あべこべ要素があるのか微妙なラインですね今回は……
あとKASSENについての独自設定がありますので何卒ご了承を……
──朝。それは一日の始まりであり朝の過ごし方次第でその後の運命も変わってくるものだと俺は思っている。
だから俺は朝が好きで、朝ご飯にも力を入れる……コーンフレークやパン、白米など様々なバリエーションが豊富で料理人のようになってしまうのだ。
……まぁ、邪魔が入らなければとても有意義に過ごせる筈なんだ。
──サンドイッチ状態にされてなければね。
今の俺の状況を説明するなら、パジャマに入り込んだ主に胸筋の辺りに顔を埋めている彩葉、そしてそれに加えてかぐやが背中に顔を埋めている状態だ。
彩葉さんや、流石に自重してくれませんかね。俺が合鍵渡したせいなんだけどさ……逆によくこれで俺起きないよな。最早称賛されていいくらいだよね。
んでかぐやもとうとう抱きついて来たか……こっちは単に抱き枕みたいにしてるだけだから文句は言えないけど、二人にしがみつかれると動けなくて困る。
だって無理やり動こうとしたら──
「……あっ……」
彩葉が変な声出すもんだから何か変な気分になってマジで困る。
「うへへぇ……トワぁ……」
「これくらいでいいんだよほんと……」
これくらいの可愛げが彩葉にもあればよかったと常日頃から思っている。いや普通に可愛らしいとは思うけど行動態度その他諸々のせいで吹き飛んでるんだよねその可愛らしさが。
「……ん?」
なんて思ったら……突然下半身辺りに何かを掴まれるような感覚が迸る。
流石にお稲荷さん本体は掴まれていない様子だが、その一歩手前まで──あっぶな!!
この破壊獣とうとうここまで来たか……! 本当にちゃんと寝れてるのか?? 俺が寝ている間に、ついでにかぐやに見られてない間にしっぽり行こうってか。怖いわ!
「……」
「……彩葉、起きてるだろ」
「……」
「急に俺のズボンに手を伸ばすのをやめなさい彩葉」
「……さきっぽだけでいいから」
「ついに言ったね。絶対やらせないからね」
「だったら──強行突破するまで……!」
「うおおおやめろやめろ……!」
畜生。何でこんな朝っぱらからお稲荷さんを巡った攻防戦をしなくちゃならないんだ。
んで力強いなおい……! 不味い。お稲荷さんに到達されてしまえばその時点で色々アウトだ。
無理やり上下運動されようものなら一巻の終わりだ。よし、こうなれば俺の唯一の希望を叩き起こしてやる!
「かぐや起きろぉ!! ドチャクソ美味いパンケーキ作ってやるから起きろぉ!!」
「──パンケーキ!? ……おん? 何してるの二人で」
「あーえっとな……ふんぬっ……! あー……くっ……あっ、貞操の危機だから助けて!」
「……うええぇ!? そ、それってつまりは……?」
「つまりも何も伝わるだろかぐやなら! ちょっ……彩葉引き剥がして!」
「あっああううん……!」
(ず、ズボンに手かけてるってことは……と、トワのあそこを……!?)
***
「──KASSENやりたい!」
「──唐突だね」
俺のお稲荷さんを巡った攻防戦を終えた数時間後。って言うか今更だけど夜中に握られたら終わりじゃない?? 流石に彩葉も寝てると信じたいものだが……
かぐやも何か数時間は顔を赤くしてお淑やかになっていたが……どういうことなんだ? たまにこうなるのは気になる。
おっと、話が逸れたね……
かぐや+TOWA+いろPの三人体制で始まったライバー生活も何度かの配信を終えてファン数も順調に上昇傾向にあり、次の配信のネタを探そうとしていた時、唐突にかぐやがそう申し出した。
ちなみに今彩葉は夏期講習に向かっています。こんな生活でも学業に励むだけの体力が残っていることは素直に尊敬に値する。もう学業か配信にだけ体力を割いて俺の部屋に侵入して来るのはやめて欲しい。
毎回かぐやガードによって防がれてはいるが……最近はかぐやも抱きついて来るようになって二人を相手にすることもある。
大丈夫だよなかぐやは。俺が知らないだけで変な知識を植え付けられていないか心配だよ全く。
そんでもって、
一つ目がSETSUNAというモード──基本的な格闘ゲームよろしく
二つ目がSENGOKU──SETSUNA同様三番勝負だが三対三のチーム戦になり、ルールも複雑化する。
勝利条件はフィールドの両端に位置している天守閣の破壊。しかし天守閣の破壊には段階的な手順を踏む必要がある。天守閣それぞれがトップ・ミドル・ボトムの三本のレーンで繋がっており、トップ・ボトムの双方には櫓が設置されており、天守閣の破壊に必要な条件としてこの櫓を占拠するというのがある。
櫓には中ボスの牛鬼が守りを固めており、そいつも撃破しなければならない。
そして次の条件が占拠したことによって相手チームの天守閣に出現するだるま落とし──通称大将落としを天守閣に打ち込むことによって城壁を破壊することだ。これによってラウンド勝利となるが、例外として櫓を二つとも占拠した場合はその時点で占拠したチームの
まぁ、慣れたら簡単だ。
三つ目がKASSEN──七対七のバトルロイヤルモードで、個人三
まぁ、それはかなりハードな難易度で大体は
「う〜ん……いつやりたいの?」
「今!! トワとやりたい!!」
「あ"〜……」
彩葉に夏期講習の間に二人っきりで何してたのと問い詰められる未来しか見えないよ。だったらせめて協力者を連れて来た方が彩葉にも上手い言い訳ができるし説明もしやすいしモードの分野も広がる。
……まぁ、思い当たるのは二人……綾紬の方が断然やりやすいし、連絡してしみるか。
──毎回毎回思うけど既読鬼速いんだよな綾紬……
そんな暇人なイメージはなかったんだけどさ……こうも毎度毎度速いとびっくりするよね。まぁでも彩葉も綾紬の既読速いって言ってたし、俺も緊急の連絡だったからありがたいけど。
んで諌山も来るのか……彼氏も誘ってみるか?
いやでも確かこの時間帯はまだ寝てたなそう言えば……諌山とのハッスルに付き合わされているせいで生活リズム狂い始めてるって言ってたな。
それに彼氏の行動次第で彼氏の聖なる運命も決まってしまうから簡単にやれとは言えないわな。逆に俺と組んで諌山をボッコボコにするのも楽しそうだけど、そうなったら腹いせに逆ギレックスに持ち込まれてしまいそうだからやめておこう。と言うか最早組んでも組まなくても襲われそうなの可哀想過ぎないか彼氏。
「かぐや。綾紬と諌山がコラボしてくれるって」
「えっコラボ!? じゃあ早く配信しよっ!」
「はいはい……もう手慣れて来たな」
***
「──と、言う訳で……美容系インフルエンサーの『ROKA』さんと……グルメ系インフルエンサーの『まみまみ』さんに来てもらいました〜」
「「どうも〜」」
「今日はコラボだよコラボ! みんなでKASSENやるんだ〜!」
出だしは好調。これがいつも通りになるよう頑張ろう……後最後。ASMRなんて小っ恥ずかしてくてやれたもんじゃないよ。
最早求婚コメントなんて星の数来たから今更触れないよ。
「殆どト……と、トワに対するコメントだね〜」
「そう言えばあんまりトワとはKASSENやったことなかったよね?」
「まぁそうだね……いろ……Pを通してぐらい? 後は男友達とやるのが鉄板かな」
「トワは強いの? KASSEN!」
「分かんない。SETSUNAは得意」
「強者感あるな〜」
「今回はSENGOKUかKASSENでやる感じ?」
「そだね」
これ本名しれっと言いそうで毎回怖いんだよね。二人はインフルエンサーだから多少なりとも謂れが分かってるのが救いだけど、かぐやには毎回言い聞かせてるよ。
んでもってKASSENだけど……彩葉と何度かSETSUNAで戦り合ったことがあるけど、一応俺の勝ちだった。『勝ったら添い寝してもらうから』とか言われたから怖くてガチで勝ちに行ったよあの時は。そして今になって普通に添い寝する権利を得てるっていうね。
SETSUNAは得意だけど他二つはどうかなって感じ……男友達とやる際は全勝だけどね!
この二人とやる機会は少なかったんだよね。彩葉が二人とプレイしてる時間は大体俺は寝てたし。健康体だからね!
「何回か一緒にやった時は色んな武器使ってたよねそう言えば。もしかして今も?」
「いや、今は違うね」
「固定武器できたの?」
「まぁまぁ、やってからのお楽しみってことで」
「うわ、マジで強者感ある〜」
「何の武器が使えんの!? かっこいいやつ使いたい!」
「それも含めて今から教えるよ」
もうここまで来ると来て当然のコメントになってくるんだよね。それと、武器の話だけど……以前は自分に合う武器を探してたから色んな武器を使う
でもね……それは使わない。一番ぶっ飛ばしたいヤツがいるからね。その武器も密かに対そいつの為だけに練習してるんだ。
配信をやろうと思う以前から練習してるからね……それくらいある意味で憎き相手とも言える。それにヤツと
「そんじゃあ、先にチームを決めておこうか」
「あ、KASSENで2対2にする感じ?」
「そうだね……じゃあ、俺と組んでもらうのは──」
「──そーんなの、モチのロンでかぐやに決まって「ROKAで」……へっ?」
「えっ私!?」
「ちょ、ちょちょちょい待ち! そこはかぐやでしょーが!」
「だってかぐやとやってみたいから……」
「こんな戦闘狂だったっけ??」
「で、でもなんで私……?」
「……えっ、普通に好感度の差だけど」
「今私喧嘩売られてたりする??」
この先どうせかぐやと組むことなんてごまんとあるんだし、単純に綾紬と組んでみたい気持ちが強かったんだよね。
一度くらい本気でやり合ってみたいとは思っていたし……諌山とも。普段から彼氏から愚痴を聞いているし……今俺の脳内にイマジナリー諌山彼氏が『ぶっ飛ばせ!』と話しかけている気すらしてくるよ。任せろ彼氏。俺がお前の貞操の仇を討ってやる。
「じゃあとりあえず基本的な操作を教えようか。その後はチームに分かれてやるってことで」
「えーかぐやトワとチームがいい〜!」
「こういう柔軟性がKASSENでは重要だからね。それにどうせ普段から一緒にいるんだから変わらないよ」
「む〜……じゃあ、かぐやが勝ったらハグ!」
「「「ん??」」」
「ちょ、ちょっとかぐやちゃん? ハグっていうのは……」
「だってトワからはしてくれないもん! それにトワにされてみたかったから……」
「……まぁ、いいか」
「軽っ!」
「お〜アツアツですな〜。私も今度彼氏ボコボコにして一生抱きしめてもらお」
「配信なんだから少しは自重してもらってもいいかな??」
別に普段から抱きつかれてるんだからこちらからしたところで何が変わるのかって話でもあるんだけど……まぁ、純粋だし大丈夫だろ。
単に月に男がいなかったから母性ならぬ父性に飢えているのかもしれないし、彩葉よりも何億倍もマシなお願いだから了承しない選択肢はない。彩葉だったら話は変わってくると思うけどね。
***
「──さて、じゃあどうする? ROKA」
「そ、そうだね〜……と、トワはどうしたい?」
「俺はどのポジションでもいけるよ。飲み込みと適応能力は自慢だからね」
「何かと器用だもんね〜。トワがいろP以外で困ってるとこ見たことないかも」
(……やっぱ本名じゃないと呼び慣れないね)
(分かる〜)
かぐやに基本的な操作を教えて何度かのテストマッチを行い、とうとう TOWA & ROKA VS かぐやまみまみのKASSENが行われようとしていた。
今は作戦会議の段階で話し合っていたところだが、俺は正直最前線でも裏方でも芋りでもどのポジションでもできる。
別にできるだけで勝てるとは言っていないけどね。昔っから飲み込みと適応能力は人一倍あったから家事とか困ることは少なかったからこう言っただけで。
それでも困らされている彩葉はやはり能力値お化けの超人だと再確認できる。
「やっぱりさ……武器使わないスタイルなんて珍しいよね?」
「かもね。でもこれで慣れちゃったから……意外と遠距離も行けるんだよこれ。武器がない代わりに筋力値とか基礎的な能力値が高いからさ、スキルとかは少ないけど……」
「え、遠距離もいけるの?」
「デコピンで石とか弾き飛ばせば凄い速度出るよ」
「脳筋〜。だからどのポジションでもできるんだ」
「そうそう。まさに変幻自在って感じ?」
「かっこい〜」
「でしょ〜」
そうそうこれこれ。綾紬とはこうやって軽いノリで話せるから凄い話してて楽しいんだよね。普段の俺のテンションよりもふわっとした感じになれるから新鮮。
「……まぁ、どうせかぐやは俺を狙って来るだろうし……ROKAはまみまみをお願い」
「おっけ〜」
んで、俺の戦闘スタイルは綾紬のいう通り徒手空拳による全方位対応の
でもこれも結構やりやすくて……自身があるのは当然秘密兵器の方だけどね。
「……ねぇ、私を選んだ理由って他になにかある?」
「他に……? あー……綾紬だから?」
「……え?」
「一番話しやすいから」
「そ、そっか……びっくりした……」
「それよりも、そろそろ始めようか」
「あ、う、うん、そうだね〜」
どうやら同じタイミングでかぐや側の作戦会議も終了たようで、お互いに準備万端になるとゲーム開始のウィンドウが自動的に開かれる。
そこにはゲームモードやプレイヤー名が記載されて──ん?
| MODE : KASSEN | ||
|---|---|---|
Player
TOWA KAGUYA VS ROKA まみまみ いろP | ||
……ん?? なんだ??
何で彩葉の名前があるんだ?
開かれたウィンドウ内に表示されたプレイヤー名の中に一名見覚えのある一番厄介なヤツの名前があるんですがそれは……えっちょっと待って何でいんの??
配信つけてるのは今かぐや側だからコメント欄が見えない……いつの間に参戦して来たんだ??
夏期講習は──あっ終わってる時間だ! 絶対ダッシュで戻って来たなこれ。じゃなきな説明がつかないぞ。
彩葉の名前を見て色々と思考を巡らせていたのも束の間、そんな俺を置いてけぼりにするように開戦の狼煙が今上がってしまった。
ああもう何なんだよ……これ勝たないと不味い気がする。もし今までのやり取りを聞かれていたらかぐや同様勝利の証に何かを要求して来るに違いない。というか人数差があるのも非常に不味いし加勢したのが彩葉なのも厄介だ。
「ROKA。行くよ」
「うん!」
だが今更作戦変更はできない……かぐやと彩葉はどうせ俺を狙って来るだろうが、諌山は恐らくは背後から奇襲を仕掛けて来る。そういう人間だからね。
諌山の相手は綾紬に任せるとして……あの二人をどう相手取るかだな。
底上げされた基礎身体能力を活かして
俺が速すぎるという訳はない筈だが……まさか、三人同時に奇襲でも仕掛けるつもりか?
「ROKA! 後ろから来てない?」
「……今のところは来てない! もしかしたら全員が──」
──その刹那。前方から轟音が響き渡る。
振り返ればそこには──無数のロケットミサイルが俺たちへと牙を剥こうと突き進んで来ていた。
あのロケットミサイルはかぐやのもの──成程。小手調べってところだな。だったら──
すぐさま適当な石ころをかき集め、向かって来るミサイルに対し──投擲。投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲。
ただひたすらに石ころをぶん投げてミサイルを次々に破壊して次の一手を待つ。
諌山はやはり背後か。
「ROKA! 後ろから多分まみまみ来るよ!」
「りょ〜かい!」
前方から巨大なハンマーのブースターを点火し、二人が仲良くハンマーに搭乗して途轍もない速度で俺はと突き進んで来る。そして彩葉が何かをブツブツを呟いているかと思えば──
「勝てばトワからハグ勝てばハグ勝てばハグ勝てばハグ勝てばハグ……」
「おおう……」
かぐや同様勝ったら俺からのハグという条件でやる気に満ち溢れているようだ。勝たないとヤバいな。逆にホールドされて口を奪われてしまいそうな勢いだ。
鬼気迫る表情を浮かべる彩葉とそれに若干引くかぐやが俺のの名前はと綺麗に着地したと思えばすぐに武器を携えて向かって来る。
よし──やるか!
かぐやの武器は小回りがあまり効かない大振りメインの後隙が多い武器──彩葉は逆に小回りや機転が利きやすい双剣もといブーメラン……お互いを補完し合うような関係性か……仲がいいんだか悪いんだか。
だけど今の彩葉は無駄に当てやすい戦闘に不向きなスキン……んじゃあ一人ずつ潰していこう。
「──ほいっ」
「──あべぇっ!!」
懐から隠し持っていた石ころを取り出してデコピンでかぐやの顔面に弾き飛ばすとかぐやの体勢は崩れるが彩葉は全く意に介さず止まらない。少しは心配してあげなよ。
「──勝っったらっ!! ハグ……いや……ディープキ「無理」私も無理」
「無理ってなに??」
「抑えられないの……! 毎朝毎朝誘ってんでしょ!?」
「そりゃあんたのせいだ」
「なんでかぐやのハグはいいの!?」
「ハグならいいって言ってんだ」
「じゃあしてくれるの?」
「勝ったら……ねっ!」
「……っ……分かった」
数十秒の一進一退の攻防戦──彩葉が巧みに双剣を扱うがそれを主に蹴りで弾き返してダンサーかの如く攻撃を俺が捌く。を繰り返す。
やっぱ上手いな彩葉……一対一なら負ける気はしないのに前より上手くなってるからヒヤリとさせられる。だけどその着ぐるみじゃ当てやすいぞ。
彩葉の双剣を蹴り飛ばすと同時に彩葉がそう言うと、ピアノ線のワイヤーで双剣を引き戻して合体させ、かぐやの元へと歩み寄る。
余裕ができた為綾紬の方へ視線を向けると既に予想通り諌山との攻防戦が始まっているようだ。あの二人はそこまで実力差はないから俺はこの二人に専念できる。
「かぐや」
「な、なにぃ?」
「トワとハグ、したいでしょ?」
「えっ、うん?」
「じゃあ協力して。ゼッタイニトワとハグするから」
初めての協力がこんな欲望に塗れたものでいいのか君は。これほんとに勝たないとかぐやはいいとして彩葉に何されるか分かんない。代わりに合鍵没収……なんて言える訳ないし。
さて、どう来る──
「トワ行くよ! トワとのハグ絶対するぞ作戦!!」
「ださいね」
「な、何とでも言えやい! 絶対勝つもん……ねっ!」
「──!」
──かぐやがそう言った瞬間。巨大ハンターからミサイルが射出された──かと思ったら射出されてノータイムで爆発した。
目眩しなのかこれは……自分が効いてちゃ意味ないだろ。なら今の内にこちはも作戦変更させてもらう。
(──綾紬! 聞こえる?)
(──!? あっうん! どったの?)
(作戦変更。いける?)
(おっけ〜。どんな作戦?)
(お互いのプレイスキルの限界攻めるよ──)
──そして作戦の手順を綾紬に手短に説明し、作戦変更の合図と共に俺たちは目の前の敵へと意識を集中させる。
綾紬と俺の息が合わなければ不可能な作戦だが……なんくるないさの精神で行こう。
──そしてそれと同時にかぐやと彩葉も動き出す。こっちもこっちで作戦の変更でもしていたのだろう。あの目眩しは時間稼ぎか。
また何度か轟音が響き渡るが──土煙の中に紛れる為か時間稼ぎか、とりあえず土煙を出して視界を遮断しようといる魂胆は見え見えだ。
そうこうしていると、土煙の中から彩葉が飛び出すように彩葉が現れる。かぐやは……どこだ。
「ねぇトワ。拘束プレイって好き?」
「ノーコメントで」
「そっか。じゃあ縛るね」
「なにが『そっか』なのか意味不明なんですけど」
唐突に何を言い出すかと思えば……ピアノ線で拘束するつもりか。そうはいかないぞ。こちとら一対一なら強い自覚あるんだから。
だけど──かぐやが見当たらない。上でも土煙に紛れている訳でもない……?
彩葉のピアノ線を丁寧に回避しながらかぐやと綾紬に意識を分散させるのは中々に困難……かぐながいないと作戦も機能しないかは面倒だな。
「トワ──かぐや、結構あんたのこと理解してるんだね」
「──? 何を言って──!」
いや違う──まさか──下か!
「もう遅いよトワーーーーっ!!」
気付いた瞬間には時既に遅し──地面の方からモグラの如くブースターを点火させて這い上がって来たかぐやによって足場が豪快に破壊され、平衡感覚が失われる……成程、これが狙いか。
「私ばっかりに意識を向けてくれて、すっごく嬉しい」
そうか──普段から俺が彩葉ばかり警戒しているからこそ、この場でも一番厄介な彩葉に警戒すると踏んだのか……大正解だけど、
そうこう考えている内に彩葉のピアノ線が大蛇の如く身体に絡みつき、すぐさま俺の自由は奪われる──今だ。
まだギリギリ身体が拘束される寸前──その瞬間に俺は身体を反転させて
(綾紬──今!)
(りょーかいっ!)
綾紬との合図を起点に、俺は綾紬と戦闘中の諌山へさっき拾った鋭利な石ころをデコピンで全力で弾き飛ばし──
──それと同時に、綾紬も得物である花札を模したネイルをかぐやと彩葉に向けて全速力で飛ばす。
弾き飛ばした瞬間に俺も拘束されて自由が効かなくなってしまうが、これも狙いの一つ──俺にはまだ得意分野の足が残っている。
「──うへっ!?」
そしてまさか俺が攻撃して来るとは予想していなかった諌山は反応できずに石っころに身体を貫かれ──
「──っ!?」
「──のわぉっ!?」
──同様に完全に意識外であった綾紬のネイル攻撃に反応できなかった二人も身体を切り裂かれる──が、基礎能力値の違いなのか致命傷には至らず、擦り傷程度──だけも無問題。
もう一度身体を瞬時に反転させ、丁度俺を一刀両断もとい粉砕しようとする彩葉とかぐやなら向けて足を剥き出し──スキルを発動させる。
「──らぁっ!」
「──んのぉっ!」
「──いい加減やられてよっ!」
スキル『三段蹴り』──同時に二人の頭、胴体、足に強烈な蹴りを叩き込み、
そして──これで攻撃のフェーズは終わりだと油断し切っていた俺にも意識外からの攻撃が襲ってきた。
「──!?」
それは空中からのミサイル──かぐやがいつの間にか放っていたミサイルだった。気付けば爆発に耐えられなかった俺も体力を全て奪われ──二人と相打ちとなってしまった。
いつだ。いつあのミサイルを放った……?
今じゃない。なら一体──あ。
そうか、あの時──目眩しの爆発の後に響き渡ったあの轟音。あの時に放っていたのか。
俺と相打ちになることを覚悟していたのか……これは、やられたな。
そして、
***
「負けたぁーーーっ!!」
「……」
「そんなコンビネーション聞いてないってば〜」
「コンビネーション……か……」
うん、まぁ……結果としては俺たちの勝利ではあるんだけどいかんせん不完全燃焼感が否めないな。
俺は相打ちだったし、時間がもっとあればきっと学習されて負けていたと思う。かぐやは初回なのにこれ程成長しているから適応能力の天才だと分かるし、次やるなら負けそうだもの。
彩葉さんや……そんなに目に見えて落ち込むのは珍しいな。普段から抱きついている癖にたまにこうやって純情風になるのは何なの?
珍しくかぐやと共闘したと思ったら動機不順だし……でも悪くないコンビだよね。この二人。
かぐやも割と落ち込んどるし……どうしたものかね。別に俺たちが勝ったら何かある訳でもないし、配信映えもしないもんな。
……俺もだいぶ配信者として板についてきたな。余計な思考ばかりしてしまう。
……まぁ、配信関係なくここまで落ち込まれるとこちらが申し訳ない。仕方がないか……
「ほい、お二人さん」
「……なに?」
「?」
「寝る前でいい? ハグするの」
「「!!」」
「も、モチのロン!」
「……うん」
俺もだいぶ絆されてきたな〜……かぐやの方に。かぐやの方に傾くならまだ安心だよね。彩葉も彩葉で純情キャラで売ろうとするのはやめてね。不可能だからね今更。
そんな思考をしていた俺の方に突然綾紬がポンポンと手を触れた。どうしたのかな?
「ねぇ、小日向。お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「うん──何日か後でいいからさ、皆で海、行ってみない?」
「そりゃまた唐突だね……いいけど」
「ほんと? ありがと〜!」
「うん……?」
海……か。久しく行っていなかったから行ってみたさはあるけど、何故にまた綾紬から俺に伝えて来たのか……綾紬のことだから深い意味はないと思うけど。
***
「……あのさ、それなに?」
「は? ハグ待ちに決まってんじゃん」
「だったらその血管浮き出てる腕をしまってくれ。何する気だよ」
「……ナニも」
「イントネーション。じゃないと俺からはやらないぞ」
「チッ……」
「だから本気の舌打ちやめて」
配信を終えて綾紬と諌山とも解散した日の夜。いざご褒美タイムと無理やり洒落込もうとされていた俺の前には血管を浮かび上がらせて今から何かを滅茶苦茶に力強く抱きしめようとする彩葉が鎮座していた。
怖いって。俺抱きしめられて骨でも折られるのか?
最早今更自分からすることに抵抗はないけれど、相手側から何かするってなれば話は別なんだよ。
朝っぱらからパジャマの中に忍び込まれてるんだからね。
「……ねぇ、早く」
「はいよっと……」
何だ考えていたら彩葉が至近距離まで接近して両手を広げて目を閉じていた。いやこの顔はダメでしょ。ハグだけで済まそうとしていない顔だけど……もう引き下がれないんだよね。
かぐやも目を輝かせて待っているし……手短に済ませよう。
「……んっ……」
「……」
そして俺は初めて自ら彩葉を優しく抱きしめた──いつも可憐な雰囲気なんだ遥か彼方に吹き飛ばしている彩葉だが、こういう時になると本当にお淑やかになる。あっ、別に襲おうとしても恥ずかしくてできないよーって意味ではないからね。普通に襲おうとは考えてるよ。絶対。
にしても──相変わらず華奢だな。ちゃんと食べているのは知っているが生活面でも色々と心配事は残る……彩葉の両親から色々託されていると同時に、俺自身も心配しているんだよ。心の底から。
時間にして何分が経過したのだろうか……部屋には静寂が響き渡り、ふとかぐやを見やれば『おー』と言葉を漏らしてまだかまだかと待ち侘びている様子だった。
んじゃ、そろそろ終わりだな……
「……はい、おしまい」
「……」
「どうせ一緒に寝るんでしょ? ここは我慢してよ」
「……分かった。ありがと」
お淑やかな雰囲気を残しつつ彩葉はまだ足りないと言いつつもゆっくりと寝床につく。そしてかぐやがようやくかと言わんばかりに俺の目の前へとダッシュで座る。
「次! かぐや!」
「はいはい……」
「トワ〜! はやく〜!」
「そんな急がなくても俺は逃げないよ」
「トワ〜っ!」
「おっと……俺からするんじゃなかったのか」
逸る気持ちを抑えられなかったのか、結局俺からではなくかぐやから抱きしめられてしまった。
全く可愛らしいこの月の住人は。いいね、本当に純粋無垢という言葉が似合うと何度も言い切れる。このまま変な知識をつけていかないようにしなければ……見ているか彩葉。これこそが純情ってやつだ。
「あったかい……」
「……」
そう言えば、最近かぐやがやけに夜更かししているような気がするんだよね……彩葉がいないというごく僅かな時間でだけど。
俺のノートPCを使って何をしているのか未だに分からない。履歴が消えちゃってるし……変にプログラムとかできるから色々いじくり回してんのかな?
夜更かしするのはいいけど……ほんと色々と危ない情報には手を出さないで欲しいものだね。
「……」
戦闘描写は難しいですほんと……読みづらかったら申し訳ありません!