クビになった庭師の俺、スキル『剪定』が覚醒して行き倒れ少女を整えたら実は最強聖剣士だった!? 訳あり美少女たちを手入れして最強英雄パーティを作ります   作:らっぽん

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# 第31話:実技試験の乱入者と、白黒の奇跡

 地下大図書館から地上へと戻った俺たちは、学園の広大な中央演習場へと足を運んでいた。

 ちょうどそこでは、エルダが所属するクラスの『実技進級試験』が行われている最中だった。

 演習場の周囲には無数の生徒と、採点用の羊皮紙を持った高慢そうな教師たちが陣取っている。

 

「おい見ろよ、あのガリ勉眼鏡《エルダ》が戻ってきたぞ」

「案内係の雑用は終わったのか? どうせまた実技は不合格で落第確定なのに、よくのこのこと戻ってこられるよな」

 

 俺たちの姿を見つけた生徒たちが、クスクスと品性のない嘲笑を漏らす。

 だが、彼らはまだ気づいていない。エルダの顔からあの不格好な分厚い眼鏡が消え、その奥から息を呑むほどに美しい、金と紫のオッドアイが覗いていることに。

 

「ふん、ルクレツィア家の恥晒しが、ようやく戻ったか」

 

 人混みを掻き分けて前に出てきたのは、いかにも高級そうなローブを纏った、このクラスの担当教師だった。彼はエルダを一瞥し、鼻で笑う。

 

「エルダ・ルクレツィア。お前は座学こそ首席だが、実技の点数はこれまでゼロだ。今日の試験で『闇魔法の弾丸』を的に当てることすらできなければ、学園の規則通り、即刻退学処分とする。……さあ、さっさと前に出て無能を晒すがいい」

 

 教師の冷酷な言葉に、周囲の生徒たちからドッと下品な笑いが起きた。

 

「……そうですか」

 

 エルダは取り乱すことなく、静かに、そして凛とした足取りで演習場の中央へと進み出た。

 その背筋の伸びた美しい佇まいに、野次を飛ばしていた生徒たちが、気圧されたように一瞬静まり返る。

 

「おい、あいつ……あんなに美人だったか?」

「眼鏡がないぞ……。っていうか、あの目はなんだ……!?」

 

 ざわつく演習場。エルダはそんな雑音を無視し、前方にある頑丈な魔導標的《ターゲット》を見据えた。

 

「おい、そこの不審者ども! 関係者以外は立ち入り禁止だ、そこをどけ!」

 

 教師が、エルダの後ろについてきていた俺やシア、フィリアに気づいて怒鳴り散らす。

 

「俺たちは彼女の身元引き受け人でね。まあ、すぐに終わるから特等席で見物させてもらうよ」

 

 俺がハサミをいじりながら不敵に笑うと、教師は「チッ、無能の連れは無能か」と吐き捨てて、採点用のペンを構えた。

 

「始めよ! 制限時間は三分、お前の得意な完璧な術式とやらで、傷一つでも付けてみせろ!」

 

 教師の合図とともに、エルダがゆっくりと両手を掲げた。

 その瞬間、演習場全体の空気が、一瞬で凍りついた。

 

(――さあ、手入れの終わった大輪を見せてやれ、エルダ)

 

 エルダの身体から溢れ出たのは、これまで彼らがバカにしていた、弱々しい黒煙などではなかった。

 演習場の地面を激しく揺るがすほどの、圧倒的な質量を持った漆黒の魔力。そして同時に、天から降り注ぐような、神聖でまばゆい純白の輝き。

 

「な……ッ!? なんだこの魔力量は……!? 光と、闇が同時に……!?」

 

 教師の持っていた採点ペンが、恐怖でガタガタと震え出す。

 

「お父様もお母様も、そして学園の皆様も……誰もがわたくしの『努力』を、闇に合わない無能の足掻きと笑いましたわ」

 

 エルダのオッドアイが、冷徹な輝きを放つ。

 

「ですが、アルト様だけがわたくしを見出してくださった。わたくしの血の滲むような闇の修練は、この『光』を最高に輝かせるための極上の肥料だったのですわ!」

 

 完璧な座学の知識によって紡がれる、一点の歪みもない至高の術式。

 光と闇、相反する二つの属性が、エルダの手の中で完璧に調和し、巨大な双頭の龍の形を成していく。

「消えなさい――『聖陰の天魔崩裂《ダーク・レイ・バースト》』!!」

 

 ドォォォォォォン!!!

 

 放たれた白黒の閃光が、演習場を真っ二つに引き裂くような轟音とともに炸裂した。

 学園の最高級結界が張られていたはずの魔導標的は、衝撃波に耐えきれず、粉々に粉砕されて消滅。それどころか、背後にある頑丈な石壁までが消し飛び、遥か彼方の空まで風穴が空いていた。

 

「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」

「標的が……学園の壁が、一撃で……っ!?」

 

 あまりの破壊力に、エリート生徒たちは腰を抜かして地面にへたり込み、担当教師は羊皮紙を取り落として白目を剥いていた。

 静寂が戻った演習場で、エルダはふぅ、と美しく息を吐くと、呆然とする教師を一瞥し、最高にエレガントな微笑みを浮かべた。

 

「先生? 採点をお願いいたしますわ。……それとも、今のわたくしの実技、まだ『Fランク』かしら?」

 

「あ、あ、ありえん……こんな魔法、歴史上存在しない……お前は一体……!」

 

 恐怖に震える教師を無視し、エルダはまっすぐに俺の元へと歩み寄ってきた。そして、シアとフィリアが見守る中、俺の手を両手でそっと握りしめる。

 

「アルト様、見ていてくださいましたか? わたくし、やりましたわ!」

 

「ああ、完璧だ。最高の咲き誇り方だったぞ

、エルダ」

 

 俺が彼女の頭を優しく撫でると、エルダは嬉しそうに目を細めた。

 それを見たシアとフィリアが、今度こそ完全に両脇から俺の腕をホールドする。

 

「……エルダさん、実技が合格したなら、こんな錆びついた学園に用はないはずです。さあ、アルト様から離れてください」

 

「そうです! アルト様の隣は渡しません!」

 

「あら、これからは旅の仲間として、ずーっとお側におりますのよ? 覚悟してくださいまし、お二人さん」

 

 華やかな美少女三人による、新たな正妻戦争の火花。

 こうして、学術都市の「お騒がせ居残り令嬢」を最高の形でお手入れした俺たちは、地脈の汚染の謎を追うため、次なる冒険へと歩みを進めるのだった。

 

(第31話 終)

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