だーいぶキャラ崩壊の面が強い回ですかどうかご了承を……
それと、前回と今回の話なのですが、『ヤチヨのライブから数日後の学校終わり』から『ライブ翌日の終業式終わり』に時間を変更しています。
映画見返して時系列を調べてみたら翌日だったので……ほんとに勝手な変更でごめんなさい!
余談ですが、この物語の結末自体は一応決まってはいるんですが大分賛否が分かれそうで少し怖いです。
「──かぐや、それ意味分かって言ってんの?」
「も、モチのロン!」
「……ちなみに誰からそれ聞いたの?」
「……ろ、芦花と真実……」
「ほ〜ん……遅くなった理由はそれね?」
突如としてかぐやから発せられたお世辞に間に合わないクソ不埒な言葉──その言葉の出所を掴んだ俺は早速犯人共に真偽を問うことを決めた。
いやほんとに何してくれてんのあの二人???
どういうことだよ……何で綾紬という常識人がいると言うのにかぐやがこんな言葉を覚えて帰ってくる羽目になるんだ。
なら真犯人は諌山か?
いやでもなぁ……二人とも両方に言えることだがそんなことをして何の得になるって話なんだけど。
意外と諌山もまともな所はある節はある……と信じ……られないかもしれない。彼氏の愚痴及び様々なおせっせエピソードせいで印象色々と酷いんだよ。だから相対的に綾紬の評価も爆上がりしているのだ。
──よし、本人に問いただしてみるか。
誰に聞くか問題だが──綾紬にしよう。彼女とは一年の頃よく話していた為色々と話しやすいのだ。それと一番の常識人であるが故の失態という可能性も無きにしも非ずって感じだから……兎にも角にも、聞かないと進まないよねこの話。
そして俺はスマホのメッセージアプリから綾紬へとメッセージを送る──
──すっっごいまともなんだけど。
最早キャラ崩壊してると言っても過言じゃないくらいまとも。いや常識人だとは思っていたけどさ、何かギャルっぽさもあるから……簡潔に纏める能力もあるし聞き役に徹するのも上手いし……ギャルという死語が当てはまるのかどうなんだか分からないや。
思えば綾紬が諌山のハッスルエピソードを聞いてるなら彩葉も聞いてる可能性大じゃないか。不味いな。俺も諌山の彼氏みたいに色んな場所で襲われる可能性が出て来たぞ……怖いから絶対鍵閉めとこ……
と言うか今気付いたけどこのメッセージ一歩間違えればセクハラになりかねないな……価値観が真逆でも男性から女性へのセクハラというものは果たして存在するのだろうか……今度から気をつけないとな。幾ら綾紬がまともだからと言って勢いでペラペラ喋り続けるもんじゃないね。
そんでもって──言葉の意味は理解していないんだな。一先ずはセーフ……もし意味知ってたら彩葉の部屋に強制移住させてたよ割と本気で。
「トワ……?」
「かぐや。とりあえずは俺にも守るものがあるって分かってくれたんだね?」
「うん! だからトワの守りたいものはかぐやも守りたい!」
「うん──だから意味は絶対調べないでね?」
「う、うん……?」
これは本気で念押ししておかねばかぐやが貞操ブレイカー第二号に究極進化してしまうからね。
無知故の好奇心というものは末恐ろしいからちゃんと教育しておかないとすぐに間違った方向に進んでしまう。彩葉はいつの間にか貞操ブレイカーに進化してしまっていた訳なんだけども。
まぁ、とりあえずは綾紬が常識人だということを再確認できてよかった。彼女にはかぐやの進化先を第二号以外のものにしてもらいたいからね。諌山の余計な情報をかぐやに取り込ませない為に今度話し合いでもするか。
「んじゃ、もう寝るか……お風呂沸いてるから入ってきな」
「あ、うん!」
今日はもう夜も更けているし、明日彩葉にライバー計画に参加して欲しいと頼みに行こう。何かしら見返りを要求されるのは目に見えてるが、かぐやの為だ。あからさまに襲おうとしてるような要求以外は受け入れてやろう。
***
「……寝てるかな?」
「んふふ……するなと言われたらしたくなるのが人間だってテレビで見たからね〜。そういうのはフリっていうものらしいし、調べてもいいんだよね?」
「な〜んかトワの圧凄かったけど、大丈夫でしょ!」
「だって『守るべきもの』なんてどちゃくそかっこいいじゃん! トワの部屋にあった漫画とかでもそーいうのあったもんね!」
「さてさてさ〜て……かぐやのまだ知らない世界が今目の前にあるのだ〜!」
「え〜と、『貞操ってなに?』──っと」
「──お、出て来た出て来た!」
「どれどれ〜……──ん、なんだこれ?」
「『特定のパートナー以外と関係を持たない倫理的な規範』──分かりにくっ! なにこれ!?」
「『もっと簡単に説明して』──っと。これならいけるかな?」
「──……へ?」
***
「──んぁ……ふぁ〜……っ〜〜……!」
「もう夏休みかぁ……」
──そう。昨日無事終業式が終わり、俺の高校は夏休みへと突入した。かぐやもそれを見越しての配信計画を立てていたのかは分からないが、タイミングはバッチリだ。
さて、こちらから起こしに行くのは中々に困難で挑戦的な行動だが、かぐやガードで対彩葉戦法は固めてある。
夏休みは休みだからと言って会わない日がある──訳もなく、もし勝手にどこかに出かけて彩葉と会わなければきっともうゲームオーバーになるね。
マジで彩葉と出会ってから会わない日って指で数える程しかないんだよな……怖いわ。
まぁいいけどさ……とりあえずかぐやも起こして朝ご飯と洒落込もう。一日の幕開けとなる食事には俺は毎回気合を入れている。朝ご飯がなければ毎日のように彩葉を相手にする体力がつかないからね。
「かぐや〜。朝ご飯の時間だぞ〜。起きな〜」
「わふっ!?? ああっ、うん……!!」
「──あ、起きてたのか? 珍しいな。いつも俺の顔足蹴にしてるのに」
「た、たまにはね!? かぐやも成長したんだよ!」
「……なんかテンションおかしくない?」
「えええそうかな!?」
「……あ、ノートPCか!」
普段のとは打って変わって明るいというよりかは情緒不安定なテンションを見せるかぐやの背後を見やれば、そこには電源の点いた俺のノートPCが鎮座していた。
かぐやめ、夜更かししていたな。全く……俺がノンレム睡眠になりやすい体質なのを見越した上でやったな。狡猾な奴め。
「ゲームとかで夜更かしするのはいいけどちゃんと寝なよ? 目覚めが悪くなるでしょ」
「あっうん!! ゲームゲームしてたの!」
「ん? そうか……?」
本当にどうした今日のかぐやは。いつものような我の強さが珍しく発揮されていないが。お腹空いてるのか?
「まぁいいけど……彩葉起こしに行くよ。ついでにライバー計画に協力してもらわないとだし」
「う、うん!?」
「やっぱ反応おかしくない??」
何のゲームしたんだ……後で履歴とか確認して不埒なものをプレイしていないかチェックしないとな。
寝起きでまだ気怠さが残る身体を必死に起こし、一抹の不安を抱えながら俺は扉に手をかけ、開けた──
「お・は・よ」
「おざっす……」
ねぇなんでいるの? 俺鍵かけてたよね? その上で開くまで扉の前で出待ちしてたのこの人?
なんか青筋ピキピキさせて滅茶苦茶ブチギレてるご様子で……生憎だけど今回ばかりは俺に心当たりはないから怒られる筋合いは──
「昨日あんたの部屋から聞こえた『貞操』って言葉の発言者に用があるんだけど」
「「……」」
(──かぐや! これは結構ヤバいぞ!)
(──わ、分かってるけど! 怖いよ彩葉!? 助けてトワ!!)
まさかの俺の危機じゃなくてかぐやの危機だった。しかも今回ばかりは本気で怒りが鎮まりそうにない──普段から俺の貞操を狙う彩葉から見れば、かぐやが俺の貞操を奪わんとしていると勘違いしてしまうのは当然と言えば当然だ。
しかしどうやって鎮めようかね。事実として言葉の意味を知らないと説明したところで『だから何? 可能性があるのは変わんないでしょ』と一蹴されるに違いない。
そもそも彩葉はかぐやが貞操という言葉の意味は知らずとも言葉を知っていればいつかは真実に辿り着くと考えているのだろう。俺もそうだもん。
将来的な危険因子は今の内に摘んでおく──それが目的だ。
しかしだな……このままでは幾ら説得してもライバー計画に彩葉が参画してくれる未来が見えないぞ。
かぐやという危険因子にわざわざ成長を促進させるような配信に付き合う彩葉ではないだろう──うん、これは中々追い詰められたね。
かぐやを引き渡してしまえばライバー計画は潰え、かぐやは遥か彼方へグッバイしてしまう。言葉による説明も中々に困難──くっ、俺に残された選択肢は
だがアレは俺が今の今まで懐で温めて来た究極のその場凌ぎの切り札──ここで使っていいものなのか。使ったその場は凌げる──しかし、そこからは地獄が始まるという究極の矛盾カード。
だが彩葉を鎮めるには効果は抜群のカード。高校卒業するまでは温めておきたかったが──
『だってハッピーエンドに二人を連れて行くのがかぐやの夢だから!』
……ああも言われてしまえば引き下がれないよもう。かぐやのライバー計画に俺は全身で浸かっているのだから──使うしかないか!
そして意を決した俺は彩葉に近づき耳元で切り札を発動させる──
「……あ、合鍵作っていいからこの場は何とか抑えてもらえませんかね」
「──!? そ、それって──!!」
「──」
「──あ、あはっ」
「あはっ……なーんだ! トワってばもうウェルカムってことなんだね? もう……何年待ったと思ってるのっ!」
──いやなんだよこの腹立つ反応。
キャラが崩れ去ってるぞ彩葉……後違う。やめてくれウェルカムじゃない。今すぐにゲラウェイしたい気分なんだよ。それに何だよその声色は。今までそんな声発したことあったかあんた。
正直ちょっと気持ち悪いぞ。この価値観の悪いところふんだんに発揮してるなおい。
こんな醜態を家族に見られたらどうするつもりなんだよ。特に母親に顔負けできるのか。こちとらあの人から色々託されてんだよ。それでその結果が子孫大繁栄とか嫌だよ俺。この世界においては最高かもしれないが俺は違うぞ彩葉。
ほら見ろ俺の後ろにいるかぐやを。凄い顔してるぞ。本気で引いてるぞ多分。
余計な感情覚えさせてどうするんだよ。
畜生……俺の高校卒業するまでの平穏生活が……これから絶対毎日夜に忍び込まれるし終わったよほんと。深い睡眠をしやすい自分の体質をこれ程恨んだことはないぞ。滅茶苦茶健康体質なのにさ。
かぐや〜……こうなればもうヤチヨカップ優勝するぐらいじゃないと俺にお釣りが来ないぞ……じゃないと俺は認めないからな〜……ははは……
***
「いいよ。合鍵もらえるならなんでもする」
「あ、ありがとう……?」
「現金な奴だな〜」
──と、いうことで、彩葉が裏方作業をすることになったよ。
俺の合鍵パワーすげー。一瞬で彩葉納得させちゃったよ。
だがまぁまぁ、別に大丈夫。今の俺は
甘いね。君たちは見落としているのだよ。俺の部屋に残された唯一の希望──最後の砦にね!
柄にもなく絶望していたが、よく考えればこれは中々に有益な取引なのだよ。
彩葉が合鍵を用いて幾ら俺の貞操の突破を試みようと、このまだ純粋無垢、いや、このまま純粋無垢に育て上げる予定の月からの来訪者が守ってくれるのだからね!
当初はかぐやに彩葉を押し付けようとしていたが……これは思わぬ収穫だ。かぐやがあの言葉の意味を汲み取らずに守るべきものだという概念だと理解してくれてよかった。諌山には躊躇うけど綾紬には土下座にしに行こう。
最早俺が情緒不安定なのはこの際置いておいて、まだ俺の貞操の危機は訪れていないということになるんだよ。ヤッタネ!
「ね、ねぇトワ……だ、大丈夫なの?」
何て寛大な心の持ち主なんだこの子は。月の住人達よ、かぐやを産んでくれてありがとう。
俺は逸る気持ちを抑えられず思わずかぐやの両手を力強く握りしめてしまう。これは貞操防衛共同戦線の仲間の証だ。
「あぇっ、えっ!?」
「かぐや! 絶対ヤチヨカップ優勝しような!」
「あぅっ、うん……!」
「……」
(大丈夫。落ち着け私……将来の妻になる私がトワのたかだか一瞬の気の迷いに翻弄されていたらどうするの……──だけど、いつまでもそのままではいさせないからね。ちゃんと──ワカラセテアゲナイトネ、トワ……)
彩葉さんのピアノの才能はちゃんとありますよ。
その辺りの話は次回で!