山神
真っ黒な甲殻を持つ、機関銃のような銃。
その武器は凄まじい炎を宿しており、その熱量により火薬の反応を高め凄まじい威力で放つことができる。
チサトが見つけた時には銃底部が叩き斬られたかのようにコードが剥き出しになっていた。
ある機械の身体の一部だったようだ。
今日は授業があるので、ミレニアムの方に授業を受けに来てた。講義までまだ時間があるから、私たちは教室でゆっくり雑談していた。
「クシュン!あいたた、腰が……」
「ちょっチサト、大丈夫!?」
「くしゃみをしたら腰が逝きかけた……ユキ、マッサージお願い……」
「はいはい」
ユキにそう頼んで、椅子を二つ並べてそこに寝転がる。ユキのマッサージはめちゃくちゃ気持ちいい。何度か値落ちしたことがあるぐらいにはね。だからユキにはまあまあの頻度でマッサージを頼んでる。
そう言えば前回の廃墟探索で私がバレた原因だけど、どうやらオートマタの活動ロジックがちょっと変わっていたみたい。デカグラマトンの影響かな?と思ったけど、もっと違う何かがありそう。
「そう言えばチサト、今年のミレニアムプライスどこが1位取ると思う?」
「うーん……」
どこなんだろう?私は個人的な古代兵器の研究だから土俵に上がることなんてまずないけれど、取るとしたら……うーん……
「……わかんない」
「」
「だって私そう言うのに疎いし……」
「チサト……俗世に興味持とう?」
「興味ないね」
「興味持ちましょうねおばあちゃん」
まあ本当に興味がないことに関しては興味なくて知らない。態々調べる必要あるのかな?とか思うけど、調べようと思えるほど興味はない。
そう言えば『山神様』はジャムってたけど、連射してた弾全部威力凄かったなぁ……もしかしたら爆薬の効果は始めの一発だけじゃないのかもしれない。
「そう言えばチサト、前から聞きたかったことがあるんだけど」
「ん?」
「どうして古代兵器の研究なんて始めたの?1年の頃はもっと引きこもり気味だったじゃん」
「うーん…………たまたま迷子になった時に廃墟に行っちゃって、その時に残骸を直したら凄いのができて……それで『他にどんなのがあるんだろう?』って気になっちゃったから……かな」
「そうだったの!?」
「うん」
確か初めて残骸を直したのって『天狐』だったはず。『天狐』を直してからなんというか……
「こう見えても興味があった物にはフットワーク軽いんだよ!」
「確かに1年の頃からそうだけど……!」
「あとオートマタの残骸も良い値で売れるから」
「酷い!…………ってそろそろ時間じゃない?」
「あ、教科書出してないや。出さないと」
そうこう話している内に講義の始まる時間になった。
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私は授業が終わったら急ぎでガレージに戻った。
さて、今日も今日とて廃墟探索をしていこう!まあ、とは言っても、前回のことも踏まえるとオートマタの巡回路のデータを取るためなんだけど。
準備は大事。次の探索で貴重な研究材料を手に入れる為にも情報収集は大事。今回は弾を沢山使う想定はしてないけど万が一デカい兵器が出た時のことも考えてレールガンの『雷獣』を持っていこう。
雷獣は比較的軽いレールガン(それでも山神様とトントンなレベルで重い)で、なんとなんでも貫通できる弾丸を連射できるとんでもない代物。まあ、火薬と電磁砲の併用みたいな物って考えたら分かりやすいかな。バッテリーの仕組みとかは全く分からないけどそれ以外の仕組みはだいたい分かってる。
「よし……装置はある!これだけ忘れないように!」
私は大体何か忘れるからね。ならせめて絶対忘れちゃいけないものだけは持っていこう!さて、いざ出陣!
そのまま私はガレージを飛び出してしまった。
「ふんふふーん♪」
脳天気な私はまた鍵を閉め忘れた事にも気付かずに。
…………………………………………………………
「えーっと……ここかな」
私は廃墟のあちこちに、面霊気の技術を用いた御札みたいな機械を置いていく。レーダーよりも正確かつ広範囲に周囲の状況が分かるし、廃墟で集めたパーツで組めるからね。
こうして大体半分くらい設置出来た辺りで見慣れない影が見えた。このお面が察知して表示してくれたみたい。どうやら数は5人。そのうち4人は人間だけど一人だけおかしい。歩く時の振動からしてすごく重たいけれどその距離間隔は短いし、人の形をした人外がいるみたいだ。
この仮面がおかしくなったのかな?……とか思ったけど、流石にそんなことはなさそう。
私は少し気になってしまい、一目見るためにルートを変更して行くことにした。方角は……オートマタが作られる建物のほうかな?そう思って私は振り向いて進もうとした。
どん!
「いてっ…………!?」
「いたたたた〜」
するとまた前方不注意で誰かとぶつかってしまった。
目の前に臙脂色のジャケットに同じ色で羽根付きのハットを被ってて眼鏡をかけてる…………そう、言うなればヴィクトリア朝の時代位の高貴な身分の狩人みたいな格好の子がでてきた。でも脛当てとか肘当てがあって、右腕の方は甲冑みたいになってて、儀礼用というよりは戦闘用に改造してる感じだった。
私はいつものぶつかった時の癖で雲外鏡の効果を解く。まあ、十中八九バレてるだろうし仕方なし。
「えっ……誰?」
「私?チサト〜」
「…………本名名乗っていいの????」
「あっ……」
めちゃくちゃうっかりしてた。本名名乗ったら確かにバレるかも……!
私の活動は非公式だしなんなら廃墟のオーパーツを改修して使ってるなんてセミナーにバレたら私はただじゃ済まないだろう。本当にヤバい。
「今の忘れて?」
「無理」
「忘れて……!」
「まあチクったりはしないから……」
「良かった〜」
私はそう胸を撫で下ろす。でもこの子はなんでこんな人の寄り付かない廃墟に来てるんだろう?
「にしても……私と同じ?」
「同じって?」
「えーっと……あれ、あれだよ……キヴォトスの前時代の兵器やら機械を調べてるとか?」
「そうだけど……なんでわかったの?」
「君ミレニアムの制服着てるからね。と言うか制服に白衣着てこんな所フラフラしてるなんてミレニアム位しかいないでしょ」
「確かに……」
私と同類がいたんだ。今まで活動してる中で出会わなかったのは不思議だけど、多分私が装置を設置する関係で普段中々行かない方まで来てるからなのかもしれない。
「因みにお名前は?」
「私?まあ君が本名名乗っちゃってるし本名名乗らないとフェアじゃないよね……私はサトコ。一応私もオーパーツを研究してるミレニアム生かな」
「サトコ?よろしくサトコ〜」
ミレニアム生か〜。もしかしたら学校でまた会えるかも。
そう言えば私はサトコの来た方に見に行こうと思ってたんだ。そう思って私はサトコの来た道を進もうとした。
「待て、こっちには行かないほうがいい」
「えっなんで?人がいるのに?」
「だからこそだ。割と見つかっちゃいけなさそうな人がいた」
「えっ」
しかし私はサトコに止められた。まさかセミナーの人が探りを入れに来たとか?確かにこの人から見て私がミレニアム生って分かったら学校で検閲か何かかけられるかもしれないし……でもセミナーが直接来るなんてそうそうにはないよね?
「最近連邦生徒会の所の先生ってのとミレニアムのゲーム開発部がいたんだよ。先生はミレニアムどころか連邦生徒会クラスだからね……セミナーと縁があったっておかしくない」
「確かに……!」
「まあ触らぬ神に祟りなしだ。私はこちらを探索するから、ここはお互い見なかったことに」
「待って」
どうせ同業者なら、協力したい。一人だと心細いし、助けてくれる人がいるだけで安心感は全然違う。あと私が一人だとなんか絶対やらかしちゃうからフォローしてくれる人がいると嬉しい。
「一緒に回ろー♪」
「…………まあ……別にいいけど……」
一緒に歩いていて気付いたけど、サトコは後ろで髪を結んでおさげみたいにしてる。なんかカッコいいなぁ……
「その背中のリボルバー砲?みたいなのは?」
「これか?私がこの廃墟で見つけたリボルバー砲の錆落としをして使えるようにしただけのものさ」
「凄い!中身見せて!」
「それは……流石に出来ないな。私の愛銃だから」
「……そっかぁ」
「因みにそれは?」
「これ?」
サトコは表情に少し疎いけれど、私の背中に背負ってる『天狐』と『雷獣』が気になるみたい。
「こっちの刀みたいなのは『天狐』っていうパルスブレード。で、こっちのレールガンが『雷獣』っていうんだ」
「武器に名前つけるタイプか……というかレールガン!?」
「うん。私が魔改造したんだー♪」
「魔改造って……どうなってるんだ?バッテリーの重量とか……」
私は雷獣の仕組みについて簡単に解説した。雷獣に関しては解析すごく大変だったけど、この子の解析ができてるから他の装備も修理というか改修ができる感じ。でもあくまで古代兵器に現代の技術くっつけてる感じになってしまうから、多分何かしら性能は落ちてるんじゃないかな?とは思う。
「成る程……改造なんてできるのか」
「うん!この子を改造してから組み方が大体分かるようになって見つけたものは私流の改修だけどとりあえず動かせるようにできるよ!」
「すご……私は改造とかできないからね」
それから私は今まで作ってきた装備品を説明している……と、私の面霊気は妙な振動を感知した。
「これ……デカいメカ?」
「?……何か察知したのか?」
「ううん、私のお面が妙な振動を感知して……四つ足かな?珍し──」
バババババババババババババババ!
そう喋っていると、突然弾丸の嵐が襲いかかってきた。どうやらオートマタが私達を見つけて攻撃してきたみたいだ。普段は雲外鏡で姿を隠してる分見つかることは考えてなかったからすっかり油断していた。私達は急いで近くの看板に隠れる。
「やっぱりオートマタの行動ルーティーンは変わってる!」
「そんなのまで調べてるのか」
「うん……それを調べたくて装置を設置してたけど……」
「……私が左から出てヘイトを取る。チサトは右から迂回して刺せ」
「了解」
背中の中折式のリボルバー砲を撃てる形にしているサトコの言うとおりに、私は雷獣をリボルバー砲のように撃てる形にして迂回する為に細い路地に入った。面霊気で位置を確認しつついい地点を探す。
ドドドドドドドドドドドド!
山神と遜色ない大きさの火薬の音が廃墟に鳴り響き、面霊気からも強い反応が出る。でも、面霊気はオートマタの射撃の衝撃を見逃さず探知していた。これも地味だけど古代兵器の技術は凄いと心の中で感心しつつも私は細い路地を抜けてサトコと丁度クロスファイアになる位置に出る。
バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!
火薬と電磁砲の併用をしている為に雷獣からは独特な射撃音が全てを貫く弾丸を放ちながら廃墟に響かせていた。リボルバー砲の弾丸は特殊なのかオートマタが何体か凍りついていたが、気にせず私がとどめを刺すように弾丸を放って行く。
人やオートマタに向けるには余りに過剰な威力のものを放ってしまえば、当然オートマタは木っ端微塵となりすぐにオートマタは殲滅された。
しかし私が気づいていなかっただけで、先程のメカの振動を面霊気は捉え続けていた。そしてメカは確実にこちらに向かってきていた。
「終わりか……」
「いや、まだ!」
すると私達の前に先程探知していたデカいメカが跳んできた。そのメカは白い巨体で、私達と同じヘイローを浮かべていた。
「ヘイロー付いてる!?」
「なんだありゃ!」
「初めて見た……バラしてみたい……!」
「とんでもないこと言うなお前!逃げ延びれるかも分からないのに!」
そうサトコは叫ぶけど、気になるものは気になるんだ、仕方がない。身が惜しかったら古代兵器の研究なんてできないよ!
そして私は構わず雷獣から弾丸を放とうとした……が、そのメカは機関砲を私に向けてきた。。
「嘘嘘こっちに撃ってくるの!?」
ダダダダダダダダダダダダ!
私は咄嗟にローリングして初撃を躱し、走って避ける。機関砲が放たれている中、ミサイルも飛んでいた。角度的に飛んでいくのは多分サトコの方……一先ず私は機関砲を躱す方に集中しつつ、リボルバー砲をしゃがんだ状態で構えるサトコに向けて叫ぶ。
「ミサ来る!」
「!……」
ドゴーンドゴーンドゴーン!
サトコはその声に反応してリボルバー砲を抱えて走り出す。間一髪躱せたけど、まだミサイルはサトコ目掛けとんでくるし、このまま音でオートマタを集められたらまずい。鹵獲できても持って帰れなくなってしまう。
こんな時に電磁パルス装置でもあれば……あーっ!忘れちゃったー!まああっても雷獣抱えて走ってるから投げられないけど!
と、考えている内にミサイルは撃たれなくなる。多分リロードの隙だろうから多分今がチャンス!それはサトコも察していたらしく、サトコはスライディングして素早くしゃがんだ体勢でリボルバー砲を構える。
ドドドドドドドドドドドドドドド!
リボルバー砲からは火薬の音が鳴り響き、白いメカの脚を穿ち蜂の巣にしていた。メカの脚はそのダメージに耐えきれず一本は形を崩し、メカは転んでしまう。
私はすかさず雷獣を構えてメカの本体に向ける。
バシュゥ……!
しかしメカは後ろ足からワイヤーを飛ばし雷獣が火を吹く前に撤退してしまった。
「あーっ!貴重な資料がー!」
「メカを資料扱いするなよ……と言うかあれ、最近活動がみられるデカグラマトンの預言者の一体なんじゃないのか?」
「えっマジ?」
「多分……ね」
デカグラマトンって……じゃああれを鹵獲できてたら超高度なAIの解析ができたってことじゃん!逃したくなかったー!まあ、悔やんでも仕方ないね。
「よし……私は十分装置置けたしそろそろ時間だから帰るよ」
「そう、か。私はもう少し探索するよ。またな」
「あ、ちょっと待って。連絡先だけ交換しよ!」
「…………分かった」
そう言って私はスマホでモモトークを交換して、家に帰った。
…………………………………………………………
私は家につくと鍵穴に鍵を刺して回し、玄関のドアノブに手をかける。
ガチャッ……ガチャガチャ!
「あれ?開かない?」
しかし押しても引いても開かない。まさか……また鍵かけ忘れてた!?
ガチャッ……ガチャン!
再び鍵を刺して回すと開いた。つまり、そういう事だ。またやらかした。
「た、ただいまー……」
「お、か、え、り」
ドアを開けると当然のようにいるユキは凄まじいオーラを放っていた。鈍感な私でも分かる。これは怒ってる。絶対に。
「えーっと……ユキ?」
「なんでまた忘れるの!」
「ご……ごめんなさい……」
ユキはいつもちょっとツンツンしてるけど怒ることは滅多にない。正直ちょっと怖くて泣きそうだけど私が泣くのは違うと思うから我慢する。でも怖いよぉ……!
「はぁ……チサトはちゃんと!出るときに鍵かかってるかドアノブ回して確認してから出て!いい!」
「はいぃ……」
「分かったならよし……で、今日は大丈夫なの?怪我はない?」
「うん。ありがとう」
やっぱ私はユキがいないとダメだなぁ。ユキに迷惑かけてばっかりだから、何かお返ししたいなぁ。
そう思いながらも、私はユキに今日も甘えるのだった。
リボルバー砲
サトコが廃墟で見つけた武器。雷獣と同様連射可能。火薬のみで暴走射撃が可能な代物で、実はリボルバーに見える部分は実際はミニガンの回転する銃身と殆ど同じ原理。
その実態は雷帝が廃墟の武器を真似て作った武器であり、火薬の力で無理矢理その威力と貫通性を再現したもの。また凍結する弾丸も放つことができる、オーパーツのような性能も有している。しかし通常の銃と変わらない機構の為かライフリングにより弾丸が左に曲がりやすくなっている。しかしその重量と過剰ともいえる威力により想定される相手が存在しなかった為に忘れ去られ廃墟に流れ着いたようだ。
忘れ去られ記録にも残っていないが故に、それを雷帝の遺産と知る者も知る術も存在しない。
雷獣
チサトが廃墟で見つけたレールガン。火薬と電磁砲の併用によりその重量は通常より軽量化されているが、それでもなお凄まじい重量となる。リボルバー砲と同様貫通する弾丸を放てる。リボルバー砲との相違点は反動とブレとスタン弾が打てる点。雷獣はブレがなく、反動も少ない為、比較的扱いやすい。
火薬を使用する機構部はレールガンの機構が欠けていた為にチサトが付け足したものだが、本来は電磁砲としての機構のみで扱うためのものだったようだ。
機械やオートマタではなく人が扱うことを想定されたこの武器は、一体誰が扱うための武器だったのだろうか。
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モブちゃんはどっちも出します(事後報告)
メガネの方も出さないと不公平やんな。当然メガネは外しません。過激派が怖いので……