スバルは莫がいない間、三度死んでいた。一度は寝ている間の謎の衰弱死。二度目は衰弱からの襲撃に会い、死亡。三度目で襲撃者がレムであると分かった。莫が来たことによって、スバルには”一人で頑張り続けること”に限界が来てしまっていた。完全に信頼できる人間が自分のみであったならば、決して諦めることはなかったであろう。だが外部の、まして前に命を救ってもらった相手なのだ。頼るなというのがおかしな話である。
「俺は今から、あのレムってメイドに殺される。」
「うーん、なるほど・・・一応根拠だけ聞いておいていいかな?」
「あぁ~、信じてもらえるか分からないけど、言うぜ・・・俺は、死にもd・・・」
刹那、スバルの心臓に激痛が奔った。それはスバルが死に戻りのシステムを理解するのと同時だった。
(クソが・・・!そういうことは出来ないようになってるわけね・・・)
「なぁスバル、大丈夫か?」
「あぁ・・・大丈夫だ・・・それで、根拠なんだがな。」
「勘ってのは、どうだ・・・?」
「分かった。それで、なにかパッと思いつく対抗策はあるのか?」
「は!?おいおいおい待てよ莫。なんでそんなに信じてくれるんだ?だって勘だぜ?俺なんかの勘を信じちまうんだ?」
「だって信じてくれって言っただろ。」
スバルは本当に意味が分からなかった。スバルはこの青年に感謝と困惑という奇妙な感情を抱いていた。それもそのはず、莫はいい奴なのである。困っている全員を救うエージェントになるのが莫の夢であり、それを実現するためにはなんだってやる、少しずれた男だからだ。
「あ、あぁ、ありがとう。それで、何の話だったっけ。」
「レムの情報を教えてくれって話だよ。」
「分かった。まずフィジカルだな。常人のそれじゃねぇ。武器はモーニングスター。あと・・・俺のことを、魔女の匂いがするって言ってて、ひどく憎んでる。」
「だいぶ厄介な相手だな。」
厄介で済むのはお前だからだろとは言わないスバルだった。
「よし、俺とねむちゃんはこの屋敷を出て待機する。そして、迷えるスバル君にはこれを授けよう。」
莫が渡したのは、水色のカプセムだった。
「質問です!これはなんですか、莫先生?」
「おほん!このカプセムを回すと・・・」
『プロジェクション!』
「おぉ~!」
「プロジェクションカプセムには、物体を投影する力がある。距離に制限があるから、尾行しながら行く。これで逐一俺に連絡してくれ。後は野となれなんとやら、だ。」
「山となれ、な。感謝するぜ、莫。じゃ、後でな。」
「あぁ、また後で。」
「突然お邪魔しちゃって悪かったね、エミリア。」
「え?!もう帰っちゃうの?ねむも?」
「え~?私はもうちょっと居たいのに~。」
「いや帰ろう。早く帰ろう。絶対に帰ろう。」
「う、うん。分かった。」
その後、スバルは屋敷でいつも通りに過ごしていた。莫のコメント付きで。
ラムとレムの料理を手伝う。
(こんなに慣れ親しんだ雰囲気だってのに・・・彼女と君の間になにがあるんだ?)
(それは俺が魔女教っつー、たぶん悪い宗教連中だな。話の流れから推測すると、それにラムが巻き込まれたっぽい。)
(なるほどね。)
二人と共に食材の買い出しに行く。
(やっぱ楽しそうだな・・・羨ましいくらいだよ。)
(そんなこと言ってられないんだよ。あまりに調子に乗られると、コレ捨てたくなってくるな。)
(ちょっ、ま、待て、分かった。静かにするから!)
ふもとの村で子供たちと遊ぶ。
(・・・やっぱ楽しそうじゃん。)
(一旦黙っててくれないか。お前のワイプ芸のせいで事態の緊張性が薄れる。)
屋敷に戻ってから、スバルはベアトリスの禁書庫へ行く。
「さて、ベア子タイムだ。」
(この子俺知らない。)
(知らなくて良い。後、俺はここでやることがあるんだ。)
「ちょっと俺が呪われてると思うんだけど、確かめてくんない?」
(そうなのか?)
「お前は何を言ってるのよ。」
「ちょっと俺が呪われてると思うんだけど、確かめてくんない?」
(二回言ったぞ?)
「誰が二回言えと言ったかしら・・・待つのよ、どうやら本当のようかしら。術式の気配がするのよ。」
そしてコントさながらの掛け合いをした後、ベアトリスから解呪を受ける。そして、スバルは呪いをかけた人物の正体を知る。
(やばいことになった。今すぐ村に行く必要がある。)
(そのことなんだけど・・・すまない。どうもそっちに行けそうにない。)
(は?お前の力がいるんだよ!早くしないと、村がヤバいことに・・・)
(こっちもそれなりにやばい状況なんだ。悪いがもう少し・・・クソ!おい待て!話しあ・・・)
(何があった!?おい!莫!くそ!村には俺と・・・レムで行くしかないか。)
「お~い!レム~!あ、ラム。レムを見ていないか?」
「変態。」
「流れるような罵倒どうも!それで、レムはどこ行った!?」
「レムならお昼に来たお客様が忘れ物をしたらしく、届けに行きました。」
(ってことは・・・あいつとの通信が切れた原因は!)
「避けられると、一撃で殺して差し上げることが出来なくなってしまうのですが。」
「御気遣いどうも。その勢いのまま見逃してくれると助かるんだけどな。」
「いえ、魔女教の匂いのするあなた方を、姉様やエミリア様に近づける訳にはいきません。」
「俺はその魔女教?ってのとは関係ないんだがな。君に個人的な恨みはないが、大人しく倒される気はないんでね。」
『グラビティ!』
鎖を振り回しながら、レムが問う。
「なら、どうする気ですか?」
「I'm on it.変身!」
『グッドモーニング! ライダー!ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!グラビティ!』
レムは、この相手を一瞬で叩き殺すために、右方向からモーニングスターの先端を、左から水魔法を準備し、回避不能、防御不能、生存不能の攻撃を食らわせた。
ハズだった。
『グラビティ!』
レムの攻撃は、身体は、宙に留まったままだった。そして、謎の斥力で地面にめり込まされてしまった。
「君を傷つけたくはない。だが、なるべくの話だ。この後の君の動き次第では、三日は眠ってもらうことになるかもしれない。」
(これが、エミリア様の言っていた、仮面ライダーと名乗る者の力か・・・)
「舐めるな!魔女教――――!」
そう吠えると、レムの角が青く光る。叫び声を上げながら、レムは大地をしっかりと握りしめ、ゆっくりだが着実にゼッツへと近づいていく。出力を上げると、レムを起点に地面が砕け、亀裂が広がっていく。だが、彼女の眼だけはしっかりとこちらを見据えている。
(力で抑え込めても、思いまでは止められないか。はぁ、やっぱり・・・)
「無傷で解決できそうにない。」
「あれは・・・間違いない。あのクジラだ。」
「どうしますか。スリー・・・スリー?」
「・・・戦闘態勢に入れ。」
瞬時にシックスとファイブは、『ロードインヴォーカー』を装備する。スリーの視線の先にいる異様な集団に、自分たちの命を脅かす危険性があると判断したからである。
「・・・何者だ。」
「いえいえこちらこそ、福音の導きには則っていませんが・・・まぁこの出会いを互いにとって!世界にとって!魔女様にとって!良きものにしてゆこうではありませんか!」
「・・・質問に答えろ。ここに居る目的を言え。」
「あぁ!申し訳ございません!私もあなたの為に答えたい!答えたいのですが!私には使命がある!で!す!が!自身の望みを遂行するために諦めないその姿勢!欲望!思念!とても・・・」
「勤勉ですね・・・」