遊戯王5D,s 未来へ・・・   作:決闘者イカ焼き

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夕暮れ

 目が…覚めた。自部屋には朱色の光が差し込んでいる。俺は二段ベットを転げ落ちる。

 

「っ!!」

 

 背中には鈍い痛みが走るのをこらえつつ窓を見上げる。輝きを失いつつある太陽は悠然と立ち尽くしていた。

 

「日が…暮れる……」

 

 急がなければ……彼が帰ってくる。寝たはずなのに体は先ほどよりもずっと重い。やっとのことで立ち上がると重い足取りで廊下へ、玄関へ、そして光と闇の狭間へと歩いていく。

 玄関の抜けるとそこは戦場だ。…いや、只の庭だ。俺は朱色の幻覚に酔わされている。コンクリートの壁に寄り掛かる。危険だ、この光は。けれどもまだ俺はここを動くことができない。動くという選択肢は灰色の脳の中には用意されていない。悲しいかな、俺は一種の金縛りの中にいた。

 

 『夕暮れに終わりはない』誰かがそうつぶやいた。俺はなるほどなと納得する。お終わらせないのだ。黄昏は弱者を笑う。人は光を直接は見ることはできない。だから柔らかい光を求めるのだと…

 

 …どうやら来たようだ。俺はデュエルディスクに火を灯す。デッキホルダーから溢れ出るモーメントの虹光がやけに美しく、輝いて見えた。

 

 俺はゆっくりと歩を進める。彼は…既に目の前だ。

 

「お、目が覚めたみてーじゃねーか。」

 

「……」

 

 彼の隣にいる二人の少年のうちの一人が話しかけてくる。しかし、彼には興味はない。目的は不動遊星一人だけだ。話しかけてきた少年は俺に無視されたことが癪に障ったのか、「なんだ、コイツ」と顔をしかめる。

 

「フン、お前が気安く話しかけるからだ。」

 

「何だとっ!」

 

 もう一人の少年は話しかけてきた少年を小馬鹿にする。するとその少年は俺とはまた別の怒りをもう一人の少年にぶつける。

 

「じゃあお前もコイツに話しかけてみろよ。」

 

「いいだろう。」

 

 そういった少年はフン、と鼻を鳴らすと俺の目の前に立ち、俺の事を見下ろした。その目、口調、態度…どれも高圧的な雰囲気を醸し出す少年も色々と俺に向かって話しかけるが耳を傾ける気にもならなかった。

 

「おいっ、聞いているのかっ!」

 

 しびれを切らした少年は俺を胸倉をつかむ。…うざったいなぁ。お前には用は無いんだ。俺は一言「やめろ」とつぶやいた。少年は「なんだと!」激昂するものの、最後の少年、遊星によって止められた。その少年は不完全燃焼気味で何とも言えない表情をしながら手を離す。が、俺はそのままバランスを崩し地面に倒れこんだ。

 

「大丈夫か。」

 

 遊星は俺に手を差し伸べる。が、俺は彼の手を払った。

 

「……オレは門音遊刃。それよりもオレとデュエルしてくれ。オレはあなたが来るのを心待ちにしていたんだ。」

 

「俺と…デュエル?」

 

「遊星やめとけよ。なんかコイツおかしいぜ。」

 

 小さい取り巻きは遊星に口添えをする。大きい取り巻きもそれに同意している様だった。

しかし、遊星は首を振った。

 

「いや、やらせてくれ。」

 

「おい、遊星っ!」

 

「何故だかわからないが彼とはデュエルをしなくてはならない…」

 

 そういうと遊星はデッキを取り出す。そして彼の背後には、星屑をまとった白龍が現れ、俺を俯瞰してくる。

 

「スターダスト……赤き龍の僕…」

 

 …謎の単語が俺の口から大気へと融けていく。もう既に俺の体は俺のものではないのだ。意識だけが残り、後はもう誰かに操られている。しばらくするとその龍は消えていった。

 

「なら…早く始めよう。」

 

 夕暮れはもうすぐ漆黒に染まる。中途半端な俺はこの時間までしか…飲まれる。呑まれてしまう。

 

 俺はディスクを構える。美しい虹色の光は漆黒に染まる。その異様な光景に遊星らは一歩、二歩、後ずさった。

 

「なんだよあいつはっ!」

 

「わからない…だが、デュエルで彼を救いだす。」

 

「救う?アイツはあの闇に操られているのか?」

 

「恐らくは…だから二人は下がっていてくれ。」

 

 そう告げると遊星は勇みよく一歩前へと踏み出した。そして彼もまたデッキをディスクに差し込み、旧式らしい粗末なディスクに火を灯した。

 

「やろうか。」

 

「………」

 

 オレは五枚のカードをデッキから引き抜いた。彼も同じように五枚のカードを引く。そしてデュエルディスクのデッキホルダーのライフポイントゲージが先攻と表示され、同時に〈互換モードによりマスタールールへと設定を変更しました…〉と電子音声が流れた。

 

「マスタールール…先行ドロー…優先権…」

 

 意味もなくつぶやく。いや…意味は…あるのかな。只、俺は既に傍観者でしかない。今、全ての行動は体の中のもう一人の何かによって行われている。しかも、この鉛のように重い体を易々と…

 

ハアッ!

 

 声にならない叫びをあげる。意識が…危ない……食われる?…駄目だ駄目だ。俺のわずかな理性は今にも押し出され、消されそうだ。恐怖を感じる。何故に…いや…当然だ。自分以外の体の支配は不愉快以外の何物でもないのだ。体が拒否をしている。そして記憶が戻ることを恐れているっ!……記憶?そんな密かな思考などよそに俺はデュエルを始める。

 

『デュエル』

 

 短く、彼らはつぶやいた。

 

 

 

「オレの先行、ドロー。」

 

 手札は六枚。この手札なら無理に動くことはないだろう。モンスターを一枚、魔法トラップは二枚といったところだ。

 

「…ターンエンド。」

 さあ、来いよと、オレは笑う…

 

「俺のターン。」

 

 遊刃LP4000 手札3

 遊星LP4000 手札6

 

 彼はカードを引く。そして彼は迷わずに?モンスターを召喚する。

 

「こいっ、『スピード・ウォリアー』!」

 

 出現したのはわずか攻撃力900のローラースケートで滑走する戦士。だが…

 

「バトルッ!いけっスピード・ウォリアーッ!スピード・ウォリアーは召喚ターンのバトルの時、攻撃力が二倍になる!」

 

 彼の命令により戦士のローラーは火花を散らす。そして彼の攻撃力は倍の1800と表示され、その勢いに任せ、俺の伏せたモンスターに回し蹴りを食らわそうとするものの、その蹴りはあっけなく弾き飛ばされた。

 

 ―E・HERO・フォレストマン―

 

 自然で培われた岩壁を身に纏った戦士。その守備力は2000を有する。

 

 攻撃を弾かれたスピード・ウォリアーの右足の装甲はひび割れ、その破片は遊星へと突き刺さる。

 

「ぐはっ!?」

 

 遊星LP4000→3800

 

 激痛に耐えられず、遊星は片膝をつく。彼は何も口にしないが大方、衝撃が実体化した…等と考えているのだろう。これは俺も同意見だ…これが俺の闇の力だというのか?危険すぎる…今すぐにでも止めなければならないが、彼の姿を見て笑う俺の中で、ただ見つめることしかできないのがもどかしく、恐ろしく感じる。

 

「くっ。」

 

「よく、立ち上がったな…もう一人が邪魔をしているとはいえ、大したものだ。」

 

「これくらい…カードを二枚伏せてターンエンド…」  

 

 たかが200ダメージ逆に倒れてもらっては困るのだが、十分に楽しめそうだ。それでこそ伝説の英雄…

 

 英雄?俺は彼の言う言葉に疑問詞を投げかける。もちろん相手にされないが。この…少年が?どう考えてもあの彼が英雄には見えないのだ。まだ、俺と同じぐらいの年齢だろうに、何故そうと決めつけられるのだろう。先程の白き龍の幻影と言い、彼は一体何を知っているんだろうか?

 

 無駄だよ、と笑いカードを一枚引く。

 

 遊刃LP4000 手札4

 遊星LP3800 手札3

 

「フォレストマンの効果で『融合』一枚を手札に。」

 

「………」

 

「ヒーローと言ったら融合だろ?シンクロ何かぁするかよ。」

 

 それくらいは彼も知っているだろうが…まあいい。好いカードを引いた。ここは攻めるか。

 

「行くぞ。俺は手札から『増援』を発動。デッキから『エアーマン』を手札に、そしてそのままエアーマンを召喚。効果発動、デッキから『HERO』を手札に加える。よって俺は『シャドーミスト』を手札に。」 

 

 手札は5枚、エアーマンの効果は単純かつ、強力だ。そのため、俺のデッキには1枚しか積まれていない。許可されていないと言った方が正しいか?まあいい、再利用の方法はいくつもある。

 

「一気に決めるぞ。俺は融合を発動ッ!手札の『エアーマン』と『シャドーミスト』を融合!」

 

 『融合』!それは危険だ。体から流れ込んでくる危険信号。それを裏付けるかのようにディスクの闇が強さを増していた。だが、俺にその発動は止められなかった。足元を中心として魔法陣の様な輪が生まれる。そして二体の戦士は交錯するとグチャグチャと混ぜ合わさる。そして、俺の意識は…その闇の中へ……吸い込まれていく…

 

「融合召喚!!現れよっ『E・HERO・エスクリダオ』!!」

 

 辺りに衝撃波が走る。その風圧に遊星はおろか、二人の取り巻きもその衝撃に吹き飛ばされている。そして、混沌とした物体から生まれたのは闇の戦士…体は闇に包まれ、実体がはっきりとしないのだが、武器であるその両手に持つ爪は禍々しい輝きを放っている。

 

「『シャドーミスト』の効果でボルテックを加え…いくぞっ!……さあっ!遊星!」

 

「くっ!」

 

 これからバトル…と行きたいところだが、バタン!というドアの音と共にあの、女性が現れる。

 

「これは…ちょっと!どうしたんだい!」

 

 マーサは只ならぬ光景を目にして、急いで取り巻きの二人の元へと駆け寄る。二人の少年は彼女の駆け寄ってくる姿を見て、慌てたように彼女へと駆け出し、そのままマーサハウスのドア付近まで連れ戻した。

 

「やめろ、マーサ!あの、遊刃ってヤツ、なんか様子がおかしいんだよ!」

 

「え…あの遊刃がかい?」

 

 マーサは改めてこちらを確認する。そして、信じられないというように目を見開く。

 

「彼は…一体何者なんだろうねぇ……」

 

 オレはオレだ!

 

「バトルだっ!『エスクリダオ』で『スピード・ウォリアー』に攻撃!」

 

 攻撃宣言と共に影の戦士は飛び出す。その手に宿す爪は鈍く輝き、破壊対象を捉えた。先程の攻撃で逆に傷を負ったローラー戦士は巧く回避行動を取ることが出来ない。その事をあざ笑うかのように影の戦士はその刃物を振り下ろす。

 

 ガンッ!

 

 その攻撃はクズ鉄で作られたかかしによって防がれた。そのかかしが身代わりになっている間にローラー戦士は窮地を逃げ出した。影の戦士は不満足ながらも仕方なくオレのフィールドへと戻ってきた。そして度重なる斬撃でボロボロになったかかしは役目を終えたようにばたりと倒れる。

 

「『くず鉄のかかし』の効果、相手モンスターの攻撃を無効にし…そして再びセットされる。」

 

「ちっ、毎ターン使える防御札か…。」

 

 こちらのカードに損失は出ないが、攻撃を毎ターン一回止められるのは後に響いてきて厄介だ。生憎、こちらにかかしを破壊できる札はない。

 

「ターンエンドだ。いつまでもかかしごときで耐えられると思うなよ。」

 

「わかってるさ。俺のターン!」

 

遊刃LP4000 手札4 

遊星LP3800 手札4 

 

 遊星は引いたカードを見て、そのままそのカードを墓地へ送って手札のもう一枚のカードをディスクに読み込ませる。

 

「魔法発動!『ワン・フォー・ワン』。手札のモンスターを墓地に送ることでデッキ又は手札からレベル1のモンスターを特殊召喚できる。俺は『チューニング・サポーター』を特殊召喚!」

 

 遊星が召喚したのは中華鍋をかぶった小さなモンスター。続けて遊星はもう一体のモンスターを繰り出した。

 

「俺は手札から、チューナーモンスター、『ジャンク・シンクロン』を通常召喚。効果で墓地のレベル2以下のモンスターを効果を無効にして守備表示で特殊召喚できる。俺は墓地から『ボルトヘッジホッグ』を特殊召喚!」

 

「チューナー…シンクロ召喚か!」

 

 そうだ!というようにジャンク・シンクロンは腰の紐を引く。そして背中のエンジンがガタガタと唸りを上げ始める。

 

「…チューニング・サポーターはシンクロ素材とするときにレベル2として扱うことができる。俺はレベル2の『チューニング・サポーター』にレベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!」

 

 チューニング・サポーターは宙へと飛びあがると、エンジンが臨界点を超えたジャンク・シンクロンが3本の輪へと変化をする。そして、中華鍋小僧を取り囲むと彼を軸として光の柱が現れる。

 

「集いし星が、新たな力を呼び起こす。光差す道となれ!シンクロ召喚!いでよ、ジャンク・ウォリアー!」

 光の柱を突き破り、赤いゴーグルを光らせて一人の戦士が遊星の前に降り立った。シンクロ…オレはその戦士を睨みつける。

 

「たかが、攻撃力2300ではオレの戦士は倒れないっ!」

 

「まだだ!シンクロ素材となったチューニング・サポーターとジャンク・ウォリアーの効果発動!俺はデッキから1枚ドローし、そして俺のフィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分攻撃力を上昇させる!」

 

「なにっ!!」

 

「俺のフィールドにはレベル2のボルトヘッジホッグとスピード・ウォリアーがいる。よって2体の攻撃力の合計値、1700ポイントをジャンク・ウォリアーに加える!」

 

「攻撃力4000だと!ふざけた真似をっ!」

 

「これが絆の力だ!いけっ、『ジャンク・ウォリアー』!スクラップ・フィスト!」

 

 遊星の攻撃宣言と共に彼の僕は背中のブースターの火を吹かせ、影の戦士へと飛び出す。そのスピードに乗った右の拳を影の戦士は両手の爪で受け止める。単純な実力ではこちらの方が上だ。しかしゴミの戦士は掛け声とともにブースターの出力を上げる。守るべき仲間がいるから…背後では必死な様子で見守る2体の仲間。その力なのか、何なのか、バキッという音と共にゴミの戦士の拳は影の戦士の腹へと入りこんでいた。影の戦士は口から血ならぬ闇を吐き出し、爆散する。その衝撃波にオレは数歩後ずさる。

 

 遊刃LP4000→2900

 

「これが、絆の力だ!」

 

 声高らかな遊星の声はとても不愉快だ。オレは覆いかぶさるような彼の声を振り払う。

 

「何が絆だっ!まだデュエルは終わっちゃいない!リバースカードオープン!『ヒーロー・シグナル』」

 

 赤…いや、既に黒となった空に大きく『H』と書かれたシグナルが浮かび上がる。ヒーロー登場の合図であり、反撃の狼煙でもある。そしてそのシグナルから一人のヒーローが舞い降りてくる。

 

「来いよっ『E・HEROオーシャン』!」

 

 その名の通り、深海の守護者の容姿をした戦士。しかしその攻撃力は目の前の戦士には遠く及ばない。だが、かろうじて後続の攻撃を抑えることができる。

 

「くっ…スピード・ウォリアーを守備表示にして……ターンエンドだ。」

 

 特に何も伏せることは無くターンエンドの宣言をする。打点4000とくず鉄のかかしがいるからか…

 

「これくらい……オレのターン!」

 

 遊刃LP2900 手札5

 遊星LP3800 手札2

 

「オーシャンの効果で墓地のエアーマンを手札に加える。」

 

「またサーチか…」

 

 着々と手札をため込むオレを警戒したような声で彼はつぶやいた。半分正解だ。

 

「オレは再び『エアーマン』を召喚そして効果発動!エアーマンにはもう一つの効果がある。このカード以外のHEROの数だけ相手の魔法・罠を破壊する!俺はかかしを破壊するっ!」

 

 風の戦士は飛び上がり、翼の羽から竜巻を発生させる。そしてその竜巻は遊星のかかしを彼方へと吹き飛ばした。

 

「まだっ!俺は『融合賢者』を発動!デッキから融合を手札に…」

 

「また、融合か…」

 

 彼はまた、身構える。恐怖…ではなさそうだ、面白い。

 

「俺は『融合』を発動する。フィールドの『エアーマン』と手札の『ボルテック』を融合!」

 

 二体の戦士はまた新たに融和し始める。その姿は闇と混ざり合って強く、ただ強く闇のオーラを生み出す。

 

「全てを吹き飛ばせ!『E・HEROGreatTORNADO』!」

 

 辺りに旋風が巻き起こる。戦士を中心に竜巻が起こる。素晴らしき竜巻、目の前の敵を粉砕するべく生まれた暴風。

 

「や……ゆ………こ……………」

 

 遊星は口をせわしく動かしているが、その声は風によって攫われた。だが、そんなことはどうでもいい。彼の場の戦士たちは竜巻の戦士よって体勢を崩して力が半減といったところだろうか。今がチャンスなのだ。俺はぴしりと標的を指差した。

 

「攻撃…」

 

 竜巻が一瞬止まる。その瞬間に竜巻の戦士はゴミの戦士の懐へと飛び込んでいた。至近距離での突風。その風圧にゴミの戦士は人形のように四肢が崩れ去っていき、その残骸はやはり遊星の元へと向かうのだ。

 

「リバースカードッ!『スピリット・フォース』!戦闘ダメージを0にして墓地の守備力1500以下の戦士族のチューナーを手札に加える。俺は『ジャンク・シンクロン』を手札に!」

 

 熱気と共に地面から小さい戦士が遊星を庇う様に現れ、ゴミの残骸を弾き飛ばした。

 

「チッ…」

 

 とっとと…… 舌打ちを鳴らす。ガードが堅いのは百も承知だ。早く彼の悶える様が見たいのだ…なのにアイツはオレの攻撃を二度もかわした!

焦燥

嫉妬

憎悪

恐怖

憤怒

悲哀………「嗚呼っ!」

 

「!?」

 

「『英雄』がなんだっていうんだよっ。」

 

 深海の守人の矛撃。彼はローラー戦士に馬乗りになり首をはねた。びくりと大きく跳ね上がる体。その体は出血することなく破裂した。つまらないなぁ…

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。」

 

 ターンエンド。終わり。

 

「俺のターン!」

 

遊刃LP2900 手札4

遊星LP3800 手札4

 

「俺は、『ジャンク・シンクロン』を召喚。効果で『スピード・ウォリアー』を特殊召喚……」

 

 思考中…如何にオレを倒すのか、罰するのか、考えているんだろう…

 

「遊星…君は愛した者はいるかい?」

 

「!?…」

 

 唐突な質問に彼はやはり、返答に困るような顔をする。

 

「君は…愛する者がいたのかい?」

 

「何の話だ。」

 

「…天使は……空に帰れなくなったんだ。だからオレは橋を造るんだよ。」

 

「………」

 

 訳が分からないという表情だ。オレの愛した天使は空を飛ぶことが出来なくなった。だから翼の代わりの天までの道を生み出さなければならなかった。それがオレの使命であるのだ。

 

「けど…お前は道を邪魔したっ!!」

 

「…何を言っているんだ……」

 

 しらばっくれている様子もなく、ただ、理解不能な存在に未知なる恐怖を感じているようであった。彼も記憶がないらしい。いいよ、デュエルが終わったら君も同じように思い出す去ろう……

 

「……口が過ぎたね…まだ君のターンだった。早く続けてくれよ。」

 

「………」

 

 彼はしばしの硬直の後、すぐに自分のプレイに戻っていった。彼は改めて自分の手札を見る。そして一枚のモンスターと1枚のカードを伏せて、彼は終了を告げた。反撃に移れず、守備を固めた彼をつまらないと見下した。

 

「オレの…ターンっ!」

 

 遊刃LP2900 手札5

 遊星LP3800 手札2

 

「オーシャンの効果でエアーマンを手札に。そして召喚。お前の伏せカードを破壊する。」

 

 再びこの場に現す風の戦士。そして先程と同じように遊星の伏せカードを破壊した。

 

「『リミッター・ブレイク』の効果!このカードが破壊された時、デッキ・手札・墓地から『スピード・ウォリアー』を特殊召喚する。」

 

 再び現れるローラー戦士。よくもまあ大した活躍もせず何度も顔をあらわすなぁ。

 

「…まあいい。すぐに天使の生贄にしてやる。エアーマンでローラーを攻撃。オーシャンでネズミを攻撃っ!」

 

 バンバンと二つの心地よい破壊音。そして最後の一体の伏せモンスターに向かって攻撃宣言を繰り出した。竜巻の戦士はその手から竜巻を伏せモンスターへと放つ。が、そのモンスターが表になった瞬間、その攻撃はバリアの様なモノによって防がれる。

 

「ロードランナーは攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない!」

 

「ちっ…チビ鳥がっ。」

 

 ピンポイントで防ぎやがって。幼鳥を睨みつける。幼鳥はギョッと怖がって遊星の後ろへと隠れてしまった。おいおい、ご主人さまを守らなくて大丈夫かよ。とはいっても既にオレの攻撃可能モンスターはいない。仕方なくバトルを終了させる。

 

「ここは…手札を二枚セット、ターンエンドだ。」

 

 伏せたカードは『異次元トンネル―ミラーゲート―』と『ヒーローバリア』しかし、相手の手札はジャンク・シンクロンともう一枚。そして次のドローで三枚となる。さて…どう来るか……

 

「俺のターン!ドローッ!」

 

遊刃LP2900 手札3

遊星LP3800 手札3

 

「『ジャンク・シンクロン』を召喚!効果によって墓地から『スピード・ウォリアー』を特殊召喚!そしてフィールドにチューナーが存在する場合、墓地から『ボルトヘッジホッグ』を特殊召喚できる。甦れ、『ボルトヘッジホッグ』!」

 

 次々と復活するモンスター。そしてレベル合計は8…

 

「俺はレベル2、『ボルトヘッジホッグ』と『スピード・ウォリアー』、レベル1『ロードランナー』にレベル3『ジャンク・シンクロン』をチューニング!」

 

 また鳴り響くエンジンの音。三体のモンスターが一直線に連なり三本の輪に包まれる。来るか、スターダスト!

 

集いし怒りが忘我の戦士に鬼神を宿す。光さす道となれ!シンクロ召喚!吠えろ、ジャンク・バーサーカー!」

 

 しかし、光の柱から現れたのは破壊者という名を宿すゴミの巨人。龍じゃない…しかもこいつは…悪だ…邪魔だ…天使を殺させない。くそっ。札がない!

 

……パリパリと目の前のモンスターが破壊される。破壊者には心が無いんだろうな。そしてオレは破壊者に殴られた。

 

「ぐぶっ!」

 

遊刃LP2900→300

 

 痛い。だけどヒーローは愛する者のためなら死んでも立ち上がるんだ。仰向けに倒れた体を起こす。オレは悪を倒す。破壊者を、あの狂人を倒さなくては。なあ天使様…

 

 そして遊星は カードを一枚伏せてターンエンドを告げた。

 

 オレは勝つ。このドローはオレの命運がかかっている。デッキに手をかざすと右手にはだんだんと闇、熱が籠ってきて、今か今かと待ち受けている。さあ引こう、天使への捧げものだ。

 

「ドローっ!!」

 

遊刃LP300 手札4

遊星LP3800 手札1

 

 真一文字に目の前を切り裂く。その軌道にははっきりと闇の残滓が見える。そしてちらりと引いたカードに目を通した。

 

「!!」

 

 無地のカード…丁度ここで引くとは……面白い。

 

「オレは『E・HEROザ・ヒート』を召喚する。そして、手札からコイツを発動!」

 

 オレは無地のカードを魔法・罠スロットへと差し込んだ。フィールドに現れたのは、やはり無地のカードである。

 

「何も書かれていないだと…」

 

 遊星も困惑した表情を浮かべている。何にもわかっちゃいない。ここからだ。オレは目の前のカードに向かって手を伸ばす。汚れた手。しかし、神聖な手でもある。その手からは闇が放出され、無地のカードへと注がれている。しかし、やがてバチバチとカードが火花を上げ始める。これはっ!オレは遊星の方を慌てて見る。彼の背後には再び赤き龍が姿を現していたのだ。

 

「邪魔をする気かっ!」

 

 ザ・ヒートは赤き龍へと突進をするものの赤き龍の雄たけびによってオレのフィールドへと叩きつけられる。そして、無地のカードはザ・ヒートの巻き添えとなって破壊された。

 

「おのれぇ…赤き龍…」

 

 こいつはまたしてもオレの邪魔をするっ!ああ天使様!

 

 動揺を隠しきれない。そして赤き龍は再び空へと融けていく。逃げるな!今にでも追いかけたい。しかし、このデュエルを放棄するわけにはいかない。儀式は中断させてはいけない。…そうだ。彼を倒せば赤き龍は姿を現すだろうからその時にまた捕まえればいいじゃないか。

「ハハハ、全く、邪魔は困っちゃうなぁ。」

 

「………」

 

 彼は憐れみの目でこちらを見てくるのでこちらは嘲笑の目で返してやった。さて…

 

「オレは手札から、『融合回収』を発動!墓地の『融合』と『シャドーミスト』を手札に。そして手札から『融合』を発動!『ザ・ヒート』と『シャドーミスト』を融合!」

 

 炎の戦士と影の戦士が交わりあい、黒い炎が辺りにまき散らされる。罪を深く纏った裁きの炎だ…

 

「融合召喚!断罪をっ『E・HEROノヴァ・マスター』!」

 

 召喚される業火の戦士…イラストでは赤い炎を操っているが、この戦士は黒い炎を身に纏っている。彼は手に一つ炎を作り、オレに投げ渡す。おっと…忘れていた。

 

「オレはデッキから『E・HEROアイスエッジ』を手札に。」

 

 オレは破壊者を睨みつける。攻撃力は炎の戦士と互角…アイツは笑っている?笑うのか…破壊衝動に操られた哀れな戦士。やはり生かしちゃあおけない。その余裕ぶっこいた面をつぶさなくちゃ。

 

「『ノヴァ・マスター』で攻撃だっ!消えろサイコパスっ!」

 

 業火の戦士は右手を強く握りしめ、狂人へと突き進む。狂人ももちろん応戦してくる。否、アイツは明らかに目の前にいる獲物に興奮しているのだ。抑えきれない破壊衝動の元に目の前にきた生命体を生かす訳が無いのだ。ぶつかり合う拳。正義と悪との対決、天使と悪魔の戯れ。そりゃあ。正義、天使が勝つよ。当たり前だ。

 

「速攻魔法!『決闘融合‐バトル・フュージョン』!」

 

 拳の狭間から業火が破壊者を包み込んだ。ギャア!狂い叫ぶ。狂人いや、元々狂ってるからアイツの鳴き声だ。野獣の断末魔と共に行き場をなくした炎はもう一つの対象。遊星に襲いかかった。

 

「ああああっ!!」

 

 遊星LP3800→1200

 

 悶えながら倒れこむ彼を冷ややかな目で見つめる。起き上がらない。つまらないとデッキから一枚カードを引いた。

 

「ノヴァ・マスターは破壊したモンスターの魂をオレの手札に変える。」

 

「………っ!」

 

 ピクリと彼の体は反応を見せ、ヨロヨロと立ち上がった。そのタフさには敬意を表すべきだろうか。ああ、このデュエルが終わった後に捧げてやる。遊星は大きく肩を弾ませ、「これで終わりか。」と問いかけてくる。手札を見る。伏せるものはない。後はこの戦士で燃やすだけだ。天使の儀式まであともう少し…

 

「ああ、ターンエンド。」

 

「俺の…ターン!」

 

 遊刃LP300 手札2

 遊星LP1200 手札2

 

 彼は引いたカードを見たとたんにフッと笑う。彼のまわりに光が集まる。思わず目を細める。幻影?光…白……漆黒の中に只一つ灯された光。おい、待てよ。あり得ない。光は天使であって彼ではない。光は天使を選ぶはずだろう。としたらあの光は何だろうか…

 

 

「キュオオオオオオオン!」

 

 声…龍の声。空を覆い尽くす赤き龍!

 

「ああっ!」

 

 思わず叫び声をあげる。恐怖からではあるが、何故か安心感が伴っていた。龍はもう一度、雄叫びを上げると鋭く目を光らせる。すると、遊星が身に纏うオーラがより一層強くなる。彼の呼吸が段々と正常な域へと戻っていく。

 

「なんだ……」

 

 自分で違和感を感じた彼は後ろを振り返る。そして、その龍の姿を見て、驚きの声を上げた。

 

「キュオオオオオオオン!」

 

 再びの雄叫び。彼のデッキが光り始める。赤き龍の導き。それはつまり…

 

「…俺は手札から『ブライ・シンクロン』を召喚!そして、リバースカード『ロスト・スター・ディセント』を発動!墓地に存在する『ジャンク・ウォリアー』特集召喚する。この効果で特集召喚されたモンスターはレベルが一つ下がり、守備力が0になる!」

 

 黄緑を基調にした戦士が星となり墜落した戦士の周りへとまとわりつく。その魂は星屑となりて空へと解き放たれる。

 

「集いし願いが新たに輝く星となる。光指す道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ、スターダストドラゴン!」

 

 キラリ、赤き龍の頭上の星々がそれぞれ信号を送り始める。それを受信した二人の戦士はチューニング行動を取るのだ。そして次元を切り裂いて現れたのは一体の白い天……ドラゴンである。純白の翼からはあふれる光の粒子。いや、光は天使であってあのあの光は偽物だ。

 

「いけっ、スターダスト!シューティング・ソニック!」

 

「キャオオオオオオオン!」

 

 白き龍は口から光の粒子を炎の戦士へと解き放つ。自滅かっ!いや…

 

「ブライ・シンクロンを使用してシンクロ召喚したモンスターの攻撃力は600ポイントアップし、効果を無効にする!」

 

「何っ!」

 

 別に攻撃力変化に驚いたわけではないのだ。体が…動かない。この攻撃が通れば負けると考えると急に体に重みが甦る。何故…オレは……赤き龍がまた何か…いや何も…あの龍は今度は全く何もしてこない。ジッとこちらを俯瞰してくるだけなのだ。…そして、一つの恐ろしい考えに辿り着いた。

 

「オレは…俺が…負けたがってる!?」

 

 ああっ天使様! 何故!儀式はっ!!天使は!まだだよ。まだ続けなくちゃっ。光に飲み込まれる。冷たいけど温かい。慈愛の光。目の前が白に染まっていく。浄化!?いやこれはっ…

 

 目の前に現れる天使。その手には無地のカード。彼女はうすら笑いながらオレを見つめる。そして彼女はとある言葉の形を描いたのだ。

 

『さよなら』

 

 オレにはそう感じられた。さよなら?オレはまだここにいる。なあ天使様。どうしてそんなことを言うんだ。オレはずっと君に寄り添うつもりなのに。無地のカードに…天使に手を伸ばした。しかし、天使はオレが触れるとバラりと仮初の翼が崩れ去り、奈落へと落ちていく。

 

「さよなら…」

 

 …意識が遠のく。

 

 遊刃LP300→0

 




 デュエル、思ったより遅くなってすいません。気長に?次の投稿をお待ちください
(。-人-。)
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