●★●★●作者からの重要なお知らせ●★●★●
タグはR-15ですが、今回は幕間にアダルティな表現を含みます。
苦手な方はブラウザバック推奨。
●★●★●重要なお知らせおわり●★●★●
暗礁宙域を逃げる1機のザク。僚機は既に居らず、母艦も沈められた。
進行方向を敵に悟らせないよう、細かい方向転換と姿勢制御を繰り返してデブリの陰に素早く滑り込む。彼とて伊達に長くザクのシートを温めていた訳ではない、その証拠に機体には数個の撃墜マークが刻まれていた。
そして仲間達も同じく、連邦艦隊との戦いを幾度となく潜り抜けてきた手練ればかりの筈だった。
一縷の望みをかけて、近くまで来ているであろう友軍との通信を試みる。
《ハァッッッ、ハァ……こちら、第203哨戒中隊第1小隊所属、コールサイン『ホワイト4』……誰でもいい、誰か応答してくれ!!》
返答はなく、ノイズが無情に耳を劈くのみ。
《……こちらホワイト4、誰か応答してくれ!!近くの友軍、誰でもいい!!頼む……!!》
縋るような想いで再送。すると………
《………zzgzgzz………こちらチベ級『グラーフ・シュペー』、ホワイt…ggzzzz………応答しろ……zzzg……》
間違いなく友軍。ひとつ安心するとともに思わず笑みが溢れる。位置を送るべく再び口を開くが、次の瞬間ー
ザクの背後にサーベル2本差しのジムが現れたと思うと、バックパックにビームサーベルを真っ直ぐに突き立てコックピットまで貫通させる。
素早く引き抜き、その背を蹴っ飛ばして距離を取ると、刺された箇所から生じた火花が推進剤に引火し木っ端微塵に爆散した………。
《………こちらチャーリー3、ネオショーへ。逃げおおせた1機を仕留めた。ポイントα-9宙域はクリア、繰り返す、α-9はクリアだ。どうぞ。》
シンイチが母艦たるネオショーに連絡すると、少し間が空いて返答。
《チャーリー3、ポイントα-9の制圧を確認しました。……少し離れ過ぎているので、チャーリー4との合流を至急お願いします。》
サクラの声。いつもの早口気味な通信だが、明らかに心配が滲んでいる。
(まったく俺らしくない、孤立するとは………)
自戒しながら、列機であるチャーリー4のバーリングに連絡。
《了解、チャーリー4と急ぎ合流する。チャーリー4位置を送れ。》
今度は間をおかずに返答があった。
《こちらチャーリー4、今向かってるが……さっき爆発が見えた、まさかお前じゃないだろーな!!》
苛立ちと不満が混じったような声が響く。
《どアホ、俺だったら通信できんだろうが!!……あぁ、お前さんのジムが見えた。さっきぶりだな。》
サーベル2本差しのジムの横にハイパーバズーカを携えたジムが並ぶと、母艦を目指して飛び去った。
そして、少し離れた宙域。
デブリが少ないエリアを、地球連邦軍の大艦隊が列を成して進む。
ルウム戦役で大敗した雪辱を晴らすべく、ジオン公国軍の宇宙要塞「ソロモン」攻略に臨むマクファティ・ティアンム中将。彼が率いる地球連邦軍第2連合艦隊の旗艦はマゼラン級宇宙戦艦「タイタン」。
おおよそ100隻はくだらない大型艦艇を中心とした、長大な隊列。その威容はさながら天の川銀河の如し。
シンイチ達が所属する第343補給分艦隊は今回、この艦隊の航路の安全を確保すべく予定進路上での哨戒と掃討を命じられていた。
そして今しがた、強行偵察を目論んだムサイ級1隻とその随伴MSを退けたところだった。
《いやはや、とんでもねー規模の艦隊だな…ルウム以来か?》
「大分沈められたって聞いたけど……この短期間で、よくもまぁここまで再建できたもんだ。」
二人でその光景に圧倒されつつ感心していると、旗艦「タイタン」から発光信号が送られてきた。シンイチが素早く解読。
「『貴隊の鬼神の如き奮闘に感謝と敬意を表す』……か。」
《何と返答しますか、准尉殿?》
バーリングから指示を仰ぐ声。
「………そうだな、『了解、御武運を心より祈る』と。」
大艦隊の列に頼もしさを感じながらも、シンイチの「動物的な勘」は同時に僅かばかりの嫌な予感を覚えていた。しかしそれでも、戦いに赴く同志達の無事を祈らずにはいられないのであった。
するとそこへ、ネオショーを旗艦とする小艦隊が現れる。護衛のサラミス級は「ユキカゼ」「タラント」に「ロストック」と「コンプトン」を加えて、4隻に増えていた。
《ネオショーコントロールからチャーリー3および4へ、一度着艦して推進剤及び弾薬の補充を受けてください。チャーリー3より着艦、どうぞ。》
サクラの声。すかさずバーリングがシンイチを茶化す。
《おいチャーリー3、嫁さんが呼んでるぞ、早く帰ってやれ!》
《整備班へ。帰投してきたチャーリー4に、代替機としてキャノン砲とマジックハンドを外したボールを用意願います。》
珍しく冗談で返すサクラ……が、その声には明らかに怒りがこもっている。
《こちらMSデッキ了解!丁度部品取りの機が空いてるが、何ならスラスターと装甲板も外すか?ヤツなら乗りこなせるだろう。》
そんな彼女にデッキクルーも悪ノリし、本格的に青ざめるバーリング。
《………ッッッ!!!チャーリー4前言撤回、3に続いて速やかに着艦する、アウト!!!》
《やれやれ……チャーリー3着艦する、タッチダウン了解か?》
艦橋の通信手席に座るサクラは、フンと鼻を鳴らして管制業務に戻るのであった。無線での私語に対して比較的厳格なイケタニ大佐も
「なるほど、『毒を以て毒を制する』という事ですか………興味深い。」
と、珍しく寛容。
ここで、護衛艦「コンプトン」から通信。
《……こちら『コンプトン』。第1小隊に替わり、ボール第5、6小隊とともにポイントα-11の哨戒を行う。どうぞ》
サクラがイケタニ艦長に顔を向けると、彼は自ら通信装置のマイクを取る。
「ネガティヴ、『コンプトン』。第1小隊の再出撃を待て。MS小隊帯同にて哨戒に当たられたし。」
《第1小隊の帯同不要、我が艦とボール小隊のみで宙域を見張る。アウト。》
真顔になるイケタニ艦長。即座に手元の直通電話を取ってMSデッキに連絡すると、サブリナが出る。
《はいはーい、こちらMSデッキ!ピザの注文なら後にしてもらえます?!大忙しなの!!》
「これは失敬、ピザは結構。それより……第1小隊の再充填と弾薬補給は、いつ終わりそうですか?」
背景音には賑やかなMSデッキの喧騒。多忙を極めているらしいことがうかがえた。
《そー、ですねぇ……大尉のスナイパーカスタムがちょい不機嫌…いや不調気味なので、他の機体も含めて……あと20分ってとこかな?》
艦長相手でも、サブリナは砕けた口調を崩さない。イケタニ艦長は少し考えたのち、はっきりとした口調で命令した。
「……10分で終わらせてください、出せる機体最優先で構いません。あぁ、それからもう一つ。準備できた機体から直ちに出すように願います。護衛艦1隻とボール2個小隊が、MSを連れないまま哨戒に出てしまいそうなので。」
《10分了解!!皆の尻引っ叩いて間に合わせます、そいでは!!》
ひとつため息をつくと、直通電話をそっと置く。
ウォーラス大尉が呆れ気味に呟いた。
「……コンプトンのスネイル艦長、かなり功を焦っているみたいですね。」
「全くです。若い艦長というのは、血気盛んで困ったものですねぇ……。」
艦橋の窓からは丁度、コンプトンと随伴のボール小隊が隊列から離れ、さらなる敵を求めて暗礁宙域に向け進路をとるのが見えた………。
《………イダテン1から各機、何か反応は拾うたか?》
暗い塗装の高機動型ザク3機が、デブリ密度の高い宙域を縫うように飛ぶ。時にはデブリを足蹴にし、さながら飛び跳ねるような機動。
隊長機の脇に控える2番機が答える。
《イダテン2、特に何も。どこもかしこもデブリばかりよ。》
《イダテン3、こっちもさっぱりだ。ポイントは合ってるんでしょ?アキモト隊長。》
頭頂部にツノの付いた小隊長機、ケイジ・アキモト大尉は嫌な予感を覚えつつも平静を装って答える。
《反応はザク1機だけやったけど……間違いなく友軍機や、とにかく探せ。機体は潰されとってもパイロットはもしかしたら………あ?!》
ここで彼の高機動型ザクが急制動、何かを見つけた。
それは、今しがたシンイチが仕留めたザクの残骸だった。爆ぜた跡が生々しく残る胴体に、頭部と右腕だけがかろうじて繋がっている。
彼の嫌な予感は、的中してしまった。
《………ザクか。この様子なら………おそらく背後からひと突き、そして余熱がまだこんだけ残っとるっちゅう事は………『そういう事』やな。》
残骸を一通り確認すると、イダテン2のパイロット、パッツィ・ケンドリック中尉は悔しさを爆発させた。
《畜生ッッッ!!!タッチの差だったって事?!》
《残念ながらその通りや。向こうにムサイの熱源と……残骸も見える。母艦ごとヤられたな、これは。》
ザクの残骸からさほど遠くない位置に、軽巡洋艦級の巨大な残骸も認めた。形状からして間違いなくムサイ級。
《クソがッッッ……!!奴ら、嬲り殺しにしたんだ!!》
《そうね、マーシャル。私達が居れば、こうなるのは連邦のクズ共だったのに……!!》
悔しさを通り越して怒りを覚える部下達。
《まぁ、そう急(せ)くな。………弔い合戦は案外、すぐにできそうやで。下見てみぃ。》
アキモト大尉が二人を宥めながら機体の姿勢を変えると、その先にはボール6機を従えたサラミス級軽巡洋艦。おそらく哨戒部隊らしかった。
《アキモト隊長……!!》
マーシャルからの、懇願するような声。「仇を討たせてくれ」と言わんばかりであった。
それを察してか、アキモト大尉はひとつニヤリとしてから告げる。
《手ぶらで帰るのもなんやな。…………ほな、いこか。》
3機の高機動型ザクはそれぞれ武器を構え直すと、編隊を組み直してサラミス級の直上を取れる位置に素早く移動する………!!
そして、サラミス級軽巡洋艦「コンプトン」艦橋。
艦長席に座るスネイル艦長は功を焦っていた。彼の同期生たるラスティ・ホルクロフト中佐ーサラミス級「タラント」の艦長ーはすでに第343補給分艦隊の一員として手柄を立てており、そんな彼の活躍を耳にする度にいつしか強烈な劣等感を覚えるようになる。
同じ艦隊に配属となってからその感情はさらに膨れ上がり、そこにスネイル艦長が独断で突出した理由があった。
クルーに向けて怒鳴る。
「レーダー、反応はどうか!!両舷対空指揮所は!!」
まだ手慣れていない様子のレーダー手が途切れ途切れに報告。
「えっと…はい、デブリだらけでまだ何も……余熱が多くて、その…熱源探知も……」
被せるように、熟達した様子の砲術長が告げる。
「両舷からも未だ報告無し。MSを待つべきだったのでは?艦長殿。」
階級が下にも関わらず、恨みがましい視線を向ける。彼のみならず、部下に対して時折横柄に接する艦長にクルー達は不満を募らせている様子だった。
「ボール小隊2個も居れば十分だろう、前に出して宙域を探らせろ!!それより対空監視を……」
ここで、レーダー手が慌てた様子で報告。
「ちッッッ……直上プラス80!!高速で移動する熱源ッッッ!!!」
艦橋の全員がその方向に目を向けるやいなや、突如直衛のボール1機に直撃弾。
《ッッッ!!オスカー2ダウン、やられた!!》
《オスカー3上だ、直上ッッッ!!》
ボール小隊の慌ただしい通信。
サラミス級「コンプトン」の真上から暗い塗装の高機動型ザク3機、アキモト大尉の小隊が馳せ参じる。
《球っコロ5機にサラミス1隻か。……オカズは後や、副菜からヤる!!》
《イダテン2了解!!》
《イダテン3了解ッッッ!!》
マーシャルのザクが前に出ると、その進路に立ち塞がる隊形になったボール小隊にバズーカを放つ。
《ッッッ!!ブレイク…!!》
直撃を避けるため離散するボール小隊。
《アホォ、いただきやッッッ!!!》
その瞬間を見逃さずマシンガンを掃射するアキモト大尉。たちまち1機が撃墜された。
離散したボール4機の隙間を高速ですり抜けるザク3機。
《抜かれた!!奴らコンプトンに向か、うッッッ?!?!》
狙いは母艦、その筈だった。
振り向いたボール小隊が見たのは彼らをすり抜けた筈のザク3機。しかし、その砲口は自分達に向けられていた。
《サヨナラ、連邦のアホ達♡》
3機一斉にマシンガンとバズーカを撃つ。ボール1機が爆散し、2機が蜂の巣になった。残るはたったの1機。
《やッッッ……野朗!!死ね、死ねぇ!!!》
自棄になって連装機関砲を放つボール。アキモト大尉のザクの右肩シールドに被弾するが、もちろん効き目はない。
《ほぉ〜っ、えぇ照準やのォ球っコロ。》
軽々と躱しながら再び離散する3機。2機が攻撃を引きつけ、1機が背後に回る。
《そいつはお前にやる、いてまえ。》
《はいよ、どうも!!》
背後から両脚でボールに組み付いて動きを封じる。左手でヒートホークを抜いて振り翳すが、そこへー
《……サラミスがもう1隻!!》
パッツィが叫んだ。
デブリを掻い潜り、全ての火砲とミサイルをぶっ放しながらサラミス級「タラント」が現れる。
マーシャルのザクはボールから足を離して蹴っ飛ばし、たちまち距離をとった。
ザク小隊と生き残ったボールの間を、凄まじい勢いでビームとミサイルが通り過ぎる。
《今更救援か……鼻っ柱へし折ったらぁ、奥のヤツから仕留めるぞ!!》
ザク3機は隊列を組み直すと標的を変え、スラスターを全開に噴かしてタラントに向かう。
その様子にホルクロフト艦長は、会心の笑みを浮かべた。
「よーしこちらに来たな、狙い通りだ……!!進路そのまま、ザク小隊とコンプトンの間に我が艦を滑り込ませッッッ!!」
なおも距離を詰めるタラント。
ホルクロフト艦長は、ネオショーのイケタニ大佐やユキカゼのマルヤマ中佐ほど老練ではない。まだ若い艦長ではあるが、その才覚は彼らに勝るとも劣らない。
ザク3機は対空砲もミサイルも軽々と躱しながら迫る。
《MSは忘れて来たのかッッッ?!無能共ォ!!》
バズーカを抱えたマーシャルのザクが挑発しながら再び前に出る。だがここで、アキモト大尉は違和感を覚えた。
(……おかしい、MSを連れてないならここまで近づけさせる筈はない、球っコロを出してくる様子もない……………まさかッッッ?!)
《マーシャル、退けぇ!!!!》
絶叫に近い声で命令。バズーカの狙いはタラントの艦橋に向けられている。しかしー
艦橋構造物の影から突如として現れる、サーベル2本差しのジム。左手にはビームサーベルを抜いていた。
《なッッッ?!?!MS………だとォ?!?!》
慌てて狙いを艦橋からMSに切り替えて、放つ。バレルロールで躱され、一瞬で距離を詰めてきたと思うとー
《この距離で避けッッッ……………》
「突きッッッ!!!イィぃぃぃぁあああ!!!!」
回避する間もなく、高機動型ザクの顔面に突き立てられるビームサーベル。再びバズーカが放たれるが、シールドを当てて射線を逸らす。
放たれた砲弾は虚しく空を切った。
そのまま股下まで引き裂かれ、高機動型ザクはさながら魚のように「下ろされ」る。
《マッッッ………マーシャル!!!!》
パッツィが絶叫する。そんな彼女のザクを襲う嵐のような砲撃、今度は艦底部からハイパーバズーカを携えたバーリングのジムが現れた。
《よそ見すんなよオラァァッッッ!!!》
右腕と把持した武器が肩口から吹き飛び、彼女の悲痛な叫び声が響く。
(こっちから見えん位置に、MSを貼り付けて隠し持ってたやと…?!ド卑怯モンが!!!)
こうは思いつつも、与し易い獲物を前にして油断した事を悔やむアキモト大尉。
《あかん…!!退けッッッ、退けぇッッッ!!!》
命令一下、ザク2機が脱兎の如く逃げ出した。
たちまち暗礁宙域へ退避する2機、デブリの間を速度を落とさず縫うように飛ぶ。
「逃がすかタコがッッッ………!!!」
それに対してシンイチのジムは、全く同じ軌跡を描きながらなおも追随する。
《着いてくる気か?!上等じゃ、『韋駄天』ナメんなや連邦のトーシローが……!!!》
さらに速度を上げて、パッツィのザクから距離を取るように飛ぶ。
「んぐッッッ!!!おぉぉぉぉ……!!!」
幾度も繰り返される急制動、急旋回、急横転。いかに強靭なG耐性をもつシンイチといえども顔面が歪み、食いしばった歯が割れそうになる。
《オラオラァ!!さっさと……ぐッッッ、事故れやドさんぴんがァ!!!》
その急機動を見せつけながら挑発するアキモト大尉。
しかし、スロットルレバーとフットバーを操作するシンイチの手足は、考えるよりも先に反射的にかつ素早く動いていた。
さらに限界を超え、研ぎ澄まされる感覚。気づけば高機動型ザクの背面が目の前にあった。
《捕まえたぞ、テメェ………!!!!》
何故かアキモト大尉の耳元に響く敵の声。サーベル2本差しのジムがついに、高機動型ザクに手が届く距離まで追い縋る。
「コイツ……イカれとるんか?!」
たちまち、凄まじい悪寒。
今まで自分達の機動に着いてこれた敵など存在しなかった。ホームグラウンドである暗礁宙域と、運動性能に特化したスラスター配置の高機動型ザク、そして熟練した自分達の組み合わせは無敵の筈だった。
「……んな、アホな事が………ッッッ!!!」
恐怖を払い、敵に正対し左腕でヒートホークを抜き叩きつけるがビームサーベルに受けられた。反発し合い、凄まじい火花が飛び散る。しかし出力の差は歴然としており、ヒートホークの刀身が歪に変形し始める。
ジムの腹に蹴りを入れようとするが、膝でガードされると同時にビームサーベルが横薙ぎに払われ、ザクの両手首が千切れ飛んだ。
手詰まりとなったアキモト大尉から一旦距離をとり、頭部機銃を乱射しながら再び迫るシンイチのジム。機体のあちこちに弾痕が刻まれる。
しかしここでー
《アキモト隊長ーーーッッッ!!!!》
タックルを見舞う、隻腕となったパッツィのザク。シールドで受けられたが、スラスターを全開に噴かしてそのまま押しやろうとする。
《逃げて、貴方は生きてッッッ!!!私達の仇を……ゔっ、ぎ……gggzzzgzzz………》
ジムがシールドをパージして受け流したと思うと、つんのめった高機動型ザクを背後から素早く刺殺。彼女の存在はビームサーベルの超高熱に消え去った。
《…………ッッッ!!!》
腰に装着していた閃光弾仕様のクラッカーを切り離して起爆させると、たちまち凄まじいフラッシュが起こる。
アキモト大尉は振り返る事なく、また仲間の死を悼む間もなく、ただただ死にもの狂いでその場を離れるのであった………。
《直衛はほぼ全滅か、やられたな………。》
《あぁ……でもコンプトンは無事だ。アンタ達が間に合ってよかった、恩に切るよ。》
《なに、いいんだよ!!石頭艦長によろしくなッッッ!!》
高機動型ザクの小隊を退けた後。
バーリングのジムと、生き残ったボール1機がコンプトンの近くで待機していた。
《ところで……高機動ザクを仕留めたアンタ達のエースは?すごい機動で追っかけてったようだが。》
丁度、そんな彼らのもとにシンイチが戻ってきた。即座に駆け寄るバーリングのジム。
《チャーリー3!!無事だったか!!》
《あぁ、でも………1機取り逃した。ボール小隊の仇を討ちそこなったよ。》
《そうか……それにしても、深追いしすぎだ!また中隊長にドヤされるぜッッッ!》
ボールのパイロットは彼らの通信を聞き、さらに驚愕した。会話の内容から察するにあの後もう1機を仕留めていることが窺えたからだ。
無事を喜びあっていると唐突に、サクラの慌てた声の通信が届いた。
《………至急至急、ネオショーコントロールより『タラント』及び『コンプトン』、もしくはチャーリー3及び4、聞こえますか?!誰でもいいので応答を!!》
「こちらチャーリー3、感度良好。ネオショー送れ……」
言い終わらないうちに、さらに通信。
《ルナツー司令部より『当基地攻撃の兆候を捉えた、大至急帰投せよ』との命令、シンイチさん、皆も早く帰って来て!!!》
コールサインも通話要領も忘れて必死に呼びかけるサクラ。
連邦軍によるソロモン攻略戦開始が刻一刻と迫る中、ルナツー基地の留守を狙わんとするジオンの魔の手もまた迫りつつあるのだった………。
第二十七話 リミットブレイク 終幕
幕間 「爆発反応装甲」
ネオショーに帰投したシンイチ達。
MSデッキはいつもの喧騒と、動き回る整備兵達でごった返していた。
「戦闘糧食の配給でーす!」
そんな中、チューブ飲料とチューブ糧食をバッグに詰めた当番兵がMSデッキにやってきた。
その中には、何故かサクラも混じっている。
ジムスナイパーカスタムのコックピットまで浮かび上がり、開け放たれたハッチからバレンツィーノ大尉に飲料と糧食を手渡した。
「悪いな、タチバナ嬢……交代したばかりだろう、休んだ方がいいんじゃないか?」
飲料の封を開けながら感心する。
「いえ、大丈夫です。それに皆大変そうだから……あたしだけ休むわけにもいかないし。」
すると今度は、バーリングがコックピットハッチから身を乗り出して手を振り彼女を呼びやる。
「お〜いサクラちゃん、俺にも何、か……」
サクラが彼の方に振り向くが、無表情。
「ちょうだ……い………いや、クダサイ、オネガイシマス」
その様子を見て色々と察したのか、次第に声が小さくなるバーリング。
するとサクラは、コーラ風味の飲料を手にとる。そしてあろうことか野球選手のようなフォームをとって、投げて寄越そうとした。
先程茶化した件を根に持っている様子。
「ちょちょちょサクラちゃん?!この距離でその投げ方はマズい、エラい事になるから勘弁してマジで!!ゴメンて!!さっきのこと謝るから!!!」
必死に懇願すると、サクラはニッコリと微笑んだ。それからスィ~ッとバーリングの方に向かい、先程のチューブ飲料を優し〜くパスする。
「……ナ、ナイスパス。ありがとね。」
「いいんですよ♡」
引き攣った笑顔のバーリングに対して気さくに返すサクラ。目は笑っていないが。
「さて………と。」
続けてシンイチのジムの前に差し掛かる。ハッチから中を覗くと、シートに腰掛けたシンイチがきつく目を閉じて眉間を揉んでいた。
「シンイチさん?」
呼びかけると、すぐに笑顔を見せて手を振り彼女を迎えた。
「あっ、やぁ……サクラ。当番兵の手伝い?」
「はい。何かできる事無いかなぁって。」
「そっか、そりゃ感心だ!ハハハ…」
互いに笑い合う。
「ちょっと、失礼しますね…」
ここで、サクラがコックピット内に入ってきた。
「えっ?!狭い………」
「狭いからいいんですってば!」
彼女自ら操作して、ハッチを閉める。
狭いコックピット内で密着し合う二人。珍しいことにサクラはノーマルスーツを着崩しており、上半身は黒のインナー姿だった。また三つ編みおさげは1本に纏めて左肩から垂らしており、少しだけ大人の雰囲気。
「シンイチさん?」
「あぁ、なっ………何だい?」
サクラが上目遣いでシンイチに問いかける。
「すごく………疲れてますね。あたしが元気出る事、してあげる。」
「えッッッ?!えぇ……?何を…」
シンイチが言い終わる前にサクラは彼の右手を掴む。そして、インナーを捲し上げてその内側に素早く滑り込ませ、自身の左胸に当てがった。
「ん゛な゛ッッッ?!?!?!」
シンイチの右手には、僅かに湿り気を帯びた柔らかい素肌の感触。あえて形容するならば「温かいお湯の詰まった水風船」、つまるところおっp(自主規制)。
なんとか正気を保とうと必死のシンイチ。女性の素肌に触れたのは母親以外で初の経験であった。そんな彼に、サクラが耳元で囁く。
「男の人ってこういうの、好きなんですよね?………シンイチさんは、好き?」
全身を強張らせつつもなんとか言葉を搾り出す。
「そ、そ、そ、そ、そ、そりゃ!!………………そりゃあ好き、だけど!!!でも………でも、どこで覚えたの?!誰から教わったのこんな事?!」
「サブリナさん。」
あちゃー、とばかりに頭を抱えた。するとここで、ハッチをノックする音。
「…………残念、お邪魔虫。『続き』はまた今度ね、シンイチさん♡」
シンイチの右手をそっと引き抜いて軽くキスを交わすと、サクラはハッチを開けてスィ~ッと出ていった。
コックピット内に残されたシンイチは、真っ赤な顔のまま呆然としていた。担当整備兵のマイルズは、立ち去るサクラとシンイチを交互に見たうえで興味深そうに質問する。
「えッッッ、えッッッ、えッッッ?!?!准尉殿、まさか………その………サクラちゃんと『真っ最中』だった、とかですか?!」
シンイチが呪文のようにボソボソと答える。
「90だ。爆発、反応装甲………あの反応装甲は間違いなく90………」
「はい?!?!?!」
「………サブリナ、あのビッッッ………いや、スケベ女めえぇぇぇ………!!!」
サブリナへの恨み節(?)を吐くと、妙な勘違いをしてしまうマイルズ。
「レンフィールド准尉とも何かあったんすか?!?!」
「だッッッ、ちがわいどアホぅ!!!」
珍しく怒鳴るが、顔面真っ赤っか故迫力も何もない。
そしてシンイチはマイルズに、今見た件を綺麗さっぱり忘れるようそれはそれはぶっとい五寸釘をブッ刺す(比喩)のであった………。
尤も彼はサブリナから「尋問」を受け、あっさり吐いたが。
幕間 「爆発反応装甲」 終幕
やぁ、みんな!(気さくな挨拶)
第二十七話をお読みいただきありがとうございます、最近間が空きがちだけどホント忙しいのよ…趣味とか趣味とか育児とか趣味とか仕事とか趣味とか(以下略)
さて此度、ジオン側にかなり「濃いめ」の新キャラを登場させてみました。関西弁のキャラってガンダム世界じゃ珍しいイメージあるけどどうなんだろーね?少なくとも自分の記憶には居ませぬ。斬新ッッッ!!(?)
もちろん彼は再登場予定です。次何に乗り換えてくるかはお楽しみ…ゆーてもうしばらく高機動型ザク乗るけどねあの人(爆)
なお、サクラちゃんは「これ」以外にもサブリナから手解きを受けています。何だろうね?( ͡° ͜ʖ ͡°)
さて次回、ルナツーへの帰路を急ぐ第343分艦隊を「あのMS」擁する部隊が襲いかかります。シンイチ達は万難を排してルナツー基地に辿り着くことができるのかッッッ!!!
次回第二十八話「強襲、新たな脅威」
お楽しみにッッッ!!
…え、サクラちゃんの「爆発反応装甲」は結局90あるのかないのかって?
あります(真顔)