過労死ゲーマー、藤吉郎になる。 ~知識チートはあるが、人の心が重すぎる~   作:ブンチョウ

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第20話:「天才」の戦略と「凡人(俺)」の『覇道』

(俺のプライベートが地獄だ…!)

 

 俺は、ねねの「冗談ですよね!?」という涙目と、柴田勝家の「あの汚物を見るような目」に、精神をゴリゴリと削られていた。

 

 そして、その「誤解」の元凶である竹中半兵衛(美男子)は、

 

「いやあ、藤吉郎殿の『情熱(契り)』のおかげで、私も退屈せずに済みます。ゲホッ…」

 

 などと、俺の胃痛を加速させることしか言わない。

 

 俺の「人の心が重い」リストは、今や「恋愛感情」「嫉妬」「憎悪」「(天才の)歪んだ好意」でパンク寸前だった。

 

 だが、歴史(プロジェクト)は待ってくれない。

 

 信長は、俺と半兵衛を手に入れたことで、歴史(『覇道』シナリオ)を無視した「加速」を始めた。

 

「柴田! 佐久間! 貴様ら、あの稲葉山城を落としてみせよ!」

 

「「はっ!」」

 

「木下! 半兵衛! 貴様らは、墨俣で『待機』だ!」

 

「「はっ…(え?)」」

 

 俺と半兵衛は、最前線(墨俣)にいるにも関わらず、力攻めの「主戦力」から外された。

 

 柴田勝家は「フン! やはり殿(との)も、貴様ら『知恵自慢(ハリボテと病人)』だけでは戦にならぬとお分かりなのだ!」と、勝ち誇ったように出陣していった。

 

(なんだ…? 信長の狙いが読めない…)

 

 数日後。

 

 結果は、火を見るより明らかだった。

 

「柴田様、退却! 敵の『伏兵』にやられました!」

 

「佐久間様も! 稲葉山城の『石落とし』で、大損害!」

 

 『覇道』の知識通り、稲葉山城は「難攻不落」だ。力押しで落ちる城ではない。

 

 半兵衛が、隣で静かに茶をすすりながら呟いた。

 

「……愚か」

 

「え?」

 

「柴田殿たちは、『獅子』です。だが、城攻めは『蜘蛛(くも)』の仕事。…彼らでは、あの城は落とせませぬ」

 

 その時、信長からの「使者」が、俺たちの陣に飛び込んできた。

 

「木下殿! 半兵衛殿! 殿(との)がお呼びだ! 本陣まで!」

 

 信長の本陣には、泥と血にまみれた柴田勝家たちが、屈辱の顔で膝をついていた。

 

 信長は、彼らには目もくれず、俺と半兵衛を見た。

 

 その目は「ほら、お前たちの言う通り、こいつら(凡人)は失敗したぞ」と告げていた。

 

(うわ、性格悪…!)

 

(この魔王、俺たちと柴田たちを、わざと『競わせて』やがる!)

 

(俺の「人の心が重い」ゲージが、また振り切れそうだ!)

 

「猿。半兵衛」

 

「「はっ」」

 

「貴様らの『情熱(知恵)』で、あの城を落とせ。あの馬鹿(柴田)どもが失敗した、この『(あと)』にな」

 

 柴田勝家の背中が、憎悪で震えているのが分かった。

 

(ここで俺が手柄を立てたら、俺はこいつに、いつか背中から刺される…!)

 

 半兵衛が、俺の前に一歩出た。

 

殿(との)。……して、木下殿は、この城を『どう』落とすとお考えか、と」

 

(え!? 俺に振るなよ!)

 

 半兵衛が、俺に熱い視線を送ってくる。

 

(『あの夜』の『情熱(狂気)』を、今ここで見せろ!)という目だ!

 

(どうする!?)

 

 俺には『覇道』の知識(チート)がある。

 

(稲葉山城は、裏手の『険しい崖(けわしいがけ)』から登る『隠し通路』がある!)

 

(それを進言すれば、この戦は終わる!)

 

(だが、柴田の前で、また俺が『まぐれ当たり(チート)』を見せたら…!)

 

 俺が、この地獄の板挟みにどう答えるか、信長も、半兵衛も、柴田も、全員が俺の口元に注目している。

 

(言うしかない! ねねを守るために!)

 

 俺が覚悟を決めて、口を開こうとした、その瞬間。

 

 チカッ、と、視界がウィンドウで埋まった。

 

【強制イベント:稲葉山城攻略(加速)】

 

『覇道』知識(隠し通路)を、どう進言するか?

 

A: 「(柴田らを指差し)彼らの『脳筋(力押し)』では無理です! 拙者の『知略88』と半兵衛殿の『知略99』で落とします!」

 

B: 「(信長に)殿(との)! 拙者の『猿』としての『本能』が、『裏』に道があると申しております!」

 

C: 「ウキキ!(高い山城は、(ふもと)の『芋(兵糧)』を焼けば落ちる!)」

 

D: 「(半兵衛の肩を抱き)この男との『契り(情熱)』の力で、城壁など『夜』のうちに乗り越えてみせましょう!」

 

E: 「(地図を指し)『明智(あけち)』殿なら、この城を『(かね)』で落としましょうな…」

 

「(E以外、全部地獄だあああああ!!!)」

 

 俺は心の中で絶叫した。

 

 A(脳筋)は、柴田を煽りすぎて殺される!

 

 C(焼き芋)は、半兵衛に「貴殿の狂気は芋止まりか」と幻滅される!

 

 D(情熱)は、柴田の前でやったら、「男色(だんしょく)」の噂が確定して社会的に死ぬ!

 

(E(明智)は「ヒント」だ…! 今、斎藤家にいる明智を『金』で寝返らせろ、という!)

 

(だが、待て! B(猿の本能)は…! Bは、俺の『知識(裏口)』を、いつもの「馬鹿のフリ(奇行)」でカモフラージュできる、唯一の『正解』じゃないか!?)

 

(E(天才の策)か、B(俺のチート)か!?)

 

 俺が、この二択で必死に悩んでいる、その時だった。

 

「――御屋形様。策は、二つ」

 

 半兵衛が、俺より先に、静かに口を開いた。

 

(え!?)

 

 半兵衛は、俺が(『覇道』知識で)知っている地図の「裏口」と、俺が(ヒントEで)今知った「内部」を、両方指差した。

 

「一つ。この城の『裏手』には、水の手(みずのて)に通じる『隠し通路』がございます。ここを精鋭に突かせます」

 

(なっ!? こいつ、俺の『覇道』知識(B)と全く同じことを!)

 

「二つ。それと同時に、『美濃三人衆(稲葉、安藤、氏家)』に寝返りを打たせます。彼らは今の当主・斎藤龍興(たつおき)に絶望しておりますゆえ」

 

(『金(E)』で落とす! こいつ、俺の『ヒント(E)』まで網羅してる!)

 

 俺は、戦慄した。

 

(こ、こいつ…!)

 

(俺が「強制選択肢」で、必死に『BかEか』と悩んでいた答えを、この天才は、『BもEも両方やる』と言い切った!)

 

 半兵衛は、俺に向かって、ニヤリと笑った。

 

(どうです、藤吉郎殿。貴殿の『情熱(狂気)』に応える『知略』でしょう?)

 

(……完敗だ)

 

 信長は、満足そうに頷いた。

 

「ククク…! 見事だ、半兵衛! まさに蜘蛛の策よ!」

 

「して、その『裏手の精鋭』は、誰がやる?」

 

 半兵衛は、俺を一瞥(いちべつ)した。

 

「……それは、無論。私に『情熱』を示してくださった、この木下藤吉郎殿以外におりますまい」

 

「うおおおおおっ!!」

 

(俺かよおおおおお!)

 

 信長が、腹を抱えて笑った。

 

「よかろう! 猿! 貴様の『本能(B)』と、半兵衛との『契り(D)』の力で、稲葉山の『裏』を取ってこい!」

 

(全部採用された! しかも、最悪の『誤解(男色)』付きで!)

 

 柴田勝家の目が、完全に死んだ。

 

(あの猿…! やはり、天才(半兵衛)と『裏』で事を起こす気だ…!)

 

 俺の「人の心が重い」地獄は、プライベートも、戦場も、すべて「変態」という名の「誤解」によって加速していく。

 

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