お気に入り登録ありがとうございます。
呼び方を変えよう
「サヨってさ、私たちのこと"様"だったり"さん"付けでしょ。」
「唐突にどうしたんですか。」
彩葉さんが歩きの練習をしている私に聞いてきた。
「私たちと一緒に暮らしていくのは知ってる?」
「ええ、ヤチヨ様から聞きました。」
かぐや様、ヤチヨ様、彩葉さん、私で暮らす予定なのです。
「せっかく一緒に住むんだから、もう少し親しい感じにしたくてね。」
「なるほど…。」
確かに、恐らく家族として戸籍がある中で身内に敬語をつけるのは少し違和感があるかもしれない。
「なになに〜。」
「何してんの〜。」
「ヤチヨ様、かぐや様。」
研究室に二人が戻ってきた。
「それ。長い間みんなのことそう呼んでたのもあるけど、言い方の特訓だね。」
「……難しいですね。」
「え?なんの話。」
ヤチヨ様とかぐや様に"様"や"さん"付けを止めるようにすることを話した。
「いいんじゃないかな。ヤチヨもず〜っと畏まらなくていいって言ってたのに全然直んなかったからね〜。」
「あの時は今より余裕がなかったと言いますか…、その…。」
今なら言ってしまっても大丈夫ですかね。
「元々姫と言っていましたし、あの時は壁を作っておかないと月に帰る時に気持ちが揺らぐと思っていたから直しませんでした。」
前のことをあまり言いたくありませんが…。
「でも今ならそれもしなくて良いじゃん。」
「そうですが…習慣みたいになってしまいましたから。」
「善は急げ、早速やってみよー!」
何故か急に始まった私の敬語矯正。まだリハビリ途中ですので、彩葉さんの研究室で日を跨いで行うことになりました。
「彩葉さん、少しいいでしょうか?」
「ん?」
「え、ですから…。」
「な・ま・え。」
「あっ、い…いろ、は…、少しいいですか。」
「よろしい。」
「足の動かし方はこれであっていますか、かぐや様。」
「違うでしょ〜!かぐやって呼ぶのー。」
「うぐぅ、か…ぐや。」
「ンフー、いいね、その調子!」
「サヨ、少しいいかな?」
「なんでしょうか、ヤチヨ様。」
「んー?」
「な、なんでしょうか。」
「ヨヨヨー。サヨは彩葉やかぐやと親しくてヤチヨとは親しくないらしいのですー!」
「ち、違います!え、えーっと、ヤチヨ…。」
「よきかなー。」
サヨが様、さん付けの矯正を始めてから数日経った。なんとか呼び捨てにできてるけど気が抜けてるとまたさん付けを始めちゃう。
「ヤチヨ様、こちらの内容ですが。」
ほらまた。ツクヨミ内では秘書さんモードでいるけど、それが現実でも発動しちゃう。……ちょっとイタズラしてみようかなー。
「………。」
「ヤチヨ様…?」
サヨに背を向けて歩き始める。これなら少し気づくんじゃないかな〜。
「ヤチヨ様……?」
もうそうじゃないって〜。
「………!」
ガシャン!、と何かが落ちる音がした。急いで振り返るとサヨが腕で這いずりながら涙目で私に向かって来ていた。
「サヨ!」
急いでサヨを抱える。落ち着くようにギュッと抱きしめる。
「行かないでください…。見捨てないでください……!」
ああ、やってしまった。もう大丈夫だと思ってたサヨのトラウマがまだあることに気づかなかった。
「大丈夫だよ…。私はどこにも行かないから。」
『見捨てられる』。それがサヨのトラウマだ。かぐやに怒鳴られたあの時の情景がフラッシュバックしちゃったのかな。それも"ヤチヨ"の私がやったから。
「ごめんね…、あなたの傷ついた気持ちを軽んじてた。」
この方法は二度とやらないように二人に共有しないと。
暫くサヨはヤチヨかかぐやのどちらかが一緒にいないと涙目になった。それと三人の間に禁止事項が生まれた。
『サヨの声掛けを無視することは絶対にしない事!』
日常と言いながら普通に曇らせ…?まあ今回はあったと言う事で。
これから不定期になると思いますが、これからもよろしくお願いします。
評価、感想、お気に入り登録等よろしくお願いします。