スター・ウォーズ:悪意の継承   作:皇帝大好き

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弟子

 

若者と別れた後、私はまたしばらく退屈な時間を過ごさざるを得なかった。

彼の見せてくれた未来は、今でも実に興味深いものだ。だがそれはまだ未来のことでしかない。未来は常に変動し、ザ・ワンズにすら未来を完全に確定させることは難しい。そして若者の力はまだまだ発展途上だ。強固な意志を持っていても、まだそれを為すだけの力を持ち得ていない。だから私は待つことにした。幸い、彼のことを考える時だけは、あれ程私を苛んでいた飢餓感を抑えることが出来た。彼の紡ぐ破滅の芸術を思い描く時、私は自分の重苦しい義務を忘れることが出来たのだ。

 

彼が弟子入りした男の研究室ならば、彼もいずれやってくるはず。男は何やら私に話しかけ、最終的に何の反応も返さない私の周りを機械で囲み始めたが……彼程度の力で私に害を及ぼすことなど出来ない。研究室はそれなりに居心地の良い空間だった。

殆どの生命が死にかけているお陰で、フォースの音が非常に静かなのだ。男の実験も最初は興味が無かったが、見ているとそれなりに興味が湧いて来た。生命そのものを操る力。それは間違いなくフォースのバランスを崩すものだ。フォースを殺すことは出来なくとも、銀河の秩序そのものは破壊することが出来るだろう。尤も、男にそこまでのことを成すのは不可能だろうとも思っていた。彼はどうやらフォースのバランスを崩した際の、その反動への対策を考えることが出来ない様子だったからだ。自分自身の生命を操るだけであれば、おそらくそう大きな反動を受けることはない。しかし男は周囲の生命をも操ろうとしている。あれではそう先は長くないだろう。何よりあのように力任せにバランスを崩すだけなら、私にも出来る。嘗て見た若者のように、世界を内側から腐らせるような一種の「芸術性」が、この男には無いように思えた。

 

私はただ落ち着く空間で、モーティスでは出来なかったことをしていた。ここなら、自分が『フォースの死』としてどう在るべきか、じっくりと考察する時間がいくらでもある。

……だが。

 

「私は一体、何のために生まれてきたのかしら?」

 

結局いくら考えても、答えは出ることが無かった。

自分の口から零れ落ちた声は、アボラ島の冷え切った研究室の空気に触れた瞬間、何の残響も残さずに消えた。

目の前の若者……シーヴ・パルパティーン、またの名をダース・シディアスと名乗るようになった存在が、私の独白を黙って聞いていた。

言わなければよかった、と私は思った。

膝を抱え、磁場シールドの檻の中で宙に浮いたまま、私はただ虚空を見つめ続ける。

 

答えなどどこにも在りはしなかった。

私はフォースの死を司る化身。ライトサイドの光でも、ダークサイドの闇でもない、すべてを均一なゼロへと還元する完全なる『無』。けれど、私のこの華奢な肉体という器では、あまりにも広大すぎるフォースそのものを終わらせることなど永遠に不可能。

実現不可能な目的。与えられたのは、内側から身を焼き尽くすような凶暴な破壊衝動と、決して満たされることのない飢餓感。

 

……いや、本当はずっと前から薄々気づいていた。

私がどれほど血を吐くような思いで「何故生まれたのか」と問い続けても、その問いに対する答えはこの宇宙のどこにも存在しないということに。私はただ、目的を持たずに生まれてしまったという恐ろしい「虚無」から目を背けるために、叶いもしない使命を言い訳にして、悲劇の存在を演じていただけなのかもしれない。

同格のザ・ワンズでさえ、私に答えを与えてはくれなかった。

ましてや檻の外に立つこの人間の男――シディアスに、私の抱える自己欺瞞と絶望の深さなど理解できるはずがない。

彼はただの人間だ。いくら興味深い未来を見せてくれても、ザ・ワンズから見れば、芥子粒のように小さく、脆い、有象無象の一つに過ぎない。それに彼も、ただの道具として私を利用するために、プレイガスの目を盗んで何度もここに通ってきているに過ぎないのだ。

 

私は、彼がいつものように、私の言葉を都合よく解釈し、己の野望の道具として組み込むための甘言を弄するのだろうと、冷え切った心で待っていた。

 

しかし、檻の向こうから返ってきたのは、私のあらゆる予測を木端微塵に叩き潰す、暴力的なまでの拒絶だった。

 

「……下らないな」

 

骨の髄まで凍りつかせるような、冷酷極まりない一言。

私は、息をすることさえ忘れて、ゆっくりと顔を上げた。

 

(……下らない?)

 

私の思考が、一瞬で完全に停止した。

今、この、私の足元で這い蹲ることしかできないはずの、数十年の寿命しか持たぬちっぽけで脆弱な人間は、私に向かって何と言い放ったのだろう。

 

私が物心ついたその瞬間から、内臓を素手で掻き毟られるような絶え間ない激痛を伴って私を突き動かしてきた、あの底なしの飢餓感を。お父様たちとの間に決定的な断絶をもたらし、モーティスという神聖なる世界の秩序を永遠に狂わせた、あの宇宙規模の「自己矛盾」を。神々ですら恐れて目を背け、私自身すらそのあまりの暗闇に直視することを拒み続けていた、魂の根本に関わる絶対的な絶望を。

この、吹けば飛ぶような塵に等しい生き物が、たった一言、冷や水を浴びせるような無慈悲な響きを伴って「下らない」と一刀両断にしたのだ。

 

その瞬間、胸の奥のブラックホールが激しく、異様に歪んだ。

アボラ島の研究室の冷え切った空気が、私の全身の毛穴から大理石のような肌の奥へと、無数の鋭い氷の刃となって突き刺さるような錯覚。驚愕と、戸惑いと、そして自分という存在の根底を容赦なく揺さぶられたことへの、名前のつかない激しい戦慄が、頭の先から指先までを一本の強烈な電流となって駆け抜けていく。

 

私の虚ろな、一切の感情を映さないはずだった漆黒の瞳が、磁場シールドの青白い光の向こう側にいる彼の姿を、今度こそ呪縛されたように真っ向から捉えた。

シディアスは、檻の前に毅然と立っていた。彼から放たれる気配は、先ほどまでの「師の目を盗むコソ泥」のそれではない。その燃え盛るような、獰猛な黄みを帯びた眼光は、私を哀れむでもなく、私を恐れて距離を置くでもなく、ただ圧倒的な、宇宙のすべての因果を従えるべき絶対の支配者として、私の魂の最も深く、誰にも触れさせなかった最深部を容赦なく射抜いていた。

彼の背後の薄暗い空間から、まるで銀河そのものを飲み込もうとする巨大な怪物の影のような、極彩色にドロドロと濁った暗黒面のオーラが、重苦しい熱量を伴って立ち昇るのが見える。

緻密に計算され尽くし、どこまでも貪欲で、そして何よりも、凍りついた私の心を焼き尽くさんばかりの狂おしい情熱に満ちたオーラ。兄様が放っていたような、ただの感情に任せた単調な闇とは違う。すべての事象を自らの足元にひれ伏させようとする、圧倒的で、おぞましいまでの『悪意の極致』がそこには渦巻いていた。

 

「お前は自分で気づいているはずだ。その問いに答えなどないことに。それなのに、あらかじめ与えられた『存在意義』という錆びついた鎖に、自ら喜んで縛り付けられている。フォースの死だの、神々の役割だの、宇宙のバグだの……そんな数式のような概念など、心底どうでもいいことだ! 思考の檻に引きこもり、叶わぬ運命を嘆くしか能のない哀れな人形よ」

 

彼の言葉が、実体を持った冷たい鉄の槍となって、私の精神の強固な防壁を粉々に突き破る。私が心の奥底で必死に隠し続けてきた脆弱な自己欺瞞を、血を流すことも厭わずに白日の下へと抉り出した。

あまりの衝撃に、視界がぐらりと揺れた。

怒りや屈辱よりも先に、天地がひっくり返り、世界の軸が真っ逆さまに叩きつけられるような、途方もない衝撃が私の全精神を支配していく。

 

鎖。私は、自らを定義し、自らのアイデンティティの拠り所とするはずの「フォースの死」という本能を、無意識のうちに、自らが前に進まないための、これ以上傷つかないための錆びついた鎖にしていた。答えがないと薄々知りながらも、「果たせない使命を背負った悲劇の化身」という安易な役回りに逃げ込み、己の存在の無意味さから目を背けていただけだった。

生に意義など最初から持ち合わせていない、矮小な人間ならではの、あまりにも身勝手で不遜な発想。彼らには私のような、宇宙の摂理に組み込まれた絶対的な定義など存在しない。だからこそ、そんな暴論が平然と吐けるのだ。

だが……今までの私の果てしなく長い孤独の歴史の中で、誰一人として、全知全能のはずのお父様ですら口にしなかった、全く違う、しかし恐ろしいほどの説得力を持った「真理」が、そこにはあった。

 

「いいか、よく聞け。この宇宙に、元から定められた『善』も『悪』も存在しない。正しい役割など、最初からどこにも用意されてはいないのだ。あるのはただ一つ。自らの意志で強大な力を求める者と、力を持たぬが故にただ運命に流され、踏みにじられる弱者。……世界はただ、それだけで構成されている」

 

シディアスは両腕を大きく広げ、宇宙の法則そのものを、神々の存在意義そのものを鼻で笑い飛ばすような、凄まじい傲慢さで堂々と宣言した。

磁場シールドの不快なノイズに混じって、彼の放つ暗黒面の重圧が、物理的な圧力となって私の身体を檻の床へと叩きつけようとする。

その姿は、あまりにも悍ましく、そして……網膜が焼き切れるほどに眩く、狂おしいほどに美しかった。

 

宇宙の法則に背くことを恐れず、むしろ自らのエゴの力で法則そのものを、フォースの因果そのものをねじ曲げ、自分のドス黒い色に染め上げようとする、圧倒的な、絶対的な自己肯定。

お父様が何よりも重んじ、私という存在を異端として排除してまで守ろうとしていた「調和」という名の、見えない巨大な檻。この男は、そんなものはただの幻影に過ぎないと、その鋭い爪でズタズタに引き裂いて、愉快そうに笑い飛ばしているのだ。

その、神をも畏れぬ狂気の姿が私には、とてつもなく、気が遠くなるほど魅力的なものに思えた。

 

「私はシスだ。私はこの銀河のすべてを壊し、既存の秩序を徹底的に蹂躙し、すべての命を私の足元にひれ伏させたい。だがそれは、誰かに与えられた崇高な使命でもなければ、宿命でもない。ただ、私自身がそう望むからだ! 私にはそれを為すだけの圧倒的な力があり、私の野望を阻むすべての有象無象を排して、我がエゴを押し通す至高の歓喜を知っているからだ!」

 

(……自分で、そう望むから?)

 

胸の奥のブラックホールが、ドクン、と、これまでにないほど大きく、痛いほどに脈打った。

私は、ただ与えられた「フォースの死」という役割が、自分のこの小さな器では達成不可能だという事実に絶望し、涙を流すことすらできずに嘆いていた。けれど、私の目の前にいるこの男は違う。誰に命令されたわけでもなく、世界からそんな本能や役割を与えられたわけでもないのに、ただ「自分がそうしたいから」「自分がそれを望むから」という、ただそれだけの、極めて利己的で理不尽な理由だけで、銀河すべてを地獄の業火で破滅へ導こうとしている。

なんて、身勝手で……最高に面白い男なのだろう。

 

シディアスはスッと広がっていた両腕を戻すと、檻の中の私に向けて、ゆっくりと微笑みかけた。

それは、今まで彼が浮かべていた薄っぺらい偽物の仮面では断じてなかった。彼の魂の、最も暗く、最もドロドロとした内側から滲み出た、ひどく歪で、しかしどこまでも狂信的な熱を帯びた「真実の微笑」。

その笑みを見た瞬間、私の永遠に凍りついていた心臓が、ドクドクと不快な、しかし確かな「生」の熱量を持って拍動を始めた。

 

「お前は、究極の目的が達成不可能だと絶望し、嘆いている。確かに、お前という一個体の規模では、フォースそのものに物理的な死を与えるという究極の本懐には、永遠に達せられないのだろう。お前がどれほど足掻こうとも、フォースはあまりにも巨大で、お前はあまりにも小さい。だが、考えてみろ。お前がどれほど星を砕こうともフォースが死なないということは、お前の内にある『すべてを破壊したい』という飢えは、未来永劫決して満たされることがないということだ。……ならば、それは絶望か? 否だ! そんな呪いのような目的など、今すぐこの場で棄ててしまえ。決して届かない果実を求めて飢えるのをやめろ。果たすべき義務を完全に失ったその時、お前は初めて、真の意味で自由になる! 永遠に満たされないということは、言い換えれば『永遠に喰らい続け、破壊し続ける快楽を貪れる』ということではないか! お前は純粋に楽しめばよいのだ!」

 

――目的など、今すぐこの場で棄ててしまうがいい。

 

その言葉は、私の頭の中で、何百回、何千回もの爆音となって鳴り響き、私の精神を構築していたすべての固定観念を木端微塵に粉砕していった。

きつく胸の前で握りしめていた、自分の大理石のような両腕から、じわり、と信じられないほど自然に力が抜けていく。

棄てて、いいの?

私が生まれながらにして背負わされた、フォースを殺すという、重すぎる、あまりにも理不尽な宿命を。私を夜も眠らせず、常にその凶暴な飢えで内側から引き裂き続けた、あの果たせない義務を。

この人間の男は、そんなものは価値のないゴミのように、その辺の泥の中に投げ捨ててしまえと、平然と言い放ったのだ。

 

結果という「ゼロ」に至らないから苦しいのではない。結果に至らないからこそ、無限に、未来永劫、その破壊の「過程」をしゃぶり尽くすことができる。

それは、モーティスの家族たちが、腫れ物に触れるような目で私を見ながら、決して口にすることのなかった言葉。私が、暗闇の中で、誰にも言えずに、心の中の最も深い場所で、ずっと、ずっと渇望し続けていた答え――私にとっての、唯一無二の「究極の福音」だった。

 

「……楽しむ?」

 

私の乾いた唇から、呆然とした、掠れた呟きが漏れた。

私を狂わせるこの凶暴な飢餓感を、呪いではなく、ただの娯楽として楽しむというの?

 

シディアスは、パチパチと電気の爆ぜる鉄格子へとにじり寄り、その歪んだ顔を限界まで近づけた。シールドの青い光に照らされた、彼の燃えるような邪悪な瞳が、私の目の前、触れられるほどの距離に迫る。

 

「そうだ。真の目的に繋がらないとしても、お前の中にはすべてを破壊したいという強烈な衝動がある。それをお前は『義務』としてではなく、ただ純粋な『娯楽』として楽しめばよいのだ! 生き物として生まれた理由など、血眼になって探す価値もない。事実、お前は私の下に初めて現れた時、私の未来を視て『興味深い』と言ったではないか。残念ながら、私の力ではフォースそのものに死を与えることは出来ない。だがそれが分かっていながら、お前は私の紡ぐ破滅の未来に、確かに視線を留めた。それは何故だ?」

 

彼の、獲物を追い詰めるような低い声が、私の脳髄の最も深い部分を直接揺さぶり、あの血塗られた夜の記憶を、鮮烈な極彩色で目の前に蘇らせた。

 

故郷モーティスを飛び出し、冷たい「狭間の世界」を経て、ただ一時の飢えを凌ぐために適当に、何の理由もなく降り立った、どこかの惑星の夜。星を一つ丸ごと灰にして、その不快な生のノイズを消し去ろうとした瞬間、私の背中をぞくぞくと撫でた、ひどく異質で、ドロドロとした『悪意の波』。

自らの家族を惨殺し、その血だまりの中に、息を荒くしながら立っていた、若き日の彼の姿。

 

あの時、私を物心ついた時から一瞬の澱みもなく苛んでいたあの凶暴な破壊衝動が、ピタリと、嘘のように静まり返った。それは、彼の抱える、神をも凌駕するほどの巨大なエゴと、彼がこれから銀河に紡ぎ出そうとしている、陰湿で、壮大な「破滅の未来」に対する、強烈な、身体の芯が打ち震えるほどの好奇心のせいだった。

星を物理的に消し飛ばすことなんて、ザ・ワンズの力を持つ私であれば、いつでも簡単に出来る退屈な破壊だ。でも、この男がやろうとしているのは、銀河という巨大なシステムそのものにじわじわと毒を流し込み、生き物たちの運命を内側から腐らせ、信頼を裏切り、徹底的に絶望させ、彼ら自身の手で、自らの意志で真っ逆さまに闇へと堕ちるように仕向けていく――壮大で、あまりにも残酷な、破滅の芸術。

私はあの時、確かに胸を躍らせていた。彼を「面白い」と、その魂の底から感じていたのだ。

 

「お前はあの時、私に向かって笑ったはずだ。私のやり方は、ただ星を物理的に壊すよりもずっと興味深いと。生き物たちの運命を内側からじわじわと腐らせ、徹底的に絶望させ、自らの意志で真っ逆さまに闇へと堕ちるように仕向けていく……その壮大で残酷な破滅の芸術を、お前は予感し、胸を躍らせたのだ。その魂の震えを、ただの義務だと言い張るつもりか? 否だ! 破壊は、お前にとって単なる課せられたタスクなどではない。それの行き着く結末が無意味に終わると分かっていても、その過程を、蹂躙を、遊興とする極上の趣向が、お前の内には確実に存在しているのだ! それをこのダース・シディアスが肯定しよう!」

 

シディアスの怒号にも似た確信に満ちた声が、私の精神の、最も柔らかく、傷つきやすく、無防備だった部分へと、暴風雨のように容赦なく染み込んでいく。

お父様も、姉様も、兄様も、誰一人として触れようとせず、不吉なバグとして恐れて遠ざけた、私の「個」としての飢餓、私という存在そのものを、彼は微塵の躊躇いもなく全肯定しながら、力ずくで檻の底から引きずり出していく。

その瞬間、私の頭の中で、快楽とも畏怖ともつかない、凄まじい熱波が弾けた。

 

(ああ……そう、だった……私は、楽しんでいたんだ……!)

 

胸の奥底で、生まれてからずっと固く、冷たく凍りついていた何かが、音を立てて派手に崩れ落ち、ドロドロに溶けた熱いマグマとなって全身の血管を巡っていく。

確かにこの人は、最初は私をただの便利な道具、あるいは師を超えるための未知の兵器として見ていたのだろう。だが、今は違う。彼のギラギラと光る瞳の奥、その暗黒面の奔流を通して、彼の中から湧き上がる、私という存在への確かな、狂信的なまでの「執着」と「理解」を感じる。

 

今の彼は、私を「フォースの死」という機械的な現象や、全自動の破壊装置として見ているのではない。

ただ純粋に破壊を渇望し、彼に興味を抱き、彼の悪意に激しく共鳴している、ひとつの、独立した「個」として、私を真っ直ぐに見てくれている。私の存在を、私の飢餓を、私の衝動を、何一つ否定せずに丸ごと肯定してくれている。その上で、彼は私の手を引き、狂気に満ちた暗闇の先へと導いてくれているのだ。

私の心は、かつてないほどの歓喜と、彼への圧倒的な心酔で溢れ返っていた。

 

「まずは私がこの手で銀河を燃やし尽くす様を、特等席で眺め、愉快に笑えばいい。お前の家族が懸命に守ろうとした『調和』のセカイを、私がこの手でパズルのようにバラバラに分解してやる。お前は私の力の一部となり、私の最悪の影となり、共にこの宇宙を絶対的な恐怖と絶望で塗りつぶしていけばいいのだ」

 

彼の紡ぐ、血と混沌にまみれた未来のビジョンが、私の頭の中に、眩いほどの極彩色となって爆発的に広がっていく。

お父様たちが命を懸けて、世界のバランスのために愛したあの美しい世界が、この人間の男の手によって泥のように濁り、腐り、無残に崩壊していく様。それを彼のすぐ隣で、誰よりも近い特等席で眺め、共にその手を汚すことの、なんと甘美で、なんと愉快で、なんとゾクゾクすることだろう。

果たせない使命に、孤独に泣く必要なんて、最初からどこにもなかったのだ。

ただ、この男と共に、この銀河という最高に贅沢で、最高に壊れやすい玩具を、飽きるまで思う存分叩き壊して遊べばいい。

 

「その行為の中に、お前だけの、お前なりの『新しい意味』を見出せばいい。誰に理解されずとも、宇宙の法則に背こうとも、お前自身がそこに極上の快楽を感じるのなら……それこそが、お前が今ここに存在する、唯一にして絶対の理由となる!」

 

これ以上ないほどの絶対的な自己肯定。運命という名の、フォースが作った下らない神話の完全なる否定。

シディアスは、冷たい鉄格子、その青白いエネルギーの壁越しに、ゆっくりと、しかし確固たる、決して揺らぐことのない意志を込めて、自らの右手を差し伸べた。

 

「……どうだ? いつまでもその狭い鳥かごの中で、出来もしない神々の使命とやらに縛られ、無表情のまま永遠に嘆き続けるか? それとも、私の傍で、この銀河という最高に贅沢な玩具を、私と共に思う存分叩き壊して遊ぶか?」

 

その声は、毒蛇が耳元で甘やかに囁くようにひどく優しく、暗黒面の深淵よりも、宇宙のどんな光よりも、どこまでも蠱惑的に私の魂を激しく揺さぶった。

 

私は、差し出された彼の右手を見つめた。血の通った人間の、温かくて、そしてあまりにも傲慢な手。

かつて姉様は、私に触れれば自らの汚れなき光が枯れると恐れて、差し出しかけた手を怯えて引っ込めた。けれど、この男は私の虚無など微塵も恐れていない。それどころか、そのすべてを呑み込む虚無ごと、自分の一部にして喰らい尽くそうと、傲慢に私を誘っている。

その底なしの傲慢さが、私にはたまらなく、狂おしいほどに愛おしかった。

 

私を生まれてからずっと苛み、孤独な檻の底に縛り付けていたあの底なしの絶望は、今や木端微塵に消え去っていた。

代わりに、私の心を満たしていたのは、胸が、私という器そのものが破裂しそうなほどの、獰猛で、残酷な高揚感。

彼の手を取り、彼の影となり、共に銀河を蹂躙し、絶望させる。その破滅の過程を、誰よりも美しく残酷な彼の姿を、私自身が、他の誰でもない私が、一番近くの隣で見届けていたい。

 

私の虚ろだった、ただ光を反射するだけだった漆黒の瞳の奥に、初めて、自発的な、ドロドロとした極彩色の「悪意の炎」がパチパチと音を立てて灯るのを、自分自身で確かに感じた。

私は、大理石のように白く冷たい手を、ゆっくりと、しかし一切の迷いなく、彼の右手へと伸ばしていった。

その瞬間、パチッという激しい音と共に、私を囲っていたエネルギー場が、主を失った霧のようにあっけなく霧散して消滅した。

消滅したのは物理的な檻だけではない。私の魂を永遠に縛り付け、窒息させようとしていた「存在意義」という名の冷たい呪いもまた、シディアスの放つ強烈な悪意の波動によって、粉々に砕け散ったのだ。

 

「……遊ぶわ、シディアス。貴方と一緒に」

 

私の声に、生まれて初めて、微かな、しかし確かな、冷酷で艶やかな「感情」の色が乗った。

 

「そうか。では私の傍らで、私が銀河を支配し、破壊しつくすところを見ているがいい。お前は今から私の弟子となるのだ。手始めに、お前に名前を与えようか。そうだな……ダース・ルイナ。お前は今、この世にようやく生を得たのだ」

 

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