超あべこべ!   作:nalnalnalnal

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あべこべ世界のあべこべな生活

 

 

 

 ──さて、世の男性諸君は同床異夢という四字熟語を知っているだろうか?

 

 同じ寝床で寝ながら、それぞれ違う夢を見ること……つまりは同じ行動や仕事に携わりながらも、立場や考え方、目的が全く異なっていることを表す言葉だ。プラスでもマイナスなイメージでも使用されることのある言葉でもある。

 

 対義語では呉越同舟という言葉が当てはまるが、こちらの方が周知されている可能性が高い。だって現に俺も昨日テレビ番組で見て知っただけだし。

 

 意味が定義されているが、その真意は定かではない──昔ながらの個人個人に解釈を一任する面倒くさい言葉だ。中学の国語の授業で教科書内の熟語を調べた時にそんな単語だらけで鬱屈となった記憶が呼び起こされる。

 

「ねっっむいな……でも早く出なきゃ……またヤツが来る……」

 

 まぁ要は全く同じ思考をしている人間はいないと暗に表している言葉なのではないかと俺は解釈している。だが俺はこの言葉を馬鹿げたものだと一蹴できる確固たる自信があるのだ。

 

 ──特に、俺と同じ男性ならば全く同じ答えを持ってくれるはずだ。

 

「えっと〜……? テレビのリモコンどこやったっけ……」

 

 それはなぜって? 自分であんな解釈しておいてよくそう言えるなって?

 そりゃ、この世界の現状を知ればそう言えるようになるよ。ほんっとに一目ニュースを見るだけでいいから。

 

「……お、あった……」

 

 ニュースはいいね。手軽に世界の現状を知ることが出来るんだから。今どんなものがトレンドの最先端で、どんな政策が施行されようとしているのか。勉強が苦手な俺でも懇切丁寧に説明してくれる画期的な媒体だ。

 

 おっと、そうこうしていたらニュースの時間だ。

 

 さぁ、もう分かるよ。この世界が如何に面倒くさくて生きづらいのか──

 

 

 『本日午前8時頃、都営地下鉄車内にて、男性が女性から痴漢被害に遭う事件がありました。被害者の30代男性は、満員電車の中で後ろから胸や太ももを執拗に触られたと警察に相談。『服の上から何度も揉まれて…逃げようとしたのに腕を掴まれて離してくれませんでした』と、涙ながらに話しています』

 

 

 ──……まぁ、うん……もう分かったでしょ?

 

 ──この世界は男女の感性が真逆になっている上に、如実な男性不足に陥っているのだ。

 

 女性が男性に積極的で、その積極性がエスカレートした性被害がよく発生している。それは単なる本能からくるものなのか……誰でもいいという理由でもあるのか。正直に言えばどちらも正解だ。

 

 途轍もないほど技術が発展しようがしまいが、性なる本能という本質は変わらない。この世界ではそれが如実に現れている。なんか色々凄い技術あるんだから自分の中で抑えておいてくれよ。

 

 俺こと小日向(こひなた)トワ──この世に生を受けて早17年。何とか男子の友達と貞操の危機を死守しながら毎日生きながらえています。

 貞操の危機だなんて大袈裟だと思うかもしれないが、本気で身の危険を感じることが多々あるのだ。

 

 

***

 

 

 物心ついて初めて身の危険を感じたのは小学生のプールの授業だった。

 

 男子は人数差が酷いので特別に専用のクラスを設けられ、少し離れた場所で講習を受けていたんだ。流石に小学生女児が性なる本能を覚醒させはしないと思っていたが、そんなの関係なく斜め上の角度から貞操センサーが反応したんだよね。

 

 それは丁度プールの授業が終わってサウナ室に入ろうとする直前に皆が各々のタオルを身体に巻き始めた時に起こった。

 

「……あれ?」

「ん? どうしたのトワ?」

「いや、おれのタオルがなくなってて……」

「着替え室に忘れたんじゃないの? あっ、でも持ってきてたっけ」

「うん……誰かが取り間違えたのかな……」

「先生に聞いてきたら? 落とし物とかあるかもしんないし」

「うん。ちょっと行ってくるね」

 

 授業が始まる前まではあった筈の俺のタオルがなくなっており、友達にそう言われて何故か俺たちに割り当てられた女性のインストラクターさんの元へ向かったんだ。

 

「先生?」

「──んっんっ!? ど、どっしたのきょひなたくん!?」

「おれ小日向だよ? えっと、おれのタオルがなくなってたんだけど、先生知らない?」

「たッタオルッ!? ううんっ? 知らないなぁ……!?」

「そ、そう……?」

「うんそうだよ!! だから友達に貸してもらってくれる?」

「はーい──んっ?」

 

 やたらと焦りようが半端ではない先生に疑問を浮かべつつも、仕方ないと割り切って友達の元へ戻ろうとした時、見覚えのある柄のタオルが少し離れたところに置いてあったんだ。

 

「先生? あそこにあるのってもしかしておれの「うーんんっ!? 違うっからね!? あれは先生のだから!!」

「え、でも……」

「せ・ん・せ・いのだからね!? ね!?」

「え、あ、うん……」

 

 

***

 

 

 ……これだけで分かると思うが、そういうことだ。

 

 ちなみにその後のプールの授業からその先生の姿は忽然となくなっており、彼女の消息は言うまでもないだろう……

 

 とまぁ、教職員のような大人ですら子どもに手を出してお縄についてしまっているのがこの世の現状。

 

 外に出ればナンパされ痴漢され襲われ──男性であることが一種のデバフになっているのだ。この世界の歴史を紐解けば分かるはずもなく、偉人も大半が女性。未婚女性が増える一方で出生率をこれ以上低下させないよう、まぁ、その……男性の種を預ける施設も整備されつつある。

 女性の結婚出産に関しては、種を進んで提供する男性がいるのかという疑問が提示されたりと、年々議論が激しくなっている世界的な問題なのだ。

 

「コンビニでご飯買って学校で食べるか……? もう起きてくるだろうし」

 

 そんな世界で男性が生き抜くには同じく男性との協力が必要不可欠──中学校では学内の男子生徒全員が一堂に会する集会もあった程だ。思春期真っ只中の女子から向けられる目線は中々にけったいなもので一度彼女達の沼に引きずり込まれてしまえば一巻の終わりだ。

 

 だから男子は生の肌を見せることすら躊躇うほど──まぁ俺はシャツのボタン外してガチ説教を同年代の男子から受けた経験があるのだが。

 

 未だに慣れないこの世界での生活──この価値観に加えてもう一つ面倒なことがある。それは──

 

「おーい。朝だよー。ご飯食べよー。だからあ・け・て?」

 

(くっ……今日はやけに早いな!)

 

 それが幼馴染の存在だ。こやつは中々に厄介で顔を見ない日が知り合ってから一度もないんじゃないかと言うほど付き纏ってきて時々艶かしい視線でこちらを見つめてくる何ともまぁ思春期らしい女子なのだ。

 

 だが、こうなってしまえばいつもの『ダッシュ&エスケープ作戦』は使えない……『窓際スーパージャンプ作戦』も試そうとしたが痛いし失敗率が高すぎてなしだ。

 

 仕方がない……今日は諦めよう。

 

「……おはよう」

「おはよ。やけに時間かかってたけど、何してたの?」

「へ、部屋を片付けてて……」

「ふーーん? 窓が開いてるけど?」

「いやいや、掃除をするなら換気をだね……」

「網戸も開けるの? あんた虫嫌いだったでしょ?」

「……虫嫌いを克服する為」

「無理があると思うんだけど。まぁいいや……上がるよ?」

 

 ……このよく俺の部屋にご飯を食べにくる女子は『酒寄彩葉(さかよりいろは)』──文武両道才色兼備という言葉がよく似合う俗的に言えば『超人』……なのだが、是非とも今すぐに帰って欲しいものだ。

 

「全く……人の残り飯食って節約とは中々に狡猾じゃないか」

「え、それだけが理由だと思ってるの?」

「え?」

「は?」

 

 まぁ、彼女と共に上京して来たのだから多少は懐かれているのだろう。ただそれは飲み込むがたまに変な視線向けないで欲しい。と言うか今向けないで? 

 

 他の理由が何だかあんまり考えたくない……よし、これは考えないでおこう。

 

 後そんなことするくらいなら推しにもっと時間を費やして欲しい。その方が有意義だし時間を有効活用していると自覚できる筈だ。

 こんな感情ごちゃ混ぜの視線を向けられて俺は何を思えばいいのだ。

 

 あ、彼女の推しというのは──『月見(るなみ)ヤチヨ』。全世界総ログイン数1億を誇る巨大仮想空間『ツクヨミ』の管理人にして大人気トップライバーだ。

 ツクヨミ内でのヤチヨのライブには半ば強制的に彩葉に連れられて毎度視聴させられている。

 

 余談だがツクヨミ内にはヤチヨ同様人気のあるグループが存在しているが、何と全員が男性のグループもある──中には俺の知り合いもいるが、俺は全員バカで命知らずのアホだと思っている。

 

 こんな世界で男性が表立って1億ユーザーの前に立つなんて死地に飛び込むのと同義だ。仮想空間だから何をしても大丈夫だなんて規則はないし、いつどこで誰が自分を見ているのすら把握できない規模感なのだ。

 ツクヨミ内のライバーが性被害に遭ったという事件も聞いたことがある。男性であることは一種のステータスになり得るが同時に一種のデバフになり得る。彼らがどうか平穏な生活を送っていることを願いたい。

 

 男性ライバーは配信活動等の前に分厚い説明書っぽいものを熟読せねばならないそうだが、どちらかと言えば男性よりも女性が読んだ方が良さげな気もする。

 

 男性の中にも女性に積極的な人間はそうそういない……世界中で見ても指で数える程だと俺は思う。しかしその少数精鋭がツクヨミに降臨しているとなればそりゃあ世の女性からは大人気にはなるだろうよ。

 

 よくあんな勇猛果敢な態度を取れるなと常日頃から思う。それを女性に向ければ倍になって帰ってくるぞと言ってやりたいよ。

 

 長々と話したが、今は目の前の幼馴染に意識を向けよう。

 

 しかし彼女は自分の力で生きると息巻いて上京して来た割には俺の家のご飯を頻繁に食べに来る。

 

「自分の力で生きるとはこれいかに……」

「あんたのご飯が美味しいのが悪い」

 

 嬉しいのか嬉しくないのか。しかし彼女のことは嫌いではない。これは断言できる。完璧超人だと揶揄されるが不安定な部分はあるし、彼女だって一人の人間だ。弱音や愚痴を吐き出したくもなるだろう。

 

 その矛先を近しい俺に向けている。至極当然の話……少し面倒くさいのは確かなんだけどね。その面倒くささもある意味で彼女らしいと言える。あの視線に関してはらしさ以前の問題な気がするが。

 

「毎日のように来るのはやめて欲しいかな」

「……あんたって変わってるよね」

「えなに急に」

 

 唐突にそう言われて腑抜けた声を出してしまう。

 

 確かに変わっていると言われると俺は変わっているのだろう。価値観を変えることなど不可能に近く、俺は一人隔絶された存在と言っても過言ではない。

 

 だがそれでも楽しくやっていけてるのだから、文句はない。

 

 ただ……

 

「……もう少し来る頻度を減らして欲しいんだけどな……」

「やだ」

「さいですか……」

 

 面倒くささもあるが……彼女が自立すると息巻いて上京し、今なお限界生活をしている為心配が残るのだ。

 俺は勉学運動共に人並み程度。勉学に関してはケースバイケースだが苦手な部類ではある。だから彼女自身の苦悩は正直に言って理解できはしないだろう。

 

 その上で頼られていると言えば少しポジティブに捉えられるが……彼女の本意は彼女にしか理解できない。

 

 それが分かるまで続きそうだな、この生活は。

 

「……」

 

(ほんっと、変わってるよね。あんたって……)

 

(……変なとこ凝視するのやめて欲しいな……)

 

 でもやっぱり少し来る頻度は減らして欲しいな。怖いから。

 

 

 





結構ガバガバ設定なのは自覚してます。
ただ衝動的に書いたのでどうかご容赦を……

次回からは長めに書きます
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