後、KASSENについて独自設定がめっちゃあるのでご了承を。
「ぐ、ぐふふ……ふひひ……」
「彩葉……目が血走ってるよ……」
「そういうあんたも顔とろけてるけど」
「えっうそぉん!?」
「あんたもほんとは嬉しいくせに……ってかあんたに関しては対して今と変わんないでしょ」
「そ、そうかもしれないけどなんか……なんかテンション上がるじゃん! もっと広いところで雄大にトワと寝られるなんて」
「どこで変な語彙力発揮してんのよ……ま、とりあえずここがいいかもね」
「帝に勝ったら何でも言うこと聞いてくれるんでしょ?」
「そ。だからその権利をふんだんに使わせてもらうまで」
「……その権利トワの権利じゃないの??」
「トワに物欲なんてあると思う?」
「うーん……いやないとは言い切れなくない!? めちゃくちゃ練習してたし……」
「ないの」
「なんちゅう暴論……!」
「でも、ここだって結局勝たないと住めないからね」
「勝てるかな〜……?」
「何弱気になってんのよ。ここがトワとの幸せを掴むた為の第一歩なんだから。それにトワだってトワとは思えない程ガチになってるし、勝てるよ」
「……ねぇ、彩葉は、あの答えで本当に大丈夫なの?」
「何よ今更。私が決めたことなんだから……それに、あんただって満足してくれたでしょ」
「それは彩葉がちゃんと答えを決められたからで……」
「もういいの。芦花が満足してくれるかは分からないけど……これが、私の答えだから」
「……そっか!」
「その答えを最高の状態で伝えられる為にも──絶対勝つよ」
「モチのロンだよ!」
***
「さぁさぁ皆さんお待ちかねの注目の大決戦が今始まろうとしているぞー!! 突如現れた超新星・TOWA &いろP &かぐやにブラックオニキスが宣戦布告!! そしてまさかのTOWAをスカウト!」
「世界中の女性からASMRを求められている私としても心配なTOWAの命運をかけた勝負がここ、ツクヨミ特設スタジアムで始まります! あとオタ公さんは少し離れてください!」
速攻で決定した帝との大決戦は『世紀の竹取合戦』だなんて中々の大看板を背負って俺達の前に現れた。
俺としても開始までのこの三日間は自分で言うのもアレだけど、俺とは思えない程練習や分析を重ねた。
こんなに何かにガチになったのはいつ以来だろうか。受験ぐらいかもしれない──それ程までにこの勝負は俺にとって待ち望んだものなのだ。
特設ツクヨミスタジアムは既に超超満員となっており、お馴染みの忠犬オタ公に加えて、今回は元プロゲーマの『
照琴さんは今度一緒にご飯でも行きたいくらい俺のことを気にかけてくれている。同じ男のよしみであるのに加えて公の場で普通に狙われているからこその心配もあるのだろう。
それはいいけどASMRとか言うのやめて。余計に言われる未来しか見えないから。
だが──何が何でもぶっ飛ばしてやる。
その為に今までだって秘密兵器の練習を怠らなかったのだから。
「まっすぐいってぶっ飛ばす……ダイレクトシュートでぶっ飛ばす……」
「なんか色々違うよそれ」
「なんでダイレクトシュート……? サッカー……?」
「よし潰す」
「ねぇ彩葉何かトワがすごいよ!」
「大丈夫。私も同じくらい燃えてるから」
「作戦の最終確認しとく? どうせめんどい登場の仕方するだろうからそれ無視して」
「いいね」
「二人揃ってすんごい冷たい!」
そして色々無視して作戦の確認をしようとした瞬間に──会場上方の岩盤が爆発する。
『おっと来ました! 黒鬼です!』
砕けた岩の破片達の隙間から、虎バイクに乗った帝が巨大な鬼と戦いながら落ちてきているのが見える。ああはいはい。今日はそういう設定なのね。
余談だが虎バイクとは虎が左右の前足で前輪を、左右の後ろ足で後輪を掴んだ状態で疾走するバイクで、虎の背中に乗って移動する意味分かんない乗り物だよ。
帝は虎バイクに乗ったまま鬼にタックルし、衝撃の直前、虎バイクを蹴って跳躍した。宙に浮いた帝は、棍棒型の武器から刀を抜く。一閃。いや、何度も。目にも止まらぬ速さで鬼の身体が刻まれていく。
次の瞬間、それらは爆ぜて会場の空へとド派手な花火となって打ち上がった。あとに残るのは会場に降り立つ帝と、その後ろからやってきた
彼らの登場と共に会場のボルテージが上がる。相変わらず途轍もない盛り上がり具合だ。
『黒鬼ご来臨ーー!! あとオタ公さんはマジで離れてください!!』
『イヤーキョウモモリアガッテマスネー』
解説席も別の意味でいつもの盛り上がりを見せている。ほんとに今度ご飯にでも誘ってみるとしようか。
そんなことを考えたいた俺達の前に、大歓声を浴びながらブラックオニキスの三人が到着した。
顔見るだけでムカつくぜこんにゃろ……今日は言いたいこと全部言ってやるんだ。
「どーも。対戦受けてくれてありがと」
「うるさい」
「はっ、配信とは随分態度が違うじゃん?」
「自分の過去の行動思い返してみなよこのダボカス」
「ひゅ〜。怖い怖い」
(((((((ダボカスって何だ……?)))))))
最早自分でも驚くくらいに悪口がつらつらと口から溢れ出す。この際止める必要なんてない。例えファンが見てようが
「んで、俺らが勝ったら──ブラックオニキスに、入ってくれんの?」
「いや」
「お前あのメッセージ読んでんだよな??」
『おっといきなり帝VS TOWAの口論が始まってしまったぁー!! しかしTOWAはやけに喧嘩腰ですが何か因縁があるのでしょうか……?』
『満面の笑みで毒を吐くTOWAに流石の帝も混乱してますねー』
観客席から様々な声が飛び交う──『私も罵倒して欲しい』『罵倒ASMRやって!』『帝そこ変われ』『グフフ……みかトワ……新概念の登場だ……』
いやあのさ最後。流石にキモイからやめて。
そんなある意味の黄色い歓声を浴びながらの舞台に降り立っている俺だが、不思議と緊張らしい緊張はしていなかった。
まぁ、配信にも慣れたし言いたいことを言ってやれる絶好の機会だからね。緊張なんてしてちゃ格好が悪いでしょ。
「ま、そっちも負けるつもりはないってカンジ?」
「当たり前でしょ? 負ける前提で勝負を受ける奴がいるのかって話」
「へぇ……マジで全員そのつもりみたいじゃん?」
「舐めないでよ? 油断したら寝首掻かれるよ?」
「かぐや達三人の友情パワーは最強だからね〜! ビビらないようにね〜?」
「お前らも俺らのこと舐めんなよ? こちとら踏んできた場数の数が違ぇんだよ」
ま、相手さんの言う通り修羅場を潜ってきた回数は断然黒鬼に軍配が上がる。だがだからこその油断ってのもある筈だ。
作戦が全て功を奏す訳じゃないのは理解している──だけど、その方が勝負として何倍も燃える。
そんな勝負が始まってしまえば楽しい楽しい掛け合いも出来なくなってしまう。
いやまぁ出来るっちゃ出来るけど、プロゲーマー相手だとこちら側の集中力が試されるからね。俺達も油断はしてられない。
だから今散々コケにしてやろうって話なんだ。
もっと言いたいことあるからね……
「かっこいいこと言うじゃん。いつもそんな感じ?」
「当たり前だろ?
「配信者としてそういう側面は尊敬するけど──成人済みでその俺様キャラ恥ずかしくないの?」
「お前こンの……」
「……フッ……」
「wwwwwwww」
「笑うなお前らも同類だろうが」
「ひゅ〜! トワ言うね〜!」
「まぁ確かにそれはちょっと思ってた……」
お、まさか寡黙面白お兄さんの雷にまでウケるとは思わなかったな。その弟である乃依は馬鹿みたいに爆笑してるけど……まぁ、乙!
後言っとくけどキャラ以前に全員馬鹿だと俺は思ってるからね。こんな価値観でよくもまぁ表立って女誑しのような発言ができるよね。
無意識でやってるのか……それとも狙ってるのか。
どちらでも大分タチ悪いけどね……
「ったく、調子狂うぜ……売られた喧嘩は買ってやらないとな?」
「じゃあ勝ったらお金でも要求しようかな」
「は? ダメに決まってんじゃん」
「トワ、ダメだよ」
「なんで君らが反対するの??」
『……両者身内揉めが発生してますね〜。最早漫才のような掛け合いを帝相手に繰り広げるのは流石としか言いようがありませんね〜』
『TOWAチームは全員が血気盛んですがよっぽと手にしたいものがあるのでしょうか? まぁかぐやいろPの欲しいものなんて容易に想像できますけど』
『あとオタ公さんは離れてください』
いつまで密着してるんだあの解説の二人は……っていうか何で俺は今猛反対された??
俺が欲しいとか帝相手に言っても意味ないことぐらい分かってるだろうし、他に欲しいものがあるのか……? そんな素振り見せていなかった筈だが。
そうこうしている間にもうすぐ開始時間になってしまっていた……まぁ、欲しいものは勝った後に考えるとしよう。
「……トワ。その舐めた態度、後悔させてやるよ」
「舐めた態度はどっちだって話。俺は後悔しないよ。絶対にね」
……ま、そりゃ正体はバレてるか。
***
「……作戦だけど、第一、第二回戦は二人で帝を落とす。んで最終戦で俺が
「一人で勝てるの? 秘密兵器っていうのは一体……?」
「それは最終戦までのお楽しみだよ。ま、エンターテイナーである黒鬼だからこそ通用するものだけど」
「どういうこと?」
「ま、それもお楽しみってことで──それじゃ、勝つよ」
「うん!」
「当たり前」
***
『試合──開始です!』
「頑張ってね」
「トワもね!」
「私達も行くよ!」
開戦の狼煙である法螺貝の音を聞くと同時に俺達はそれぞれの櫓の占拠を目標に全力でスタートダッシュを切る。
モードはSENGOKU──前と同じ説明の仕方をしよう。
勝利条件はフィールドの両端に位置している天守閣の破壊。しかし天守閣の破壊には段階的な手順を踏む必要がある。天守閣それぞれがトップ・ミドル・ボトムの三本のレーンで繋がっており、トップ・ボトムの双方には櫓が設置されており、天守閣の破壊に必要な条件としてこの櫓を占拠するというのがある。
櫓には中ボスの牛鬼が守りを固めており、そいつも撃破しなければならない。
そして次の条件が占拠したことによって相手チームの天守閣に出現するだるま落とし──通称大将落としを天守閣に打ち込むことによって城壁を破壊することだ。これによってラウンド勝利となるが、例外として櫓を二つとも占拠した場合はその時点で占拠したチームの
そしてフィールドには
ゲージ溜めか櫓の占拠を優先するか──俺はどちらも選択してやる。
っと、その前に──黒鬼の出方を確認しよう。
って、これは──
『お〜っと、これは──トライデント! トライデントです!』
トライデント──三つ全てのレーンに一人ずつで侵攻する作戦。しかし複数の敵に対しても個々人で対処する必要があり、多対一の対面でも倒し切る自信がなければ選択できない作戦である。
まぁ、要は舐めプされてる訳だ──ほんと、舐めた態度はどっちだって話だよ。
「俺の相手は──乃依か」
俺のボトムレーンに侵攻して来ているの女装男子こと乃依──黒鬼の中でも屈指の実力を誇るゲーマーだ。
なら、やるべきことは一つだな。
幸いなことに俺の格闘職は総合的な能力値が武器を持たない代わりに高く、櫓までの到達時間は俺の方が短い。
だが、必殺がなければ徒手空拳で遠距離専門家の乃依を相手取らなけばなりないが──それもまた一つの手だ。
以前の綾紬と諌山とのKASSEN同様の手口でもやりようはある。
だが、まずは──必殺ゲージを溜めるとしようか。
乃依はわざわざ俺に近づく必要がない──先に攻撃を喰らえばその時点でゲームオーバー。ヤツの弓の精度はプレイ動画を見まくったが正直言って異常だ。
得意スキルの鈍足矢を一発でも喰らってしまえば鈍足が解ける瞬間にまた鈍足矢を撃ち込まれて体力を削り取られる。
アレを対処するプレイスキルは生憎俺にはない──というか、殆どのゲーマーが不可能だ。
だからまずはゲージを溜める。
全力疾走によって櫓を視認出来る程の距離にまで到達したが──ミニオン共が俺を撃ち落とそうと乃依同様に矢を放ってくる。
崖を飛び越え、空中へと進んだ俺──ミニオン共の攻撃を回避しながら、身体を旋回させて踵落としの体勢へと入る。
そして──脳天直撃。一体のミニオンを蹴りで叩き潰し、踵落としの影響で周辺一帯の地面が割れてミニオン共が空中に投げ出される。
その瞬間に蹴りで落としたミニオンの矢を他のヤツらに向かって全力で投擲し、段々と数を減らしていく。
一、二、三、四──撃破した数は優に10数体を超え、必殺ゲージも完全に溜まり切った。
が、その瞬間──視界の右端から一つの矢が爆速で俺目掛けて飛んでくる。
「──っぶな!」
ギリのところで回避したが──掠ってしまったか。
矢の軌道を逆読みして乃依の居場所を探り、発見──やはり崖の上の岩陰から俺を狙っているみたいだ。
あの距離……俺の筋力値ならば届く。が、当たるとは言っていない──腐ってもプロゲーマー。視界内ならばどんな攻撃だって避けられるだろう。それに俺のプレイのパターンだって奴らには筒抜けだ。
さっき言ったやるべきことだが──簡単だ。
視界内の攻撃を避けられるならば──視界外から攻撃すればいい。
パターンが筒抜けならば──初見の技で応戦すればいい。
それが俺達の作戦なのだから。
隙を突かれない為、一瞬だけ岩陰に隠れて再度マップを展開し、乃依以外の居場所を把握。
全員が中央に集まり始めている──単独でミドルレーンを侵攻中の雷も同様に。
狙いは──
そして初見の技を思いついた俺は岩陰から姿を現し、
(どこ見てんの……? ガラ空きだけど……)
その瞬間に乃依も
だが矢を放ったということに賭けて旋回を加速させ、遠心力を溜める。
俺の格闘職の身体の構造は特殊だ──常人離れした筋力。様々な身体の部位が同様に途轍もない強度を誇っている。
かと言って矢に貫かれない強靭な身体って訳でもないし、刃だってしっかりと通る。
まぁ、それはプレイヤーの武器次第なんだけど。
スポーツなどでは走力・跳躍力を高めるためには『腱を上手く使う』──要は腱の弾性を最大限に引き出すことが求められる。
KASSENにおいても同様──それぞれの職業はそれぞれの身体の構造を持っている。身体の使い方も、現実と変わらない部分だってある。
「まっすぐいってぶっ飛ばす──」
そして俺の格闘職は身体のあらゆる部位の強度が高い──要は身体全身にバネを仕込んでいるようなもの──それは腱も同じ。
腱を限界まで縮小させ、一気に爆発──そして、その瞬間に
「ダイレクトシュートでぶっ飛ばすッッ!!!」
一回転した瞬間に俺の足元へと到達していた乃依の矢を──
「いや、どこに撃って──」
莫大な加速力を得た矢は途轍もない速度で
「──!!」
軌道上にいた雷の腕を──掠った。
「……まぁ、そう一筋縄ではいかないか」
俺の渾身の必殺はプロゲーマーの常人離れした反射神経によってギリギリのところで避けられてしまったが──次こそは、当てる。
距離感は掴めた。それに、
余談
ダイレクトシュートは幼少期のお兄ちゃんとのサッカーの記憶です。
まぁ、某エゴいサッカー漫画の影響もありますけどね……