●★●★●作者からの重要なお知らせ●★●★●
タグはR-15ですが、今回は随所にアダルティな表現を含みます。
苦手な方はブラウザバック推奨。
●★●★●重要なお知らせおわり●★●★●
サイド6「パルダ」、居住区。
ここには戦況の悪化を受けてサイド3ーつまりジオン本国から疎開してきた大企業の重役や、その家族が暮らす高級住宅街がある。
その一角にある、ひときわ小綺麗な一軒屋の寝室のベッドでハンスは目覚めた。
まだ眠い目を擦りながら上体を持ち上げ、隣で眠る恋人のアナスタシアを起こさないようベッドからそっと抜け出す。
床に脱ぎ散らかされた自分の服や下着を拾い集めて手早く着替えると、足音をさせないようゆっくりと出入り口に向かった。
そして部屋から出る直前、背後から声。
「……ハンス、どこ行くの?」
シーツで胸元を隠したアナスタシアが身体を起こして寂しそうに問いかける。肩から腕にかけて、素肌が露わになっていた。
「アナ。……ごめんよ、起こしたかな。」
ベッドまで戻ると軽くキスを交わし、彼女を横たわらせながら優しく囁いた。
「……気晴らしに、少し外の空気をね。疲れてるだろう?君はゆっくり休んでおくといい。」
ハンスの頬に手を添えて、甘えたような声を出す。
「ありがとう……早く帰ってきてね、一人は嫌よ。」
「そうだね、戻ったらドライブにでも……」
「うん、行こう……んっ……」
改めて深いキスを交わすと、ハンスはゆっくりとその場を離れて部屋から出た。
ドアを背にして立ち、一つ深呼吸。それから親指で自分の唇を拭い、先程のキスの感触を確かめる。
優しい表情で微笑むと、階段からリビングに降りた。屋内には彼とアナスタシア以外誰も居ない。
それもそのはず、この住宅は息子が久々に帰省すると聞いたハンスの父親がわざわざ借り上げたものだった。
玄関から出ると、人工の朝日が顔を照らし思わず目元に手を翳す。
辺りを見回すと歩道をジョギングする中年男性、向かいの家の玄関先で掃き掃除をする初老の女性、車道を走るエレカ……コロニーでの平穏な日常は、地球上のそれと大して変わらない様子。
その光景を見ながらハンスは、自分が所属する軍隊がその「平穏」をコロニーごと吹き飛ばしたとはにわかに信じがたく、複雑な想いを抱える。
頭では分かっていた、ギレン・ザビの提唱する「優良種主義」。そして心から共感を示していた事も。
自分がしてきた事に後悔は無い。後ろめたさを感じた事は一度も無かった………その筈だった。
しかしその「平穏」を改めて目にし、自分自身も一時とはいえそれを享受してみると、心の中に僅かながら迷いが生まれたような気がした。
ポケットに手を突っ込みながら、当てもなく歩道を歩き出す………。
コロニー「パルダ」の宇宙港に寄港し、艦内設備の点検や物資の積み込みを行うネオショー率いる小艦隊。
艦長の計らいでその間半舷上陸となったため、保守点検要員を除いたクルー達は久々の休息となった。
人工とはいえ数日ぶりに1G環境下に戻って久しい艦内居住エリアの通路を、サクラが急ぎ足で歩く。
サブリナの部屋の前で立ち止まると、扉を数回ノックした。
「すみませんサブリナさん、バイクの鍵をお借りしたいんですけど、今大丈夫ですか?」
反応が無い。もう一度ノック。
「……サブリナさん?もし寝てたのならごめんなさい、少しだけ……」
すると、室内からバタバタと慌ただしい音。扉が開いてサブリナが現れた……が、何故か風呂上がり直後のようなバスタオルを巻いた姿。
ポニーテールを解いた髪は乱れ、息は上がっている。
「サッッッ……クラ、ちゃん?ごめんね、アタイ今ちょっ…と取り込み中で……バイクの鍵ね、すぐ取ってくるから……待ってて。ゴメンね!」
すぐに部屋の奥に引っ込みしばらく待つと、再び顔を出した。
「はいコレ!バイクは格納庫の隅よ、自由に使って。…壊したら罰金1万ドルだからね♡」
電動バイクの鍵を受け取ると、サクラが申し訳なさそうに口を開く。
「すみません、なんだか忙しい時に…」
「いや、忙しいというか……そういうワケでも……まぁ忙しいっちゃ忙しい、のかな?アハハハ…」
その口ぶりはしどろもどろで、目が泳いでいる。
「……ところで、どっか行くの?」
「はい、艦が入港する時にコロニーの『河』から綺麗な湖が見えたので……バイクですぐ行けそうな距離だし、シンイチさんと一緒に行こうかなって。」
「あ〜いいわねぇ〜尊いわぁそういうの。アンタ達ホント健全なお付き合いしてるわよね、アタイ達も見習いたいくらい……」
サブリナがその尊さに感銘を受けつつ頷く……両手を頬に当てたので、バスタオルが少しずり落ち始めているのが心配だが。
ここでサクラがさりげなく部屋の奥に目をやると、ベッド上にバーリングらしき人物が横たわっているのが見えた。手と顔しか見えなかったが、心なしか二回りくらいやつれている。
「……?バーリングさん?と、何かしてたんですか?」
サブリナがギクっとなり赤面した。相変わらず目は水泳選手の如く泳ぎまくっている。
「んッッッ?!……いやぁ、その…二人でトレーニングというかストレッチを、ちょっとね。久々の1G環境下だから。アハ、アハハハ…」
その様子に色々と察するサクラ。彼女とて成人済みの女性ゆえに二人が「ナニ」をしていたか理解するが、あえて口には出さず引き攣った笑顔を浮かべる。
「……そう、ですか。ま、まぁ怪我とかしないように…あと、バーリングさんが死なない(?)程度に……こう、ウフフ、ウフフフフ……」
互いに笑い合っていると、そこへ…
「サ〜クラっ!鍵借りられた?そろそろ行こう、時間無くなっちゃう……よ?」
シンイチがサクラのすぐ背後にひょいと現れ、気さくに声をかける。
「あ゛ッッッ、シンイチさん今来ちゃダメ!!!」
サクラが振り返るやいなや、シンイチの目元を片手で覆う。
「ぐぉッッッ?!?!目が、目があぁぁ!!!え、何何ッッッ?!?!」
その拍子にサブリナに肩が当たり、彼女の身体に巻いていたバスタオルがはらりと落ちる。
引き締まった豊満かつ健康的な裸体が露わになる寸前、もう片方の手で部屋のドアを素早く閉め、かろうじて事なきを得た。
この間、僅かに1秒ジャスト。
(セッッッ………セーーーフッッッ……!!!バレンツィーノ大尉直伝の『英国紳士ディフェンス(仮)』、見よう見まねでもなんとかなるものね……)
サクラのその身のこなしは、彼女がジャブローで男湯に突撃しかけた際に見せたバレンツィーノ大尉のそれを彷彿とさせるのであった。
「あ、あの……サクラ?痛いんだけど。」
ハッとして振り返ると、目元が真っ赤になったシンイチ。まるで引っ叩かれた後のようになっている。
「あッッッ……?!ホントごめんなさいシンイチさん、これには深いワケが………!!!」
「いや、いいよいいよ!何かワケがあるなら全然…!」
必死に弁明するサクラを優しく宥めるシンイチ。一連の茶番劇は幸いな事に、他の誰にも見られてはいなかった………。
そして、コロニー「パルダ」の綺麗に舗装された道をゆく1台の電動バイク。
かつての名車「スーパーカブ」に外観を似せられたそれに、シンイチとサクラが仲睦まじく二人乗りして揺られている。
「……相変わらず調子良いなこのバイク!!収まり良くて乗りやすいし、さすが旧世紀の名車!!」
「中身は普通の電動バイクだから、運転も簡単そうですよね!!シンイチさん帰り運転させてよ!!」
「あぁ、いいよ!!……もうすぐ着くよッッッ!!」
風の音で声を遮られないよう大声で会話していると、バイクは舗装されていない道に逸れる。その先に、サクラが見つけていたコテージが見えてきた。
「おッッッ……と、こっちはちょいと荒いな……しっかり捕まっててよ!!」
「はいッッッ!!」
先程よりバイクの揺れが増し、サクラはシンイチの腰にしっかり抱きつく。
少し走ると、コテージに到着した。とんがり屋根で古めかしいデザインの一軒家。
「………ここか。お〜雰囲気いいね!!でも入っちゃマズいかな?」
薄暗い室内には誰も居らず、また入り口のドアノブには"CLOSE"と書かれた札が下げられている。
「入れないみたいですね……」
「んー…どっか座れそうなところは………おっ!」
シンイチが建物を見回すと、湖畔に面した側にテラスが設置されているのを見つけた。
そこには、おしゃれなデザインの背もたれ付きの椅子が2脚と丸いテーブルが置かれている。
椅子のうちの1脚に目をやると、僅かながらどこか懐かしいような、不思議な既視感を覚えた。
「………?………テラスを足跡で汚しちゃ悪いな。いっそここでいいかな?」
テラスに上がるための短い階段を指差すと、サクラは嬉しそうに答える。
「はい!……あの椅子じゃ、くっついて座れないですから。」
「まッッッ…?!まぁ、そう…ね。」
積極的な様子の彼女に若干照れつつ、テラスに歩み寄る。
「そんな汚れてなさそうだな、このまま座っちゃうか。」
シンイチが一番下の階段に腰を下ろした。サクラもそれに続くが…
「あっ、ちょい待ち!!」
階段を軽く手で払い、細かい砂や小石を払った。
「シンイチさん……これくらいいいのに、また手が汚れちゃったね。」
「なに、いいって!手が汚れるくらい、君のためなら………ね!!!!」
無理して格好の良い台詞を吐こうとしたが、途中で照れ臭くなって誤魔化す。
互いに笑い合うと、改めて寄り添い階段に座った。
静かな湖畔では時折水鳥が降り立っては飛び立ち、その羽音と鳴き声しか聞こえない。
その光景は地球のそれとさほど変わらず、違いと言えば頭上にも街並みが見える事と、風の音がほとんど無い事くらいだった。
シンイチが水面から飛び立つ水鳥を何の気なしに目で追っていると、サクラがこちらに顔を向けている事に気づく。
無言で見つめる彼女と目を合わせひとつ深呼吸。
そして意を決して顔を近づけ、互いに唇を重ねた。
手はすでに恋人繋ぎで、一旦唇を離したと思うともう一度重ねる。
「んっ……!」
サクラが短い声を漏らした。シンイチは彼女の後頭部に手を回して優しく撫でる。
何度もキスを繰り返した後、ようやく唇を離す二人。唾液が短く糸を引いていた。
互いに口元を拭うと、サクラがおもむろにシンイチの膝の上に座って身を委ね、いつぞやのコックピット内のような体勢になった。
「重くない?」
「ぜッッッ…全然!!大丈夫、さ!!色々とね!!」
シンイチの全身が強張り、挙動不審さが唐突に顔を出す。
「……シンイチさん?」
「あっ……あぁ、何だい?」
気を取り直しながら優しく返すが、ここでサクラは俯いて目を逸らしてしまう。
「最近すごく……無茶してるよね。」
「………?!ど、どうしたの?急に。そんなつもりは……」
意外な台詞にシンイチは戸惑い、再び顔を上げたサクラは急に強い口調で話し始めた。
「嘘よ!!知ってるのよ、あたし!!この前モビルアーマーと戦った時だってすごく危なかったし、ここに来る前のテスト飛行だって無茶な機動してたってバーリングさんから聞いたし……!!」
途中から早口になり、そのまま一気に捲し立てる。シンイチは驚いて言葉が出ず、また言い返す暇もない。
「……怖いの。シンイチさんがいつか遠くに逝っちゃうんじゃないかって思ったら、何も考えられなくて……!!」
恋人繋ぎしていた手を一旦解き、シンイチの手を取って自分の左胸にあてがった。
「ちょッッッ………!!!!」
「いいの、触って。あたしの、ここ。」
振り解こうとしたシンイチの手をサクラは強く握って離さない。掌に柔らかい感触と、心臓の鼓動が伝わる。
「わかる?………あたしずっとドキドキしてるの。怖くて怖くて、治まらないの……」
一呼吸置いたかと思うと、再び早口で捲し立てた。
「……シンイチさんもしかして、死にたがってるの?姉さんのところに逝きたくて、姉さんに会いたくて、それで無茶してるの?!……もしそうなら、あたしシンイチさんの後を……!!!」
シンイチが言葉を遮って、口を塞ぐように唇を重ねる。今度は互いに舌を絡めるほどの長いキスだった。
「んんっ!!…ふっ……んむっ………」
吐息とともに短い声が漏れ、サクラの頬を涙が伝う。
唇を離し、シンイチが優しい声で宥めた。
「……俺は、死ぬつもりは無い。絶対に、どこからでも、何度でも還ってくる。『どこにも行かない』って約束したろ。」
一旦目を逸らして言葉を探す。
「それに………あまりこういう事は口に出すもんじゃないと思うけど、この前夢の中で君の姉さんに逢った。」
サクラがハッとして、息を呑んだ。
「姉さん………?!」
「うん、妙にハッキリした夢で………そうだ、彼女から君の事を託されたよ。『愛してくれてありがとう、幸せにしてあげて。』って言ってた。」
彼女と目を合わせたまま、いつもの頼もしい声で言い聞かせる。
「俺はもちろん、言われるまでもなくずっとそのつもりだ。たとえ何があってもね。」
「シンイチさん、シンイチさん……!!大好き、大好き、大好き!!どこにも行かないで、死ぬまで……ううん、死んでも一緒に居て……!!」
溜め込んでいた想いを一気に吐露するサクラ。顔は涙に濡れている。
「当たり前だろう、あの世でだって一緒さ!!」
改めて深いキスを交わすと、今まで無味無臭だった唇にほんのりと塩味が足されていた………。
しばらくして、サクラはようやく落ち着きを取り戻した。震える手で眼鏡を外して涙を拭う。
「……大丈夫?」
「………うん。」
「そろそろ、行こうか。」
「………うん。」
シンイチが促すと、サクラはゆっくりと立ち上がった。
「よッッッ……しゃ!!!」
気を取り直すように、続けてシンイチが勢いよく立ち上がる。それから二人で仲良く手を繋いで、バイクの下へ歩き出した。
到着するや、シンイチがサクラに向き直る。
「さてと、帰りは君が運転だったよね。操作は大丈夫?」
「はい、多分……運転免許はエレカだけど。」
※作者より:「こっちの世界」でも普通or中型自動車免許で原付は乗れますがカブは基本ダメです(ただし排気量による。49ccのカブならOK)、真似すんなよッッッ!!
「要領はほぼ同じさ、エレカの免許持ってたら小型電動二輪は乗れるし。……まずキーを刺して回したら緑のランプが……………ん、あれ?」
キーシリンダーにキーを差し込んで回すが、メーター横のニュートラルランプは真っ暗なまま。何度試しても一向に点かない。
「まさか……いやまさか、壊れた??いやそんな……」
シンイチの額に冷や汗が滲み、「罰金1万ドル」が脳裏に浮かぶ。
「……ん?まさか、これって………」
ウィンカーやライトの操作スイッチを弄っても反応しない。つまるところ……
「バッテリー切れ……ってコト?!?!」
「ウソぉ?!?!」
二人で素っ頓狂な声を上げる。
「どうしよ……集合まであと3時間はあるけど、コイツを押して行くのもなぁ……おっ!!」
困り果てたシンイチが道路を見やると、遠方からオープンタイプのエレカが1台近づいてくるのが見えた。
「………仕方ないな、かくなる上は恥を忍んで……!!」
道路脇に立ちエレカに手を振ると、彼らの傍を通り過ぎて少し離れた所で停車した。
が、シンイチはこのエレカを呼び止めたのを若干後悔することになる。
「…………あっ、ありゃマズい……か??」
通り過ぎる際、車内に見えた人物が着ていたのはジオン公国軍の軍服。歳の頃は自分達とそう変わらないが、階級は明らかに上だった。
(停めちまった。できればそのまま行ってくれんかな……)
その願いも虚しく、運転席から男性が降りてきた。側面を刈り上げた短めの金髪に、自信に満ち溢れた顔と鋭い目付き。
男性はシンイチの思った通りジオン軍人、そして雰囲気的に最も苦手とするタイプであった。
「何か、用かな?連邦軍の………准尉、だな。」
思わず姿勢を正し、敬礼する。
「………休養中とお見受けします、少尉殿。大変失礼しました。ただ少し……」
申し訳無さそうに目を逸らす。
「少し、何だ?」
少なくともこの場で撃ち殺される事は無いと踏んだシンイチは、覚悟を決めて申し出た。
「………もしよければ、その……自分達の電動バイクの、充電をさせていただけたら。」
途切れながらも、なんとか言葉を捻り出す。
ジオンの若き士官ーハンス・ブレンドレ少尉はフッと笑うと、シンイチに笑顔を向けた。
「いいだろう、ここは中立国。戦争は無しだが助け合ってはいけないという決まりも無い。」
「!!あっ……ありがとうございます!!」
「アナ、ケーブルを出してやってくれ。」
助手席に座っていた同い年くらいの女性士官が、エレカから降りながら黙って頷く。
サブリナより少し薄い褐色肌の、おかっぱ風金髪ショートヘアの女性士官。
サクラと目が合うと、優しそうな笑顔を向けた。思わず会釈するサクラ。
「どうぞ、繋ぎ方はわかりますか?」
女性士官ーアナスタシア・スコーネルト少尉から充電用ケーブルを受け取るシンイチ。
「あっ、大丈夫です!俺工業高校の出なので、しかも電気工学専門!!」
ニカッと笑う。
「そうなの?フフフ……!」
その勢いと口ぶりに、思わず笑顔をこぼすアナスタシア。慣れた手つきでバッテリーを繋ぐと、すぐに充電が始まった。
「これで良し。まぁ2〜3分くらい繋いでおけば、帰りはなんとか………あっ、少尉殿、お時間は……」
「大丈夫だ、何も気にする事は無い。」
ボンネットに腰掛けたハンスの声は、心なしか先程より冷たくなっている気がした。
シンイチは彼の隣で車体にもたれ、地面に腰を下ろして充電を待つ。
するとおもむろに、ハンスが口を開いた。
「君、歳はいくつだ?」
「………はい、23です。」
「そちらの彼女は?」
サクラの方を顎でしゃくる。アナスタシアとにこやかに談笑していた。
「彼女はハタチです。もうすぐ21だけど………見えないでしょ?」
「どうだろうな、この歳頃だと分かりにくいから………あと、年上なら余計な気遣いは要らない。この際だ、堅苦しい敬語も無しでいこうじゃないか。」
「いや、そういう訳には……」
「構わない…………ハンス。ハンス・ブレンドレだ。」
「………シンイチ、シンイチ・モリタ。よろしく少尉殿。」
握手を交わす。
そして彼の意を汲み気さくな口調に変えるシンイチ。バイクの充電はもう少しで終わる。
「君は………僕が思っていた連邦兵のイメージと、違うな。」
「そりゃあ、どうも。もっとオラついてるかと思った?」
シンイチがニヤリと笑い、精一杯のジョークを飛ばす。
「君はそういうタイプに見えないよ。なんだか………そうだな、武道を嗜んでいそうだ。」
「わかる?剣道三段。」
指を三本立て、得意そうな表情のシンイチ。
ここでハンスが何かを感じ取るが、あえて押し殺した。
「………そうか。それで、スペースノイドで敵兵たる僕達への接し方が丁寧な訳だ。」
「まぁ、武道云々って言うよりも……よっこらしょ」
立ち上がりながら、淡々と語る。
「そもそも俺はアースノイドがどうだとか、スペースノイドがどうしたとか、そんな事には興味が無くてね。生まれた場所なんて何も関係無いさ。」
予想外の言葉を聞いたハンスは、思わず固まる。
「…………!!」
やがて大きく目を見開き、たちまち笑い出した。
「ハッ、ハハハハハ!!……そうだな!君は実に面白いヤツだ、素晴らしいよ。」
「は、はぁ、そりゃ………どーも。」
突然笑われてばつが悪くなったシンイチは、顔を背けてバッテリーの様子を見る。
「………大丈夫そうだな、そろそろ行くか。」
「あぁ、帰路気をつけてな。」
改めて向き直ると、ニヤリとしながら礼を述べる。
「ありがとう、ホント助かった。そっちこそな。」
バッテリーからケーブルを外し、カブに装着。キーを回すと見事に復活した。
それから互いのパートナーを呼びやる。ハンスとアナスタシアはエレカに乗り、シンイチとサクラはバイクに跨った。
「ハンス!」
去り際、バイクの荷台に乗ったシンイチがハンスに呼びかける。
「戦場では………容赦無し、恨みっこ無しだぜ!!」
「……当たり前だ、お互いにな!!」
エレカとバイクは、それぞれ反対方向に向けて走り出した………。
第二十四話 目障りな休日 終幕
幕間 死ぬなバーリング
シンイチ達がネオショーに帰艦する直前。
MSデッキにはいつものように各々の愛機が並んでいるが、頭部機銃や武装の砲口にはサイド6政府の要望から大きな封印テープ様のものが貼られていた。
これを許可なく一枚でも破ると「大変な額の罰金を払わなければならない」らしい(ってホワイトベースのブライト艦長が言ってた)。
そんな中、バレンツィーノ大尉と彼の愛機の整備を担当するコールマン軍曹がジムスナイパーカスタムの足元で話し込んでいる。
「……左肩のスラスターが咳き込む件、どうにかなったかな軍曹?」
「取っ替え済みです大尉殿、次の戦闘では問題無いかと………あっ、えっ?!」
コールマン軍曹が途端に素っ頓狂な声を上げる。バレンツィーノ大尉の背後に「何か」が現れた模様。
「なっ、何だどうした?一体………」
振り返るとそこには……
「アッ、オツカレサマデス…」
二回りくらい痩せ細ったバーリングが居た。か細い声で挨拶したと思うと、ヨロヨロと歩きながら自分の愛機に向かっている。
その変わり果てた姿にバレンツィーノ大尉は戦慄しつつも、急いで駆け寄り問いただす。
「バッッッ………バーリング曹長?!?!君なのか?!?!何があった?!?!」
「イヤ、ナニモ……ナニモアリマセン…アソコニハナニモ……」
蚊の鳴くような声で呟いたかと思うと、たちまち膝から崩れ落ちた。
「うおッッッ、曹長殿!!!」
すかさずコールマン軍曹が支える。
「ニッ、ニンジン……ボクノ、ニンジン……」
「何を言ってるんだ、ほとんど聞こえないぞ!!それにこの痩せ方は……まるで干物じゃあないか!!」
普段の彼からは想像も付かない程覇気の無い様子。最早そのまま気絶、というか衰弱死してしまいそうな勢い。
「あぁもうッッッ……コールマン軍曹、その干物を頼む!!!」
「えっ?!?!は、はぁ……」
若干引き気味のコールマン軍曹にバーリングを託し、急いでどこかへ駆け出すバレンツィーノ大尉。
…数分後、彼の手にはチューブ飲料が数本。紅茶フレーバーだが加糖タイプで、好みに合わないため飲まずに取っておいたものだった。
「さぁ、飲むんだバーリング。かなり甘いが……今の君には必須だ、さぁ!!」
「アッ、アザス……」
ストローに口をつけて飲み始めた。一口毎に身体が肉付きを取り戻す。
そして、全て飲み尽くすと………
「ぷッッッ……はぁ!!!復ッッッ活ッッッ!!!ジョナサン・バーリング復活ッッッ!!!」
どこぞの中国拳法の達人のような台詞と共に勢いよく立ち上がるバーリング。奇跡が起こる、っていうか起こった。
バレンツィーノ大尉が一安心し、改めて問いただす。
「全く、心配させないでくれ。それで………何があったんだ?」
「いやぁ、ちょっと……サブリナと『トレーニング』、いや『ストレッチ』をしてて、その……『盛り上がって』しまいまして、ね。」
バーリングが申し訳無さそうに頬を掻きながら答えると、大尉はとたんに何かを察した。呆れた様子でため息をつく。
「……成る程、それで彼女に『こってり搾られた』、または『搾り取られた』……というところか?」
「そりゃもう!!ありゃサキュバスですよ!!」
自信満々かつ少し嬉しそうな様子、多分あんま反省してないぞコイツ。
「いやぁ〜今回ばっかりは流石に、俺の『弾倉』も空っぽに………」
「不埒者ッッッ!!!!」
「コ゜ッッッ?!?!」
バーリングの鳩尾に叩き込まれるお仕置きの一撃、いうなれば「英国紳士ボディブロー」。
「他人の惚れた腫れたに口を出すつもりは無い。年頃の男女が二人っきりで集えば『そういう事』にもなろう………ただし!!モリタにも言ったように『節度を持ってほどほどに』しないかッッッ!!!!」
バレンツィーノ大尉が一喝する。
「うぼぁッッッ……!!サ…サキュバスが相手でも?」
「たとえサキュバスが相手でもだ!!!」
レベルの低〜いお叱りを受けるバーリング。
なお、サブリナに至っては肌ツヤッツヤのテッカテカ状態で、ドライブデートから帰ってきたシンイチとサクラを上機嫌で出迎えるのであった………。
ちなみにバッテリー切れを起こした件についてシンイチは罰金100ドル徴収されたとさ。
幕間 死ぬなバーリング 終幕
夏だ!!酷暑だ!!てぇてぇだ!!(挨拶)
はい、どうも皆様こんにちはこんばんは芋侍です。
今回は二度目の休暇回という事でね、てぇてぇ増し増しでお送りさせていただきました!!でもシンイチ×サクラちゃんはちょいとチュッチュさせすぎたかな、うんさせすぎたわゴメンね(反省)
勘のいいガノタ諸氏はお気づきかと思いますが、例のコテージはファースト第34話でアムロとララァが初めて出会った場所です。あそこがなんかの機会で登場した時は「お〜シンイチとサクラちゃんはこの辺でチュッチュしてたのか…」と思い出していただければ。
さて次回、サイド6からの帰路で第二小隊、つまりアークライト中尉とゆかいな仲間達withガンキャノンが魅せます。ザンジバル級「ケーニヒスベルク」も再登場、艦隊護衛の一翼を担うサラミス級「ユキカゼ」を交えた再戦の行方は…?!
次回第二十五話「二番手の意地」
お楽しみにッッッ!!
…え、バーリング×サブリナとハンス×アナはそれぞれ何回「致した」かって?
それぞれ16回と2回です。バーリングはガチで死にかけてました。