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『そろそろあの時の約束叶えてくれない〜?』
「約束…あぁ、あの時の。」
ツクヨミにいると乃依さんからメッセージが届いた。そういえば約束しましたね。
「というわけで衣装の追加を申請しにきました。」
「ん〜、そうだね。そろそろ色々なジャンルの服装も追加しとかなきゃね〜。」
「ありがとうございますヤチヨ様。」
ちなみに私はツクヨミ内ではヤチヨに様をつけています。公私は混同しませんし、ヤチヨもそれを認めてくれていますから。
「私の衣装も追加内容にしていただくと…。」
「乃依ちゃんと約束してたもんねー、いいよ。」
「ありがとうございます。」
「じゃあサヨの衣装も変えとかなきゃ…。」
「大丈夫です。」
このアバターはヤチヨが考えてくれたものです。今更変えては違和感もありますから。
「それでは業務に戻ります。」
「そう?うーん、まぁ気が変わったら言ってね〜。」
「ん、またクレームですね。」
衣装増加をしてから数日。多くのクレームが寄せられた。衣装の問題ではなく、どうやら私が詐欺をしている。その被害に遭ったと。
「はい、こちらで補償いたします。今後ともツクヨミをよろしくお願いします。」
被害に遭った方たちにはこちらで対応をしていますが、いくらなんでも件数が多い。
「あれーどしたの。」
「クレームでした。例の詐欺です。」
「うーん、多いね。」
ヤチヨが何か考え事をしていると思い付いたかのように顔を上げる。
「サヨの衣装を実装しちゃったからかも〜!」
「なるほど。確かにアバターは色々と弄れますから、可能でしょう。」
「そうだね〜、サヨのイメージダウンはちょっとよろしくないかな。」
あ、これは怒ってますね、かなり。ん?こちらを向いた瞬間、ものすごい笑顔に…。
「じゃあしょうがないかな〜。サヨの衣装変更ってことで。」
「このアバターになってから長い時間かかりましたから、ライバーなどの方は受け入れてくれますかね…?」
慣れていたものを変えられるのは、それにまた慣れていくのにも時間がかかりますから。業務に支障が出てはヤチヨの迷惑にもなっちゃいますから。
「今、迷惑になるかもーって思ってるでしょ。」
「……お見通しですね。」
「任せて!んじゃちょっとみんなに聞いてくるね〜。」
「……みんな?」
「てことで私たちが呼ばれちゃったー!」
「んー、サヨのなりすましかー。」
呼ばれてきたのは彩葉とかぐや、そして……。
「俺らも呼ばれる意味ある?」
「仕方ない。ツクヨミの運営に関わることだ。」
「何が良いかな〜。」
ブラックオニキスのみなさん。やる気満々ですね。
「私たちが関わっちゃって良いの〜?」
「いいじゃん。どうせなら可愛くしちゃおー。」
芦花さんや真実さんもやってきました。
「はい、じゃあ良い案がある人ー。あ、ちなみに実装していない服装でもじゃんじゃん出しちゃって〜。」
「なんでもいいの!?」
「もちろん。」
「じゃあー……。」
それから色々な案が出されて私は着せ替え人形と化していました。
「このワンピース似合うねー。」
「私、この衣装物理的に着れないなー。」
「男っぽい格好も似合うな…。」
「可愛いもかっこいいも似合うのかー…。腕がなるね〜。」
「私的には露出は控えめにお願いしたいです。」
それぞれがそれぞれの好みに合わせているのでなかなか決まりませんね…。
「ん…そうだ。ヤチヨ、良い案が思いついたんだけど。」
「お!どうぞー。」
「私とかぐやが見たあのライブ…。」
今日も今日とても稼ぎどきだ。目の前に現れてアバターについている名前を呼んでふじゅ〜の振り込みをお願いする。
「ヘッ、ちょろいな。」
ヤチヨのアバターを真似すると絶対怪しまれるけど、この秘書の格好はなかなかバレない。顔も真顔ならばそれっぽく振る舞える。
「さてと、次はどいつをカモに…。」
「ここにいましたか。」
「………!誰だ!」
後ろを振り返り、声をかけてきた人物に目を向ける。膝上まである白い外套に身を包んだ白髪の少女がそこにいる。
「はじめまして…でしょうか。」
「……どちら様でしょうか。私に何か用が?」
急いで取り繕い、秘書の真似をする。もしかしたら用事があるやつかもしれない。
「ええ、あなたに用があったんです。"偽物の秘書さん"?」
「なっ、気づいて……!」
その少女がゆっくりと近づいてくる。
「おとなしくしていれば酷い目には遭わないと約束します。ですから……。」
「ハッ、誰がその口車に乗るってんだよ!」
KASSENの武器を取り出し、攻撃しようとする。普通だったらできないが、これなら…!
「残念です。」
突然外套が裂け、太さが増すと武器を防いで破壊した。
「ば、バカな、……グアっ!」
外套が変化した六つの触手に取り押さえられる。
「ではツクヨミ内での犯罪をしたということで、あなたをツクヨミからの永久BANにします。」
クソっ、だが諦めない!また別のアカウントで更に……!
「あぁ、それと一つ。恐らくですが現実でもすでに通報は完了していますので大人しく捕まったほうが身のためかと。」
「お疲れー、サヨ」
「はい。お疲れ様です。」
「彩葉の案はよかったな、クリオネをモチーフにするとは。」
そう、私の姿のモチーフはクリオネになった。髪は月白色で肌も白い。基本的に白で埋め尽くされている。髪、手足、服は先端に行くほど透明になっていく。外套の中は白い巫女服だが下は膝より少し上のスカートに変わっている。
「儚さが増して良いね〜。」
「ちゃんとサヨに合うように特注ですから。」
「しかし、この外套がバッカルコーンに変化する機能はいらないのでは?私もそれなりの権限は持っていますから。」
外套は変化自在。前の部分が裂けてマントにもできますし、取り押さえる際に行ったように太くして触手のように扱うことも可能です。
「ノンノン!サヨが傷付いたらヤチヨはとても悲しいのです〜。」
「……はぁ。」
少し照れくさい気持ちが出てくる。
「おや〜?少し赤みが増したかな?」
「……気にしないでください。」
私の頭に生えている半透明な触覚。これは私の感情に合わさって中心の色が変わる。だから嫌なんです、こんな風に気持ちがすぐ現れてしまいますから。
「さて、あとはサヨのアバターを変更したことをライブで言わなくちゃね。みんな、感謝感激雨アラモード!」
「じゃあねー!」
「お疲れー。」
協力してくれたみなさんがログアウトする。
「後で何かお礼をしなくてはいけませんね。」
少し恥ずかしいかもしれませんが………。
「ヤチヨ様、このアバターはヤチヨ様と姉妹になったような気がしますね。」
ヤチヨがものすごい勢いで顔をこちらに向ける。その顔が徐々にニヤけてきている。
「もー何言ってんのー。」
そして更にものすごい勢いで私に抱きつく。
「どんな姿でも、私はサヨのことはとっても可愛く思ってるよ。」
「……ありがとうございます。」
「でも、その格好はみんなの前に出る時だけで良いかな?」
「どうしてですか?」
「……透明感があって似合うけど、サヨが消えちゃわないかと思っちゃって。」
「…ええ、わかりました。」
ヤチヨは少し怖がりですね。……そんな感じにした一因は私にあると思いますが。
てなわけで、あのゴスロリ衣装は卒業となりました。やっぱり多少はヤチヨに合わせとけばよかったなと思っていたので、ここで変更となりました。
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