「で、できた……!」
様々な動作に慣れ、呼び方にもだいぶ慣れてきた数日、研究所で彩葉さんが何かを完成させたようです。
「どしたのー?」
かぐやが奥から現れました。
「かぐや、ついに出来たよ…!味覚が!」
「ほ、本当ー!?じゃあ、あの時のパンケーキが〜…。」
「かぐや、涎が垂れています。」
想像で涎を垂らすかぐや。パンケーキ…、一体どれほどの味なのか。
「ヤチヨも呼んで、早速味覚を調整しないとね。」
「よっしゃー!」
かぐやがヤチヨを呼びに走っていく。
「どのようにして味覚をつけるのですか?」
「簡単に言えば、脳の中に味を感じる機能をダウンロードするって感じかな。一応舌の再現はできてたけど感じる機能はまだだったからねー。」
ダウンロード…なるほど。
「でしたら舌だけを交換することはできないのですか?この体は人工ですが…。」
「その体は機械っていうより肉体だから交換っていうより手術になるんだよね。血も神経も臓器もその他諸々…全部人工だけど人間と変わらないからね。」
「納得です、彩葉。」
その後、ヤチヨを連れてきて私たちは頭に様々なコードに繋がれた機械を被る。
「早く、早くパンケーキー!」
「ヤチヨも久しぶりだなー。」
「暴れないでー!すぐできるから。」
ヤチヨとかぐやが目を輝かせています。
「はい、おまたせ。」
「うひょーこれこれー!」
「懐かしいな〜。」
「……。」
私たちの前に出されたのは綺麗に彩られたパンケーキ…ではなく、苦学生の頃に彩葉が作った"粉と水のパンケーキ"だった。
「アーン。………うぇぇー、くそまじぃ……。」
「懐かしいなぁ〜。……くそまじぃ……。」
ヤチヨ、配信では絶対見せられない顔をしていますよ。
「早速サヨも食べてみてよー!」
「では早速…。」
パンケーキを口に入れる。……こ、このなんとも言えない味。粉?の味はするがとても薄く、ねちょねちょしていてこれは……。
「…これが美味しい味とは思えないです。」
思わず口が止まり、顔をしかめる。味覚を手に入れた最初の食事がこれですか…。
「あんまり無理しなくていいからね。こっちで食べとくから。」
「お願いします。」
「サヨ見たことない顔してる〜。」
ヤチヨは何故食べ続けているのですか…?
「さて、じゃあ口直しにかぐやに何か作ってもらおうかな。」
「張り切っちゃうぞー!」
かぐやが作った料理……。
「リクエストをしても…いいですか?」
「……!もちろん!何がいい?」
「でしたら、コラボライブの時に彩葉が話したパスタを…、お願いできますか?」
様々な料理の画像を見てきましたが、あんなに楽しそうに話していたパスタ。想像をするだけで楽しみになってきました。
「サヨ、涎。」
「えっ、あっ。」
急いで涎を拭う。美味しいものを想像するだけで涎が垂れてくる。
「じゃあ早速材料買わなくちゃ。彩葉ー、行こー。」
「はいはい。準備するから待ってて。」
かぐやと彩葉が買い物に出かける。
「ヤチヨは嬉しいなぁ〜。」
「どうしたんですか。」
突然ヤチヨが話しかけてきた。
「あの堅物!冷静!って感じだった"秘書さん"は今では美味しいものに涎を垂らしちゃう"サヨ"になれましたってね。」
「その事は忘れてください。」
「それに、自分の気持ちをしっかり出せてることに安心したな〜。」
"お願い"、私の気持ちや考えを相手に頼む。
「正直に言えば、少し申し訳ないと思います。本当ならかぐやかヤチヨ、彩葉の好きなものを料理にすべきだと……。」
「もーう、いいの!逆にサヨは今までの分、じゃんじゃんお願いしなきゃいけないんだからね。」
ヤチヨが私の頬をこねくり回す。
「わ、分かりましたから。」
「後は敬語も外してくれればな〜。」
「それは、まだ慣れませんから。」
「まっ、いつかね〜。」
彩葉とかぐやが買い物から戻ってくる。
「その機材は…。」
「ああ、私の家から持って帰ってきたもの。」
「あの時と一緒!」
材料を研究室のキッチンへ持っていく。
「彩葉、手伝いますよ。」
「おっ、じゃあお願いしちゃおうかな。」
「ヤッチョもやりたいな〜。」
生地のシートをパスタマシンで麺にしたり、鍋でふやかしたりしました。
「痛っ。」
「あ、サヨ。大丈夫?」
「ええ、少しお湯が跳ねてしまいました。熱いとはこんな感じなんですね。」
「ちょっと見せて…、火傷はないみたいだね。」
少しのトラブルもありましたが。
「完成ー!」
「おお…。」
あの時の色味が全くないパンケーキとは違い、綺麗な緑色のジェノベーゼパスタが完成した。
「いい匂いですね…。」
「んじゃ早速、いただきます。」
みんなでパスタを食べる。感想が各々の口から出てきた。
「んー!美味しー!」
「久しぶりに食べたね。」
「いくらでも食べれちゃうかも〜。」
かくいう私は……。
「見て。サヨめっちゃもぐもぐしてる。」
「そんなに急がなくても逃げないよ。」
そう言われても私はずっと頬を膨らませて噛み続けている。
「…もしかして、飲み込めない?」
「あっ、いえそういうことではなく…。」
これを口に出すのは少し、いえかなり恥ずかしいのですが……。
「…飲み込んだらなくなってしまうので、あの、味わい続けているといいますか、その……。」
それを聞いた彩葉とかぐやとヤチヨが顔を合わせる。
「まだまだおかわりはたくさんあるからねー。」
「たくさん味わってね。」
「…可愛い。」
ヤチヨが悶えていますが気にしないでおきましょう。
「すいません、おかわりお願いします。」
「はいはーい。」
「「「「ごちそうさまでした。」」」」
「食べたら眠くなっちゃった。」
「じゃあ一旦みんなで寝ようか。」
そうしてパスタを完食した私たちは研究室のベットで雑魚寝をしていました。
よくかぐやの体が機械で描かれていますが、この世界ではめっちゃ肉体です。ていうか人間と変わりません。
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