スター・ウォーズ:悪意の継承 作:皇帝大好き
銀河系有数の巨大企業カルテル、トレード・フェデレーション(通商連合)。
アウター・リム(外縁領域)における恒星間輸送の大部分を独占的に取り仕切るこの組織の富と権力は、もはや一つの国家、あるいはそれ以上の怪物に匹敵するほどに肥大化していた。
内縁領域(インナー・リム)やコア・ワールドと違い、外縁領域には安全で安定した主要ハイパースペース・レーンが極端に少ない。そのため、豊かな中心部と貧しい辺境との交流は、常に危険と困難を伴うものであった。この地理的・経済的格差を解消するため、共和国元老院は「自由貿易圏」の制定という策に打って出た。関税を撤廃し、自由で開かれた通商を促すことで、全ての人々に利益と発展をもたらすはずであった――だが、現実は元老院の理想主義者たちが描いた絵空事通りにはならなかった。
自由貿易圏がもたらしたものは、法と秩序の空白である。密輸業者や凶悪な宇宙海賊が跋扈しただけではない。最も恐るべきは、通商連合のような巨大な貿易カルテルがその「自由」を隠れ蓑にし、圧倒的な資金力を背景にして、外縁部を容赦なく搾取し始めたことだった。
彼らは小規模な輸送会社を次々と恫喝して吸収し、自らに逆らう競争相手や、利益率の低い惑星との取引を冷酷に切り捨てた。通商連合は外縁部の星々から生き血をすするように肥え太り続けたが、同時に「通商連合の輸送船が来なければ、辺境の星々は内縁部と貿易することすらできず飢え死にする」という絶対的な依存関係を築き上げていた。
この残酷な事実こそが、通商連合に莫大な富と、元老院に独自の議席すら持つという特権的な力を与えていたのである。そして、その底なしの利権の頂点に君臨するのが、一握りのエリートたちで構成される「理事会」のメンバーたちであった。
ニモーディアンのヌート・ガンレイは、その権力中枢である理事会の一委員に過ぎなかった。
しかし、彼の内面にドロドロと渦巻く果てしない強欲と野心は、その程度の地位で満たされる種類のものではなかった。ニモーディアンという種族は、幼少期から限られた食料を同胞と奪い合う環境で育つため、生来極めて欲深く、猜疑心が強い。だが、そのニモーディアンの中にあっても、ガンレイの狡猾さと底なしの執着心は群を抜いていた。
理事会委員という肩書さえも、彼にとってはゴールではなく、単なる踏み台でしかなかった。
(私はもっと上の存在になれる。いや、なるべきなのだ。あの耄碌した老人どもに、これ以上の富を独占させておくものか)
ガンレイは日頃から他の委員たちを内心で見下し、未だかつて誰もその座に就いたことのない、通商連合の最高権力者――「総督」の座を虎視眈々と狙っていた。
しかし、現実は厳しい。他の老獪な理事会メンバーたちが築き上げた派閥の壁は分厚く、またガンレイのあまりに露骨な上昇志向と強欲さは、多くの委員から強い警戒を招いていた。「あいつに権力を持たせれば、いずれ我々まで食い物にされる」と。その結果、ガンレイは重要な決定から遠ざけられ、自らの不遇と遅々として進まない出世にいら立ちを募らせる日々を送らざるを得なかったのである。
その夜、ガンレイは自身が所有する最高級のプライベート・クルーザーの、贅を尽くしたダイニングルームで一人、不機嫌そうに食事を摂っていた。
磨き上げられた黒曜石のテーブルに並べられているのは、アウター・リムの貧しい惑星から搾取した富で買い集められた、ニモーディアンの味覚を極限まで満たす極上の菌類料理や、希少な深海魚の干物だった。しかし、今のガンレイにはそれがひどく味気なく感じられた。頭の中は、今日の理事会で自分の提案を鼻で笑って却下したライバルたちの、憎たらしい顔で一杯だったからだ。
「ええい、どいつもこいつも……!」
苛立ち紛れに高価なワインを煽った、その時だった。
突如として、部屋を照らしていた柔らかな暖色の照明が不自然に明滅し、鼓膜を圧迫するような低いノイズが室内に響き渡った。
同時に、ダイニングテーブルの中央に設置されている軍用規格のホロプロジェクターが、主人の音声パスワードも網膜認証も経ずに勝手に起動し、青白い光の柱を放ち始めたのである。
「な、何事だ……!?」
ガンレイは不快そうに顔を顰め、手にしていた純銀のフォークを皿に投げ出した。
光の粒子が収束し、テーブルの上に映し出されたのは、等身大のホログラム像だった。頭からすっぽりと深々としたローブのフードを被り、顔の大部分を漆黒の闇に沈めた、正体不明の男の姿。
「誰だ、お前は! 何故この回線に繋がったのだ!?」
見るからに怪しげな闖入者に、ガンレイは即座に激高した。トレード・フェデレーションの理事会メンバーが使用する通信回線は、共和国軍の最高機密レベルに匹敵する多重の暗号化セキュリティが施されている。部外者の傍受など不可能であり、ましてや外部の未知の端末から直接、しかも強制的に割り込んでくるなど、技術的に絶対にあり得ない事態だった。
「私のプライベート回線にどうやって侵入した! セキュリティ・ドロイドは何をしている!? 貴様、自分が誰に無礼を働いているのか分かっているのか!? 私は通商連合の理事――」
「騒ぐな、ヌート・ガンレイ」
悲鳴に近い怒声を浴びせるガンレイの言葉を、ホログラムの男――ダース・シディアスは、氷の刃のような一言で切り捨てた。
その声は決して大きくはなかった。だが、まるで地底の底から這い出してきたかのような、低く、かすれた声音には、ガンレイの心臓を鷲掴みにするような不思議な威圧感が宿っていた。ガンレイは反射的に言葉を喉の奥で詰まらせた。
シディアスは微動だにせず、底知れぬ静寂と、冷徹なまでの余裕を崩さなかった。
「私の通信を追跡する手間をかけるだけ無駄だ。君の船の貧弱なコンピューターで追跡を試みたところで、銀河の果てを堂々巡りするだけに終わる。我々の限られた、有意義な時間が無駄になるだけだ」
「ひ、貧弱だと……? セキュリティを舐めるな! 警備兵を呼べば貴様などすぐに――」
「セキュリティを過信するなと言っているのだ、愚か者。この銀河に、私の目が届かぬ場所など存在しない。君の命など、私の指先一つでいつでも刈り取れるということを理解したまえ」
その言葉には、はったりではない本物の「死の気配」が漂っていた。ガンレイの額にじわりと冷や汗が浮かぶ。それでも、ニモーディアンのプライドが彼を突き動かした。
「……な、なんと無礼な! 私の優雅な食事を邪魔しておいて、何だその言いぐさは!? 無礼者め! 要求があるなら、まずはそのフードを取って顔を見せろ!」
「君は、私の顔を見る特権をまだ勝ち取っていない」
「特権だと? 何様のつもりだ?」
「……私は、シス卿だよ、ガンレイ」
予期せぬ答えに、ガンレイは一時、己の耳を疑い、完全に放心した。
共和国の歴史教育を受けた者であれば、その名を知らぬ者はいない。かつて銀河を恐怖で支配し、ジェダイと凄惨な戦争を繰り広げた暗黒の戦士たち。だが、それは千年も昔に滅び去ったはずの、お伽話の存在だ。それを今、目の前の胡散臭い男が名乗っている。全くもって理解不能だった。
「ダース・シディアス。それが私の名前だ」
「……ダ、ダース・シディアスなどという名前は聞いたことも無い。それにシスは千年前に完全に滅んでいる。何故そのようなカビの生えた歴史の亡霊を、お前は騙っているのだ? 私をからかっているのか?」
「共和国と、あの大仰なジェダイどもは、平和ボケした人々にそのように信じ込ませている。我々が消え去ったとな。だが、我々は決して滅んではいない。何世紀にもわたり大義を秘め、暗黒の影の中で力を蓄えてきた。そして今、君のような『選ばれた者』だけに姿を見せているのだ」
ガンレイは力なく椅子の背にもたれかかった。
理解不能な言葉の数々に、当初の怒りが段々としぼんでゆき、代わりに得体の知れない不気味さが這い上がってくる。この正体不明の男が、途方もない力を持った狂人だということは分かった。だが、目的が未だに全く見えない。
「意味が分からない。何故、私なのだ? これほど厳重なセキュリティを搔い潜る技術があるなら、いくらでも金を盗み出せるだろう。どうして態々、私個人にこのような通信をしてきた?」
「そうだな。では、それこそが本題だ」
フードの奥で、シディアスの口元が三日月の形に歪んだように見えた。
「君の胸の内で赤々と燃え盛るような、その『不満』について話をしようではないか」
「不満だと……?」
ガンレイは、爬虫類のような縦長の瞳孔をきつく細めた。
「影響力のある人物が星の数ほどいる中で、何故私が君を選んだか。それは、君が今の自分の矮小な立場に、激しい不満を抱いているからだ。君は今の地位に少しも満足していない。他の愚鈍な理事会員どもの足元に甘んじ、彼らが食い散らかした残りカスを貪る日々に、心底嫌気がさし、憎悪を募らせているはずだ」
シディアスは、言葉を一つ一つ置くようにして続けた。
「……問いかけよう。ヌート・ガンレイ。もっと上の地位に就きたくはないか?
トレード・フェデレーションの全権を一人で握る、唯一無二の最高権力者……『総督』の座に」
シディアスの言葉は、ガンレイが誰にも打ち明けず、胸の奥底の金庫に厳重に秘めていた傲慢な野望を、寸分の狂いもなく正確に射抜いていた。ガンレイの背筋を、氷の刃でなぞられたような悪寒が走る。
しかし、恐怖と同時に、ニモーディアン特有の強欲さと猜疑心が鎌首をもたげた。
「ふ、不遜な口を叩く男だ。お前は私の何を知っているというのだ? その上、胡散臭いシスを名乗るだけの男に、一体何ができる? 評議会の老人どもは強固な派閥を作っている。奴らを失脚させることがどれほど困難か、政治の裏側も知らぬ分際で! お前に何が出来る!」
恐怖を誤魔化すように声を張り上げ、挑発的な言葉を返すガンレイに対し、シディアスは小さく、ひどく愉しげに笑った。その人間を虫ケラのように見下す低俗な嘲笑が、ガンレイの自尊心をひどく逆撫でする。
「私は君の全てを知っているとも、ガンレイ」
シディアスは、まるで子供に絵本を読み聞かせるような、残酷なほど穏やかな声色に変わった。
「君達ニモーディアンは、幼い頃から限られた菌類の食料を奪わなくてはならん。その残酷な環境により、君達は皆例外なく貪欲な者達ばかりに育つが……君の狡猾さと執念深さは、その中でもずば抜けたものだろう。君が今のその理事の地位に就くために、裏でどれ程の血と汚泥に塗れたことをしてきたか、私は手にとるように知っている」
「な、何を……」
「たとえば……コルサントのクラウス・ビルにおける、密輸業者との密会。クリムゾン・コリダーのフォリン・レストランにおける、ライバル企業を潰すための裏社会との秘密の会合。パックス・ティームとアクス・モーの口座に、毎月横流ししている莫大な裏工作資金。そして極めつけは……あの『ダマスク・ホールディングス』と裏で行った、共和国の法を根底から覆すような秘密の取引。ああ、それから――」
「もう良い! やめろ!!」
ガンレイは椅子から転げ落ちんばかりの勢いで立ち上がり、両手でテーブルを叩きつけた。
次々と口にされるのは、絶対に他人に知られてはならない、発覚すれば即座に元老院の査問委員会にかけられ、終身刑すら免れない致命的な情報の数々だった。なぜ、こんな得体の知れない男が、自らの命綱とも言える秘密をすべて握っているのか。底なしの恐怖が、ガンレイの全身をガタガタと震わせ始めた。
「私を脅すつもりか!? 金か! いくら欲しいのだ!」
「いいや、違うとも、ガンレイ。私は君の安っぽいクレジットになど欠片も興味はない。私はただ、君にもっと上の地位に就いてもらいたいのだ。そしてその後……最高権力者となった君の立場で、我々シスと『協力関係』を持ってもらいたい。ただ、それだけのことだ」
「……一体、どうするつもりなのだ? そこまで情報通なら知っているだろうが、我々ニモーディアンは他の理事からひどく警戒されている。私の味方は少なく、権力基盤は脆い。それをどうやって、私を総督にするというのだ?」
疑心暗鬼に駆られながらも、ガンレイの頭の中ではすでに恐るべき計算が始まっていた。
(これほどの情報を完璧に握り、私の通信を軽々と乗っ取る男だ。もしや、この男であれば本当に何かを為すかもしれない。私が総督の地位に就くという夢が、もしや真実になるのやもしれない……)
恐怖に勝るほどの凄まじい強欲さが、ガンレイの理性を急速に麻痺させていく。
「……それを今ここで論じる必要はない。言葉の証明には、常に『結果』が伴うものだ。君はただ、己の船でグラスでも傾けながら待つだけで良い」
シディアスはゆっくりと、闇の中で首を振った。
「挨拶代わりの手土産として、君の地位を上げてやろう。君の出世を阻み、君を縛る忌まわしい足枷を、私がすべて取り除いてみせる。だが、成功の暁には……君は私に、絶対の忠誠と協力を誓うのだ。よいな?」
「ま、待て! 足枷を取り除くとはどういう――」
ガンレイが問い返そうとした瞬間、シディアスのホログラム像は、一切の警告もなくノイズに包まれ、砂嵐となってプツリと消え去った。
同時に、部屋の照明が元の暖かな明るさに戻り、換気システムの微かなモーター音が再び室内に聞こえ始めた。
静寂を取り戻したダイニングで、ガンレイは大量の冷や汗を拭うことも忘れ、荒い息を吐きながら、誰もいない空間を忌々しげに、そして怯えた目で見つめ直した。
自分がとてつもなく巨大で、邪悪な何かに飲み込まれようとしている。だが、総督の座という甘い果実の誘惑に、彼はすでに抗えなくなっていた。彼の胸中には、消し去ることのできない不気味な予感と、抑えきれない野心の炎が、確かに刻み込まれていたのであった。
ところ変わり、銀河の中心、首都惑星コルサント。
何兆もの命がひしめき合い、絶え間なく飛び交うエア・スピーダーの光の帯が不夜城を彩るこの星にあって、その一室だけは完全に世界から隔絶されていた。分厚い防壁と何重ものジャミング・フィールドによって外界の光と音を完全に遮断した、パルパティーンの私室のさらに奥深く。彼が「シスの暗黒卿」としての真の顔を晒すための、光の届かぬ漆黒の聖域である。
「……ふふ、ふふふふふふ」
ホロプロジェクターのスイッチを切り、青白い光の柱が完全に消滅した薄暗い密室内で、ダース・シディアスはフードの奥から低く、這うような笑い声を漏らした。その顔には、先ほどまでガンレイに向けていた威圧感とは全く異なる、純粋な邪悪さと愉悦の笑みが深く、醜く刻み込まれていた。
「強欲だが、己の力では何も為し得ない。実に臆病で、底の浅い男だ……。あのニモーディアンの矮小な器は、まさに我々の計画の『駒』に相応しい」
シディアスは、銀河の命運を左右する巨大カルテルの理事を鼻で笑った。
ガンレイが抱える不満、肥大化した自己評価、そして他者への猜疑心。それらすべてが、シディアスにとっては盤面を動かすための都合の良い取っ手でしかなかった。恐怖で縛り、野心という名の餌を与えれば、あの男は疑心暗鬼に怯えながらも、自らシスの用意した破滅の道へと喜んで歩を進めるだろう。
シディアスはゆっくりと振り返り、部屋の隅の、さらに深い闇の中へと視線を向けた。
漆黒のドレスを纏い、闇に溶け込むようにして立つ彼女――ダース・ルイナは、先ほどのガンレイとの通信の一部始終を、言葉一つ発することなく静かに見つめていた。
「聞いていたな、我が愛娘よ」
シディアスが歩み寄ると、彼女の漆黒の瞳がゆっくりと主の顔を捉えた。
シディアスは彼女の前に立ち止まると、まるで宝物を慈しむ父親のように、慈愛に満ちた声を響かせた。しかし、その響きの裏には、身の毛もよだつほど冷酷なシスのマスターとしての支配欲が張り付いている。
「さて、ルイナ。あの哀れな男を我々の意のままに操るためには、確固たる『恐怖』と、シスの『力』の証明を彼自身の目で見せてやらねばならん。言葉だけの約束など、あのニモーディアンの疑い深い頭には長く留まらないからな。……手土産を用意するのだ」
ルイナは言葉の続きを予見し僅かに微笑する。その表情は残酷なほど無邪気で可憐だった。
「トレード・フェデレーションの理事会を構成する、他の委員どもだ」
シディアスは、まるで明日の天気を語るかのように淡々と言葉を紡いだ。
「これから我々が実行する『グランド・プラン』において、通商連合には莫大な資金と私設軍隊を提供してもらうことになる。いざという決定的な場面で、あの強欲な老人どもの意思が分裂し、方針がブレるようなことがあれば非常に面倒だ。通商連合は、ガンレイという臆病な首魁のもと、たった一つの意思として我々に絶対服従しなければならない」
シディアスの目が、フードの奥で黄色く、爛々と輝いた。
「そのために……ガンレイ以外の理事会委員を、一人残らず皆殺しにしろ。奴らの派閥も、特権も、その命も、すべてこの銀河から消し去るのだ」
銀河最大規模の企業の首脳陣を、たった一夜にして壊滅させるという、悍ましくも途方もない大量虐殺の命令。
その言葉を聞いた瞬間だった。
絶対零度の静寂に包まれていたルイナの精巧な人形のような顔に、じわりと、極彩色の悪意の炎が灯った。漆黒の瞳の奥底に、抑えきれない歓喜の色が渦を巻いて浮かび上がる。
「ルイナよ。その実行を、お前に任せたい」
狂喜に震え始めた愛弟子の変化を満足げに見下ろし、シディアスは囁いた。
「もちろん、シスが動いたという証拠を僅かでも残すわけにはいかない。お前の正体や、私の存在に繋がるような痕跡を残すことは絶対に許されん。だが――」
シディアスの顔に、底意地の悪い、残酷な笑みが広がる。
「その『誰にも正体を知られない』という条件さえ守れるのであれば、あとは好きにして構わん。ただ毒を盛るような退屈な暗殺ではなく……精々派手で、凄惨な演出をしてやれ。ガンレイがその惨状を見た時、自らの足で立つことすらできなくなるほどの絶望で、あの男の魂を底の底まで冷え上がらせてやるのだ。……行ってくれるか、私の愛しいルイナよ」
「――ええ、勿論。お父様」
ルイナの桜色の唇から、甘く、冷たい鈴の音のような声がこぼれ落ちた。
「お父様の忠実な弟子として……あの欲深いニモーディアンが一生涯、夜も眠れなくなるほどの、飛び切り美しくて残酷な『悪夢』をプレゼントしてあげる」
ルイナはシディアスに向けて、漆黒のドレスの裾を優雅につまみ上げた。