ルナツー基地への帰路を急ぐ連邦軍小艦隊。そしてその旗艦たる「ネオショー」艦橋では、艦長のイケタニ大佐と艦橋要員の他にMS部隊各小隊長が詰めかけていた。
「…たった今、ソロモン攻略戦が開始されたそうです。」
通信手席に座るクレア・ランパート伍長が報告。イケタニ大佐が頷くと、小隊長達に振り返り改めて告げる。
「友軍とルナツーから送られてきた情報を、整理しましょう。まだ不確定な事も多いですが…」
中隊長兼第1小隊長のバレンツィーノ大尉が腕組みして頷き、隣に控える第2小隊長のアークライト中尉、第3小隊長ヤン・コワルスキ中尉に目配せする。二人もバレンツィーノ大尉と目が合うや、イケタニ大佐に顔を向けた。
「ウォーラス大尉、お願いします。」
艦橋の天井に設置された大型ディスプレイに、地球圏一帯を表した宙域図が表示された。
「まず、ルナツー基地から警戒警報が発せられたのが数時間前。第1小隊が高機動ザクの小隊を退ける前のことです。ルナツー駐留の哨戒部隊が、直近の暗礁宙域に敵の小規模な艦隊を探知しました。」
レーザーポインターで指し示す。二週間ほど前、ザンジバル級機動巡洋艦「ケーニヒスベルク」と干戈を交えた地点にほど近い位置。
「規模はザンジバル級1隻とムサイ級1隻。おそらくですが……我々と二度戦ったあの艦とみて、間違いないかと。」
アークライト中尉が挙手し、口を挟む。
「失礼……そいつら程度の規模なら、ルナツーの駐留部隊でどうにかできるのでは?」
「どうにかできていないから、我々が呼ばれたというわけです。現にこの小艦隊を発見した哨戒部隊はMS1小隊とボール2個小隊でしたが、返り討ちに遭っています。その後ルナツー管制は、この小艦隊を見失いました。」
アークライト中尉は頷き、押し黙った。
「またグラナダから、増援も発進したようです。」
今度はコワルスキ中尉が口を挟む。挙手は無し。
「グラナダから??……そいつらは、ソロモン要塞への救援では?」
「いい質問ですねコワルスキ中尉、しかしこれを見てほしいんですよ……。」
宙域図にレーザーポインターを当てる。
「ソロモン要塞はここ。そしてルナツー基地は、ここ……増援艦隊が発見された位置は、ここです。」
明らかにソロモン要塞には向かえない航路、仮にそこから向かおうものなら道中で連邦軍のソロモン攻略艦隊ーつまりティアンム艦隊に捕捉されてしまう位置。
「ベクトル分析からも、ルナツー基地に向かっている事は明白。また、目下我が軍の攻撃下にあるソロモンのドズル中将は、グラナダのキシリア少将と極めて不仲であると聞きます。そんな彼が、姉君に頭を下げて救援を求めるような事をするでしょうか。」
一様に頷く小隊長達。そして、今度はバレンツィーノ大尉が口を開いた。
「例のザンジバル艦隊も、これまでの出現位置や規模からしてソロモン所属。そいつらがグラナダから増援を受けられたという事は……」
大尉が考え込むと、イケタニ大佐が補足。
「えぇ、ザンジバル艦隊指揮官の独断でしょう。二度我々に敗れている彼らです。少なくとも、ドズル中将の心証が良いとは思えない。また私が同じ立場なら、中将に増援の依頼は出せません。恥を忍んでグラナダのキシリア少将に助力を願い出るかも。」
再び、一様に頷く小隊長達。バレンツィーノ大尉が続けて質問する。
「……この、『増援艦隊』の規模は?」
「ムサイ級が4隻。MSは……すぐに出せない予備も含めると、24機といったところでしょう。また極少数ですが、ジッコ突撃艇の随伴も確認されました。」
「それに、暗礁宙域で隠れてるヤツらも加味すれば……少なく見積もってもMS30機は越えますね。なんにせよ俺たちだけじゃ手に余る。」
コワルスキ中尉が頭を抱えたが、アークライト中尉が補足するように続ける。
「いや、ルナツー近海まで来れば駐留部隊も出てくるだろう。要塞砲の射程までおびき寄せられれば地の利も増える。それに………」
少し考える。コワルスキ中尉が促した。
「それに?」
「おそらくこの規模では、ルナツーは陥とせない。」
「そうです、そこなんですよ。」
イケタニ大佐が食い気味かつ早口で語り出す。
「この規模ではルナツー基地は陥ちません。やるとするなら基地施設などへのピンポイント攻撃でしょう。艦船ドックを攻撃して一時的に使用不能にさせるか、内部に工作部隊を送り込んで破壊活動をするかあわよくば司令部を乗っ取るか。いずれにせよ基地が手薄な今それらを許すと、被害は無視できません。またこれまで得た情報から総合して考えるなら、目的は前者です。」
バレンツィーノ大尉が再び挙手。
「失礼、しかし……ルナツー基地の艦船ドックは1箇所2箇所ではない。作りも堅牢故に、巡洋艦数隻程度の攻撃ではたかが知れています。その上で基地に大きな被害をもたらすのであれば、まさか………」
チューブ飲料を一口飲むと、イケタニ大佐は頷いてさらに補足する。
「……今宙域に潜伏しているザンジバルは、確かにこれまで二度我々に退けられました。しかしその度に、我々の予想を超える手段で損害を強いてきた。」
小隊長達は改めて思い返し息を呑む。そして同時に、大佐の口ぶりに嫌な予感を覚えた。
「我々がサイド6宙域を出た後、彼らはグラナダ船籍と思しき輸送艦と接触しているのを観測しています。サイド6の駐留部隊がその輸送艦を拿捕して臨検・見分し、その結果をマルヤマ中佐の依頼で提供してもらったところー………」
そして、大佐から告げられた情報に彼らは改めて戦慄する。
「………確か、なんですか?!」
バレンツィーノ大尉が珍しく恐怖に歪ませた顔でイケタニ大佐に問う。彼は冷静な口調を崩さないまま答えた。
「あくまで……私が見た見分結果と、これまでの戦いからの推察です。この情報は、私の指示があるまで部隊員に口外しないよう。」
他の小隊長も同様に複雑な表情。そんな彼らをよそに、イケタニ大佐は改めてはっきりした声で命令を下した。
「………これより、我が艦隊は臨戦態勢に入ります。全MS小隊及びボール小隊は例外無く無期限の搭乗待機、砲火班は2交代での警戒配置。全艦に第二種戦闘配置を発令、直ちに行動に移ってください。それでは………わかれ(解散)!!」
「「「了解!!」」」
小隊長達が敬礼とともにその場を離れると、ネオショーの艦橋のみならず全艦の艦内がとたんに慌ただしさに包まれるのであった………。
ネオショーMSデッキ、ハンガーに固定されたバーリングのジム。
狭苦しいコックピット内では彼とサブリナが抱き合い、濃厚なキスを繰り返していた。
「サ、サブリナ……第二種、戦闘配置ッッッ……だって、そろそろ……んッッッ…」
「ダメ………あと10回、これで……んッッッ、最期になるかも……でしょッッッ……!!」
ようやく唇を離すと、バーリングの胸元に顔を埋める。
「………アンタが死んだら、アタイもそっちに逝ってもっぺん殺すから。見送るだなんて、絶対嫌よ………」
低い声で懇願するように呟く彼女の声は、途中から震えていた。目元から溢れた涙が粒状になってコックピット内に漂う。
「サブリナ………大丈夫さ、俺は死なねーよ。お前さんが一番よく知ってるだろ。」
密着した彼女の背を優しく撫でながら、優しい声で諭す。
「ジョナサン……絶対還ってきて、どんな相手でもブチ殺して、必ず還ってきてよぉ……お願い……」
ここで、コックピットハッチをノックする音。
「おッッッ?!……あっ…………悪い、失礼。」
慌てて振り返る二人。シンイチが顔を背けて頬を掻きながら、気まずそうに告げる。
ちなみにコックピットハッチは最初から全開だったが、それでもシンイチは律儀にノックしていた。
「えーっと………その、二人とも…『真っ最中』のところ、誠に申し訳ないんだけど……第二種戦闘配置だから、そろそろ……ね?」
言葉通り、心底申し訳無さそうな口調。バーリングが軽く手を振りながら答えた。
「あっ、あぁ……わかってる、そろそろ……んッッッ!!」
サブリナからの最後の1回は、舌を絡めに絡めた濃厚なディープキス。
「っぷは……またね、愛してるわ。」
身体を離し、名残惜しそうにふわりとコックピットの外に出る。シンイチとすれ違うや、彼の頬にも軽くキスした。
「なッッッ?!何やって………」
「餞別よっ!アイツを死なせないでね、相棒なんだから。あと、アンタもジョナサンの次に好き!!」
笑顔で手を振って明るく言いながら、デッキの床面までゆっくり降り立つ。
「……はぁ、ったく色々と軽いんだからもーホントに……?!うおぉッッッ!!!」
シンイチが頬を摩りながら振り返ると、すぐ面前にバーリングが立っていた。
「お前…………『悦んだ』な?サブリナにキスされて…………『悦んだ』な???」
恨みがましい視線と、ドスの効いた声。必死に弁明する。
「なッッッ、違ッッッ!!!ありゃ彼女の方から急に……!!それに嬉しくもなんとも……いや、嬉しいか嬉しくないかって言われたらまぁ、その……ボソボソ」
徐々に小声になりながらも言葉を紡ぐ。そんな様子を見たバーリングは、普段の軽い雰囲気に戻りつつシンイチの肩を軽く叩いた。
「ハッ、ハハハハ!!落ち着け冗談だよ!お前さんはサクラちゃん一筋だもんな!」
「よッッッ……よせやい!!俺は浮気なんてできる程器用じゃねーよ!!」
照れ隠しに、ぶっきらぼうに答えてみせる。
ここで、デッキ内に鳴り響く警報音。二人の表情が即座に強張ると同時に、各小隊長がMSデッキに入ってきた。
「二人とも、聞いての通りだ!!すぐ出撃準備ッッッ!!」
「了解ッッッ!!」「合点承知!!」
バレンツィーノ大尉が声をかけるやいなや、彼らは互いの愛機のコックピットに飛び込んだ………。
再び、ネオショー艦橋。
レーダー担当のスタンリー少尉がミノフスキー粒子濃度の増大と、突撃艇数隻の接近を告げる。
「……突撃艇。例の増援艦隊の一部とみて間違いないでしょうね。」
「しかし妙なんです。熱源の大きさが、明らかに突撃艇のそれではありません。」
ウォーラス大尉が訝しみ、顔を向けた。
「というと?」
「この発熱量だとMS級です。それも1機ではありません、つまり突撃艇1隻につき……」
「MS2機、ないし3機を曳航している。もしくは船体に捕まって近づいて来ている。そうですね?」
スタンリー少尉が答えるより先に、イケタニ大佐が被せるように言う。そして、即座に下命。
「MS第1、第3小隊は直ちに出撃。護衛艦全艦とも、突撃艇が射程に入り次第全力砲撃。進路はそのまま、機関全速にてルナツー基地へ戻る。」
ランパート伍長が全艦へ命令を伝達するや、MSが次々と射出され編隊を組む。
そして同じ頃、サクラの自室。
白のキャミソールにショートパンツ姿のサクラが、仮眠用寝袋の中でふいに目を覚ました。
身体を起こして眼鏡をかけ、寝袋から出る。
船内のどこかから響く轟音と振動に、小窓から外を見やるとMSが次々に発進するのが見えた。
そしてその中には、サーベル2本差しのジム。
「シンイチさん……?」
思わず名前を呼び、想いを馳せる。同時に両手を胸に当てると、心臓の鼓動が早まるのを感じた。
(…俺は、死ぬつもりは無い。絶対に、どこからでも、何度でも還ってくる…)
(還って来ないかもしれない)
再び、いつかのように溢れ出すネガティブな感情。しかし同時に思い出す、彼との甘い時間。唇の感触に、肌に触れる暖かく逞しい手。
(あたしも戦わなきゃ、戦いたい。でも……今やるべき事は、ちゃんと寝ておくこと。シンイチさんなら、きっとそうする………。)
再び寝袋に身を埋め、目を閉じた………。
護衛艦の激しい砲火を横目に見ながら、宙域を猛進する8機のジム。前衛はバレンツィーノ大尉の第1小隊、やや離れて後衛はコワルスキ中尉の第3小隊。
《?……こちらチャーリー3、誰か呼んだか?》
即座にバレンツィーノ大尉が返答する。
《ネガティブ、チャーリー3。不調か?そちらのメリット(通信感度)はどうか?》
《チャーリー1の通信メリット5(感度極めて良好)、問題ありません……》
(何やってんだ俺、寝ボケてんのか……!!)
瑣末なことで通信を使ってしまった事を悔やむシンイチ。ヘルメットごしに側頭部を叩いて気合を入れ、気持ちを切り替える。
《チャーリー1から各機、敵が見えた。情報通り突撃艇3隻だが………》
一旦途切れたかと思うと、すぐにけたたましい声で再度通信。
《MSを連れている!!1小隊ブレイク、ブレイク!!》
すぐさま、前衛の第1小隊4機が2機ずつに分かれる。その中心をマシンガンの弾幕でもなくバズーカ弾でもなく、幾本ものビームの光条が通り過ぎていった。
《なッッッ……ビーム砲?!?!新型か!!》
バーリングが驚愕する。
当然の反応といえた。彼らが今回初めてあい見えたのは、携行式ビームライフルを装備したジオン公国軍の新型ーMS-14「ゲルググ」である。
ジッコ突撃艇に取り付けられた牽引ワイヤーに2機が捕まり、戦闘宙域まで曳航のうえ投入されるという運用だった。
《こっちも持ってる、今更それがどうしたッッッ!!》
新型出現に怯む事なく、シンイチのジムが死角に回り込まんと鋭い機動を描く。最小限の旋回半径で後ろを取ると、早くも違和感。
(………真っ正面から固まって一斉射撃、そこからバラける様子も無い……死角を突く機動もとらない。何のつもりだ?!)
ゲルググ部隊の前衛3機は艦隊に目を向けたままのようで、直掩MSには目もくれない。その上戦闘機動に慣れていないのか全速を出していない。あっという間に追いついた。
(まさか、この前の……サイド6のザク小隊と同じような素人連中か…?!)
続けて、後衛の第3小隊4機と正面から撃ち合う。ジム1機が片脚をもぎ取られるが、激しい応射に単騎ごとに分散するゲルググ部隊。明らかに拙い機動で、やはり互いにカバーし合う様子も見られない。
第1小隊がそのまま追い込み、第3小隊と挟み撃ちの形になった。
「悪いが……1機貰った!!」
一気に距離を詰めるシンイチのジム。孤立したゲルググが振り向きざまにビームライフルを撃つが、これをシールドで塞ぐ。
しかし、射撃を受け止めたシールドは上半分が溶解して真っ二つになり、左腕から外れて吹き飛んだ。
「……ッッッ!!伊達にビーム装備じゃないワケか!!」
衝撃にのけ反りながらも瞬時に立て直す。同時に放たれた数発のビームがゲルググの腹部を貫くと、とたんに大爆発。
素早くその場を離れる2機のジム。
《チャーリー3スプラッシュ(敵機撃墜)1、次は?!》
《チャーリー3ナイスキル……警戒、直上ッッッ!!》
バーリングのジムがカバーに入り、背中合わせになるやいなやバズーカが放たれた。
1発は躱されたが、時間差で放たれた2発がゲルググの頭部と左腕を吹き飛ばす。
半狂乱状態に陥った首無しのゲルググはビームライフルを闇雲に撃ちまくるがー
《どこ見て撃ってんだヘタクソが!!》
当たる筈も無く、バーリングのジムに背後から刺されて動かなくなった。
残った1機を第3小隊のコワルスキ中尉が辛くも仕留めると、さらに後衛のゲルググ3機が背後から迫る。編隊を維持したまま、バーリングのジムに攻撃を集中させた。
バレンツィーノ大尉の檄が飛ぶ。
《チャーリー4狙われてるぞ、足を止めるなッッッ!!》
《やっべ、いけねッッッ!!!……zzgzz……》
不意を突かれ、一筋のビームがバズーカの弾倉を直撃。右腕が肩口から吹き飛び、頭部も大きく破損する。
「チャーリー4!!!野朗ッッッ!!!」
すかさず、シンイチのジムが離脱する3機の後を追う。相変わらず艦隊を見据えており、背後がお留守。
「行かせるかこのッッッ……!!死ねぇ!!!」
最後尾の1機にスリーパーホールドの要領で組みつき、すぐさま脇腹にビームサーベルを突き立てる。気づいた僚機が振り返りライフルを向けるが、頭部機銃を喰らったところにジムスナイパーカスタムの狙撃を見舞われ、即座に沈んだ。
最後の1機は第3小隊に誘き寄せられたところでキムがマシンガンをありったけ撃ち込み、呆気なく撃墜。
主戦場を迂回しMSに先んじて艦隊に突入したジッコ突撃艇も、サラミス級2隻ー「ユキカゼ」と「ロストック」の猛然たる対空砲火とボール小隊の集中射撃に捕まり残らずデブリと化していたのだった。
しかし護衛艦隊も無傷では済まず、艦隊の盾になった「ロストック」が右舷前方第1砲塔とミサイルランチャーを失う損害を受けていた。
《ひとまず、片付いたか………チャーリー4大丈夫か?!生きてるか?!》
バレンツィーノ大尉が周囲の安全を確認するや、右腕が吹き飛んで頭部が半壊したバーリングのジムに呼びかける。
《……gggzzgz……ャーリー4、俺は大丈…zzg…すが、機体は……ggzzz……》
途切れ途切れながらも送られてくる気取った声。パイロットは無事だが、彼のジムは姿勢制御もままならない様子だった。
《ボロボロじゃないか、捕まれ!!ヤバかったら機を捨てろ!!》
シンイチのジムが肩を貸し、左右をバレンツィーノ大尉とキムが固める。
《チャーリー1から各機へ、かなり時間を喰っている。損害も大きい。急いで戻るぞ!!》
かろうじて生き残った8機は、足早に母艦たるネオショーへの帰投を急ぐ………。
そして、ネオショー艦橋。
戦闘がひと段落し、艦内はいくらか静けさを取り戻していた。
「……MS撃墜確実6、損害は1機大破につき破棄。1機中破、2機が小破。パイロット2名が軽傷………以上です。」
バレンツィーノ大尉が戦果と損害を報告し終えると、イケタニ大佐が頷く。
「今回の敵は未確認の新型という話でしたね。ビームライフルと盾を携行し、火力と防御力はジムを大幅に上回る。しかし………」
コワルスキ中尉が挙手し、補足する。
「えぇ、明らかに練度不十分でした。促成兵か、卒業したての新米パイロットか。いずれにしても、今回はそこに救われましたね。」
バレンツィーノ大尉が頷き、そして改めて表情を引き締めてさらに付け加えた。
「おそらく、先ほどの部隊は時間稼ぎが目的でしょう。わざわざ突撃艇に曳航されてきたところからすると、例の……ムサイ4隻の艦載機とは別枠と見ていい。敵はまだ、健在です。」
隊長達の会話を聞きながら、シンイチもまた心の中で不安を覚えつつ決意を固める。
(今回は皆の言う通り、素人相手だからどうにかなった。しかし、もし手練れがあれに乗ってきたら………)
(………だとしても、負けるわけにはいかない。たとえどんな相手でも斬り伏せて、最後まで生き残ってやる………。)
小艦隊は隊列を整えながら、ルナツーへの帰路を急ぐ。艦体後部の巨大なスラスターが吼え、ひときわ大きな光を発して宙域を進むのであった………。
第二十八話 強襲、新たな脅威 終幕
幕間 どっちが好きなの?
ネオショーのMSデッキ。帰投してきたMSがハンガーに固定され、修理と整備を受けている。
その慌ただしい空気と喧騒を尻目に、シンイチは愛機のコックピットから降りてMSデッキの隅を目指した。
ここには小規模な休憩スペースがあり、チューブ飲料の自動販売機も設置されている。
「さぁ〜て、さっきの配給の分も飲み干したし追加で何か買っとくか…………」
大破したジムが置かれたハンガーの前では、サブリナがバーリングを締め上げていた。なるべくそちらに目を向けないよう、こっそりと休憩スペースへ向かう。
そして、自販機の前に立った。カフェイン増し増しのエナジードリンクか砂糖増し増しのコーヒー牛乳か、はたまた無難なミネラルウォーターかで迷っていると………
「シンイチ、さぁ〜〜〜ん???」
「ヒッッッ……?!」
聞き覚えのある、しかし怨みがましさが籠った声。途端に背筋が凍りつく。
振り返ると、サクラが物陰から顔を半分だけ出してこちらを見ていた。様子のおかしい人です。
「サッッッ……サクラ?!……やぁ、どったの?」
物陰からヌゥ~ッと出てくるや、幽霊のような動きで休憩スペースに侵入してくる彼女の瞳はハイライトが消えていた。
また鬢の毛から1本だけ垂らされた毛髪が口元に伝っており、ぱっと見口裂け女のような状態。
「シンイチさぁん……バーリングさんから聞いたんだけど、サブリナさんとチューしたって、ほんとぉ………???」
彼女の周囲には何やらどす黒いオーラめいたものが渦巻いている、気がした。そしてその手には、何故か大きめのモンキーレンチ。
動物的本能で身の危険を感じ取ったシンイチは、すかさず必死に弁明。
「いやッッッ、サクラ、一旦落ち着いて聞いてほしい!!その件はかくかくしかじか云々かんぬん……という事なんだ、分かってくれ!!」
その甲斐あってかどす黒いオーラめいたものが次第に薄まっていく、ような気がした。
「ふ〜〜〜ん、そうだったんですね………」
しかしそれと同時に何やら不機嫌そうな顔になるサクラ。レンチを持った手を後ろで組み、少し俯いて上目遣いで尋ねる。
「それじゃあシンイチさんは……例えば、サブリナさんみたいな開放的でエッチな女の人と、あたしみたいな地味で色気の無い女の人と、どっちが好み?」
「えッッッ?!?!そ、そりゃあ……」
何気なくMSデッキの方を見やる。さっきまでバーリングを締め上げていたサブリナが、早くも彼とイチャつき始めていた。
改めて聞かれてみると、彼は今まで女性の好みについて考えたことはあまり無かった。思春期を剣道と趣味に費やし、恋愛など二の次三の次だったからだ。
なかなか言い出せず、観念して正直に答える。
「……ごめん、上手く言えない。女の人の好みなんて、今まで考えた事無かったんだ。でも………でも、心配しなくても俺は、君しか見てないよ。」
それを聞くや、うるうるした目でシンイチを見つめるサクラ。
「ゔぅ〜〜〜ッッッ……シンイチさんやっぱりしゅきぃ……大しゅきい……」
ゆっくりと、シンイチの胸元に身を寄せて甘えるサクラ。彼女の頭を優しく撫でる。
「おっ、おぉ〜よしよし……ところで、君はなんでまたレンチなんか持ってんの?」
「え?シンイチさんの答えによってはこれを(自主規制)に(自主規制)しようかな、って。」
ニコニコ笑顔で平然と過激発言をぶちかますサクラに、シンイチの背筋が再び凍りつく。
「はッッッ、はいッッッ?!?!そんな事しちゃあダメダメ!!!逆さまにしたタコさんウィンナーみたいになっちゃうよッッッ!!!」
「あっ、じゃあサブリナさんの(自主規制)に……」
「『あっ』じゃない、それもダメ!!!もぉ〜、俺に免じてサブリナも許してあげてッッッ!!!」
サクラのかなり嫉妬深〜い一面を垣間見たシンイチは、浮気は絶対にしないでおこうと心の底から誓うのであった………。
あとついでにバーリングに一撃入れる事も。
幕間 どっちが好きなの? 終幕
チェスト種子島ッッッ!!!!(気さくな挨拶)
はい、ハーメルンの作者様読者様皆々様ご無沙汰してもす芋ですッッッ!!更新頻度落ちてない?と思われるかもですがその通り、落ちてます(汗)
いや〜やっぱり色々と考えながら書いてるとどうしても時間がね……「たかがカッコいいジムと連邦書きたいだけのお話に何考える事があんねん」と思われるかもですが、あるのよ……こんなお話でも極力本編や公式の外伝に影響無いようにとか齟齬が生じないようにとか無駄に細かい拘りとか、色々です。
まぁ此方の事情はさておいて、今回はゲルググwith学徒兵が初お目見えとなりましたね。全滅したけど(爆)
ジッコ突撃艇に牽引されて戦線に投入するアイデアはのちのゲタ(サブフライトシステム)がモデルです。当初はガトルの予定でしたが、航続距離や機体の大きさを加味するとジッコのが良さそうよねって事でこっちにしました。地上では既にドダイが飛び回ってんだから宇宙でもこういうのありそう……っていうか既に誰かがやってそうな気がする、大丈夫かな?(何がや)
幕間のサクラちゃんのイメージは一昔前にニコ動とかで流行った……何だ、なんかすごい独占欲が強いヤンデレの妹に殺されかけるドラマCDのアレです。
さて次回、ついにケーニヒスベルクが動きます。ゲルググ部隊に足止めされた第343補給分艦隊の救援は間に合うのか?!ルナツー基地は一体どうなるのかッッッ?!?!
次回第二十九話「ソロモンの影:ルナツー襲撃編」
お楽しみにッッッ!!
…えっ、サクラちゃんをもっとヤンデレ堕ちさせてほしいって?
ダ メ で す ! ! !
………いやでもGQuuuuuuX時空とかなら別の方向性で病みそう、連邦負けるし(爆)