機動戦士ガンダム外伝 斬凶戦記   作:野武士山芋侍

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第二十九話 ソロモンの影:ルナツー襲撃編

 

シンイチがふいに目を開けると、広大な宇宙が目に飛び込んできた。驚いて自分の手元と周囲を見回すと、パイロットスーツ姿の自分が宇宙空間を漂っていることに気づく。

(………ッッッ?!?!宇宙?!?!何で………)

不思議なことに、ヘルメットを被っていないにも関わらず息苦しさはなかった。また暑さも寒さも何も感じないことから、シンイチはこれが夢であることを確信する。

(また明晰夢、か………でも今度は、過去のことじゃないな。ここは………この宙域は………?)

目の前には、巨大な岩の塊。

ルナツー程の大きさはないが、その形状から宇宙要塞であるらしい。

すると突然、右手から猛進してくるサラミス級巡洋艦。またも驚く彼を尻目に、多数の僚艦と隊列を組んで続々と要塞へ殺到する。

その船体には多数のMSやボールが騎乗しており、発艦の時を待つ。

そして、宇宙要塞から繰り出される猛烈な砲火とMSの大部隊。攻撃を受けた双方の艦船はたちまち燃え上がり、交戦する両軍のMSは次々と撃墜されていった。

一連の様子は、さながら無音映画のように流れる。そしてシンイチは、これがジオンの拠点ーソロモン要塞で繰り広げられている戦いであろうことを感じ取っていた。

すると、要塞内から巨大なMA(モビルアーマー)らしき兵器が現れ、たちまち艦隊のただ中へ突入。大小のメガ粒子砲を撃ちまくり次々と艦艇を撃沈していく。

轟沈する艦艇の中には、ひときわ巨大なマゼラン級戦艦。艦橋構造や艦体の特徴から、数十時間前に発光信号を交わしたティアンム中将の座乗艦『タイタン』であるらしかった…………。

嫌な予感が的中したときの不快な感覚を覚えるとともに、ふいに背後に人の気配を感じて振り返る。

そこには、ポニーテール姿で連邦軍の婦人士官服に身を包んだサクラの姉のキョーコ。

生前と、また以前の明晰夢で会った時と変わらない凛とした雰囲気と佇まいで宇宙に浮かぶ。

それでいて、どこか儚さすら感じさせる彼女はさながら蜻蛉のようだった。

「…………この戦争は、もうすぐ終わるわ。」

眼前の激しい戦いから目を逸らさず、諦観を含んだような声で呟く。噂の白いMS「ガンダム」が、ビームサーベルをMAに深々と突き立てていた。

「でも、あなたには………あなたたちには、まだ成さなければならないことがある。乗り越えなければならない戦いが………大きな試練がある。」

MAのあちこちから爆発が起こり、たちまち凄まじい爆炎が広がった。MAのパイロットらしき人影が呑み込まれていく様さえよく見える。

爆発の光が次第に減っていくソロモン要塞とその宙域。それらを複雑な心境で見据えながら、シンイチは隣に立つキョーコに問いかける。

「乗り越えられる、でしょうか。」

彼女はシンイチに向き直り、真剣な眼差しで見つめる。目が合うと、何故か心臓の鼓動が早まった。

「……………あなた次第よ。」

ただ一言、厳しさをはらんだ声。

するとここで、視界が歪み、あらゆるものの輪郭がゆっくりと溶け始める。目覚めが近いらしい事が伺えた。

 

(…………忘れないでね、サクラをよろしく………)

 

(…………ラ………ラ………………)

 

目が覚めた。

たちまち視界に飛び込んできたのは、無機質で狭苦しいジムのコックピット内。腕を組んで座ったまま寝ていたらしい。

息が弾んでいた。乗降用タラップに腰掛けて整備用タブレットを持ったネイトが、心配そうな顔を向けて問いかける。

「モリタ准尉殿………大丈夫ですか?」

「いや、キョーコさんが………」

思わず口をついて出てしまった。その名前と彼女に関する事情を知る者は、シンイチとサクラの他に極僅かしかいない。

場違いな、ニヤついた笑顔を向けるネイト。

「えッッッ、もしかして………やっぱりサクラちゃん以外にも居るんですか?!そういう人が、准尉殿に?!」

とたんに頭に血が上り、怒鳴りつける。

「ッッッ!!やめろ!!そんなんじゃない、キョーコさんは…………!!!」

普段の気さくなシンイチらしからぬ様子に驚き、慌てて姿勢を正し敬礼する。

「………すっ、すみません准尉殿!!口が過ぎました、申し訳ありません……!!」

彼の引きつった顔を見て我に返ったシンイチは、すぐに詫びる。

「いッッッ、いや、こっちこそムキになってすまない。ただ…………ね、惚れた腫れたじゃなくて、大切な人なんだ。わかってくれ。」

心境を察したネイトは心から反省し、改めて謝罪。

「そうだったんですね……自分こそ、何も知らずに本当にすみませんでした。」

そこへ、サブリナがふわりと漂いながら顔を出した。いつものノーマルスーツを着崩したキャミソール姿。

「やっほ、どったのシンイチ?珍しくデカい声出してんじゃん。溜まってんの?ヌいたげよっか?」

意地悪な笑みを浮かべ、卑猥なジェスチャーをも交えながら問いかけてくる。ネイトが気まずくなり、乗降用タラップから降りた。

「ばッッッ………そんなんじゃねーよ!!お前さんはホント……」

何か言いかけたが、サブリナが掌を向けて遮り首を振った。そしてネイトが居なくなったのを見計らい、珍しく真剣な表情を向ける。

「キョーコさん。…………サクラちゃんのお姉さんよね。アタイも事情は知ってる、大丈夫よ。何か………あったの?」

そのまま、コックピットハッチの端に頬杖をついて腰掛けた。

「あっ、あぁ………いや、たまたま、ね。うたた寝してたら、夢に出てきてサ。」

苦笑いしながら、軽い口調を装って打ち明ける。

「夢に出たって………彼女の事で、まだなんか思い悩んでるってワケ?」

「いや、そういう事じゃないさ。キョーコさんが死んだ時の事はまぁ、色々思うところがあったけどね。」

ふいにシンイチの脳裏に蘇る、無線の背景音に混じるサクラの悲痛な叫び声。サブリナは柄にもなく険しい表情で、見透かしたように問う。

「………『あの時は自分のせいでキョーコさんが死んだ』なんて、思ってんじゃないわよね?」

「まさか!!俺もできる限りの事はやった。自分のせいだなんて思っちゃいない。後悔は………無いさ。」

必死に弁明するが、やはり疑り深い視線を向けられる。

「ふ〜〜〜ん………」

シンイチは、自分でも気づかないうちに拳を握り締めていた。キョーコが死んだ時のことを思い出すたび、胸の奥には未だに自責の念が蘇る。

吹っ切れたつもりではあった。しかし彼女が夢に現れるたび、その想いに苛まれるのだった。

「………まっ、溜まってんならいつでも言ってよ。サクラちゃんが居ない時はアタイがいつでも……」

「いやいやいや、だからそういうのはやめろってホント!!反省してないだろ!!」

たちまち顔を真っ赤にしてサブリナの言葉を遮る。しかし、彼女は再び意地悪な笑みを浮かべ……

「『話し相手になったげる』、って言おうとしたんだけど。」

赤面したままポカンとするシンイチ。追い打ちとばかりに、さらにからかう。

「………あれ〜、シンイチったら、ナニ想像したの??もしかしてさっきの、本気にしてたの??やだぁむっつりすけべぇ〜♡」

胸の谷間を寄せながら近付き、シンイチの鼻先をつつく。

「ヤメテ、ヤメテホントヤメテクダサイオネガイシマス」

完全に何も言い返せなくなったシンイチは、顔を背けてシートに蹲り呟くしかできなくなってしまう。その様子を見たサブリナは、いつもの様子でからからと笑うのだった。

そこへ、MSデッキ中に鳴り響く警報音。二人の表情が一瞬強張るが、それは敵襲の警報ではなく戦況を伝えるための艦内放送だった。

まもなく、サクラの声。

《………情報、情報。ソロモン要塞陥落の一報がありました。繰り返します、ソロモン要塞陥落。また………》

ここで一旦放送が途切れると、デッキ内の一部で歓声が上がる。しかし、続けて入った悲報に一転して静かになった。

《第二連合艦隊司令官マクファティ・ティアンム中将が、乗艦の『タイタン』を……撃沈され、戦死されたとの事です。勇士達に敬意を表し、艦長命令により黙祷を………》

「ティアンム中将の艦が……?!嘘でしょ?!」

驚愕し、顔を顰めるサブリナ。

シンイチはソロモン要塞の方向に顔を向けて挙手の敬礼を送り、他のクルー達と同様に静かに黙祷を捧げた………。

 

そして同じ頃、ルナツー近海の暗礁宙域ー

デブリが最も多く漂う地点に身を潜める、ザンジバル級巡洋艦「ケーニヒスベルク」の薄暗い艦橋内。

艦長のグッゲンハイム大佐が、MS部隊指揮官のコンラッド大尉からゲルググ部隊の全滅と増援艦隊接近の報告を受けていた。

「学徒兵部隊が全滅か………フン、まぁ多少時間稼ぎができただけでも、上々といえよう。」

その物言いに、コンラッド大尉は拳を固く握り締めた。しかしこの後の作戦のためにも、あえて堪えつつ口を開く。

「新型のゲルググ、学徒兵ではなく我々に回してくれればもう少し有効に使えたんですがね。」

皮肉を滲ませた言い回しで伝えると、副艦長が大尉をひと睨みしながら返した。

「コンラッド大尉、艦長の采配になにか異議があるのか?」

「いえ、少し疑問に思っただけです。何故右も左もわからん学徒兵なぞに、最新型を任せるのかがね。」

艦長がため息をつきながら向き直り、回答する。

「学徒兵の投入は、グラナダのトワニング准将直々の依頼だ。それに、君達がゲルググを得たとしても機種転換訓練の時間など取れない。いくらベテラン揃いとはいえ、多少は必要だろう……新型機はドムやザクとは桁違いの性能だ。振り回されたいのか?」

「振り回される事はありません。こちとら、伊達にルウムからMSに乗ってないんでね。」

「例のコロンブス小艦隊には振り回されているのに……か?」

「それはあんたもだろう!!!」

耐えきれず、声を荒げて艦長席に詰め寄る。副艦長がすかさず二人の間に立ち、コンラッド大尉を怒鳴りつけた。

「大尉、口が過ぎるぞ!!」

操舵手を含めた艦橋のクルーほぼ全員が振り返り、二人を見ていた。

「………何見てんだ貴様ら、こっちじゃなくて前を見てろ!!」

副艦長が一喝すると、クルー達は再び持ち場に目を向ける。

同じ相手に対する二度の敗北は艦長とMS部隊長の不仲を生じさせ、また部下から上官達に対する少なからざる不信感をも募らせていたのである。

コンラッド大尉は舌打ちとともに、踵を返してその場を立ち去ろうとした。その背に向け、副艦長が呼びかける。

「どこへ行く、大尉!!」

「愛機の点検ですよ。誰とは言いませんが采配の不手際ゆえに、パーツ不足や整備兵の練度不足が著しくてね!!」

吐き捨てるように言うと、彼は艦橋から出て行った。それを見届けた副艦長が頭を掻きながらぼやく。

「全く、『ルウムの狂犬』とはよく言ったものだ。我々にも噛み付くとはな……。」

重苦しい雰囲気の中、艦長はひとつ咳払いを挟むと改めて口を開いた。

「通信手、グラナダからの増援はどうか。合流までの時間は?」

急に声をかけられた通信手は焦りつつも答える。

「はっ……さっ、先程1番艦『ノルデンドルフ』より報告がありました。もうまもなく合流できると。」

続けてレーダー手が報告。

「7時方向、マイナス20度。大型の熱源を探知。ムサイ級……4隻です。」

頷くと、続けて自ら通話マイクをとってどこかに連絡する。

「……格納庫、『バラク』の設置状況どうか。」

一呼吸おいて、かなりノイズの混じった返答。

《………こち……zzg……納庫、設置は完了しています。後は起爆……zz…置ですが、遠隔でも操作可能なよう…ggz……おきますか?……》

額に手をあてて少し考えてから、再び口を開く。

「いや、結構だ。第二段階に備えて、艦橋からの直接操作のみで構わない。」

《…了…ggzz……》

通話を切り、一旦艦長席にもたれて深いため息をついた。

そして今度は、艦内全域への通話に切り替えたうえで再びマイクをとり、はっきりと告げる。

《全艦に連絡。我が艦はグラナダからの増援艦隊と合流次第、ルナツー攻撃作戦を開始する。なおこの作戦は………かねてからの通達どおり、片道である。》

艦内が静まり返り、クルーのなかには十字架をきる者もいた。

《しかしながら、この作戦が成功した暁には………少なくとも私と極小数を除いたクルーは皆、生きて英雄として讃えられるであろう。各員一層奮闘努力せよ………ジーク・ジオン。》

(………こんな状態で、かような大作戦をやる羽目になるとはな。先が思いやられる………。)

暗礁宙域のただ中で、さながら深海魚の如く息を潜めていた「ケーニヒスベルク」とムサイ級「リュッツオウ」。

その2隻にいよいよもって、グラナダからの増援艦隊が合流しつつあった………。

 

そして再び、ネオショー艦内MSデッキ。

パイロット達には相変わらず搭乗待機が命ぜられたままであったが、彼らはおのおのの愛機のコックピット内でシートに座ったまま仮眠をとっている。

そんな中シンイチは一人、なかなか寝付けずにいた。先程の明晰夢でキョーコから告げられた「乗り越えるべき戦いと大きな試練」がなぜか頭から離れず、ずっと気がかりになっていたからだ。

(乗り越えるべき戦い……戦争はもうすぐ終わる、それは俺にも分かる。)

(しかし『大きな試練』とは………例えばもしも、俺達の中の誰かが死ぬというのなら………まさか………)

一瞬、脳裏に過ぎる嫌なビジョン。

ネオショーの艦橋が直撃弾を受け、投げ出されるクルー達。

その中には、引き裂かれたノーマルスーツと割れたヘルメットのまま宇宙空間に放り出されるサクラの姿………。

目をきつく閉じて頭を横に振り、頬を両手で叩いてイメージを払う。

(ダメだ、今は眠っておく時だ。余計なことは考えるな、必要ない………)

何度も自分に言い聞かせて眠ろうとするが、どうにも落ち着かない。

「…………ハァ、仕方ないな。」

左腕に装着した腕時計型の通信端末を起動させると、サクラを呼び出す。何度かコール音が鳴った後、端末からいつもの愛くるしい声が発せられた。

《シンイチさん?どうしたの、こんな時に……寝てなくちゃいけないんでしょ?》

「あぁ、忙しいところゴメンよ。ちょっと………君の声が、聞きたくなってね。」

少し間が空き、再び声。

《ううん、大丈夫よ。大変だけど……頑張ってね。》

「ありがとう、必ず還ってくるよ。」

《次還ってきたらあたし……シンイチさんに『イイこと』してあげる。楽しみにしてて。》

シンイチが赤面しながら狼狽えた。

「ちょッッッ?!それ……またサブリナからの受け売り?!」

《さぁ、どうでしょう♡………大好きよ、またね。》

通話が切れると、シンイチは一つため息を吐く。彼女の声を頭の中で幾度か咀嚼した後、腕を組んで目を閉じた。

そして、ネオショー艦橋。

シンイチとの通話を終えたサクラが視線を感じて振り返ると、イケタニ大佐が真剣な表情でこちらを見ていたーしかし彼女と目が合うや、にこやかに微笑んで一言。

「私は、何も見ていませんよ。何も聞いていません。しかし、以降は慎んでもらえれば。」

「………すみません。ありがとうございます、艦長。」

サクラもまた微笑み、軽く頭を下げる。

そして互いに、改めて正面を見据え座り直した。

ネオショー率いる第343補給分艦隊は最大船速で、ルナツー宙域近海への帰路を急ぐのであった………。

 

ルナツーからほど近い宙域。

ついにケーニヒスベルクとその随伴艦が捕捉され、基地内から続々と迎撃部隊が発進する。

しかし主力艦艇は出払っており、サラミス級ほか10数隻。

MS部隊に至ってはソロモン攻略戦への参加を見送られた部隊を中心とした、技量未熟者主体の数個小隊。そしてそれをボール2個中隊ほどで帳尻合わせしているという悲惨な状況であった。

隊列を組んだケーニヒスベルク側からもMS部隊が一斉に発艦し、ルナツーの迎撃部隊と交戦を始める。

攻撃の矢面に立ったコンラッド大尉のリックドムIIは、まず先頭の敵小隊のただ中にバズーカを撃ち込んだ。

たちまち散開するジム小隊。

すかさず孤立した1機に詰め寄り、ヒートサーベルで両断。さらに背後から仕掛けようとした別の1機の斬撃を難なく躱すと、背面にバズーカを撃ち込んで一撃で沈める。

残った1機は後追いで突っ込んできたザク小隊の集中砲火により、宇宙の塵と化した。

《………ぬるい!!二本刺しのアイツは、居ないのかァッッッ!!!》

コンラッド大尉は敵の手応えのなさに辟易しつつ、ボール小隊の猛烈な砲火をいとも容易く躱す。ザク1機が巻き込まれて爆散したが、それでもジオン側MS部隊の勢いは衰えない。

ケーニヒスベルクとその僚艦からは大小のミサイルが次々と発射され、数発がサラミス級の1隻に着弾しその船体をへし折った。また主砲を撃ちまくり、防御陣形を整えた連邦軍守備隊の真っ只中を目掛けて突入せんとする。

地球連邦軍の宇宙における最大の拠点の近海において、ソロモン攻略戦に続く戦いがここに始まった。

そしてその頃、ネオショー艦橋では………

 

「艦長、ユキカゼのマルヤマ中佐から……」

サクラが言い終えないうちに、イケタニ大佐が早口で告げた。

「すぐに繋いでください。」

慌てて回線を繋ぐと、大佐は艦長席手元の直通電話を取る。

《イケタニ大佐?!サイド6守備隊のパゾク中佐からの報告なんだけど、やっぱり睨んだとおりだよ!!》

マルヤマ中佐の慌てた声。敬語を忘れたまま、早口で結果が述べられた。

《交戦して拿捕したチベ級の中から出てきたよ、核弾頭!!それから、解析できた記録では〜、受け取り2発の筈なんだけど、え〜〜っと………》

報告書類をめくっているのか、通話の背景音にガサガサという音が混じる。

《……zzgz…残りの1発が無い!!今捕虜を問い詰めて、受け取り先を吐かせてるって!!何かわかっ…zz…ら、また連絡する……zzg……》

「どうもありがとう。くれぐれも、無茶はしないようにと伝えてください。……ただ、ミノフスキー粒子濃度が上がっているので、ここからは情報が限られてくると思います。」

《…ggzz…了解!!どうにか…zzgzz……》

大佐の言う通り、通信に強いノイズが混じり始めた。直通電話を静かに置く。

ネオショーの行く手には、ルナツー基地がいよいよ遠影に浮かぶ。そしてその近海で、いくつもの爆発の光が閃くのが見えた………。

 

第二十九話 ソロモンの影:ルナツー襲撃編 終幕

 

 

幕間 逆襲のサクラ

 

少しばかり時を遡って、パイロット達が仮眠をとる前。またサクラが通信担当を交代する1時間程前。

MSデッキ隅の休憩スペース、自販機コーナーの前にサブリナとバーリングが正座していた。そしてその胸元にはそれぞれ

「私はシンイチのほっぺにキスしました」

「私はサブリナがシンイチにキスした事について倍ぐらい盛ってサクラ様にチクりました」

と書かれたプレートが下げられている。

「さぁ〜て、さて♡」

大きめのモンキーレンチを片手に、サクラが天使のような悪魔の笑顔を浮かべている。その隣に立つシンイチは、複雑な表情。

「シンイチさんから一通り事情は聞きました。バーリングさんは……そうですね、シンイチさんからの腹パン1発で許してあげます。」

「はッッッ……腹パン?!頼むモリタ、どうかお手柔らかに………!!!」

「ロイスさん、カーマイケルさん、お願いします♡」

なんとも可愛らしい、それでいて殺意を纏った笑顔。こわい。

すると、ロイスとカーマイケルがバーリングの両腕を背後からガッチリと組んで立たせた。

「お前さん、ちょいとばかりお嬢を甘く見たな。」

「曹長………今回ばっかりは、俺も庇いきれないっす。」

そしてどこかの世紀末救世主伝説のような雰囲気で、拳をバキバキと鳴らすシンイチ。

「モ……モリタ!!いや、准尉殿!!この度は大変失礼をば……!!」

命乞いも虚しく、シンイチはバーリングに歩み寄る。

「腹を括れバーリング、こーでもしないとサクラの気が済まない。いくぞ………そぉいッッッ!!!」

「ポ゜ォッッッ!!!!」

割と強めのボディブローが炸裂した。バーリングは身体のどこから出したか分からない叫びとともに、苦悶の表情を浮かべて蹲る。

「サブリナさんは、どうしてくれましょうか……♡」

ハイライトの消えた目を向けるサクラ。その異様な雰囲気に、サブリナはすっかり怯えている。

「ヒェッ?!?!サクラちゃんホントにごめん、許して……!!アタイ何でもするからさぁ!!」

「ん?『何でも』?じゃあ、このおっきなレンチを(自主規制)に……」

ロイスとカーマイケルがドン引きすると、即座にシンイチが遮って必死に説得する。

「やめたげて、それはマジでやめたげて。身体的苦痛を伴う制裁はご婦人にはやめたげて。特に下半身絡みはやめたげて、お願いだから。」

その様子にサブリナは、正座したままウットリとした表情。

「やっ……やっぱりシンイチは優しくて紳士的ね………流石アタイの第二の彼ピ♡」

「サッッッサブリナ!!!少し黙っててくれ、話がややこしくなる!!!」

シンイチが警告するが、遅かった。

「第二の彼ピ」という言葉に反応したサクラから再び禍々しい、どす黒いオーラが渦巻く……ような気がした。

「サブリナ、さぁ〜〜〜ん?今あたしのシンイチさんのことを、『第二の』??なんですってぇ〜〜〜??」

「ヒョエェッッッ………?!?!」

サブリナは般若のような形相のサクラの様子に完全に怖気付き、いよいよ声が出なくなってしまった。正座が崩れてへたり込み、文字通り蛇に睨まれた蛙と化す。

「いや、だからさっきも説明した通りかくかくしかじか云々かんぬんで………許してやったら(↑)どうや(↓)!!!」

その後、シンイチやカーマイケル、ロイスも加わった説得の甲斐もあり何やかんやでサクラは落ち着きを取り戻す。肝心のサブリナに対するサクラの制裁は「プレートを下げた状態の情け無い姿を写真に残す」程度のもので済んだらしい、多分。

しかし流石のサブリナも懲りたのか、シンイチに対する過度の身体接触「だけ」は避けることを心に誓うのであった………。

そして一連の騒動が終わり、愛機のコックピットに収まりながらシンイチが呟く。

「まぁ………皆で生きてるからこそ、こういうバカな事ができるのかもな。」

 

幕間 逆襲のサクラ 終幕




ご無沙汰セレナーデ(意味不明)
おはようございますこんにちはこんばんはハーメルンの皆々様、野武士山芋侍です。
投稿頻度落ちてて申し訳ないです、リアルが忙しいのと物語が佳境を迎えつつあるもんでどうしても時間かかっちゃって……(汗)
まぁ少なくとも一年戦争編はきっちり終わらせるつもりなので、牛乳コーヒーでも飲みながら気長に待っててくださいはいどうぞ( ͡° ͜ʖ ͡°)つ(大樽入り牛乳コーヒー)
しかしまぁノリと勢いと怒りと憎しみと愛しさと切なさと心強さ(?)をキッカケに始めたこのお話も、まさか30話近くまで続くとは……当初は自分が愛してやまないジム系の良さを世に広める事だけが目的(逆効果のような気もするけど)だったけど、実は最近登場人物達の行く末を最後まで書きたいという気持ちの方が大きくなってきてるんですよね
前も言ったけどこのお話、アクシズ押し返すトコまでは大まかなアイデアがあるので、皆様に読んで頂けるならそこまで突っ走るつもりです。
さて、そしてそしてッッッ!!ついに戦端が開かれたルナツー宙域。鍵を握るのはサイド6のチベから出てきた「核弾頭」!?もう1発はいずこへッッッ!!!!

次回第三十話「ソロモンの影:ルナツー死守編」
お楽しみにッッッ!!

…え、シンイチがサブリナに「ヌいて」もらうトコ見たかったって?
アイツの場合サクラちゃん以外の女のコだと快感より罪悪感が大幅に勝るのでイきません(爆)
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