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現実に現れた二人のかぐや姫を尻目に私は天守閣にいた。
「これにてハッピーエンド、物語は終わり。」
なんとなく呟く。私の役目はこれで終わりですね。ヤチヨ様を彩葉さんが導いてくれた。
「"これ"があればツクヨミの仕事はできるはずですが。」
私の目線の先にはもう一人の"ワタシ"が鎮座して眠っている。起動していないとも言えますが。
「上手く起動できますかね。」
かぐや様が引き継いだ際に作った代わりを真似した物。
「まあ、壊されてしまっても文句は言えませんが…。」
ふと、記憶を遡る。
なんで、なんでこんな事に…。
貴女があの時、月に報告しなかったらこんな事にはならなかったかもしれないじゃん!
うるさい!貴女のせいだよ!
かぐや様を月に帰らせて、戻って来た地球で長年の孤独と絶望を与えた大罪人、それが私。
「ヤチヨ様は感情を隠すのが上手でしたからね…。」
首に付けてある銀のチョーカーを外して形状を変え、螺旋状の腕輪になる。あとは月に戻ることを報告すれば晴れて終了。
「……。」
ふと歌を口ずさみたくなりました。月に戻れば二度と聞くことができないかもしれませんから。
「〜♫〜〜〜♪」
歌うのは『reply』、かぐや様の最後の歌。誰も聞く人がいない意味のない最初で最後の私のライブ…。
「秘書さん、歌上手いね〜。」
「!!」
慌てて後ろを向くとそこにはヤチヨ様がいた。
「どうしましたか。折角現実で身体を得たでしょうに。」
悟られてはいけない。もしバレてしまえば優しいヤチヨ様は自分を責めてしまうから。
「う〜ん、その"後ろのモノ"が気になってね〜。」
「あ、ああこれですか?これは現実世界に入ってもツクヨミを運営できるようにするための…。」
言い訳を言っているとヤチヨ様は笑顔で口を開く。ただし怒りで満ちた笑顔で。
「もしかして、月に帰ろうとしてる〜?」
…そこまで分かっているならもう誤魔化しようがない。
「ええ、私の役目はこれで終わりですから。」
「…なんで。」
「私のせいですから。貴女が孤独を、絶望を、別れを経験して"ヤチヨ"という人物にならざるをえない状態にしたのは。」
そう言って手元を見ると銀の腕輪が消えている。
「なっ……!」
「お探しのものはこれ〜?」
奥から銀の腕輪を持ったかぐや様が現れる。
「…かぐや様、返してください。もし話を聞いていたのなら悪い話ではないでしょう。」
そう言うとおちゃらけているようで真面目な笑顔で腕輪を握り潰した。
「……!」
「ダメー。秘書さんもハッピーエンドに連れてくもんねー。」
何故、何故そんな考えにいたるのですか、私如きに。怒り?悲しみ?形容し難い熱が身体を駆け巡る。
「何故そんな事が言えるのですか!貴女たちは経験しなくてもいい苦しみを与えた私を何故許せるのですか!」
二人が驚いた顔をする。当然だ。だって、私は基本的に無表情のはずだったから。…そしてそんな顔をさせている自分に嫌気がさす。
(結局、私も八つ当たりをするようなものでしたか。)
「でも、その経験を得られなかったら私は彩葉に出会えなかったかもしれない。」
「かぐやもー。」
二人は優しく諭すような口調で話す。
「ならば私は月へ帰ります。代わりにそこにある"ワタシ"をハッピーエンドに連れてあげてください。」
そうすれば<秘書>は変わらずここにいる。
「私は君がいいの。作った"キミ"じゃなくて、今を生きている君が。」
意志が揺らぎそうになる。こんな私を必要とされている事実に。でもこれは二人のためにはならない。
「私が納得できません。」
出来るだけ冷徹に答えた。
「んー、どうするヤチヨー。」
「そうだねー、みんなを呼んじゃおっか。」
…みんな?
「秘書さん、勝手に帰ろうとするんですか。」
彩葉さん…。
「かぐやちゃんの卒業ライブの時に手伝ってくれたお礼がまだ言えてないんですけどー。」
「そうだそうだー。」
芦花さん、真実さん…。
「あの時のお礼はまだ直接言えてないんだがな。」
「俺たちも貴女が帰られては困る。」
「まだあの時の約束守ってないでしょ〜。」
ブラックオニキスのみなさん…。
「これでも、ダメかな。」
正直に言えばきっと嬉しいのでしょう。ですが…。
「それは私が赦せません。」
あの時の後悔が何度も何度も思い浮かぶ。もう、思い出したくない。
「しょうがない、じゃあ…。」
ヤチヨ様が納得してくれた、と少し安心したのも束の間。
「KASSENで白黒付けようか!」
「いいねそれー!」
「秘書ちゃん卒業阻止ってことか。」
そうして私が月に帰る帰らせない論争はKASSENで決めることになった。
「何故そちらが八人なのですか。」
『いやー、チーム分けで秘書さん帰らせたい人ー、ってやったけど誰も手をあげなかったんだよねー。』
「しかも普通だったらできない人数ですよね。」
『まあそこは管理者権限で、チョチョイのチョイ。』
わざとらしいヤチヨ様。ですがみなさんはそれほど本気だと言うこと。
「ヤチヨ様。」
『なんだいなんだい〜。』
いつもならヤチヨ様が聞き、私が答える。今回は逆です。
「こちらも本気で行かせてもらいます。」
『…いいよ。お互いの気持ちを全力でぶつけようか。私も君に言わなくちゃいけない事があるからね。』
そりゃ赦せませんよね。自分の選択で一人の少女を苦痛に遭わせたのですから。そしてその少女から一回だけでも責められてしまえば。
アンケートは7月24日で締め切ります。
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