もしヤチヨに'付き人'がいたら   作:菓子中毒

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 ツクヨミって和服だけじゃなかったんですね。まあ、ここでは殆どの人が和風の服を着ていると思ってください。


かぐや姫、八千代に渡る昔話

 母との言い合いの末、私は母の理想になることが出来ない、私のやりたい事を見つけたい等の事を言った。それから曲を作った、あの未完成の曲を。かぐやから貰った銀のブレスレットを握って月に向かって歌った。

 

「ヤチヨ…。」

 

 音楽を捨てた私が、彼女の曲に魅かれたのか。私の心に染み込んだのか。そして、私の作った曲と同じメロディを歌っていたのか。

 

「会いに行かなきゃ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ツクヨミにログインしたのはかぐやの卒業ライブ以来だ。モニターにはヤチヨの配信が映っているが、あれは再放送の動画だ。

 

「メールも電話もダメだ…。」

 

 このままじゃヤチヨに会えない…。

 

「……ん?」

 

 視界の端に動くものが見えた。咄嗟に追いかける。白いモフモフ…FUSHIを追いかけて袋小路に辿り着く。

 

「何処にいるか、教えて。」

 

 FUSHIはこちらの問いに答えず、口を噤んだままこちらを見返す。残念ながらあちらは答える気がないらしい。

 

「…自分で探すよ。」

「バカたれ、何処を探すって?」

 

 踵を返すとFUSHIが口を利いた

 

「教えてくれないなら、世界中。」

「…目を開けてみろ。」

 

 FUSHIに言われた通りに瞼を開けてみると、現実世界にFUSHIが見えた。

 

「こっちだ。」

 

 FUSHIが扉をすり抜けて行く。

 

「おいっ、あっ、あぁ…、着替えるから待ってよ!」

 

 制服に着替えて、街を駆け抜けて、電車まで使って…、たどり着いたのはマンションの一室だった。扉に手をかけると鍵の開く音がした。ゆっくりと扉を開ける。

 

「なっ……!」

 

 玄関に一体の月人がいた。

 

「なんであんたがここに…!」

 

 私は身構えたが、月人はこちらを通すように恭しく頭を下げて道を譲った。

 

「…何、ここ?水槽……?」

 

 視界に映ったのは大量のPCとストレージ機器、ネットワーク機器が大量に詰め込まれている部屋だった。部屋の中心には液体に沈められたタケノコが入った水槽が鎮座していた。

 

「ここから入れ。」

 

 戸惑いつつもFUSHIに言われて瞼を閉じる。少し時間がかかってログインする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見たことがない部屋だった。特別で居心地が良さそうで、でも少し寂しい部屋。月人がいたところには……。

 

「秘書さん…。」

 

 そして部屋の真ん中にいたのは……。

 

「かぐや?…いや違う、…ヤチヨ。」

 

 私の頭の中にある馬鹿げた推論をヤチヨに問いかける。

 

「ヤチヨは…かぐやなの?変なこと言ってるのは分かってる。けど…。」

 

 ヤチヨがゆっくりと立ち上がり、口を開ける。

 

「今は昔、月に帰ったかぐや姫と1人の従者がバリバリ社畜していた時、歌が届きました。かぐや姫の為の、かぐや姫だけの歌でした。」

 

 きっと、私が作って月に向かった歌だ。

 

「それを聞いたかぐや姫は大喜び!もっかい地球行こ〜って、お仕事爆速で片付けて引き継ぎも完璧。従者を1人連れてく条件付きでね〜。でも、地球の時間では大遅刻。だけど安心。月の超テクノロジーは時間も超えられます。でも、地球に着くもう少しのところででっか〜〜〜い石に当たっちゃったの。」

 

 宇宙に浮かぶ大きな石……まさか小惑星?

 

「地球に不時着して、ついた場所はなんと八千年前でした。」

 

 八千年…ヤチヨの設定と同じだ。でも、訳がわからない。頭が追いつかない。

 

「舟の僅かな力で、同行していた犬DOGEだけがたまたま近くを泳いでいたウミウシの身体を得ることが出来ました。かぐやはウミウシを通してだけ世界と交流を持てました。」

 

 私はただただ立ち尽くすことしかできなかった。

 

「時は立ち、人は見えないものを形にし、多くの人と繋がる力を手に入れた。月の世界と似ているソレのおかげでかぐやは初めて、魂だけの自分が世界と関われる可能性を知りました。そして…。」

 

 それが……。

 

「仮想世界ツクヨミの歌姫として再び彩葉と出会うことが出来たのです。」

 

 ………私と?

 

「ってぇー、これじゃあ手放しでめでたしめでたしーとはならないか〜、やっぱ。」

「…私といたかぐやは?」

 

 ヤチヨは笑みを少し解き、寂しそうに言った。

 

「今もまた、同じ輪廻を巡っている。私たちはその輪から外れることはできない。」

 

 ツクヨミの月を見上げたヤチヨの顔は自嘲なのかもしれない。

 

「…全然、全然分かんないよ。」

 

 私の知るかぐやは…私のかぐやは、私の歌を聴いて、誘われて今頃…八千年前に飛ばされてるってこと?

 

「ただのおとぎ話。あんま深く考えないで〜。とにかく今は再会をお祝いしましょ。」

 

 冗談めかした笑いをしたヤチヨにバルコニーに連れ出される。

 

「ここからの眺めがヤチヨは本当に大好きなの。」

 

 抱きしめるように両手を広げて、笑顔なヤチヨ。その横顔に見惚れてしまう。

 

「どうして…ヤチヨはずっと笑ってるの?」

 

 ケラケラと話すヤチヨが笑っているようには見えなかった。

 

「それがヤチヨだから。でもね……。」

 

 答えを用意していたような速さだった、けれどその後に続く言葉は欄干を摑む指を震わせ…。

 

「ハッピーエンド、連れて行くって約束したのに。」

 

 腕へ、肩へ、声へ…。

 

「ごめん、ドジっちゃった。」

 

 声の震えと共にヤチヨの目から一粒だけの涙が溢れる。

 

「キラキラのかぐや姫は、もうお婆ちゃんです。」

 

 たった一つの涙を流しても、ヤチヨは笑顔だった。

 

(かぐやはそんな顔しなかったじゃん…。)

 

 長い沈黙の後、ヤチヨは怯える子供のような声で聞いた。

 

「もし知りたくなかったら忘れてもいいよ。FUSHIなら出来……。」

「ヤチヨ!!」

 

 自分でもびっくりするほどの大きな声が出た。悲しくて、寂しくて、腹立たしい気持ちで溢れる。踵を返すと秘書さんも少しだけ目を開いていた。…びっくりしてたんだ。

 

「聞かせてよ、八千年分のあったこと。私、寝ないから!」

「…フフッ、無茶言うねー!」

 

 普段との笑いとは違う、少しだけ若返ったような笑いだった。

 

「ほい。」

 

 ヤチヨが手を払うように動かすと、今までいた部屋が私とかぐやがであったあのIRのアパートに変わる。ずっと暮らしていたようだった。

 

「じゃあまずは縄文人と魚とった話から。あれはねー……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 丸2日ほどヤチヨの話を聞いていた。

 

「おやすみなさいよ、彩葉。死んじゃう。」

 

 私の方も限界だ。けれど…。

 

「まだまだ!」

 

 突然FUSHIが飛び跳ねる。

 

「ネムッテ、ネムッテ。」

「あっちゃ〜、ヤチヨの方が寝る時間だ。ふぁ〜〜、お休み〜。」

 

 眠ったヤチヨの頭をゆっくりと撫でる。

 

「ずっと、ケラケラ笑っちゃって。…笑い話だけじゃないはずなのに。」

 

 八千年かけて作り笑いを覚えちゃったんだね。…私みたいになっちゃったんだ。

 

「ねえFUSHI、秘書さん。」

「…。」

「はい。」

「ヤチヨが隠してあること、まだあるよね?」

 

 私は全てを知っているはずのFUSHIと秘書さんに問いかける。

 

「……。」

「ヤチヨ様が合わなかったのなら、それは……。」

 

 思慮深いウミウシと月人は言い淀む。

 

「見せて。私、かぐやの全部を見なくちゃ。」

「人の身体で耐えられるか分からない。」

「問答無用。」

 

 FUSHIと秘書さんは黙り込む。しかし、それは答えに迷っているような沈黙ではなかった。

 

「ヤチヨは……さっき久しぶりに、本当に嬉しそうだったんだ。」

「うん。」

「行くぞお!!」

 

 FUSHIの目が赤く光り、レーザーのようなものが出てくる。部屋が壊れていき、私の体は落下を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 動けない。     声が出せない。      彩葉……。

 

  ヤチヨ…どっかにいるんでしょ?     人がいる!

 

 

 火が……!      血が………。       ………人が。

 

    これが『人の終わり』なの?    

 

 

 

 

 

 

「汝は縁起よしとぞ…。」

 

 私を釣り上げた、国をまとめていた女性。

 

「逢い見ての のちの心に くらぶれば。」

 

 私に恋した歌人。

 

「会いたい者がいるのだろう。」

 

 部屋が焼けていても堂々とした姫。

 

「ムカつくからさ、辛くても笑うんだよ。」

 

 二人三脚で太夫を目指した笑顔の花魁。

 

「君の活躍する時代を、俺も見てみたかった。」

 

 痩せていて常にベットにいたけど、未来を見ていた男性。

 

「私にはここなの。」

 

 空襲で焼け跡になった街で花を売り続けた少女。

 

 

 

 

 

 

 

 私は助けられなかった。     私は、弱い私から逃げられないんだね。

 

 

 

 

 

『Hello,world!』

『Hello,you.』

 

 遠くでも人と繋がることができる!連れてきた従者も驚いてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、一ついいかな。」

「はい、なんでしょうか。」

 

 幽霊のような私に唯一話を聞いてくれて、話しかけてくれる人。

 

「私さ、みんなが好きなことをして、殺し合うこともなく、誰も孤独にならず、いつまでも返事をもらえる場所を作りたいな。」

「とても、とても素晴らしきお考えです。」

 

 話していて、薄れていた記憶が再構築されていくのを感じる。この空間の名前は……。

 

「"ツクヨミ"って言うのはどうかな。」

 

 その名前と共に自分が彩葉と再開できることを確信して、小さいウミウシの心臓が高鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「極上のワインは時間が経つほど深まる。悪いことばかりじゃないさ。」

 

 バーで知り合った男性。ウミウシでの私の最後の友人。秘密を明け透けに言った協力者。別れる時、彼の誤魔化すときに片方の口角を上げる笑い方が私の中に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、少しいいかな。」

「はい、なんでしょうか。」

 

 いつもの呼びかけと決まり文句。

 

「君にもアバターをあげちゃいます!」

「ありがたき幸せです。」

 

 私だけがいつもウミウシの体で人と繋がり、彼?彼女?の人との繋がりを無くしてしまった。

 

「そんな畏まんないでよー。」

 

 だから、私達で作ったこの世界であなたは新しい繋がりを見つけてくれると嬉しいな。

 

「名前じゃないけど、ずっと"君"って言うのもなんだし。今日から君の名前は"秘書さん"!私をサポートしてくれると嬉しいな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして演出を考えてくれる秘書さんと一緒に何度もライブを行った。人は少ないかもしれない。もしかしたら誰も聞いてくれないかもしれない。

 

「〜♩」

 

 初めてのライブの曲は八千年の間に形を変えて何度も変奏した、彩葉たちと一緒に戦ったあの時の曲。

 

「あっ。」

 

 

 そして………。

 

 

 

 

 

 

「ついに、来たんだね彩葉。」




 意外とクロスオーバーは有りの意見が多いです。もう暫くしたらアンケートを終了します。
 ちなみにクロスオーバーでの人物、キャラクターを出そうとは思っていません。名称やセリフぐらいかなと考えています。

 ここのヤチヨは秘書さんがいるので本編よりはちょっとだけ感情?悲しみ的なもの?はあります

この小説に少しだけのクロスオーバーは

  • あり
  • なし
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