクの背面に敵弾が直撃。コックピットにまで貫通し、機体内からパイロットは「姿を消し」た。

《…退け!!》

倒れ伏す旧ザクをよそに、直ちに全力で基地の外に駆け出す生き残りのMS達。マゼラアタックや装甲車がそれに続くが、猛然と迫る連邦軍の攻撃に次々と撃破される。

 

………やがて、基地は静けさに包まれた。

そこかしこに倒れ伏し、また擱座する両軍のMSと戦闘車両の残骸。徹底的に破壊された施設は戦闘の激しさを物語る。

《……逃げ…た?勝ったのか?》

リマ1のパイロットが疑り深い、確信の無い様子で呟く。

《いや、基地がこの様子では…………なんにせよ各隊第二陣に備えろ。負傷者救護を最優先。》

諦観したような雰囲気のアークライト中尉が何か言おうとして言葉を切り、残存部隊に指示を出した。

まさにその直後、皮肉にも彼の予想通りの命令が司令部から告げられた。

《至急至急、HQから各隊へ。誠に遺憾ながら……当基地は、燃料施設及び補給設備の損傷著しいため放棄が決定した。撤退準備に入られたし。繰り返す…》

全員が肩を落とす。

シンイチもまた、陸戦型ジムのコックピットで唇を噛んで悔しさに震えていた………。

 

某所、連邦物資集積所。ジオン軍占領下ー

今にも雨が降り出しそうな曇天の下にトラックが幾台も止まり、奪った物資の積み込み作業が進んでいた。

愛機から降りたハンスはヘルメットを脱ぐなり地面に叩きつけ、コマツ大尉のもとに大股で歩み寄る。

指揮官機のインシグニアが付いたグフ、コマツ大尉の愛機の元に彼は居り、副官のフレーゲル曹長と何やら話し込んでいた。

「大尉!!!コマツ大尉!!!」

振り向く二人。曹長は驚いた表情ながら敬礼を送る。

ハンスが何か言おうとしたが、即座にコマツ大尉が遮った。

「…再出撃なら認めんぞ、ここで物資を補給した後直ちにキャリフォルニアベースに帰投する。何か質問は?」

悔しそうに拳を握り、怒りに震えながらもなんとか声を絞り出す。

「……ッッッ、キシリア閣下直々の、御命令とは?」

「作戦の仔細は伝えられていない。とにかく急いで引き払うぞ。……突っ立ってないで、さっさと準備しろ。」

淡々と命令を下すコマツ大尉。いつも以上に腹立たしさが募るが、彼女の名前を出された以上従うしかない。

「………チッ!!」

舌打ちとともに踵を返し、大股で立ち去った。

フレーゲル曹長が不安そうにコマツ大尉に問う。

「…よかったんですか?」

「構わないさ。」

遠ざかるハンスの背を見送りながら、呟く。アナスタシアが駆け寄り、寄り添っていた。

「少なくとも、アイツらはまた生き延びた。今はそれでいい。」

続けて、今度は心の中で呟いた。

(…『次』は、難しそうだがな。しかし……何としても、こいつらだけは。)

絶望的な状況下、やつれた顔に諦観を滲ませつつも、彼はなんとか希望を見出さんとしていた………。

 

そして、連邦軍某基地。

先の補給基地より無事に撤退してから数日後、41中隊の面々に降って湧いたような話が持ちかけられる。

「ジャブロー、ですか?!」

バーリングが目を丸くした。ダンカン大尉が返答し、淡々と続ける。

「そうだ。………来るべき宇宙での戦いに備えての戦力増強のため、我々は宇宙艦隊に組み込まれることになった。ジャブローに移動ののち機種改変、再編成となる。」

「う、宇宙………!!マジかよ…ハァ……」

バーリングが愕然として椅子にもたれかかる。元々宇宙で戦っていた彼は、その損耗率の高さも知っていたからだ。

尤も、地球に降ろされる時も同じリアクションだったが。

パーシヴァル中尉が挙手し、質問。

「俺たちも、宇宙行きですか?」

「それはまだわからん、戦車分隊に限らず部隊員の処遇の仔細については、戦歴と宇宙空間適応訓練の結果次第との事だ。向こうに着いてから何か指示があるだろう。」

ダンカン大尉の説明を聞きつつ、少し離れて座るシンイチとサクラは顔を見合わせる。

互いに苦笑いを送ったが、二人の胸中には少しだけ「離れ離れになるかもしれない」という不安がよぎるのであった………。

 

第十五話 譲れ得ぬもの 終幕

 

 

幕間 星空の下

 

連邦軍某基地、宿舎屋上。

終日異動準備に追われ、ようやく作業の目処が付いたシンイチはここで一息ついていた。

すでに夜の帷が降りて、空には星が瞬いている。

「ん゛ッッッ………はあぁぁぁ〜〜〜……腰痛ぇ…」

大きく背伸びして、深呼吸。肩と腰を回して解していると、ふいに扉の開く音。

振り向くとサクラが居た。

「シンイチさん?」

「あっ、あぁ…サクラお疲れ!そっち、片付けどんな具合?」

「大丈夫です、ひと段落しました…シンイチさんは?」

腕を組み、少し唸って一言。妙なポーズと言い回しで答える。

「ん〜〜〜……まずまず、かなッッッ」

「何、それ!アハハハ…」

そこから二人は、くだらない話で盛り上がった。

バーリングの部屋の片付けを手伝っていたらベッドの下から「紳士向け」の本が出てきて「サブリナにだけは言うな」と口止めされた事、バレンツィーノ中尉の部屋では奥さんの写真立てがありとびっきりの美人だった事、ザジーの部屋には彼お手製のカレースパイスが常備されていた事などなど………。

一通り話し終え、屋上隅のベンチに寄り添って座る。

「………シンイチさん?」

ふいに、サクラがシンイチの方に顔を向ける。

「んー?」

「あたし………もしジャブローで、シンイチさんと離れ離れになったら嫌だなぁ。」

「俺もさ!」

即答する。立ち上がり、再び深呼吸しながら背伸び。

「…宇宙(そら)に上がるのは正直怖いけど、君と一緒ならなんとかなりそうな気がする。でも………もしそうならなかったら、辛いかな。」

背を向けたまま、率直に想いを伝えた。

「………シンイチさん………」

サクラも立ち上がり、互いに向かい合って目を合わせる。シンイチがそっと、彼女を抱き寄せた。

おもむろに、眼鏡を外す。

「………何も、見えないわ。あなたしか。」

「今は俺しか見なくていい。」

しばし見つめ合い、顔を近づける二人。サクラはゆっくりと目を閉じた。

そして……

「………あっ、あぁぁ、ダメだダメだ、が、柄にも無いことは、言うもんじゃないな!!ハハハハハ…!!」

シンイチが真っ赤になり、照れ笑いしながら顔を逸らした。

サクラは赤面したままポカンとした表情になったが、すぐに頬を膨らませて、

「………もぉぉぉ、シンイチさんの意気地なしッッッ!!ちょっと期待したのにぃ!!朴念仁!!酢ダコッッッ!!このッッッ……!!」

シンイチの胸元をポカポカと殴る。

「あっ、ハハハハごめんごめん、ホントごめんて!!…痛い、えっ、ホント痛い!!力強ッッッ!!こっわ!!スンマセンマジでスンマセン…てか、酢ダコ?!」

……ひとしきり「報復」した後ようやく落ち着き、シンイチから眼鏡を受け取るサクラ。

「もうッッッ………シンイチさんったら…」

 

サクラが少し背伸びして、シンイチの頬に軽くキスをした。

 

「………………………………………………え゜?」

とたんに目が点になり、フリーズするシンイチ。

「ふふっ、また明日!おやすみなさい!」

赤い顔のまま眼鏡をかけ直し、明るく笑ってその場を立ち去るサクラ。

…少しして、シンイチ再起動。

「………はッッッ?!?!へぇお゛ッッッ?!?!ほぇ、はぁぁぁッッッ?!?!?!」

事の重大さを把握したのか、全身真っ赤になって奇妙な叫び声をあげつつ頬に手をやったり、体を仰け反らせたり。やっぱり様子のおかしい人です。

満天の星の下、二人の距離はさらに近づいた………。

 

幕間 星空の下 終幕




はい、皆様久方ぶり…かな?うん、ちょっと空いたね!!お疲れ様です芋侍です。
ようやく書けました第十五話、直接対決の結果は「勝負に勝って戦いに負けた」的な雰囲気に仕上がったかなと自分で勝手に思っております。
今回空軍がめちゃくちゃ魅せましたね、特にユニフォームフライトの活躍はコロ落ちのそれを彷彿とさせるような暴れっぷり。
ジェットコアブースターは一般的なガノタには08小隊でのワイヤーアクション用小道具程度の認識(爆)ですがとある設定には「爆装したままでも空戦機動が可能」という化け物じみたものがあり、実際コロ落ちでもその性能を如何なく発揮する場面があります(力説)。
幕間は相変わらずてぇてぇフルバーストな二人、ちなみにシンイチのくっせぇ台詞はバーリングの口説き文句の受け売りだそうな。「急に何言ってんだコイツ?」と思ったでしょうがそれはバーリングのせいです、あーあ(?)
あと自分は眼鏡っ娘の眼鏡はバフアイテムの認識ですが「時と場合によっては外す事で魅力になる事もあるよね」派です……あ、痛い、石を投げないで、イテテテテ…
はい、そんなこんなで次回は皆でジャブロー行きます!!この時期にジャブローといえば皆様、もうお分かりですね?ここで「哀戦士」が脳内再生されれば100点満点、あなたは立派なガノタです。

次回第十六話「重力の底の底で:ジャブロー転身編」
お楽しみにッッッ!!!!

…え、バーリングの部屋から出てきた「紳士向け」の本のタイトルは何だったかって?
「地球の本物の海で見た!小麦色の肌100選」です。
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