機動戦士ガンダム外伝 斬凶戦記   作:野武士山芋侍

18 / 19
第十七話 重力の底の底で:ジャブロー防衛編

 

ジャブローに異動後、中隊の面々は多忙を極めた。

着任早々各員一階級昇進を命じられたかと思うと、立て続けに宇宙空間対応訓練が始まる。

特にシンイチ達MSパイロットは、MS転換訓練時に受けたそれとは比べ物にならないレベルの耐G訓練、空間認識能力向上訓練、体力錬成、その他宇宙空間での物理学教養等々。基本的にほぼ促成ゆえ、スケジュールはハードこの上ないものだった。

そんな慌ただしい一日が終わった夕刻。41中隊の面々は、ジャブロー基地内の食堂で遅めの夕食にありついていた………。

 

「……ん、この…何だ、ビーフシチュー?みたいなの激美味じゃねーか!!」

話し声や笑い声でごった返し、食欲をそそる匂いが充満する食堂。バーリングがフェイジョアーダ(黒豆と牛肉、豚肉を煮込んだブラジルの国民食)に舌鼓を打つ。

「んん、同感!!フェイ…何だっけ、何たらいうらしい。やっぱ本部の飯は一味違うなぁ〜」

シンイチも同じものを食べながら感嘆の声をあげた。その向かいではザジーがカレーライスを堪能しつつ、神妙な面持ち。

「うーーむ、しかしですね…俺は個人的にこのライスカレーはまずまず…日本の『DoCo壱番屋』に近い。確かに美味いが、スパイスの調合がややなってない……カルダモンが少ないのか?ブラックペッパーか……ともかくパンチが足りない。そもそも、味に深みが…云々かんぬん…」

ブツブツと分析を続ける。その様子に若干引き気味にバーリングが呟いた。

「…お前、店開けるよ。」

「そのつもりですぜ?」

ザジーは平然と答えた。彼の部屋の片付けを手伝ったシンイチも補足。

「ザジーの部屋凄かったぞ、お手製のスパイスの瓶が沢山あったんだ。めっちゃいい匂いだったし…」

「コイツのカレールーの味は俺も保証する。一度食ったが絶品だぞ!」

「へぇ〜それはそれは!」

パーシヴァル中尉もTボーンステーキを頬張りながら太鼓判を押した。

シンイチの隣に座るサクラは、付け合わせのミニトマトをつつきながら何やら顔を顰めている。

「うっ、うぅ〜…」

「…あれ、サクラどったの?それ苦手?」

「…………はい、これだけはどうしても…中の汁の、甘いんだか酸っぱいんだかわからない味が…」

言い終わらないうちにシンイチがひょいと摘んで、自分の口に放り込んだ。

天を仰ぎ、肩を震わせ、奥歯でミニトマトを噛み潰す。

「ん゛んッッッ……フウゥゥ〜〜〜ッッッ………」

口内に広がる、甘酸っぱい不快な風味。

「……うん、新鮮ッッッ!!あぁ〜!↑βカロテンの味ィ〜〜!!↑リコピンが俺の五臓六腑に染み渡るゥ〜!!」

眉間に皺を寄せながら、意味不明な呪文とともに鼻を摘んで素早く飲み込む。

「……俺も苦手なんだけどねコレ、分かるよ。」

「えっ、そんな…!!…あ、ありがとう、ございます」

「アツいなお前さんら、早く結婚しちまえよ!」

仲睦まじい様子の二人をバーリングが囃し立てると、サクラは途端に赤面する。

「へぁッッッ?!けッッッ……結婚?!……その辺は、まぁ、段階を踏みつつ……こう、ね!!!」

照れ隠しに軽く暴走するシンイチ。広い食堂の一角は和やかな笑いに満ち溢れた。

 

「…あれ?ところで、サブリナは?」

ここで、周囲を見渡してサブリナが居ない事に気づくシンイチ。バーリングがぶっきらぼうに答えた。

「あぁ、アイツなら北米を発つちょい前からなんか機嫌悪くて、今日も訓練終わってから部屋に篭ってるよ。飯に誘ったけどあっさり断られたぜ。」

事実、彼女はジャブローに降り立ってから今まで中隊の面々とほとんど口を聞いていない。

「えっ、それって…もしかしてご飯もまだですか?」

サクラが心配そうに尋ねる。

「まぁ、そうだろうな。俺たちが退いた後にこっそり来るんじゃね?放っときなよ。」

「そんな冷たい言い方しなくても…!あたし、お部屋に何か持って行きます!」

席を立ち、カウンターに向かうサクラ。何やら食堂の給仕と話した後、トレーにサンドイッチを乗せて足早に立ち去った。

バーリングがため息とともに呟く。

「……ハァ、健気な事だな…ありゃいい嫁さんになるよ。…放っときゃいいのに…」

そんな彼を、パーシヴァル中尉が窘めた。

「バーリング…あまり悪く言ってやるな。サブリナにしたって、多分思うところがあるんだろう。」

「なんか嫌な思い出でもあるんですかねココに?出身はオーストラリアでしょ?」

「そうだがな…まぁ、この際だ。話しておこう。」

それから、パーシヴァル中尉からサブリナの過去について聞かされた。

コロニー落としの被害を受けた当時のオーストラリア方面軍は早々と戦線を後退させ、民間人の退避や保護、救助活動もままならない程の混乱を見せていた。

そんな中、家族も家も何もかもを喪い路頭に迷っていた市民達に、物資援助や復興支援を行ったのは占領軍であるジオン公国軍だった。

しかし彼らも皆紳士という訳ではなく、サブリナとその友人達は兵士から辱めを受けそうになった事もあるらしい。

そんな彼女がいざ連邦軍に入隊し、初年兵訓練を受けるためにジャブローに赴いたところ、ジオンから支援を受けた事を良しとしない一派から「裏切り者」と謗られたという。

当時訓練課程教官を務めていたパーシヴァル中尉がその一派のリーダー格の人物に「喝を入れた」ところ謗りは治まったが、それでも彼女が受けた心の傷は癒える事はなかった………。

一通り話を聞いた面々はおし黙る。

「……姐さんに、そんな悲惨な過去が…」

ザジーが珍しく感慨深げに漏らした。バーリングも腕を組んで複雑な表情。

「気心の知れた俺たちと離れ離れになる不安も、重なってるのかもな。なんにせよ、彼女は今でもジャブローに詰めてる連中にいい顔はしない。」

「………なんか、できる事ないですかね。サブリナに。」

シンイチが顎に手をやり真剣な顔で呟くが、パーシヴァル中尉は明るく答える。

「なに、大丈夫さ。戦車分隊はわからんがMS隊と整備班は宇宙行きが決まってる。そのうちすぐ元に戻るさ…。」

食堂内は相変わらず他人事のような笑い声と喧騒で満たされていたが、沈黙した41中隊の面々が座る卓だけはそれがどこか遠くに聞こえていた………。

 

そして、サブリナの自室前。サクラがサンドイッチの乗ったトレーを手に佇んでいる。

「…よし。」

深呼吸。意を決して、数回ノック。

室内から、明らかに不機嫌そうなサブリナの声がした。

「………なに?アタイ今誰とも話したくないんだけど。」

「サクラです、サブリナさん何も食べてないって聞いたから…少しだけど、持ってきました。」

少し間が空いて、再び返答。

「………えっ、サクラちゃん?ありがとう。……待ってて、出るわ。」

ドタバタと足音がして扉が開くと、少し泣き腫らしたような目のサブリナが現れた。上はいつものキャミソールだが下はショーツ姿で、慌てて出てきたのが見て取れた。

「…ごめん、ね。なんか気ぃ使わせちゃって。それにこんな格好で。」

「あたしでよかったら、お話聞きますよ。何か嫌な事でもあったんですか?」

トレーを渡しながら問いかける。目に涙を浮かべるが、僅かに笑顔になった。

「…………そうね、色々吐き出した方が…スッキリするかも。入って。」

招き入れられて入ったサブリナの部屋は、まだ荷解きが進んでいなかった。脱ぎ散らかされた衣服や下着が、ベッドやデスクの上に放置されている。

「…ジャブロー行きが決まってから機嫌悪くなったって、バーリングさんが言ってました。ここで何か、嫌な事でもあったんですか?」

「……まぁ、そんなトコかな。」

それからサブリナは、サクラとベッドに並んで腰掛けて自身の出自を話した。

故郷のこと、遺体すら残らなかった家族兄弟のこと、その家族兄弟とは喧嘩別れしたままでお別れすら言えなかったこと、占領軍から辱めを受けそうになったこと、入隊してからも裏切り者の烙印を押されて謗りを受けたこと等々…

時折泣きそうになりながらもなんとか言葉を紡ぎ、想いを吐露する。

「………ジオンの奴らは死んでも許せないけど……ここでぬくぬくと過ごしてるモグラ連中の顔だって、正直見たくもないのよね。」

一通り吐き出した後、サブリナはひとつ深呼吸。

目元を拭って顔を上げ、先程より明るい口調で話した。

「だからって、バーリングや皆に冷たくするのは……違うよね、間違ってる。………アタイは、まだまだ弱いよ。ホントに情けな……あれ?」

サクラの方に目をやると、彼女は両手で顔を覆って啜り泣いていた。心配そうに声をかけると…

「……サクラちゃん?どったの?」

「そんな事ない、弱くなんかないです!!サブリナさんは!!」

バッと顔を向け、強い口調で発した。顔は涙に濡れている。

「……あっ、ごめんなさい…」

眼鏡を外し、ハンカチで頬と目元を拭った。

咳払いをして、淡々と話す。

「だって、だってですよ、普段あれだけ明るく気丈に振る舞って…そんな辛い思いをしてきたのに。」

「捕虜になった時だってそう。あたしなんか怖くて怖くて震えるしかできなかったのに、キシリア機関の人相手に、あんなに…」

ここでサブリナが少し赤面し、苦笑いしながら顔を逸らす。

「や、やめてよ…あの時はブチ切れてた勢いで、ちょっと、ね。」

「それに、です。」

もう一度ハンカチで目元を拭ってから続ける。

「それに、あたしは……姉さんが死んだのは本当に辛かったけど、そばで看取ることはできた。けどサブリナさんはそれすら許されなかった、お別れも言えなかったなんて………辛すぎます。」

サブリナの脳裏に、いつしかホバートラック内で聞いたサクラの悲痛な叫び声が蘇る。

「…いや、比べられるもんじゃないよ。アタイにしてみれば……目の前で肉親が死ぬ様を見る方が、よっぽどさ。それでも立ち直ってるサクラちゃんの方が…」

「……ううん!あたしは全然、まだ立ち直れてませんっ!!」

遮って、言い放つ。

「シンイチさんにはしょっちゅう甘えちゃうし、サラさんにはお風呂で背中流してもらってるし、眠れなくて添い寝してもらう事だって………あ゛っ!!!!」

うっかり爆弾発言。

しまった、とばかりに口元を覆い、全身真っ赤になって床にしゃがみ込むサクラ。サブリナは目が点になっている。

「………………ごめんなさい、今の…忘れてください。聞かなかった事にして…お願い……」

そんなサクラを見て、我に帰ったサブリナは苦笑い。

「…あっ?!…ハハハ、うん、アタイ何も聞いてない。聞いて…ないよ?ハハ、アハハハ…」

互いに目が合い、同時に吹き出した。

「……ぷっ!!」

「…フフっ!!」

お互いどんどん笑顔になり、それがなんだか妙に可笑しくて、嬉しくて。そこから大いに笑い合った。

「アッ、アハハハハハ!!添い寝って、背中流してもらってるって…………!嘘でしょ!カワイイんだから、ホント……!!」

「アハハハハハ、ちょっと、ホント聞かなかった事にして!!やだもう、シンイチさんに殺されちゃう!!アハハハ………!!」

ひとしきり笑った後、サブリナはサクラが運んできてくれたトレーに手を伸ばした。

「…あっ、ごめんねコレ、せっかく持ってきてくれたのに…食べないとね。ありがとう。」

「はい、どうぞ…!パンがちょっと固いかもですけど…」

サンドイッチを頬張る。ブラジル特有のモルタデッラサンド(フランスパンに厚切りハムとチーズを挟んだもの)。

食べながらサブリナは、サクラに見られないように手を止めながらこっそりと涙を流す。サンドイッチにほんのりと、塩見が足された………。

(バカばっかり。でも、皆いいヤツ………。)

 

※作者より:食堂で出てきたフェ…ヘァ、フェヤ、フェイジョアーダとモルタデッラサンド、めっちゃ美味しそうです。検索推奨ッッッ!!!!

 

そして、しばらく後。

ジオン公国軍キャリフォルニアベース。

まだ夜も明けきらない広大な飛行場にはガウ空中空母が十数機程横並びに並べられ、大きく開かれた正面ハッチにはジャブロー基地攻撃へ向かうためのMSが次々と乗り込んでいた。

全MSに搭乗待機が発せられたのが1時間程前、先行して現地に潜伏する部隊からの基地入り口発見の報を受けて決まった、総攻撃であった。

場当たり的という他はない、無謀な作戦。

隊長機のインシグニアを付けたコマツ大尉のグフも、静かにガウの腹へ収まる。

乗艦を終えると、コックピット内で両手を組んで独りごちた。

(…………ノリコ、アキヒコ…………。)

家族三人で写した、最初で最後の写真。サイド3ムンゾの噴水公園をバックにしたそれを、コンソール脇に立てて固定する。

(…コマツ大尉、君にもはや多くは言うまい。『勝利、然らずんば死』だ。わかっているな?…)

出撃前、上級司令部から告げられた非常な命令。大尉にはもはや後が無かった。

決意を胸に、ひとつ深呼吸。そして………

 

「…………………………許せ。」

 

ガウの正面ハッチが、大きな音を立てて無情に閉まる。外から僅かに差し込んでいた光は、完全に絶たれた。

(せめて……若い奴らだけでも。)

 

同じ頃、連邦軍総本部ジャブロー基地では警戒警報が発せられていた。宿舎を飛び出し、それぞれの持ち場へ駆け出す兵士達。

MSパイロット達も当然の如く例外は無く、即時搭乗待機が命じられていた。

けたたましい警報音で一杯になった格納庫内を他の仲間達とともに走り、陸戦型ジムのコックピットに素早く飛び込む。

シートベルトで身体を固定するシンイチ。

「やれやれ、久々にいい寝床につけたと思ったら………!!」

朝がけの出撃でぼやきながらも、その闘志は微塵も翳りを見せない。ヘルメットを被ると、起動する愛機のモニター越しに正面を見据える。

間を置かず、通信。

《………ジャブロー管制より各隊に通達、担当区域を割り当てる。第1大隊1中隊は北部エリア、ホワイトベース隊は地下艦船ドック、続けて…………》

各隊の担当エリアが次々と告げられる。そしてー

《………第41機械化混成中隊1小隊は、第144ハッチおよびその地表付近において迎撃に当たられたし。SRT-ユニット1も同様。その他………》

ここで、突如異変が起きる。

シンイチの陸戦型ジムのコクピット内に警報音。

「なッッッ……?!何だ、どうした?!」

急いでデジタル表示の計器を確認すると、ジェネレーター出力不足の警告。

即座に無線を開く。

「チャーリー2からチャーリー1、ジェネレーター不調につきスタンダップせず。こんな時に……!!」

冷静に返すバレンツィーノ大尉。

《了解チャーリー2、メカニックを向かわせる。チャーリー3及びチャーリー4は先のポイントに先行せよ。チャーリー2の不調解消後追随、合流する。チャーリー3了解か?》

《チャーリー3了解!……チャーリー2、今回ばかりはお前さんの分を残せない。諦めな!》

返答とともに煽るバーリング。

「うるへぇ!!……精々死ぬなよ、この酢ダコ野朗!!」

モニターから見えるバーリングの陸戦型ジムが手を振る。

コクピットが解放され、整備兵が声をかけた。

「准尉殿、不調ですか?!」

シートベルトを外しながら答える。

「……あぁ、ジェネレーターの出力不足だ!使い込んでるからなぁコイツも…ひとまず、見てやってくれ!」

出遅れたバレンツィーノ大尉とシンイチ。ハンガーから離れたバーリングとキムの陸戦型ジムは勇躍、指定された担当エリアに向かう………。

その背に向けて、おもむろにシンイチが一言。

「…何だろうな、なんか嫌な予感………。」

 

同じ頃、ジオン公国軍ジャブロー攻略部隊。

ガウ攻撃空母の編隊はジャブローの防空識別圏に侵入したと同時に、凄まじい対空砲火と敵戦闘機の迎撃に晒されていた。

直掩に出したドップ部隊はTINコッドやフライマンタ戦闘爆撃機に追い回され、次々と撃墜されてゆく。

またさしものガウといえども無傷では済まず、対空砲火や地上からのビーム砲撃が直撃し爆散する機体もあった。

「壮絶」という言葉で片付けられる光景ではない、両軍の戦う兵士達にとってはもはや地獄。

そんな中、ガウの前部ハッチが開いていよいよMSが降下を始める。

コマツ大尉の小隊を載せたガウも同様で、彼はその先頭に立ちつつ眼下の惨状を見やる。

炎上するガウ、降下中に対空砲火に撃たれ爆散するMS。

対空火器の正確な位置や迎撃機の配備状況すら把握しないまま強行された作戦……もはや無謀という他ない。

コマツ大尉は憤る。

(………愚策だ!!これでは、勝てない!!)

そんな最中、ガウがまた1機炎に包まれる。MSの降下が間に合わず、火だるまになりながら墜ちていくザク。おそらくそのパイロットの悲痛な絶叫が通信に混じる。

と、ここで、真っ正面から炎に包まれたフライマンタが迫っていた。

《………いかん!!回避運動!!回避だ!!》

《突っ込むぞ!!衝撃に備え……》

遅かった。ブリッジに突入したかと思うと、機体がぐらりと大きく傾く。

《何やってるんだマヌケめ!!操縦士は寝てたのか!?》

《いいから降りるぞ!!降下、降下!!》

ハンスが憤るが、コマツ大尉は遮って指示。

破壊された艦橋で発生した火災は機体各部に次々と燃え移る。

コマツ大尉のグフ、ハンスのフライトタイプ、アナスタシアのザクIIの順で素早く降下した直後、ガウは大爆発を起こし空中で木っ端微塵になった。

空中に投げ出された3機は爆発の凄まじい衝撃波に晒される。そんな中、なおも激しい対空砲火と戦闘機の銃撃。

ハンスは必死に姿勢制御バーニアを噴かし、上手く姿勢を立て直す。さらに左前腕のガトリング砲で敵機を返り討ちにした。

コマツ大尉も体勢を立て直しつつ、左掌のフィンガーバルカンで果敢に撃ち返す。

どうにか、着地。

アナスタシアのザクが隠匿砲台を見つけ次第、バズーカを撃ち込み破壊した。

《いいぞ、スコーネルト少尉!このまま直近のゲートに到達、基地内に突入する!!》

《了解!》

《分かってますよ……!!》

砲台からの射撃は凄まじいものの殆どは対空用で、事実それらは大抵ガウや降下してくるMSに指向されていた。

その隙を付き、ハンスのフライトタイプが滑るような機動で次々と砲台を破壊していく。

激しい砲火を潜り抜け、3機はようやくゲート付近に辿り着く。

運良くここまでMSの類とは出会さず、またゲート前を守るのは数輌の61式戦車だけだった。

それらをも難なく撃破したハンスは、アナスタシアのザクを呼びやる。

《ここだな…アナ、2、3発撃ち込んでくれ!ここから入れる…》

《了解、下がってて!》

バズーカを放つ。数発でゲートは破壊され、たちまち大穴が穿たれた。

《……よし、突入だ!!後ろを頼むぞ、まず俺が様子を見る。》

コマツ大尉のグフが一番乗りに破壊されたゲートを乗り越えた。単騎でどんどん奥へ進むコマツ大尉。

(……?奴め、妙に突出するな……何だっていうんだ?)

ハンスのフライトタイプが訝しみながらも続こうとしたその時、ゲート付近の天井が崩落した。

《なッッッ……通路が!!!!》

たちまち、MSが通れない程に埋まってしまう。

《………分断されただと?!大尉、コマツ大尉!!》

呼びかけると、途切れ途切れながら返答。

《…zzgg……やむを得んな、お前らは外周を警戒しろ…zgzzz……いつでも退け、俺は行けるところまで行…ggzzgz………》

《…?!何言ってる、死ぬ気か!!別のゲートから入って合流…》

そこへ、突如飛来する複数のミサイル。対MS特技兵に囲まれていた。

たちまち、アナスタシアのザクが脚部を破壊され擱座する。

《うっ……うわ……?!やられ…ggzzzz……》

《アナ!!……アリどもめがぁ!!!》

ガトリング砲を撃ちまくり、特技兵を蹴散らした。生き残りは足早にジャングルの奥へ逃げ込む。

《アナ、機体を捨てろ!!出るんだ!!》

必死に呼びかける。

擱座したザクのコックピットが開くと、煙とともにどうにかアナスタシアが這い出てきた。

ハンスは彼女を左掌に乗せると、再び飛来するミサイルや砲撃を避けながら飛び退き、急いでその場を離れた………。

 

ジャブロー基地地表、第144ゲート。

バーリングの陸戦型ジムがゲート内から勢いよく躍り出る。

《うぉらぁ!!!来やがれジオン野朗ども……あれ?》

気勢を示すが、敵はまだ居ない。

しかし空は対空砲火の炸裂で灰色に濁り、複数のガウ攻撃空母が大きく旋回している。

続けてキムの陸戦型ジムが周囲を警戒しつつ、恐る恐るゲートから出てきた。

《そ、曹長殿!あまり急に出ては……!!》

《なんだキム、ビビってんのか?奴ら空中でもうボコされてんだから今更……おっ?!》

同じゲートから、友軍のMSが飛び出してきた。しかも明らかに新型。

まずは濃紺とライトブルーの装甲、大型のビームライフルを携えたRGM-79SPジム・スナイパーカスタムII。おそらく隊長機。

その傍には紅白の精悍な顔立ちのジム、こちらはRGM-79Gジム・コマンド。

最後にキャノンタイプ、通常型と比べて堅牢な雰囲気のRX-77D量産型ガンキャノン。

その洗練された姿に、思わず感嘆を覚える二人。

《おぉぉ……新型か、凄いなこりゃ!!》

《こちらSRT-ユニット1、アラン・アイルワード少尉だ。……地表一番乗りは、逃したかな?》

ジムスナイパーIIから、若い声で通信。直ちに返答するバーリング。

《………はっ、僭越ながら、我々が。しかし敵は近くに居りません。如何しますか?》

《了解、ここは君達に任せる。…ホア、目標を指示してくれ!》

《ゲート144北西方に敵熱源、隠匿砲台に接近中。援護願います!》

とたんに駆け出す3機。その後ろ姿を見守りつつ、バーリングがキムに向き直り提案する。

《よし、俺たちも敵を狩りに行こうぜ。サーチ&デストロイだ!》

《いやいや無茶ですよ、情報も少ないのに…》

《大丈夫さぁ、敵数も少ないしなんたってホームグラウンドだから………》

ここで唐突に、かなり慌てた様子の友軍から通信。

《対空監視所87より緊急通信!!ゲート144直近の河川に不明反応、警戒!!》

それを聞いたバーリングはとたんに青ざめる。

《……144?おい、ここじゃねぇか!!どこから…》

反射的に河川に目を向けると、突如水面が盛り上がり、次の瞬間轟音と共に水柱が噴き上がった。

飛び出したのは、異形の機体。その両手に鋭いアイアンネイルを備えた明らかにジオンの水陸両用MS。

MSM-07ズゴック。情報だけは聞いていた、ジオンの新型機だった。

《海坊主かッッッ?!………いや、敵だ!!》

ロケットランチャーを指向するバーリングー間に合わない。

《クソめが!!》

撃たずに投げつけるが、弾かれた。

尚も迫るズゴックを胸部機銃で牽制しつつ、ビームサーベルを引き抜いて数歩下がる。

しかしここで背の高い樹木が背面に接触し、後退を阻まれた。

《曹長!!……畜生、射線が……!!》

横合いからマシンガンを撃って牽制するが、誤射しそうな距離故狙いが定まらない。

《まずったか?!……ヤバい!!!!》

大きく開かれたアイアンネイルが、バーリングの陸戦型ジムを貫く………!!

 

第十七話 重力の底の底で:ジャブロー防衛編 終幕

 

 

幕間 聞かれてしまった「想い」

 

シンイチ達がジャブローの食堂で夕食を終えた後。

格納庫のハンガー内には彼らの愛機、陸戦型ジム3機が収められ、解析部隊によるデータ取りと機能チェックが進められていた。

「はぁ、コイツらともそろそろお別れかぁ…」

その様子を眺めながら、感慨深そうに呟くバーリング。

…おもむろに、隣に立つシンイチが口を開いた。

「…なぁ、バーリングよ。」

「んぁ?どした?」

「………最近、サブリナと仲悪いのか?」

彼はミデアでの一件が気になっていた。そもそも北米を発つ少し前から、以前のように二人が仲良さそうに話している様子を見ていない。

バーリングがぶっきらぼうに答える。

「……まぁ、そうかもな。でもまぁそれならそれで、たとえアイツから嫌われたままでも、何も構いやしねぇさ。」

意外な答えに、シンイチが思わず声を上げる。

「なっ、何でだよ!ちょい前までいい感じだっただろ?!構わないなんて、そんな…」

少し声を荒げるバーリング。

「うるせぇな!…人の惚れた腫れたはお前に関係無いだろうが。俺がいいって言ってんだから、それで十分だろ。」

「………そうかよ、お前さんがそういうなら、まぁ…」

気まずくなり、顔を逸らすシンイチ。再び作業の様子に目を向ける。

…しかし、少し後。

「…………でもな、アイツには………正直惚れてんだぜ、俺は。」

バーリングがぽつりと呟く。驚いて再び顔を向けるシンイチ。

「えッッッ?!なら、なんで……」

「まぁ、聞きな。惚れてるのはそりゃそうさ。でも、だからこそだ。アイツには幸せになってほしいんだ。」

淡々と、想いを打ち明ける。

「アイツにはいっそ軍を抜けて、別のいい仕事見つけて、どっかで俺なんぞよりも『綺麗』で真面目な男見つけてよ。………ガキ産んで家族作って、それで幸せになってほしい。惚れてるからこそ、そう思うんだ。」

顔を上げて、吹っ切れた様子で言った。

「………俺はな!……俺みたいな小汚いヤツはな、アイツの話し相手に愚痴り相手、見守り役くらいが丁度いいんだよ。……『一緒に宇宙に上がりたい』なんて言いやがったら、ビンタした後ダンカン大尉に直談判して、艦隊の人選から外してやるさ。」

シンイチは複雑な表情を浮かべながら、その「想い」に何も言い返せないでいた………。

 

……すぐ近くの、物陰。サブリナが膝を抱えて蹲っていた。バーリング達に気付かれまいと必死に口元を押さえるが、涙だけはどうやっても止まらない。

彼の「想い」は、一言一句彼女に聞かれていたのである。

(…………バカ、ほんッッッとに、バカ…!!本物の………どバカ!!………大バカ野朗ッッッ!!!!)

 

幕間 聞かれてしまった「想い」 終幕




ハハッ(甲高い声)!!やあみんな、僕芋侍だよ。いっしょに遊(以下自主規制)
さぁさぁさぁさぁ始まりましたよジャブロー攻略戦!!そしていよいよ佳境を迎えてまいりました「斬凶戦記」地上編!!
えッッッ「宇宙編」とかもあるの?!と思われたでしょうが、あります(真顔)。
なんならアクシズ押すトコまで大まかなアイデアあるので、皆様に読んで頂けるなら0083時代編やZ時代編も書くつもりですマジで(爆)。
まぁその辺は一旦さておき、ジャブロー食堂で出されたメニューめっちゃ美味しそうよね。フェイジョアーダ食ってみてぇマジで。
ちなみにシンイチがミニトマトを噛み潰すシーンはとある映画のパロディです、分かったかな?
さて次回、いよいよ決着となります。誰が生き残り、誰が去るのか。全ては自分の脳ミソに書かれてます…ウフフフフ( ͡° ͜ʖ ͡°)
ジオン水泳部の「アイツ」も登場、乞うご期待!!

次回第十八話「重力の底の底で:ジャブロー決着編」
お楽しみにッッッ!!!!

…え、サラ×サクラの線は無いって言ってたじゃあないかって?
あー大丈夫大丈夫、あの二人まだそこまでイッてないからセーフセーフ(鼻ホジ)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。