「右!左!あぁ回り込まれてる!」
ユリウスにはペテルギウスの「見えざる手」が見えていない。字面を見ると当然のことだが。
スバルはユリウスに攻撃の方向を教えながら、シックスのことを気にかけていた。
「クソッ・・・まだかヴィルヘルムさん・・・」
銃弾を避け続けるのにも限界がある。それも「見えざる手」をユリウスに教えながらだ。
その時、スバルの足がもつれ、転んでしまった。
(チクショウ!さすがに元引きこもりの体力じゃ限界が・・・)
シックスは狙いを定め、青いエネルギーを充填する。
「終わりだ。反逆者の少年」
「しまっ・・・」
(あれ?痛みが無い・・・死に戻って・・・ない?)
スバルが目を開けると、ヴィルヘルムが剣を構えていた。
「無事ですかな。スバル殿」
「貴様も・・・CODEに反逆するものか!」
ヴィルヘルムは剣を撫で、スバルに肩を貸しながら答える。
「私はそのコードというものは存じませんが・・・」
スバルには一瞬だが確かに見えた。彼の騎士として立つ時の顔を。剣鬼と呼ばれる所以を。
「友人を傷つける者に、容赦はせん!」
そう言った瞬間、ヴィルヘルムはシックスの真後ろに跳び、剣を振り下ろす。
だが、シックスも銃身で剣を受け止め、発射の反動でヴィルヘルムから離れる。
『パニック!』
地面をえぐる程の乱射を、ヴィルヘルムは剣でさばき切る。
「すげぇ・・・」
「スバル殿!急ぎユリウスの援護を!」
「お、おう!」
ユリウスが踏み込める隙を全力で探す。
だが、常に手を数本周りに置いているペテルギウスに中々近づく隙が無い。
攻めあぐねていたその時、弾丸がペテルギウスの足元に着弾する。
「何デスと!」
崖の上にブレイカムバスターを伸ばすノクスがいた。
「よそ見している場合かノクス!」
ファイブの拳がノクスに叩きこまれる。武器にカプセムをはめ込み、エネルギーが流れる。
『ショック!ブレイカムスマッシュ!』
「グッ!」
「ノクス!」
ノクスは体が爆発し、変身が解除される。
生身のまま崖を転がり落ち、スバル達の目の前に倒れこむ。
俺達を助けたからだ。そのせいでアイツの攻撃を・・・
だが、ノクスは真っ直ぐこちらを見つめている。
「往け、少年」
スバルはペテルギウスを睨む。
防御は崩れている。
今なら勝てる。
叫べナツキ・スバル。
「今だァ――――!ユリウス―――!」
「本当、君達には驚かされるよ!」
ユリウスは一瞬でペテルギウスの懐に潜り込む。
「まさ――」
その瞬間、首が空高く吹き飛ぶ。
「お、終わった・・・のか?」
すると、シックスとファイブが攻撃をやめ、近づいてくる。ユリウスたちは警戒し、剣を構える。
「心配するな、もう戦う気はない」
「コイツの生死を確認するだけだ」
「ま、これで死んでないとなると完全に化け物だけどな」
シックスが脈を確認したのか、擬装を解除する。ファイブはそのままで、ペテルギウスの死体を担いでいく。
「ま、待て!」
「なんだ?」
「それ・・・いや、そいつをどうする気だ!そもそも死んでんのか!」
「これは・・・我々の組織で解析する。この世界の力を解明する為にな」
「あまり一般人に喋りすぎるな、ファイブ」
ヴィルヘルム、ユリウス、ノクスが囲みこむ。
「行かせるとお思いですか?」
「それを聞いて行かせる道理はないね」
「CODEは潰す」
武器を向けられても、彼らは一切怯まない。
その時、スバルが驚愕することが起こった。
「な、なんだよコレ!」
シックスとファイブの身体が足元から消えていく。
『クリア!』
ヴィルヘルムが一歩踏み込み剣を振るが、空を切る音しかしなかった。
「クソ!逃げられたぞスバル!」
「どうしますスバル殿・・・スバル殿?」
「また謎の力を・・・莫みたいだ・・・」
「カプセムの力は危険だ。君達も、あまりCODEに関わらない方がいい」
その後の対応は予定通り済んだ。ペテルギウスの生死をちゃんと確認できていないこと以外は。傷ついた兵士をフェリスに治療してもらい、ロズワール邸に戻るために、ヴィルヘルムと共に竜車で帰る・・・
「はずなんだけどさぁ・・・」
スバルは目の前で普通に居座っている男に目を向ける。
「ん?どうした少年」
「どうしたもこうしたもないんですがノクスさん?なんっでアンタがここに居るんだよ!めっちゃ一人で静かに去って、あいつ今どこにいるんだろう、的な雰囲気だっただろうが!」
「何を言っているんだ君は」
「スバル殿!村に着きましたぞ!」
村では、代表者同士の喧嘩が起こっており、スバルが仲裁に向かう。
男の代表者には見覚えがあった。だが、もう一方の女には見覚えが無かった。
「アンタの顔には見覚えがある。でも、そこのレディ?失礼だが、アンタの顔には見覚えが無いぜ?」
女が訳が分からないという顔になる。
「それにそこのアンタ!」
スバルは女の後ろにいるフードの男を指さした。
「顔隠してても、今、ちょっと驚いた素振りしたよな?でも、俺だって疑いたくねぇ。だから、フードを取ってみろよ!」
男は溜め息を吐き、喋りだす。その声はあの森で、ウルガルムに襲われたときに聞いたものだった。
「は~・・・だから俺は離れておくと言ったんだ・・・」
自分を撃ったあの男。俺と同じ世界から来た男。
「まぁいいじゃないデスか・・・我々は魔女様の寵愛を受けているのデスから・・・」
「意味の分からないことを言うな・・・」
『クリア!』
「き、消えた!?」
男の姿がフードを残して完全に消えた。
(ど、どこに・・・)
その瞬間、銃声が響いた。
だが、放たれたその凶弾はスバルには当たらなかった。
「ヴィルヘルムさん!」
「スバル殿・・・ご無事で・・・?」
「流石の剣鬼でも現代技術には勝てないようだな・・・」
空間から声がする。
さっきのクリアとかこの現象は・・・
「透明化か!」
「気付いたところでだ・・・さぁ、始めろ・・・」
女が悍ましい笑い方をし、影が膨らんでいく。
「魔女様の愛を!その身に受けるの・・・デス!」
「やめろ・・・!」
その勢いのまま影が手の形になり、村人の首を絞めあげていく。
「なんでお前がここに居る!」
「ワタシは魔女教大罪司教怠惰担当・・・ペテルギウス・ロマネコンティ、デス!」