機動戦士ガンダム外伝 斬凶戦記   作:芋 侍

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第三者 ブレイクスルー

北米、とある前線。

そこかしこで激しい爆発、数多の砲弾銃弾が交錯し、炸裂する。

築かれた陣地には撃破された戦車の残骸が多数転がり、またその中には胸元に大穴を開けられたり、片脚を破壊され動けなくなったMSも混じっていた。

無線通信は連邦軍の苦戦を告げている。

《デルタ5からHQ、敵の防衛線は極めて強固につき突破困難!至急増援を求む!!》

《こちらデルタ3、デルタ4中破行動不能!》

《シアラー7…61式がやられた、脱出無し!!》

《クッソォ…攻撃部隊残存MS4機、至急増援を、無理ならば後退の許可を、至急…!!》

連邦軍のMSと61式戦車の混成部隊がジオン公国軍の防御陣地を攻撃しているが、予想を上回る戦力配置と抵抗により攻めあぐねていた。

そのような状況にもかかわらず、司令室からは非情な返答。

《デルタ5、後退は許可できない。増援部隊を両翼に派遣する。現地点を維持せよ。》

コールサイン「デルタ5」のパイロットは愕然とする。中隊指揮官機が動けなくなり、階級最上位者は少尉の自分。増援の到達まで持ち堪えられるか…。

そんな矢先、隣で援護してくれていた陸戦型ジムが胸部に被弾し撃破された。彼らはこれで戦闘可能残存数3機。

《デルタ8ダウン!!…デルタ5、敵が突出してきます!!》

好機とばかりに、反対側の防御陣地から乗り出してくる敵MS部隊と、マゼラアタック戦車、装甲車の群れ。

最早これまで。そう悟り、

《畜生…!!生き残った機へ、一時予備陣地まで後退ー…》

《…位置を維持!各機現地点を維持せよ!!》

割って入る、落ち着き払った、しかしはっきりとした別の交信。

ライフルを構えた陸戦型ジムが躍り出る。

たちまち、不用意に突出してきた敵MSーザク2機を僅か数発で、瞬く間に撃ち倒した。

《ブッ飛べ、雑魚ども!!》

その脇に手控えるロケットランチャーを持った同型機は、防衛陣地中央に位置する敵の大型砲台に手早く砲弾を撃ち込んで爆砕せしめる。

また隊列を組んだマゼラアタックの一団にさらに数発ぶち込み、先頭の車輛を爆散させその直近の数輌を擱座。前進を食い止めた。

新たな脅威に斬りかからんと近づいたザクは、横合いから突撃してきたさらに別の陸戦型ジムに脇腹を刺され、至近距離からのマシンガンの斉射で蜂の巣にされる。

的確な射撃と、完璧な連携。

増援の3機は、早くも敵陣地付近にまで到達。

《ッッッしゃあ、チャーリー3一番乗りだァ!!》

逃げ遅れた装甲車を踏み潰しながら、チャーリー3、バーリング軍曹が無線で気勢を示した。明らかな「無駄口」の類いだが。

《チャーリー3こちらアルマジロ、前に出過ぎるな!!それから無駄口はよせ!!》

野太い声。部隊指揮官のダンカン大尉が一喝。

《チャーリー1よりアルマジロ、陣地を一部突破した!》

バレンツィーノ中尉が必要かつ正確な一報。

そしてさらに、味方陣地に振り返り、

《残存各隊へ、こちらは第41機械化混成中隊…意志ある者は、我に続け!!》

ライフルを連隊旗手の如く高く掲げ、味方を鼓舞する。

防御陣地で燻っていた友軍は、それを見るやたちまち士気を取り戻した。

《……よし、行くぞ!!動けるヤツは続け!!》

デルタ5の号令一下、生き残った3機の陸戦型ジムと2個小隊程度の61式戦車が一気呵成に陣地から乗り出し、敵陣へ向けて再び前進を始めた。

反対に、主力の一角を崩されたジオン軍は一転して後退の様相を示す。

しかし、新たな脅威が部隊の間近に迫っていた。

《アルマジロからチャーリー各機、方位105、正面2時方向より07(MS-07グフ)の音紋検出、警戒を!》

オペレーターのタチバナ伍長が早口で、かつ簡潔明瞭に伝える。

《了解、チャーリー2引き受けた!!》

《チャーリー1援護する、チャーリー3は直近で警戒!》

《ほい了解!新型の相手はお預けか…!》

勇躍、グフと対峙するチャーリー2ーシンイチの陸戦型ジム。

グフは左前腕の盾を構えて突貫してくる。シンイチのジムは前回ザクを相手取った時と同様盾を地面に突き立て壁を作った。

たちまち、大型の盾はヒートサーベルの横一閃で真っ二つに。しかし、そのすぐ後ろで隠れていたであろう陸戦型ジムは、すでにヒートサーベルの間合いにはいない。

盾を囮に、ギリギリまで惹きつけて後ろっ飛びに回避していた。これは逆に、前回のザクがとった手段。

同時に左手のマシンガンでグフを撃たんと狙いをつけ、乱射。

不覚、とばかりに左掌に装備されたフィンガー・バルカン(五連装75㍉機関砲)を向けるが、火を吹く事は無かった。

指向したと同時にバレンツィーノ中尉が狙撃、左腕を盾ごと吹き飛ばす。

が、なおも向かってくるグフ。

さらにマシンガンを撃って足止めを…と思った矢先、ヒートサーベルを持つグフの右手袖口から何かが勢いよく射出される。

(………何だ?!ヤバいッッッ!!!)

一見して鞭のような武器、シンイチは直感で瞬間的に危険を悟り、素早くマシンガンを放り投げて囮にする。

直後、鞭は投げ出されたマシンガンを絡め取り凄まじい放電。そのまま握っていたら機体を通して自らも感電、機能停止に追い込まれていただろう。

電撃で撃発が誘引され弾倉内の砲弾が炸裂、マシンガンはそのまま空中で爆発した。

(危なッッッ…、鞭が出てきて………電撃、か?!電撃鞭とはな……!!)

鞭はグフの右腕袖口に引き戻される。

その間右腕は下手に動かせられないと見るや、隙を見逃さず、距離を詰める。

即座に右手首を掴んで押さえ、残った左腕をも掴み、がっぷり四つに近い体勢になった。

額と額がぶつかり合い、ゴーグルアイとモノアイが威嚇するように互いに激しく閃いた。

流石はジオンの新型、ザクとは段違いのパワー。シンイチのジムが押し込まれそうになる………が、

「まだまだまだまだァ、どおッッッらぁぁぁアアアア!!!」

恐怖を振り払うかのごとく、気合いとともに雄叫び。

単純な力比べに加えて、更に背面のスラスターを全開まで噴かして逆に押し返す。

また押し返しながら、何度もグフの膝を踏みつける。

ついにグフの膝関節が火花を散らして破損し、片膝をつき体勢を大きく崩した。

「くたばれェッッッ!!!!」

機体を回転させて慣性をつけ、強烈な後ろ蹴りを胸元にお見舞いする。

大きくよろめきながらもなんとか立ちあがろうとするグフに、ビームサーベルを袈裟懸けに振るうが、ヒートサーベルで受けられた。

再び膠着するかに思われたがしかし、左手で予備のビームサーベルを引き抜き素早く右腕を斬り落とす。

そのまま二刀流で全身をズタズタに引き裂く…。

 

両腕を肩口から失い、あちこちから火花を散らしてもはや屍のような状態になったグフは、ついにガックリと膝を付いた。

ビームサーベルを突きつけたジムは眼前。

その周囲では、次々と撃破されていく味方。

突破される防衛陣地。

形勢は完全に逆転した。

《……zzgz……ここまでか……zz……斬れ…!…》

何故か通信に混ざる、おそらく敵の声。

介錯を頼む、とばかりに頭を下げて首を差し出す。

《……………………潔し、御免ッッッ!!》

シンイチのジムはビームサーベルを逆手で両手持ちし、躊躇する事なくグフの背中に深々と突き立てた………。

 

元ジオン公国軍某基地、連邦軍の占領下ー

奪取した基地では、生き残った部隊が集結していた。

そしてここは第41中隊に割り当てられた仮設の整備スペース。後発の整備隊が到着するまでにパイロット自身で愛機を点検し、異常箇所を割り出して整備担当に伝える必要がある。

彼らは到着早々、戦いの疲れも抜けないままその作業に追われていた。

シンイチがジムのコクピットに座って点検を行い、横付けされた簡易的な乗降用タラップにバーリングが座ってタブレットを持ち、チェック項目を確認している。

「ところでよ、モリタ…。」

「んー?」

コンソールから目を離さず答える。

「この戦線にも、居たんだとよ…。」

「ふーん………何が?07か?」

「いや、『ガンダム』とかいう、ウチの例の新型。」

「はぁ〜、そりゃまた…頼もしいこって。」

つい先々週、北米方面ジオン公国軍総司令ガルマ・ザビの座乗艦を葬ったという白いMS、ガンダム。

噂は彼らの耳にも届いていた。

「何処に………居たんだ?」

やはりコンソールから目を離さないまま、シンイチが尋ねる。

「あぁ、俺たちとは反対側、左翼側だ。あちらさんも凄い暴れようだったんだとさ。」

「はぁ………、それはそれは。…やっぱりサブの方が死んでるか…」

シンイチのジムは、グフに額を衝突させた際頭頂部のサブカメラを破損していた。

「…なんか興味無さそうだな?」

バーリングが顔を上げる。せっかく教えてやったのに、という雰囲気。

「まぁ…あの『紫包茎頭』の乗ったガウを沈めたヤツとは、別タイプらしいけど?」

「ハッ、ハハハ、あぁ、………ザビ家のガルマ坊か。上手い事言うなァ…。」

シンイチは思わず笑いながら、鼻の頭を掻く。

「あぁ、ありゃきっと下の方も………おっ?」

くだらない会話をしていると、今しがた共に戦い生き残ったパイロット達がドヤドヤと整備スペースに詰めかけてきた。

「よぉ、ジオンの新型をやったエースってのはどいつだ?!」

「仲間の仇をとった礼を言わせてくれ!!」

「小隊長殿に是非とも、ご挨拶を!!」

「君可愛いね、歳いくつ!?バストサイズは?!」

「ロケットランチャー担当のごっつい若大将、居るかい?!」

詰めかけてきた面々から質問責めに遭うサクラ。一部邪なものも混じっているが。

中には早くも酒瓶を担いでいる者も居る。

「あっ、えぇ…と、すみません、パイロットの方々は今乗機の点検中で…まだ、その、ちょっと対応できないかなぁ…なんて」

オロオロと返答する。

「はぁ〜い押さない押さない、ウチのエース達は取り込み中よっ!!…っていうか、ウチのオペレーターに変な事聞いたアホは誰?!金取るからね!!」

助け舟を出しつつ、また妙な商売根性を出してなんとか捌こうとするサブリナ。

そこへ、

「皆、激戦だったな!」

「やぁ、重力下の勇士達。」

デブリーフィングを終えたダンカン大尉が、バレンツィーノ中尉を伴って整備スペースに到着した。どよめきが起きる。

「よぉ待たせたな、今日のエースのご登場だオラァ!!」

バーリングも乗降タラップから降りて駆け寄ると、途端にワッと歓声が起こった。

めいめい一人ひとりと握手を交わし、時には抱き合ったり、一杯ひっかけたり。

…しかし、シンイチはその喧騒を遠くに感じつつ、コクピットに座ったままふいに思い出す。

《……斬れ…!》

おそらく敵の声、最期の通信。

勝利は喜ばしい事だが、ここは人を多く殺した者が讃えられる、異常な世界でもある。

それを時折忘れそうになる…というよりは、慣れていく感覚の方が近かった。

彼の義理堅く、生真面目な性格は、整備スペース一帯に響き渡る歓声に複雑な心境を示さずにはいられなかった。

ふいに、コクピットから身を乗り出し群衆を見下ろすと、偶然こちらに顔を向けたサクラと目が合う。

ぎこちない笑顔を送り軽く手を振ると、彼女も笑顔を返して元気に手を振ってくれた。

…何故か、不思議な安心感で満たされ、それまで色々考え込んでいたのが馬鹿らしくなった。

ふぅっ、と、一つため息をついて、ドサッとシートにもたれかかる。

少なくとも、自分は今日も軍人として全力を尽くして戦った。そしてそのお陰で、小隊は誰一人として欠けなかった。

友軍にも、十二分に貢献した。

今はそれで良いじゃないか。

「よッッッ…しゃ、行くかァ!!」

気持ちの整理をつけてバシンと両膝を叩き、立ち上がる。

コクピット脇の乗降用クレーンで降りると、嬉しそうに駆け寄ってきたサクラに手を引かれて、今日のエースが群衆の中へ歩いていく…。

小さな勝利が、連邦軍にまた一つ重なった。

 

そして、どこかのジオン公国軍陣地。

ここにはかの防御陣地から撤退してきた残存兵力が再集結していたが、連邦側のそれと比べると明らかに数が少ない。

MSに至ってはザクIIが2機に旧式のザクIが1機、さらに前者はうち1機が激しく損傷し、歩くのもやっとの状態だ。

マゼラアタックはわずかに3輌。

うち2輌は砲塔が無く、車体上には大勢の兵士が陰鬱とした表情で座っており、中には負傷者も居る。他、APC(装甲兵員輸送車)が数輌。

「なっ…、帰ってきたのはこれだけか…?!」

中年の男性士官が驚愕する。

トシヒコ・コマツ大尉。このエリアに展開する第54中隊の指揮官で、今回は後方で指揮を執っていた。

「…おい待て、ランガンケ大尉のグフはどうした?!居ないのか?!」

帰還報告に来た下士官に尋ねる。憔悴し切った悲壮な表情で応えた。

「…はっ、ランガンケ大尉殿は………残念ながら、敵機と真正面からまみえ、う、討ち取られ、ました…。」

「クソッッッ、なんて事だ……アイツの悪い癖だ、すぐ前線に出たがる………!!」

ジオン公国軍の高級将校は、兵の指揮を鼓舞するため前線に出る事が多々ある。

今回は良くも悪くも、それがまったくもって裏目に出てしまった。

「これで、我が隊に残った操縦将校は俺だけか。出ざるを得んな………おい、フレーゲル曹長、人員と装備の補充は?!方面司令部からの命令は!」

指揮所の仮設テントに入りながら、別の下士官を呼びやって矢継ぎ早に続ける。

「はい、我が中隊には新人の士官二人と、宇宙(そら)から降ろしてきたMS2機を加えて再編成せよとの事です。」

突如、テントの外で叫び声とけたたましい警笛の音。直後何かが倒れるような、重々しい轟音と地響き。

生き残ったザクのうち、ほぼ大破状態のものがついに倒れ伏した。整備兵や衛生兵が慌ただしく機体に駆け寄る。

さらに倒れた際、APCのうちの1輌が下敷きになった。こちらは幸いにして無人。

「クソッ………!!」

その惨状に、コマツ大尉は悪態をつく。

「た……大尉殿、こちらが補充兵のリストです。」

下士官から名簿を乱暴に受け取り、名前を見やる。

「新人か…何だ、まるで子供じゃないか!……フン、使えれば良いが………。」

写真を見る限り、まだあどけなさが残る雰囲気のハンス・ブレンドレ少尉と、アナスタシア・スコーネルト少尉。

コマツ大尉は口では冷たく呟きながらも、苦しい戦いの最中に若者を送らなければならない罪悪感に、内心ながら苛まれていた。

「大勢死んだ。これからも、まだ死ぬだろう。」

感慨深く独りごつ。

「せめてこの先は………こいつらだけでも。」

 

第三話 ブレイクスルー 終幕

 

 

幕間 サブリナの閻魔帳

 

整備班の手伝いを終えたサブリナが、開け放たれたホバートラックの側面ハッチに座り込んで何やらノートに書き記している。

丁度そこをシンイチが通りがかった。

「…?サブリナ!お疲れ!」

「えっ?!…あぁ、うん…お疲れ!」

サッと、ノートらしきものを隠した。

「…今何か隠した?あぁ、日記?だとしたらすまない。中は見えてないから、無問題だッ!」

ニカッと笑い、サムズアップ。

「あ、あぁ…アンタなら、まぁ口堅そうだし別にいいわよ、ハイ。」

あっさりと差し出した。表紙には特に何も書かれていない。

あまりに唐突な出来事に、目が点になるシンイチ。

「中、見てもいいわよ?」

「えっ…えぇッッッ?!…ま、まぁそしたら少しだけ。」

受け取り、興味本位でそっとページをめくる。…といっても1ページめ以降は何も書かれてないようだが。

それには、小隊や整備班の人員の名前が羅列され、その横には画線法で何かの数値が書かれている。

「何の事かわかる?」

「???何だコレ、撃墜数???いやでも整備は…あ、俺の名前もある。…4本?……え、ホント何コレ???」

「それね………アタイの谷間をチラ見した回数。1回につき1ドルよ♡」

シンイチが驚愕する。

「はい?!?!毎回つけてんのコレ?!?!」

ちなみにバーリングがぶっちぎりの50回。一番少ないのはダンカン大尉の3回で、バレンツィーノ中尉に至っては流石というべきか名前自体載っていない。

「もちろん!クリスマスの時期に徴収するつもり、パーティの時のネタにもなるしね。アンタも精々気をつけな♡」

ズイッと谷間を強調して迫るサブリナ。シンイチは慌ててノートで顔を隠して逸らす。

多分セーフ。多分。

「おっ?おぉ…タチバナ伍長の名前もある………6回か。って事は6ドル?」

「あ、サクラちゃんは1ミルね。」

「レートひっくッッッ!?!?………ま、まぁ、見なかった事にしとくよ…。」

ノートをサブリナに返して、シンイチは足早にそそくさと立ち去った…。

改めて、ノートを見やるサブリナ。

ぽつりと呟く。

「………誰の名前も、消したくないんだからね。」

そっと胸に抱き、夜空を見上げる。星はまだまだ見えない。

 

「アタイの大切な、バカ達。」

 

幕間 サブリナの閻魔帳 終幕




今日はここまでと言ったな?あれは嘘だ(爆)
今回は戦闘シーン増し増しかつジオン側登場人物が一部初お目見えとなりました。
要所要所でセルフサービスにて「ブッピガァン!!」の効果音を脳内再生していただければ幸甚に存じます(?)
幕間はあえて、ちょいと切ない感じで…。
次回はジオン側メインとなります、お楽しみにッッッ!!
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