クビになった庭師の俺、スキル『剪定』が覚醒して行き倒れ少女を整えたら実は最強聖剣士だった!? 訳あり美少女たちを手入れして最強英雄パーティを作ります   作:らっぽん

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# 第24話:英雄の帰還と、引き抜かれた歪み

 

 

 地平線を埋め尽くしていた魔獣の群れが、蜘蛛の子を散らすように森の奥へと消えていく。

 あれほど平原を支配していたどす黒い不協和音は嘘のように消え去り、初夏の爽やかな風が、青々とした草波を揺らしていた。

 その中心で、俺はのんびりとハサミの調子を確かめていた。

 うん、あれだけの化け物の根を切ったというのに、刃こぼれ一つしていない。さすがは師匠から譲り受けた自慢の道具だ。

 

「おい……おいおいおい、正気かよ……」

 

 ガシャ、と重い金属音を立てて、大剣を拾い上げたボルドが、ふらついた足取りでこちらへ歩いてきた。その顔は完全に引きつっており、俺の腰のポーチをまるで爆発物でも見るような目で見つめている。

 

「旦那……てめえ、今、何をした? アースベアの爪を受け止めただけじゃねえ、あの全身の魔石を……Aランクの変異種を、ただのハサミで『突ついた』だけで消し飛ばしやがったぞ……?」

 

「突いたんじゃありませんよ、ボルドさん。丁寧に、一番悪い雑草の根元をチョキンとやっただけです。おかげで綺麗になったでしょう?」

 

 俺が倒れ伏したアースベアを指差すと、ボルドは「あ、ああ……」と、完全に思考を放棄したような顔で頷いた。

 周囲の冒険者たちも同様だ。彼らは俺が近づくだけで、まるでモーセの海割りのように左右へ綺麗に道をあけ、直立不動で震えている。Dランクへの飛び級どころか、国のお抱えの特級魔術師でも連れてきた方がまだ理解できる、といった惨状だった。

 

「アルト様、お怪我はありませんか? お洋服に少し灰がついてしまっています!」

 

 シアがトコトコと駆け寄ってきて、俺の服の裾をパタパタと叩いてくれる。その姿は完全に、主人を甲斐甲斐しく世話する忠実な護衛そのものだ。

 

「ありがとう、シア。フィリアも、もう大丈夫か?」

 

「はい……っ! アルト様が前に立ってくださったとき、すごく、その……格好良くて、胸がバクバクしました……!」

 

 フィリアは白銀の杖を大事そうに抱きしめ、上気した顔で俺を見上げている。

 どうやら恐怖は完全に吹き飛んだようで安心した。

 

「よし、それじゃあ街へ戻ろう。ギルドの受付嬢さんも心配しているだろうしね」

 

 ◇

 俺たちが東門をくぐり、リファルの街へと戻ると――。

 そこには、割れんばかりの大歓声と拍手の嵐が待っていた。

 

「戻ってきたぞ! 街を救った英雄たちだ!」

「あのハサミを持った男が、変異種を一撃で仕留めたらしいぞ!」

 

 避難していた住民や、門番の兵士たち、さらには防衛線の後方にいた冒険者たちから、一斉に賞賛の声が浴びせられる。

 人混みをかき分けるようにして走ってきた眼鏡の受付嬢は、俺たちの姿を見るなり、ボロボロと涙をこぼして膝から崩れ落ちそうになっていた。

 

「アルトさん……! シアさん、フィリアさん……! 無事で、本当に無事で良かったです……! 平原の魔力が一瞬で正常化して、魔獣たちが退いていくのを見て、まさかとは思いましたが……!」

 

「ええ、大元の大雑草を間引いておきましたから。これで当分は安心だと思いますよ」

 

 俺が何気なく言うと、受付嬢はハンカチで涙を拭いながら、引きつった笑みを浮かべた。

 

「あ、アースベアの変異種を『大雑草』なんて呼ぶ冒険者、創立以来初めて見ました……。とにかく、詳しい報告はギルドの奥で、ギルド長直々にお伺いします! お三方、本当にお疲れ様でした!」

 

 ギルドの酒場に入ると、そこには見覚えのある、しかし今や完全に生気を失った三人組の姿があった。

 森でフィリアを突き飛ばして逃げ、その果てに別の魔獣に襲われてボロボロになって帰還した、あの元パーティの男たちだ。

 彼らは、街の英雄として大歓声の中で迎えられる俺たちと、その中央で、かつて自分たちが『役立たず』と罵って生け贄にしたフィリアの姿を見て、完全に硬直していた。

 フィリアが纏う純白の魔導衣と、白銀の霊樹の杖。そして、街を救った大魔法を放ったという事実。

 男たちは、自分たちがどれほど計り知れない国宝級の才能をドブに捨て、代わりにどれほど恐ろしい怪物を敵に回したのかを完全に理解し、ガタガタと歯の根を合わずに震えていた。もはや声をかける資格すら、彼らには残されていない。

 

「アルト様、行きましょう。あんな枯れ草、もう私たちの視界に入れる価値もありません」

 

 フィリアは男たちに一瞥もくれず、俺の袖をきゅっと引いて前を歩いた。その表情は、過去のトラウマを完全に乗り越えた、気高き魔導士のそれだった。

 

 ――ギルドの最奥。

 重厚なマホガニーの扉を開けると、そこには、リファル支部を統括する初老のギルド長が、深く椅子に腰掛けたまま、俺たちを鋭い眼差しで待っていた。

 

「よくぞ街を救ってくれた、庭師アルト。……単刀直入に言おう。君たちの力を、ギルドはこれ以上『Dランク』に留めておくわけにはいかない」

 

 ギルド長が机の上に置いたのは、鈍い輝きを放つ、三枚の『白銀の登録証(Bランク)』だった。

 

(第24話 終)

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