機動戦士ガンダム外伝 斬凶戦記   作:芋 侍

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第五話 実験部隊合流

機動戦士ガンダム外伝 斬凶戦記

第五話 実験部隊合流

 

連邦軍某基地の一室、資料室。

机上に置かれたパソコン端末の画面を、シンイチが真剣な顔で見つめていた。

映し出されていたのはデルタ1の死の間際、機体に残されていた映像記録。

あの後回収部隊が現地を捜索、黒焦げになった陸戦型ジムからかろうじて映像記録を引き抜いていた。

そして、パイロットの遺体も。

再度一通り映像を精査する。

デルタ1、デイビス少尉の荒い息遣いと、コックピット内に響く警報音。怒りに任せたマシンガンの掃射、そして敵の心胆を寒からしめた最期の通信…

 

《……zzgz…一緒に……休暇といこう……gzz…》

 

然程間をおかず、映像は激しい衝撃と共に砂嵐へと変わる。

彼が最後の一人になっても臆する事なく、そして一歩も引かずに立ち向かった事が窺えた。

感慨深く息を吐く………と同時に、シンイチはふたつの懸念を抱く。

 

切先の払い方、躊躇いの無い突き。

それはあきらかに、剣道の「払い突き」の動きそのもの。

 

以前戦ったグフにそのような動きは見られなかった。尤も、あれはヒートサーベルを存分に振り回す前に仕留めたせいもあるが。

先に精査したデルタ2の映像にも十二分に脅威を覚えたが、こちらは別の意味でさらに脅威だった。

つまり、剣道の心得がある何者かが、よりにもよって格闘戦性能に秀でたグフに乗っている。

これが一つめ。

そして、ある意味さらなる脅威ともいえる二つめ。

「まさか………………だろ。」

フッと笑って押し殺し、椅子に浅く腰掛けてもたれた。

映像を止め、きつく目を閉じ眉間を摘んで揉みほぐす。

と、資料室の扉が開いてバーリングが入ってきた。

いつもの飄々とした口調。

「よぉ、おさらいご苦労さん。…まぁ一服やんなさいな、大将。」

机上にシンイチが愛飲する炭酸飲料を置く。

「おっ!おぉ、悪いな………お代は?」

「いや結構!」

バーリングが両掌を振って遠慮の姿勢。がめつい彼にしては珍しい。

「デルタをヤッた奴らをブチのめすんだろ?…前祝いってやつ。後で俺にも何か奢れよ。」

「ハハ、そういう事か…………ちょっと気が早いぞ。」

「で、どうなのよ?勝てる算段は付きそうか?」

どっかりと遠慮なく机に座って身を乗り出し、端末の映像を見やる。

「件の07か。……なんて手際だ、隙がない。」

「そうだな。………それにコイツは、戦い方が俺に似ている。」

驚いてシンイチに向き直る。

「は?……その、何だ…東洋の、ケンドーってやつか?」

「ああ。おまけに相当、手慣れてる。」

「かなり面倒な相手だな、つまるところお前さんが敵に回ったようなもんか………。」

言い得て妙だが、彼の言う通りだった。

バーリングは少し間を置いて、からかうように笑みを浮かべながら一言。

何気ない台詞だったが、シンイチの「二つめの懸念」に現実味を帯びさせた。

「…ハハハ、まさか、この07のパイロットはお前の昔の『オシショー』ってオチじゃないよな?」

その言葉が、シンイチの胸の奥に深く突き刺さる。

一瞬、息が止まる。指先が僅かに震え、マウスを握る手に力が入る。

 

(もしそうだとするならば、おそらく俺では…)

 

ここまで考えて、その先を紡ぎ出すのはやめた。たとえ脳内であっても。

「まっ、まさかだろ!………んな訳あるかよ。少なくとも俺の『お師匠』は、軍人になるような人じゃない。」

言葉を押し出すように明るい口調で否定するが、僅かな動揺も混じる。

「だろうなァ、古いコミックや映画じゃねーんだから……」

「そうだろ。今どきな……」

会話が一時途切れるとともに、一斉放送。

《41中隊パイロット及び整備兵、10:30に第1格納庫前へ集合されたし。繰り返す…》

「だとよ、行こうぜ大将。」

バーリングが机から立ち上がり、親指を立てて出入り口を指差す。

「おっ、あぁ…。」

静かに立ち上がり、バーリングに続いて資料室を出た。

 

そして、格納庫前。

小隊メンバーが並んで立ち、バレンツィーノ中尉がダンカン大尉に申告。

「第1及び第2小隊、揃いました。」

「よろしい。……早速だが、今回は戦力補充も兼ねて他部隊と合流し、共同戦線を………」

ダンカン大尉の声に轟音が重なり、それは徐々に大きさを増した。

「…丁度来たな。タイミングの良い事だ。」

基地内に大型のトレーラー3台と輸送トラック数台が連なって進入してきた。

前者は輸送用の帆布で全体を覆われているが、その大きさは明らかにMS。

先頭の車輌から、恰幅の良い作業着姿の中年男性が降りてきた。

「よし、作業開始!!」

号令一下、同じく降車してきた整備兵や作業員が一気呵成に動き回る。

「おい、このポンコツ共をさっさとどかせ!!」

「ホバートラックも邪魔だ、移動させろ!!」

機材を広げたり、MSを起こす準備を始めたり。

しかし明らかに「先住者達」に対してかなり態度が大きく、まるで邪魔者扱いだ。

「おーおーおー、態度の大きいこって。感心しねぇなぁ。」

パーシヴァル中尉が拳をポキポキと鳴らし、サラも腕を組んで一団を睨みつけた。

シンイチが不安そうにダンカン大尉に尋ねる。

「まさか、共同戦線ってのは…コイツらと?」

「…そうだ。」

苦々しそうな表情で頷くダンカン大尉。

「な、何なのアイツら………うッッッさいわね、邪魔になってんなら、テメェらで押してどければァ?!」

サブリナがついに堪えられず、整備兵達にツカツカと歩み寄りながら怒鳴り散らした。

「何だと、女が楯突くのか?!」

「こちとら仕事で来てんだぞ!!あぁ?!」

整備兵複数人がにじり寄って口々に凄むが、サブリナは腰に手を当てて仁王立ちし、全く臆する様子は無い。

そこにバーリングも加勢。

「おぅおぅオメーらこそ何だァ、後から間借りしてきてその態度はァ!!ジオン共の前にツブしてやろうか!!」

一連の様子をみたパーシヴァル中尉が豪快に笑い飛ばす。

「…ウハハハハハ、何やら面白くなってきたようだな!」

そして、戦車クルー達に目配せして加勢するよう促した。

サラをはじめとして、巨漢のナザレンコも無言で頷き「最前線」に歩み寄る。

バレンツィーノ中尉は腕組みしたまま事の成り行きを見守り、サクラはオロオロしている。

一触即発の空気の中、ダンカン大尉がやれやれとため息をつき仲裁しようとした、その時。

部隊指揮官らしい茶色短髪の若い士官が割って入る。先程まで粋がっていた整備兵達が一瞬で強張り、直立不動で敬礼する。

そして彼の顔を見た瞬間、バーリングも固まった。

「まァ、皆よせよせ。無駄なエネルギーを使う事はない。何より、ご婦人もいらっしゃる。」

サブリナとサラが顔を顰めた。

整備兵達に向き直る。

「間借りさせてもらうのは我々だ。ここはひとつ、穏やかにいこうじゃあないか。」

淡々とした、自信と威厳に満ちた語り口。しかしどこか嫌味ったらしさもあった。

バーリングが驚いたまま、口を開く。

「ア………アークライト中尉………殿?!」

「久しいな、ジョナサン。相変わらず無茶な戦いをしているのか。」

彼はウィリアム・アークライト中尉。

バーリングがボール(RB-79ボール)で戦っていた頃の、中隊指揮官であった………。

 

再び、格納庫前。

バーリングとアークライト中尉が並んで立ち、整備兵達がトレーラーの帆布を解く作業を見守っていた。

「それにしても中尉殿、怪我はもういいんでありますか?」

バーリングは珍しく丁寧な敬語で話す。

「全く問題無い、足もこの通りある。…ジャブローの医療設備は流石だよ。」

アークライト中尉は笑って答えた。

「リハビリも大変だったでしょう、それなのにもう復帰されるとは…。」

彼はバーリングが地上部隊に転属する数週間前、乗機を撃破され重傷を負っていた。

「まぁ、色々と助けられたからね。もちろん復帰した後も。」

と、ここで整備兵が合図をかけ、トレーラーの帆布が解かれた。

まず現れたのは濃紺と純白の装甲に身を包み、額には特徴的なV字アンテナ。

明らかに陸戦型ジムとは違う、威圧感すら感じさせる勇姿。

RX-79(G)陸戦型ガンダムであった。

さらに二台目のトレーラーの帆布も解かれる。

こちらにはかのホワイトベース隊配備機と同型の中距離支援MS、RX-77ガンキャノンが横たわっていた。

「はぁー、ガンダム型と、キャノン型とはね!こいつは驚きだ!」

バーリングが感嘆の声を上げる。

「そうだ。我々はもう、あの頃とは違う。」

アークライト中尉は自信にあふれた様子で頷き、得意気に語り始めた。

「性能不足の棺桶のような機体で数を頼んで戦うなど、愚の骨頂。圧倒的な性能と火力で捻り潰すのが最善だ。」

さらに続ける。

「尤も、戦力不足を補うためにあんなものまで駆り出す事になったが…」

3台目の大型トレーラーを見やる。こちらでは白と濃紺に再塗装され、連邦軍のマークが描かれた鹵獲ザクの起動準備が進められていた。

「ウチには他に陸戦型ジムが4機居た。しかし…1週間も経たないうちに全滅したよ。やはり、中抜きした量産機の集団などでは駄目だ。」

「………。」

バーリングは押し黙る。

「君もわかるだろう?こんなポンコツ揃いの部隊に居ては、その腕前もまるで持ち腐れというものだ。バーリング、君さえよければ我が隊に………」

ここでバーリングの表情が固まり、言葉を遮って言い放つ。

「中尉殿、アンタ……変わりましたね。」

アークライト中尉が眉を顰め、怪訝そうな顔をして聞き返した。

「………何のことだ、どういうことだ?」

「どこがどうとは言えませんがね。アンタ、昔はもっと頼れる………何だ、その…気っ風のいい隊長だったのに。」

バーリングは静かに、しかしはっきりと言う。

「こんな部隊に引き抜きなんぞ、まっぴらごめんです。それでは。」

敬礼し、踵を返して立ち去る。

 

格納庫内。相変わらず、整備兵達が動き回り賑やかな様子。

シンイチとサブリナが、立膝状態で整備を受ける陸戦型ジムの前で話し込んでいる。

「はぁーーーッッッ、何から何まで最悪だわアイツらッッッ!!!」

サブリナがカンカンに怒り、地団駄を踏む。

対照的に、シンイチは落ち着き払った様子。

「でも装備は凄かったな………陸戦型ガンダムに、ガンキャノン。鹵獲ザクで数を合わせていたが、十分すぎる程だ。」

「装備が良くても人としてはタコよ、あんな奴ら……!!腕前は知らないけど、多分どヘボだわッッッ!!」

憤るサブリナを嗜めつつ、シンイチが続ける。

「まぁまぁまぁ、とりあえず落ち着きな。ところで、バーリングからチラッと聞いたんだが…」

バーリングから貰っていた炭酸飲料を開けて一口飲む。

爽やかな柑橘系の甘味と、程よい微炭酸の刺激。

「あいつら、以前デルタ小隊と共同戦線を張った時に俺たちと逆サイド…戦線の左翼側で戦ってたらしい。その時も凄かったんだとよ。」

「ふーーん…そんなら連中、腕はぼちぼちってトコね。」

やっと落ち着きを取り戻したサブリナが、近くのベンチに腰掛けた。

もう一口飲み、改めて言う。

「まぁでも、アレだ。別に彼らと競い合ったりするワケじゃない。叩きのめす敵は、あくまでジオンの奴らだけだ。」

「そりゃ………そうだけど。」

「言いたいヤツには、せいぜい好きに言わせておけばいい。それこそ実戦で示せばいいだけのことだ。」

サブリナの方に振り返り、はっきりとした頼もしい口調で続けた……資料室で感じた「二つめの懸念」は、あえて押し殺したまま。

「俺たちは、その敵に勝つためにここに居る。…誰に何を言われようと、きっちり仕事するだけサ。」

最後はいつも通り戯けてみせた。

相変わらず飄々。

戦場での鬼神の如き戦いぶりからは想像もつかない。しかもそれでいて、冷静沈着。

サブリナが椅子に腰掛けて、頬杖をついたままフフッと笑って呟く。

「……やだわアタイ、アンタに惚れちゃうかも。」

「なッッッ………?!?!よ、よせやぁい…」

目を逸らして反対を向くが、耳まで赤くなるシンイチ。

からかうようにサブリナが続ける。

「アハハハハ、冗談よ!本気にしないで!………でも、例のノートの『線』は一本消しといてあげる。サービスよ。」

「あ、あぁ…そりゃどーも………」

丁度そこへ、バレンツィーノ中尉とバーリングがやってきた。

「モリタ曹長、サブリナ嬢。実戦より先に実力を示せるチャンスが回ってきたぞ。」

意気揚々と語る。

「彼ら、つまり第8実験中隊との模擬戦が決まった。明日10:00だ。」

 

第五話 実験部隊合流 終幕

 

 

幕間 女傑サラ&優しき巨人ナザレンコ、静かに怒る

 

格納庫内。

実験部隊の品のない整備チームがその一角に陣取り、雑談に興じていた。

そこを丁度サラとサクラが通りがかり、二人とも彼らの方をあえて見ないように通り過ぎた。

…が、整備兵の一人がこっそりと二人に近づき、サクラの尻を軽く引っ叩く。

「ひゃっ?!何………?!」

集団からは下品な笑い声。

下手人は笑いながら「お嬢ちゃん、ご馳走さんっ!」と、やはり下品極まりない謝礼。

「もう………最ッッッ低ッッッ!!」

顔を真っ赤にして涙目になり、集団に言い放つが効果なし。それどころか笑い声は音量を増した。

ここで、サラが完全に「ブチキレ」た。

サクラに手を出した整備兵にツカツカと近づき、股間を鷲掴みにする。

彼は一瞬何かを期待したが、当然の如くサラに「いい事」をしてやろうという腹積もりは全くもって皆無。

その証拠に、股間を握る手の握力はすぐに、さながら万力のように強くなった。

「がッッッ………か゜ッッッ?!コ゜ッッッ……お゛ッッッ……?!?!」

整備兵の顔が歪み、どんどん青ざめる。

股間にはしる凄まじく、切ない痛み。

後ろで見ている集団の笑い声も止んだ。

サラはわざと艶っぽい小声で、耳元で囁く。

「……お前、図体の割に粗末なモンぶら下げてんなぁ。こんなのあってもなくても変わらないから……」

続けて感情を込めない、冷徹な声でトドメを刺す。

「このまま、引っこ抜いてやろうか?」

恐怖が頂点に達した整備兵は途端に、情け無い声で必死に許しを請う。

「ごっ…………ごめんなさい!!!!ごめんなさァい!!!!引っこ抜かないで、勘弁してぇ!!!!」

「よし」

放してやった………かと思うと、バーリングに喰らわせた時と同じく強烈な金的をお見舞いする。

彼はたちまち、白目を剥いて倒れ伏す。

続けて、集団を睨みつけながら

「次はどいつだ!!」

おおよそ女性らしからぬ、ドスの効いた声で言い放つ。

大半は圧倒され尻込みするが、このうち勇敢?で血の気の多そうな若者二人がサラに詰め寄ろうとする。

しかし立ち上がったと同時に何者かに引っ張られ、駆け出すことは叶わない。

「……………………………………。」

「うぉ、わ゛あぁぁぁぁぁ?!?!」

再び、情け無い悲鳴。

彼らの背後にはいつのまにかナザレンコが無表情で立っており、左右の片手でそれぞれ二人の首根っこを掴み、持ち上げていた。

そのまま、恐怖で後ずさる集団に二人を投げつけて無言で詰め寄り、睨みを効かせる。

巨漢かつ怪力のナザレンコ、威圧感は十分。

彼らはたちまち悲鳴をあげて蜘蛛の子を散らすように退散。

「…さぁ、行こう。皆待ってる。」

先程の迫力は何処へやら、優しい笑顔をサクラに向ける。

ナザレンコも一団が退散するのを見届けると、振り返ってニコッと笑いサムズアップ。

「………はいっ!」

サクラもすっかり元気を取り戻したようで、一路シンイチ達が待つ待機室に向かう。

サクラはサラに悟られないよう赤面した顔をタブレットで覆って隠し、

(ひゃぁぁ〜、………サラさんに惚れるところだったわ、危ない危ない…)

と、ドギマギしつつこっそり心の中で呟くのであった…。

 

幕間 女傑サラ&優しき巨人ナザレンコ、静かに怒る 終幕




ドーモ、芋侍です。
今回は戦闘無し、そして皆大好き陸戦型ガンダムのお披露目回となりました。
彼らは実験部隊と名打たれてるけど、実際はほとんどMSの試験運用部隊みたいなモンです。
次回は戦闘シーン増し増し、ついにあの技が炸裂します。
例の如く(?)「ブッピガン!!!!」の効果音はセルフサービスでヨロシクぅ!!

…あ、念のため言っとくけどサクラ×サラの線は、無いよ!!!!(爆)

追記:ユニークアクセス230越えありがとうございます、現在第六話描き終えて調整中、お楽しみにッッッ!!

さらに追記:現在第七話書いてますのでいいトコまでできたら第六話いきます、お楽しみにッッッ!!!
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