お気に入り登録ありがとうございます。
「なんで私は抱き抱えられているのですか?」
「それは単純明快。どっか行かないようにね〜。」
「幼児ではないんですから。」
それについては何も言えませんが…。
「それにしても秘書さんはどうやって月に帰ろうとしてたんですか。あの銀の腕輪は、その…。」
「それについては彩葉さん、貴女の腕にあります。」
「あ、かぐやが彩葉にあげたやつ?」
私のが壊れてもここには彩葉さんのものが残っている。未来でも今でも月は全く変わらないから。
「私が勝った場合、それを借りて帰るつもりでした。」
「抜かりないなぁ。」
「安心してください。しっかりと返しますから。」
「そういうことじゃなくて〜。」
知っていますよ。貴女が気にしているのはそこではないことぐらい。少しした強がりですよ。
「俺からも質問いいかな?」
「どうぞ帝さん。」
「なんで帰ろうとしたのかな?」
その問題を聞いたみなさんの目が私に集まる。
「本題ですね。…みなさん、少し昔話としましょうか。」
「FUSHI使う?」
「そうですね…、少し軽めに体験ではなく映画みたいにしましょうか。」
ヤチヨ様の肩に乗っているFUSHIに目を向ける。
「ではFUSHI、よろしくお願いします。」
「わかったけど、いいの?」
「自分自身にもケジメをつけなきゃ。」
「わかった、いくよー!」
部屋が暗くなり、FUSHIの目から光が放たれる。
「私、地球に行ってくるねー!」
全てはその一言から始まりました。止める暇もありませんでしたから、急いで命を受けたんですよね。
『様子を見て連れ戻してください。』
それで急いで地球に向かいましたね。私の乗った舟は実体を得る機能はありませんでしたから、移動は楽でしたが。
「おぎゃぁーーー!おぎゃぁーーーーーー!」
彩葉さんが連れて帰る所を見て、呆然としましたね。赤ん坊になっていたのですから。
『赤ん坊になった。連れ戻すのは危険と判断。』
『了解。判断を委ねる。』
それから監視をしていましたが、かぐや様の行動力は凄まじいものでしたね。目を離した隙にすぐいないなっていましたから。
「見て見てー、携帯ゲーム機買ったんだー。これで犬DOGEも一緒!」
かぐや様が買った携帯ゲーム機、外にいる間は監視は外していましたが、家の中に置くものであれば監視に最適と思い、私はその携帯ゲーム機に入りました。
「ちょっと待って、犬DOGEに入ったの?」
「はい。恐らく私が中に入ったことで犬DOGEがアバターを得て、さらに犬DOGEに自我が発生したんだと思います。」
ツクヨミ内に入った私は今で言えば驚いたというべきなのでしょう。人々が踊り、笑い、幸せに暮らしている様子は初めてみましたから。
(個人が個人を楽しませる。私たちにはないものですね。)
かぐや様が望んでいたもの、月では見ることができなかった顔を見て、私も染まっていったのでしょうね。かぐや様が犬DOGEを連れてツクヨミに入るのを今か今かと待っていましたから。
「そっか…、じゃあ犬DOGE自体は楽しんでたの?」
「ええ、というかかぐや様と一緒なら何処でも、という感じでしたよ。」
「本当〜!?可愛いやつ〜。」
ヤチヨ様とのコラボライブはとても楽しいものでした。色とりどりの光がよりライブを際立たせる。夢中でしたね。
でも、現実に気づくのも時間の問題でした。ライブの後、かぐや様は言いました。
「彩葉とだったら結婚してもいいのなぁ。」
"結婚"、それの意味することは地球への永住。もちろん私は悩みました。かぐや様の笑顔のために報告をしないか、月の業務を動かすために連れて帰るか。
『報告はまだですか。』
その時に来た連絡が後押しになったのでしょう。
『緊急、姫が地球に永住する可能性大。』
人間に染まってきたと思っていた私も、結局は月のことしか考えてなかったのですね。そしてかぐや様の卒業ライブの後、私は犬DOGEに入ったまま帰った。
「というわけですね。こんな事をしたから邪魔になると思い、帰ろうとした訳ですね。」
「そっかー、じゃあちょっと眠っててねー。」
「ネムッテ、ネムッテ。」
「は?ちょっ……。」
秘書さんを眠らせてから、みんなと話す
「ぜぇーったい隠し事してる。」
「ヤチヨは信用されてなくて悲しいです〜。」
そんなに私たちは信用ない?でも秘書さんの性格を考えると納得かも。…きっと私のせいなんだろうな。
「じゃあFUSHI、よろしくね〜。」
「よし、でも彩葉みたいにはできないからね。」
『姫の歌が終わるまで連れ戻すのを待つことは可能か。』
かぐや様の笑顔を奪う。ならばせめて、全てが終わってからでも可能か月に確認する。
『可能だが、理由は?』
『羽衣を着せればここの記憶は薄れる。ならば多少満足させることができれば月から逃げる可能性が低くなると判断。』
嘘だ、これはただの自己満足。
『その提案を了承する。』
そして月人はライブが終わってからかぐや様を連れて帰る。羽衣を着せられたかぐや様の目から光が消えるのを見て、胸の辺りがものすごく痛くなる。
月での業務は変わらない。
私も変わり者になってしまったのだろうか。この場所がひどくつまらない所だと思ってしまう。
月での仕事中、歌が聞こえた。他の月人は気にも留めていませんが、きっとかぐや様は違うのでしょう。どうやらとても仕事熱心になったとか。
「仕事もいい感じになったし、引き継ぎも完璧!地球に行ってもいいでしょ〜?」
月人が提案したのは"月人を一人連れていくこと"。その中から一度地球で長くいた私が任命された。
「あなたって地球にいたの?」
『その犬DOGEの中にいました。そして、貴女の状況を報告させていただきました。』
「うぇー、まあいっか。あなたも地球は楽しみ?」
『……ここだけの話ですが、楽しみとだけ。』
私の言葉を聞いたかぐや様は目を輝かせていました。私も喜びが隠せていなかったでしょう。
「じゃあ早く行こー!」
『かぐや様、大丈夫です。彩葉さんには必ず会えます。』
なんの慰めにもならない言葉を繰り返しかける。
『必ず、会えますから。』
かぐや様のこんな顔を見るために地球へきたわけではないのに。
幾つもの出会いと別れを経験してきた。かぐや様もきっと疲れていたのでしょう。
『かぐや様、気をしっかり…。』
「うるさい!」
言葉が止まる。こんな怒りの顔をしたのは初めてだったから。
「わかった風に言わないで!」
『ですが…。』
「うるさい、あなたのせいだから!」
『あっ……。』
「あなたが来なければもっと、もっと彩葉と一緒にいることができたかもしれないのに!」
そうだ、忘れていた。地球に行くことができると浮かれてしまった。そうだ、そうだ。私が諸悪の根源だったのだ。
暫くして、かぐや様が謝罪にきました。私も謝罪を受け入れてそれで終わったと思います。けれど、私の不要な言葉でかぐや様を傷つけた。
「ねえ、少しいいかな。」
「はい、なんでしょうか。」
下手に感情を出せば傷つけてしまう。私のような存在がかぐや様に慰めの言葉をかけるわけにはいかない。そう思ってからか、不用意に話すことは無くなったかもしれません。
「私、やりたいことができた。」
「なんでしょうか。」
「みんなが好きなことをして、殺しあうこともなく、誰にも孤独にならず、いつでも返事をもらえる場所。その名も"ツクヨミ"、どうかな?」
「とても素晴らしいことだと思います。」
かぐや様にあの時のような輝きが戻ってきた。やりたいこと、…やりたいことが。
私のやりたいことは?
「これからサポートしてね、"秘書さん"」
「秘書さん…ですか?」
「そう!名前とはいかないけどかっこいいんじゃない?いつかはあなたにも名前をあげたいな〜。」
ツクヨミでのヤチヨ様からの言葉。…あぁ、私にもやりたいことができましたよ。貴女を貴女の信じているハッピーエンドに連れていくこと。貴女を彩葉さんの元に戻らせること。それが私のすべきこと。
(それが、終わったのなら……。)
帰りましょう、月に。私がいた場所に。
いやだなぁ
そうして全てが終わり、帰ろうとした時にヤチヨ様とかぐや様に止められました。なんで止めるのですか、まるで私までもがハッピーエンドにいることが当たり前のように。
私も、ハッピーエンドに…。
私如きが人並みの幸せを、ましてや貴女の望んでいるハッピーエンドに行く訳にはいかないのです。見てください。かつて、卒業ライブで共闘した仲間をも無惨に切り捨てる私を。
優しい人を…切り捨てた。
早く終わってください。
貴女に刀を向ける私を。醜いでしょう。まるで悪役でしょう。こんな裏切り者を入れないでください。
早く終わってください。
こんな私を見ないでください。
かぐやが感情の制御ができなくなったと思ってください。八つ当たりをしても、怒鳴っても何も変わらないことはわかっています。
そして秘書さんもこのことから下手に感情を出すと逆効果だと思って無表情を貫くようになった、と思ってください。
感想、評価、お気に入り登録等お待ちしています。