遊戯王5D,s 未来へ・・・   作:決闘者イカ焼き

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無償

 先程、別れた場所で再びクロウと落ち合うと、「どうだ、あったか?」と彼は声をかけてきたので。俺は横に首を振る。そんな質問をしてくるあたり、あちらも見つからなかったのだろうと察しはついた。

 

「すまん、こっちもだ。」

 

 やっぱりなあ……

 

「そんな風は強くは無いから遠くには行ってないと思うんだけどね…まあ、とりあえずさ、マーサのところに行こうよ。朝食もできてるだろうし、色々と話さなくちゃあいけない事もあるだろうしさ。」

 

「……そうだな。」

 

 俺たちは食堂に向かって歩き始める。消化不良そうに後頭部で腕を組みながら歩く彼の背中をを見ながら、天使の触れた胸に手を当てる。

 

 やっぱり夢の通り、あのカードは俺の体の中に入っているのか…?再び湧き上がる疑問。残念ながらこのあたりを探しても無いということは俺の夢が、天使が実在する。という夢が現実に一歩近づいたということであって…

 

 俺は黒いシャツをギュッと掴む。

 

 ……やはり馬鹿馬鹿しい考えだ。きっと、あのカードは俺を可笑しくしていた一種の装置で、あのデュエルで負けたことで消滅したというのが自然だろう。その方が今、体がすごく楽なのにも合点がいく。あの夢は束縛から解放された反動なのだ。けれど ――

 

 ガチャリ

 

 玄関のドアをクロウが開ける。さて、これから色々大変だな……

 

 一旦自問自答は終了。これから俺では無い俺が起こした不祥事の後処理をしなければならない。不服と言ったら不服だが仕方がないこと。そう、仕方がないのだ。実際に今の俺が生きているのはマーサ達が介抱してくれたからだという恩義というのもある。

 

「さあ、早く入れよ遊刃。朝飯が待ってるぜ。」

 

「あ、ああ。そうだね。」

 

 玄関のドアをくぐると早歩きで食堂へと向かった。

 

 

 

 ガチャッ

 

 子供たちの声が漏れ出るドアを開けて食堂へ入る。俺の姿を見た子どもたちの一人が「わぁー遊刃だっ!」と叫ぶと他の子供たちは次々と静まり返る。時が止まる。見られていたのだろうか。きっと怖がらせてしまったんだろうなあ…と思っていたのだが、

 

「昨日のすごかった!マジックなの!?」

「ヒーローカッコイイなあ今度デュエルしてっ!」

「魔法使いみたい!」

 

 子供たちの生の圧力に、俺の時計の秒針はグイグイ押され、再び時間が動き出した。目の前に広がる一面の煌めいた眼差しに圧倒され、思わず背後にいるクロウに何事かと聞いてみるが、クロウは、「あーあ、すっかり人気者だな遊刃は。」と俺の戸惑う様子を見ながら笑っていた。どうやら間近に見ていなかった彼らはアトラクションか何かと思っていたらしい。子ども達の声を聞いてか、調理場からマーサが顔をのぞかせる。

 

「あっ、マーサ。」

 

 騒ぐ子供たちをいなしつつ、マーサの元へと向かう。

 

「体は大丈夫なのかい?」

 

「ええ、昨日と違って大分楽になりました。」

 

 マーサは「そうかい」と安堵した表情を見せると、朝食の準備のために炊事場へと入って行く。俺は彼女に続いて炊事場へと入った。

 

「昨日は――」

 

 今日の朝食当番らしい子供たちが激しく出入りするのを避けつつマーサへと語りかけたが、マーサは俺の耳元で「今は子供たちがいるから、朝食後に話すよ。」と伝えると朝食の席へ着くよう促した。小さく頷き、食堂へともどるとクロウがこっちだと呼びかけてきたのでそこへ向かうと丁寧に彼の隣の一席が開けてある。そして正面には、

 

「――遊星……」

 

「フッ、元気で何よりだ。」

 

 所々絆創膏が貼ってあり、激戦の面影が残る彼は無愛想なりに笑っていた。彼なりの配慮なのだろう。

 

「おかげさまで、憑き物が落ちたみたく大分体も楽になった。ありがとう――」

 

「フン、このオレもお前を運ぶのを手伝ってやったのだ。少しは感謝したらどうだ。」

 

 遊星の左隣、つまりクロウの正面にて、どこから持ってきたのか所謂、社長椅子にドカリと座る青年は片手に持つマグカップで一息ついている。堂々とした立ち振る舞い。如何にもプライドが高そうな……

 

「君は……」

 

「ジャック・アトラスだ二度も言わせるな。」

 

「ああ、ジャックありがとう。」

 

 彼はフン、と喜んでいるのか怒っているのか鼻を鳴らすと、ズズズ…とコーヒーを口に含んだ。…取り合えず席へ着くと。クロウが「アイツは少し面倒くさい奴だからあまり気にすんな。」と耳元でささやく。

 

「なにか言ったか、クロウ?」

 

「いいや、お前悪口なんて言ってねーよ。」

 

「その口ぶり――やはり何かコイツに吹き込んだなっ!」

 

「だぁかーらっ!何も言ってないって。なあ遊刃!?」

 

「あ、ああ……」

 

 突然振られた質問に反射的に声が出る。しかし、その返答を聞いたクロウは「ほら、いったろ!」と鼻を高くする。

 

「なにをっ!――」

 

「やめないか二人とも、みっともないぞ。」

 

 遊星の仲介に何とか矛を収める二人…俺は苦笑いを隠せなかった。悪い人ではないと思うのだが…確かに少し面倒くさいかもしれない。

 

「すまない。」

 

 遊星は小さくため息をつくと俺に謝罪をする。

 

「別に、大丈夫だよ。とりあえずさ、朝食にしよう。昨日の昼以降何も食べていないから正直お腹が空いたんだ。話はマーサが来てからゆっくりとでいいよね。」

 

「そうだな。」

 

 

 

 黙々と朝食は終わり、子供たちは食堂を後にして各々の行動を始める。俺たち四人は徐々に人気が無くなっていく食堂を眺めている。昨日の事について話す……しかしだ、やはり記憶にはそのあたりの事ははっきりと記されていないのだ。天使…の事でも言った方がいいのだろうか。でもあれは夢だから言うだけ無駄な気がする。

 

「……待たせたね。」

 

 十分少々だろうか、区切りをつけたらしいマーサが俺らの席へとやって来ると俺の右隣りの席へと座る。

 

「いえ、時間を割いて頂いて感謝しています。」

 彼女はフフフと笑う――何か面白いことを言ったのだろうか?

 

「……じゃあ、昨日の事について、そしてこれからについて話し合おうかね。」

 

 ――一瞬の沈黙の後、コトリとマグカップを置いたジャックが「それではオレが初めに質問させてもらうぞ。」と言って、俺の瞳を見る。

 

「改めて聞かせてもらうが、過去の記憶、そしてデュエルの記憶は無いんだな?」

 

「……ああ。『融合』を使ってからは、全く記憶に無い。きっと眠らされていたんだと思う。――遊星とデュエルをしていた何者かに。」

 

 ジャックは俺の話を聞くと少し考える素振りを見せた後、「……そうだろうな。」と呟いた。そんな簡単に納得されるモノなのだろうか。少々疑問を感じるのだが、これもマーサの人徳の成した恩恵とでもいうのだろうか。大事にあやかろう。

 

「……黒いオーラを纏っていた遊刃は明らかに今の遊刃とは違った。」

 

「意味不明なことしゃべってたしな。たとえば――『天使』とか?」

 

「っ!!」

 

 天使だって!フラッシュバックが、少女の画が再び脳に甦る。顔表面の毛穴からジワリと脂がにじみ出るのを感じながら狼狽する。

 

「どうした遊刃?」

 

 遊星が俺に声をかける。これは――言うべきか、否か。卑屈な夢を見ていました。などとそんな簡単に打ち明けられるものか?いやあ駄目だ品がない。かと言って無理に誤魔化せるわけでもないだろうに。右隣りの聖女が重く俺の精神にのしかかる。彼女はきっと嘘をついて嘘をついても俺の心を光で貫くのだろう。迫られる思考時間。俺はとっさに口を開く。

 

「『天使』……が夢で死んだ。」

 

「はあ?」

「いや、そのままの通りなんだよクロウ。天使は夢で死んでいたのさ……とある部屋の一室で……」

 

 そしてカードの事も話そうと思ったのだが、残念ながら体がもう充分だろうと許可しなかった。すると俺の話を聞いたクロウが首を傾げる。

 

「うーん、よくわかんねぇ夢だな。」

 

 そうだろうな、するとジャックもつまらんとフンと鼻を鳴らす。

 

「くだらん、たかが夢ではないか、それ位でおびえるな。」

 

「まあまあ、でもきっと何か関係があるのかもしれないよ。夢は記憶を整理する過程で見るものだしね。」とマーサは辛辣なコメントに対しフォローを差し込んだ。

 

「ということは、彼女は、天使はいるのでしょうか?」

 

 マーサは慈愛に満ちた表情で俺の頭を撫でる。

 

「私は天使様は信じてるよ、一応シスターだからね。……それと、夢なんだから深く考えるんじゃないよ。」

 

「マーサ……」

 

「そうだな、それが引き金となってまた暴走されてはたまらんからな。」

 

 周りの皆もうむ、と頷く。そうだろう。夢であるから、彼女は天使でも無いかもしれないし、そもそも彼女と言う存在自体が妄想の可能性だってあるのだろう。まあ、彼女の『助けて』という言葉は心に引っかかるわけだが。

 

「そうだね、天使の事もいずれ解るだろうし、今はそんなことでくよくよしているわけにはいかないしね。」

 

 ――いつになると分かるのだろうか?よくない。よくないな、天使に意固地になり過ぎている。マーサの言うとおり、もっと気楽にならないと。

 

「そうだね、今はアンタが出来ることを考えて生きていくべきだよ。」

 

 マーサはそう語りかけると再び冷静な顔に戻る。さて、話を戻そうか、今俺が出来る事は俺の置かれている状況を理解すること?

 

「では、俺も質問します。俺が放っていたという黒いオーラは一体何なんです?それにカードの実体化とは、俺は何者なんです?」

 

「残念だけど、黒いオーラについては私は答えられないよ。私にもあの力はよくわからないんだ。昔からカードで色々と事件は起っているっていうのは耳にするけど、実際に目にしたのは初めてだからね。」

 

「そうですか……」

 

 流石にマーサでも知らないこともあるんだな。少し残念な気もするがこればかりは仕方がない。と思ったのだか、「――だけど」と言葉を継ぎ足す。

 

「カードの実体化については少し、心当たりがあるんだよ。」

 

「なんですって!?」

 

 俺らはマーサのを驚きの眼差しを向ける。彼女は困った表情をしながら、「――と言ってもホントに浅くだよ。」と言うが、それでもいい。少しでもいいから教えてほしい。

 

「じゃあ、遊刃、デュエルディスクを持って外に出るんだよ。私たちは先に待っているから。」

 

「はあ、何をするんです?デュエルですか?」

 

 しかし、デュエルディスクを持って来いと言われたのは俺一人だ。他にディスクを携えている人はいないようだし、一体何をするのだろうか。

 

「まあ、デュエルでは無いよ。遊刃が本当に私の考えているデュエリストかどうか確かめるだけだよ。」

 

「は、はあ。」

 デュエルでは無い?俺は遊星達にもアイコンタクトを図るが、彼も知らないようで肩をすぼめるだけだった。――とりあえず、彼女の言うとおりにディスクを持ってこなくては。

 

「では……失礼します。」

 

「ああ、待ってるよ。」

 

 一礼して、小走りで食堂を出るとそのまま、俺が起きた部屋へと走り出す。道中で子供達に遭遇し遊ぼうと声を掛けてくるのを「後でな」、とすり抜けつつ。

 

 

 

 バタリ。

 

 ドアを開けるとそこには出たときそのままの部屋が存在していた。俺は籠に入れてある俺の手荷物から黄金色のデュエルディスクを取り出す。生々しい傷跡が日光に照らされギラリと光る。俺の愛機、だったのだろうか?そのディスクを左腕に取り付ける。ガシャリと気持ちのいい音と共にディスクには火が灯る。

 

「頼む……ぞっ!」

 

 壁に掛けられた帽子とジャケットを尻目に急いで玄関へと向かう。

 

 

 

 バタン!

 

「お待たせしましたっ!」

 

 玄関を抜けるとすぐ前方に彼らがいるのが見えた。急いで駆け寄ると「おう、来たな。」と俺に気づいたクロウが声を掛けてきた。それによってマーサは俺へと顔を向けたので彼女の元へと駆け寄る。

 

「来たね遊刃。」

 

「はい、デュエルもしないのにディスクを着けて何するんです?」

 

「まあまあ、ほらここに立っておくれよ。」

 

 マーサはそう慌てなさんなと余裕を持った笑みで俺の手を引いてマーサハウスから少し離れた場所に立たせる。

 

「さ、ここでモンスターを召喚してみるんだ。」

 

「こ、ここでですか?解りました。」 

 

 デッキをディスクに差し込むとモーメントが激しく回りだす。ディスクから漏れ出る光は俺を誘う様に強く輝く。――そんな焦らなくてもっ!

 

 俺はデッキからカードを一枚引く。そしてそのままモンスターゾーンへと設置した。

 

「来てくれっ!『E・HEROボルテック』!」

 

 地面に現れるカードのビジョン、そしてその上には光の粒子によって形成された雷の戦士が立っていた。さて、彼女の言った通りにモンスターを召喚したのだがこれと言って変化は無い。

 

「うん、いいモンスターだねぇ。」

 

「はい、ステータスは低いですけど。で、これからは何を?」

 

 彼女は「そうだねぇ……」と辺りを見渡す。そして彼女はマーサハウスとは反対、外の方向を指差す。

 

「ほら、あそこにドラム缶があるだろ。それに向かって攻撃させてみな。」

 

 彼女の指差した方向には錆がこちらからでも解るくらいに汚れているドラム缶が横たわっている。

 

「あれを…ですか?」

 

 改めて聞き返すと、彼女はそうだよ、と頷く。まさかあのドラム缶を破壊できるとでもいうのだろうか。確かに、昨日のデュエルでは俺は現実に干渉していたらしいのだが、今の俺にもその力が残っているか、彼女の心当たりのある存在か確かめようのしているのだろうか?

 

「リラックスして、あのドラム缶を破壊することだけに集中するんだよ。」

 

「はい。」

 

 大きく深呼吸。視線の先には横たわる缶。あれを破壊する……出来るか?いや、昨日の俺も出来ていたはずなんだから出来るはずだ。ビシリッ!俺は対象物を指先に捉えて攻撃宣言を行う。

 

「いけっ『ボルテック』!あのドラム缶を破棄しろっ!」

 

 ハッ、という掛け声とともに彼は目標に向かって飛び出し、右手に雷の槍を生成させるとその槍をドラム缶へ突き刺した。カンッ!という金属音と共にしっかりと槍はドラム缶に突き刺さっている。そしてその突き刺したドラム缶をそのまま宙へ放り出すと、彼は電撃を飛ばし、ドラム缶を炸裂させた。

 

「す、すごい……」

 

 火花となって降ってくる破片を払いつつ、本当にこの手でカードが実体化させたのだという事にに驚きを隠せなかった。只、只、唖然としていると背中をポンポンと叩かれる。

 

「スゲーじゃねーか。まっさか実体化させるなんてよ。」

 

「ク、クロウ?ああ、まさか実体化するなんて、思いもしなかったし。」

 

 この事実が発覚する前に誰かとデュエルをしていなくてよかったとは思う。それにしてもこれは一体何なのだろうか?マーサの方を見ると、やはりそうだったか。という納得しているような表情を見せた。

 

「闇の力無しでも実体化……マーサ、一体遊刃の力は何なんだ?」

 

「そうです、マーサ。教えてください。」

 

 彼女ははいよ、と返事をした後、手を腰に当ててゆっくりと口を開いた。

 

「遊刃、アンタは『サイコデュエリスト』なのかも、いや、そうなんだろうね。」

 

「サイコデュエリスト?」

 

 俺たち一同は初めて聞くその言葉に首を傾げた。まあ、カードを実体化させられるデュエリストという事なのだろうが。疑問符を掲げる俺らを見て、うむと彼女は頷くと言葉を続ける。

 

「サイコデュエリスト――それは己のサイコパワー、つまりは魔力みたいなものだね。それをカードに注ぎこむことで実体化させる――という風に言われているよ。今の遊刃を見れば解ると思うけどね。」

 

「そうですか……」

 

「実体化など信じられんが、昨日や先程の遊刃を見れば納得せざるを得まい。」

 

「でもよ、昨日のとは違って何か黒いオーラ?見たいな奴は出て無かったぜ?」

 

 黒いオーラ。昨日の話は聞いたものの、一体どんなモノであったのかが気になる。夢が正しければ――いや、あれはノーカンだ。

 

「そうだねぇ、それに遊刃自身も安定していたし、あの黒のオーラは遊星のドラゴンによって消されたんじゃないかい?」

 

「ドラゴン?」

 

 デュエルの結果しか聞いていないために何の事だか全く分からない。―― 一つ間を置いて、遊星が俺の元にやって来た。

 

「遊刃には話し忘れていたな。」

 

 彼はデッキから一枚の白いカードを取り出すと、俺に見せてきた。

 

「スターダスト・ドラゴン?」

 

 イラストに描かれるのは煌めく星屑に包まれた白銀の龍。その美しい姿は神聖な存在であるということを醸し出している。

 

 星屑……俺を眠りから覚ましたのは、闇から光へ引きずり出したのは、そう、星屑であった。

 

「遊刃とデュエルしていた時に、巨大な赤き龍が現れて、このカードを俺に託したんだ。――あの闇を掻き消せ、とな。」

 

 赤き龍……俺の事を知っているのか?謎の存在。不可侵的な次元に身を潜めるその龍には俺の疑問は届かない。

 

「赤き龍は一体何者なんだろうね遊星。」

 

「……少なくとも、敵ではない。」

 

「――ああ、そうだね。きっとクロウの言うことも正しいんだよ。夢で星屑が俺を闇から運び出した、あの天使――幻影から俺を引き離したことは多少実際に起こったことと相違はあるだろうけど本当なのかもしれない。そして、見ていないから解らないけど赤いのもこの白いのも俺と、そして遊星とも関係があるのかも……確証は無いけど。」

 

「フッ。」

 

 面白いことを言う。と思ったのだろうか遊星は口角を釣り上げる。確かにそうだが、昔の俺が遊星や赤き龍、そしてスターダストの事を知っていたなら、絶対に何か関係が無いはずが無い。ただ、彼は昨日初めてそれらの龍達と遇ったのだという。だとすると何故俺は彼の事を知っていたのだろうか。今となっては天使と共に葬り去られた過去である。

 

「きっと、何かはあるのだろんだろーな。」

 

「昨日の遊刃を見ている限りではな……」

 

 クロウやジャックもそれは重々承知らしい。かといって何かするということも俺たちには出来ない。サイコデュエリスト、赤き龍、白き龍、天使――俺に積もる問題は多々あるものの、それらは全て普通では対処できない案件でもあった。

 

「なあに、ゆっくり記憶を思い出していけばいいじゃないか。時間はたっぷりあるんだから。それからでも遅くは無いよ。さっきも言ったようにまずは手短なことから、始めなよ。」

 

 マーサは俺の肩をさする。こんな俺にも居場所を作ってくれた人の言葉に思わず笑みがこぼれる。

 

「はい、マーサ。俺に出来る手短なことですか……やはり、記憶よりもこのサイコパワーを扱える様にしなくちゃあいけませんね。」

 

 俺の返事を聞いたマーサは正解だと相槌を打つ。

 

「そうだね。それがアンタの答えなら尊重するよ。」

 

 笑いかけるマーサと、その隣には遊星も歩み寄ってくる。

 

「俺も出来る限り力を貸そう。」

 

「遊星っ!?」

 

 遊星へ一歩詰め寄る。この力は危険なんだ。下手にかかわったら怪我じゃ済まないんだぞ。目で訴えてみるが、彼は目線をかわすように一度目を閉じる。そして強き意思を持った目でこちらを覗きこむ。

 

「――俺も気になるんだ。この龍に何故選ばれたのか。駄目か?」

 

「いや、俺も手伝ってくれるのは嬉しい、嬉しいんだけど――」

 

「――危険だってか?重々承知だぜ。」

 

 首にのしかかる重石、いやクロウの腕か?ウヘヘと小さく笑う彼には少しばかり薄気味悪さを覚える。

 

「俺だって手伝ってやるぜ。仲間だからな。な、ジャック?」

 

「……まあな。当然の事だ。」

 

「みんな……」

 

 仲間……何故に?昨日会ったばかり、しかも明らかに様子が可笑しかった。なのに彼らは笑って迎えてくれた。そして今度は俺の手伝いなんて……

 

「――どうして?」

 

「さっきも言ったろ?仲間だからだよ。俺たちはみんな手を取り合って生きてきたんだ。マーサハウスにいるんだからお前も仲間だよ。仲間が困っていたら助けるのは当然だろ?」

 

「仲間……」

 

「そうだ。仲間だ遊刃。お前一人では難しい問題でもここにいる皆で力を合わせれば道を切り開けるはずだ。」

 

 ああっ!なんて彼らはなんて素晴らしいのだろうか?余所者の俺を仲間として、家族として迎えてくれようとしている。俺は改めて彼らを見渡す。様々な笑みが俺には向けられていた。俺は深々と彼らに礼をする。

 

「みんな……ありがとう。こんな俺を……」

 

 ――自覚する異常さ、それでも彼らは笑って迎えた。……昔の俺はどうだったのだろう。そして今の状況をどう考えるだろうか、これは俺の望んだことなのだろうか、欲しかったモノだろうか?時間を掛ければ、全ては解るだろうか?解っていいのだろうか?

 

 灰色――新しくコンクリートを敷かれた無表情な世界に新たな彩色を施し始めた、そんな気がした。

 




 GW終わってしまいましたね。楽しくお過ごし出来ましたでしょうか?遊戯王アークⅤもシティ編突入しましたが、パラレル設定っぽいので個人的には安心(?)でしょうか。次のパックはシンクロ強化らしいですが、どんな壊れが来てもゼアル時代からのシンクロいじめで中々環境は取れないでしょうね。しかし、5龍世代の私としては楽しみで仕方がありません。
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