「お前がここにいるとはな。コードナンバー3。」
「・・・それをお前が知る必要はない。」
「お前は、CODEは、この夢の世界で何をしようとしているんだ。」
「さっき言った通りだ・・・だが、一つだけ教えてやる。この夢はCODEが管理下に置く。」
「そんなこと、させると思うのか!」
莫がドライバーに手をかけた瞬間、スリーの身体が透明になっていく。
『クリア!』
「させてもらうとも。」
スリーの居た場所の輪郭が光の粒子へと変わっていく。
「待て!」
次の瞬間、視界を焼き尽くすような閃光が爆ぜた。
「ク!うわあぁ!」
莫が咄嗟に顔を守ると、スリーの身体が、目が開けられないほど眩しく輝いた。そして、莫が目を開けると、自分の部屋の天井があった。どうやら強制的に目を醒まさせられてしまったようだ。
(くそ、まずいことになったな・・・無事でいてくれ、スバル。)
スリーから逃げたスバルとレムは、ウルガルムから夜の森の中を逃げ続けていた。レムが迫りくるウルガルムを鎖で牽制し、スバルは子供を肩から血を流しながらも抱え走っていた。すると、レムがスバルに背を向け突然立ち止まった。
「急にどうしたレム?早く行かないと、手遅れに・・・」
「先に行ってください。スバル君。」
「は?!」
「私が奴らを足止めするので、先に行ってください。私は莫君の治療のおかげで、万全に動けます。」
「いやいやいや!お前はどうなるんだよ。一緒に逃げるべきだろ!」
「三度は言いませんよ。ほら、早く行かないともうこんなにウルガルムが。」
既にスバルたちはウルガルムに四方を囲まれてしまっていた。そして、スバルはその集団の中に、自分に呪いをかけた犬を見つけた。レムはウルガルムと交戦するが、あまりの数にだんだん動きが鈍くなる。そして、レムの避けようのない距離から、ウルガルムが牙をむいた。
「レム!」
スバルは気付いたら体が動いていた。レムを突き飛ばした後、スバルは沢山のウルガルムから噛みつかれてしまった。
「グアアァァ!逃げろ!レムウゥゥ!」
「スバル君!おのれぇえええ!」
(冷静さを欠いたレムじゃ奴らには勝てない。ウルガルムに抑えられてカプセムも使えない。レム、レム、レム、レム!)
(俺が必ず救ってやる!あいつら全員ぶっ倒して、皆の未来を守ってやる!何やってんだナツキスバル!少しくらい人を幸せにしてみろよ!)
「来いよ・・・俺の名前はナツキスバル。外強中乾にして、天下無双の天邪鬼!」
「よく吠えたな。少年。」
『ブレイカムバスター!ランチャーモード!』
謎の白いコートの男が、銃らしきものでウルガルム達の頭を確実に撃ち抜いた。ウルガルムは一度遠吠えをした後、確実にコートの男に注目した。
「・・・あ、あんた・・・は?」
「話は後だ。お前らは早く帰った方がいい。」
(もう何が何だか訳が分かんねぇ。子供を助けに森に入って、レムと莫が戦って、知らん奴から助けられて・・・いっぱい噛まれたな。痛い。疲れた。眠い・・・)
「スバル君!スバル君!?今すぐエミリア様のところへ!」
「傷ついているようだな。ここは俺に任せて、お前らは先に行け。」
「うるさい分かってる!お前は誰だ!?」
「今はまだ、名乗る時ではない。行け。」
そう言いながら、男は武器を構えてウルガルムを退けていく。そしてレムは村へと走り出す。レムが村に着くと、エミリアが待っていた。
「レム!大変、怪我してるじゃない!スバルは無事なの?」
「スバル君は大けがをしていますが、今すぐ処置をすれば大丈夫です。そして、莫さんではない、謎の男に助けられました。」
「そうなの?なら、その助けてくれた人にも、感謝しないといけないわね。でも、今はスバルを助けましょ!」
スバルはロズワール邸で目を醒ました。傷には違和感があるが、痛みはない。きっとエミリアやレムが治療してくれたのだろう。そして、ベッドの上で寝転がって上を見ているスバルには、一言だけ言いたいことがあった。
「知らない天井だ。」
「えぇっと・・・知ってる天井のはずよ?やっと起きてくれたわね、スバル。」
「起きてからまず聞こえるのがエミリアたんの声のおかげで、ゲンキ100倍だよ。」
「ふふ、相変わらず、スバルはスバルね。それで、レムの処遇についてなんだけど・・・」
少し時間を空けてから、レムが部屋に入ってくるなり、スバルに向かって頭を下げた。
「確証もなく、あなたたちに襲い掛かってしまい、誠に申し訳ございませんでした。どんな罰でも受け入れます。」
「スバルはどう思うの?」
「俺は・・・話がしたい。」
「話?ですか。」
「あぁ、レムがこんなことをしたのにも、絶対理由があるはずだろ?その魔女教?とかの話をしてくれよ。怒ってないのか、と聞かれたら嘘になる。でも、それ以上に知りたいんだ。レムのことを」
「え?スバル君はそれでいいんですか?」
「あぁ、あ、でも嫌ならいいんだ!全然。」
「・・・いえ。話します。レムと姉様が、魔女教に何をされたのかを。」
莫はCODEの動向について調べていた。スリーがあの特殊な夢に対して、何もしないとは思えなかった。
(だれか、あの夢や、CODEの内情について詳しい奴はいないものか・・・そうだ、彼なら。)
「どうしたセブン?」
「ゼロ、あんたに少し聞きたいことがある。スリーが新たに始動しようとしている計画を知ってるか?」
「それを君に教える義務が?」
「あぁ、そうか。ならもう・・・」
「そうか、これは独り言だが・・・彼らは夢を通じて、接触可能な別の現実。異世界を見つけたそうだ。彼らの現地調査により、その世界の住人に、「魔法」、「権能」、「加護」と呼ばれる超人的な力があること、そして、「魔獣」と呼ばれる、特殊能力を持った生命体がいること分かった。これらの情報から、彼らはある一つの可能性を見出した・・・彼らをこの世界に労働力として、拉致することだ。」
「そんなこと・・・!許されていいはずがないだろう!彼らは生きている人間だ!それを、こんな!」
「落ち着けセブン。これはスリーが独断で決めたことだ。私には知らされていなかった。」
「CODEの計画は阻止する。俺が、必ず・・・!」
莫との通話が切れた後、ゼロは指令室でつぶやいた。
「Good luck, Seven.」
「よく言ったぞ。」
「ひぃ!ノクス?!なんであんたがここにいるんだ!?」
「お前も、あの夢を守ると決めたのだな。」
「そうだな。あんたは何か知ってることは無いのか?」
「俺はあの夢のことは何も知らない。だが、一つ忠告だ。あの世界で恐れられているものや、強大な力を持つものが、ナイトメアとしてこの世界に侵入している。気を付けろ。」
「分かった。でも、あんたはなんであの夢を守ろうとするんだ?」
「俺は、CODEの野望を阻む。それだけだ。それに・・・」
「それに?」
「面白い奴に出会えたからな。それともう一つの情報が・・・」
「ブラックケースだ!莫!」
「不法侵入!」
「グアァェアアッ!」
腰の破壊音と、富士見さんの悲鳴とともに、窓から部屋へ、富士見がずり落ちてくる、それを追ってなすかが入ってくる。ノクスは富士見さんを見るなり、陰になって消えた。
「はぁ~。それで、富士見さん?今度はどんなブラックケースなんですか?」
「よくぞ聞いてくれた莫!それはだな・・・知り合いのジャーナリストから、なぞの空飛ぶクジラがいたというタレコミがあったんだ!」
「え?あれってフェイクニュースって言われてませんでしたっけ?」
「いや、それは上層部から何らかの圧力でもみ消されたかららしい。明らかにCODEが関わっているとしか考えられない。」
「それも異世界の物・・・ナイトメアってことか。」
ノクスはザ・レディの部屋にやってきた時、蝶を愛でている彼女がいた。
「あら、予告もなくるなんて珍しいわね。せっかく来たんだから・・・お茶でもどうかしら?」
「長居する気はない。件のあの夢。あんたはどうするつもりだ?ザ・レディ。」
「・・・別に?ただの暇つぶしよ?」
「真面目に答える気がないならそう言え。」
そう吐き捨てると、ノクスは去っていった。そのことを確認すると、ザ・レディはうわごとのように呟いた。
「あの世界なら・・・あの子が幸せになれるかもしれない・・・」
拠点から離れたノクスは、莫に伝えられなかった情報のことを思い出す。
(気を付けろセブン。あちらの世界の脅威が、こちら側に干渉できるということは、我々の世界の脅威も、あちら側に行けるということだ。そのことに、奴が気付いていないことを祈るしかない。)