クビになった庭師の俺、スキル『剪定』が覚醒して行き倒れ少女を整えたら実は最強聖剣士だった!? 訳あり美少女たちを手入れして最強英雄パーティを作ります   作:らっぽん

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# 第10話:初めての依頼と、錆びた剣

「て、てめえ……なんでそれを……」

 

 愕然とした声を漏らし、ボルドはその場に立ち尽くしていた。

 その額からは、じわりと冷たい汗が滲み出ている。Bランクの上位冒険者としての威風堂々としたオーラは完全に霧散し、ただ自分の右腕を信じられないものを見るように見つめていた。

 ギルド内の冒険者たちも、その異常な空気に息を呑んでいる。

 

「おい、ボルドの旦那の腕が悪いって、本当なのか……?」

「あの庭師、ただの雑魚じゃねえのかよ。何を見たんだ?」

 

 ヒソヒソという動揺の波が広がる中、俺はハサミを腰のポーチへと戻し、シアに向き直った。

 

「よし、シア。それじゃあ、俺たちの初めての仕事を決めようか」

 

「はい、アルト様! どこへでもお供します!」

 

 ボルドのことなど最初から視界に入っていなかったかのように、シアは満面の笑みで頷く。

 俺たちは呆然とこちらを見ている受付嬢に軽く一礼すると、壁際にずらりと並んだ依頼掲示板へと移動した。

 掲示板には、羊皮紙に書かれた様々な依頼書がピンで留められている。

 高ランクのエリアには「ワイバーンの討伐」や「古代遺跡の調査」といった物々しいタイトルが並んでいるが、俺たちが手にした登録証は最低のFランクだ。見ることができるのは、一番端にある初心者用のエリアだけである。

 

「ええと、Fランクの依頼は……『街の東の薬草採取』、それから『スライムの駆除』か。地味だけど、最初はこれくらいが丁度いいな」

 

「アルト様、こちらの依頼はいかがでしょうか?」

 

 シアが指差したのは、少し古びた羊皮紙だった。

 

 > 【Fランク依頼:街の近郊のキバウサギ討伐および肉の納品】

 > 報酬:討伐数に応じて (1匹につき銅貨5枚)

 > 備考:繁殖期のため、初心者向けの小遣い稼ぎに最適。

 

「キバウサギか。凶暴なウサギの魔物だな。肉はギルド併設の酒場で買い取ってくれるみたいだし、今日の晩飯代と宿代を稼ぐにはぴったりだ。よし、これにしよう」

 

 依頼書を剥ぎ取り、受付カウンターへと持っていく。

 先ほどの一件で、まだ少し顔を引きつらせている受付嬢が、震える手で手続きを済ませてくれた。

 

「は、はい、確かに承りました……。キバウサギは初心者向けですが、素早いので足元への攻撃には気をつけてくださいね。それと、お二人とも武器はお持ちですか? ギルドの倉庫で、初心者用の錆びた鉄剣なら格安でレンタルできますが……」

 

「あ、それをお願いします。シアの分を一本」

 

 俺は財布に残った数少ない銅貨を支払い、倉庫から一本の片手剣を借り受けてシアに手渡した。

 手入れが行き届いておらず、刃のあちこちが薄く錆びついた、お世辞にも名剣とは言えない代物だ。

 

「ごめんよ、シア。今はこれくらいの安物しか用意してあげられなくて」

 

「そんな、謝らないでください! アルト様からいただいた剣です、これ以上の宝物はありません!」

 

 シアは錆びた鉄剣をまるで国宝の聖剣であるかのように、愛おしそうに胸に抱きしめた。

 その純粋すぎる喜びように、俺の胸の奥が少しこそばゆくなる。

 

「……待て」

 

 ギルドの出口へ向かおうとした時、背後から低い声が掛けられた。

 振り返ると、ボルドがまだ青い顔のまま、しかしどこか必死な形相でこちらを睨みつけていた。

 

「庭師……アルト、と言ったな。てめえ、俺のこの腕の『歪み』とやらを……治す方法を知っているのか?」

 

 その問いに、ギルド内が再び静まり返る。

 プライドの高いBランク冒険者が、Fランクの初心者に頭を下げんばかりに教えを乞うている。その事実だけで、俺の見抜いた内容が完全な事実だと証明されたようなものだった。

 俺はドアに手をかけたまま、振り返らずに口を開いた。

 

「言ったでしょう、俺はただの庭師です。枯れかけた枝をどうにかできるかどうかは、その木がどれだけ『手入れ』を受け入れるか次第ですよ」

 

 含みを持たせた言葉を残し、俺たちはギルドの重い扉を押し開けた。

 外には、初夏の心地よい太陽の光が広がっていた。

 大通りの喧騒を抜け、俺たちは街の頑丈な城門をくぐり、初めての外の世界――見渡す限りの緑が広がる草原へと足を踏み出した。

 

「よし、シア。初仕事だ。庭師と剣士のコンビで、ガッツリ稼ぐぞ!」

 

「はい! アルト様の行く道を、私がすべて切り開いてみせます!」

 

 錆びた剣を腰に帯びた漆黒の美少女が、嬉しそうに微笑む。

 こうして、俺たちの記念すべき初めての冒険が幕を開けた。

(第10話 終)

 

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