高度
このイジツにもチンピラやヤクザ者と言った、所謂ならず者は存在している。そしてそのような輩は、航空機に乗り徒党を組んで街や飛行船を襲い、物資や人を攫う。故に空の賊、空賊と呼ばれている。
その空賊が、羽衣丸を狙っている。そしてその行く手を阻む者がいた。コトブキ飛行隊である。
「敵が見えた。零戦、数は12、同高度」
一番最初に空賊を視認したのはケイトだった。
「この辺何回も通ってるけど空賊なんて出なかったよね?」
チカの言う通り、本来ここは空賊の出ない安全な航路として半年前に開拓された航路だ。空賊が出たのは今回が初である。そのためコトブキ飛行隊の面々は皆、違和感を覚えたのである。
「どこからともなくウジャウジャと……クソ空賊共め!」
エンマがその気品ある雰囲気からは想像できないような汚い言葉で空賊を罵った。
「隊長。私はこのまま先行して敵編隊を崩そうと思うが、どうだろうか?」
「単機突入は危険だ」
「問題ない。コイツの足なら振り切れる」
数秒の逡巡の後、レオナはため息をついた。
「いいだろう。ただ無理はするな」
「了解。言われなくても無理はしないさ」
レイは機体を半ロールさせると機首を敵編隊へ向け、降下を始めた。一方、空賊は自分たちより900クーリル頭上から迫る脅威に気が付いていなかった。
そんな彼らの内、最後尾を飛ぶ機の両翼が突如として破断した。レイ機の20mm機関砲弾が命中したのだ。
予想外の攻撃を受けた空賊の編隊は秩序を失い、縦横へと自壊するかのように散開し始めた。
「……よし」
パラシュートが開いたのを見て、レイは呟いた。
「行くぞ。コトブキ飛行隊、一機入魂!」
レオナの号令にコトブキ飛行隊の面々は一斉に返事をし、それぞれ2組に分かれて空賊機を追い始める。
レイは上昇しながらその様子を眺めていた。
──飛び方はまったく違うのに連携が取れている。不思議な連中だ。
そんな感想を抱いた。
ちらりと後方に目をやると、先程からついてきていた零戦が失速していた。レイは直ちに半ロール・反転し、機首が真下を向きつつあった零戦に照準を合わせた。
「上手く逃げろよ」
彼女は曳光弾のみを詰めた12.7mmを短く連射し、正確に燃料タンクを撃ち抜いた。セルフシールを備えていない空賊の零戦は、燃料を漏らしながら高度を落としながら離脱していく。
「あぁ、逃げろ逃げろ……」
そう呟きながら機体を翻し、次の目標へと降下する。
その姿を、訝しげに見る者がいた。
「不可解」
「ケイト、何か言いましたか?」
何も答えず、ケイトは正面へ向き直った。質問者であるエンマは質問を繰り返そうとしたが、3時方向から敵機が迫るのを見てそれを取りやめた。
レオナが戦闘終了の号令を出したのは、それから約5分後のことだった。