スター・ウォーズ:悪意の継承 作:皇帝大好き
銀河共和国の心臓部、首都惑星コルサント。数千の星系を束ねるこの壮大な大都市惑星は、表向きの繁栄とは裏腹に、底なし沼のような政治的停滞と腐敗の熱に浮かされていた。元老院議事堂の中に溢れるのは、大義や正義を口にしながらも、自らの星系と結託する巨大企業の利権を守ることしか頭にない強欲な議員たちの醜悪な怒号。機能不全に陥った巨大な官僚機構は、もはや自浄能力を完全に失い、ただ緩やかな死へと向かって漂流している。銀河中に争いの火種があり、調停者を気取るジェダイもそれを知りながら見て見ぬ振り。
共和国はシスが手を下すまでもなく、いずれ崩壊する運命にあった。
だが、いずれ崩壊するのであれば、それを如何にシスの理想に近づけるか。それこそがシディアスが考える、強大なシス帝国を樹立する計画、『グランド・プラン』だった。
ナブー選出の元老院議員シーヴ・パルパティーンは、未だ数いる元老院議員の一人でしかない。だが、彼が表舞台の端役を演じながら水面下で張り巡らせた、目に見えない暗黒面の蜘蛛の巣は、すでに共和国の神経網を確実に麻痺させつつあった。いずれ崩壊するにしても、彼は決して油断などしない。表向きは、理想主義で善良な政治家としての評判を勝ち得ている。だが裏では言葉巧みに各星系の対立を煽り、汚職を蔓延させ、元老院の議論を決定的に引き延ばす。彼が蒔いたあらゆる争いの火種は、暗闇の中で静かに、しかし確実に、銀河全体を焼き尽くすほど致命的な炎へと育て上げられていた。最高議長という権力の座へと、合法的に、かつ誰にも疑われずに昇りつめるための残酷な方程式は、彼の頭脳の中でいよいよ完璧な解答を結びつつあった。
すべては、彼が思い描く通りに進んでいる。
あと残された問題は……かつて、パルパティーン――ダース・シディアスを暗闇の深淵から見出し、彼にシスの技と英知のすべてを授けた偉大なる師、ダース・プレイガスのみだった。
もはやシディアスに……いや、シスにすらプレイガスは必要ない。
偉大なる師に対するシディアスの内面は、今やかつてのような畏敬の念など微塵も残されてはいなかった。そこにあるのは、凍りついたナイフのように鋭い冷酷な失望と、反吐が出るほどの軽蔑だけ。
プレイガスという男には、決定的なまでに「政治的なビジョン」が欠落していた。
彼はミディ=クロリアンを意のままに操り、生命を無から創り出し、死そのものを克服するという、個人的な『不死の探求』という名の狂信に囚われすぎた。シスが千年の雌伏を経て成し遂げるべき真の悲願とは、ジェダイを殲滅し、この銀河のすべてを絶対的な恐怖と力によって支配する。言うなれば俗世の権力の奪取であるはずだ。だが、プレイガスは生命の神秘というミクロな学究に没頭するあまり、マクロな銀河支配という大局から完全に目を背けつつあった。
クローン軍の製造。計画における最重要項目もそうだ。
それは元々、プレイガスが自らの不死の肉体を維持するための研究の過程で思いついた、ひどく狭い視野の計画に過ぎなかった。プレイガスが発見したフォースへの抵抗が強い種族。それで構成されたシスの軍団。一部の富豪のみが知るカミーノという、高いクローン技術を持つ惑星。金さえ払えば、彼等はシスに対しても軍隊を作ることだろう。これを使い共和国を軍事的に屈服させる。それがプレイガスの計画だった。だが、シディアスはその計画の原型を耳にした瞬間、師の浅薄さを嘲笑うと同時に、それをより狡猾で、より悪魔的な、ジェダイ騎士団を根絶やしにするための完璧な破滅のトラップへと昇華させた。
『シスのための秘密の軍隊を裏で作るのではない。カミーノの高度なクローン技術を用いて、ジェダイ自身の軍隊を、共和国の正規軍を作らせる。ジェダイの愚者どもがその軍隊を自らの盾として、大義の剣として全面的に信頼し切り、油断の極みに達したその瞬間に……内側から彼らの寝首を掻く』
プレイガスは、このシディアスの悪魔的な策を耳にし、我を忘れて絶賛した。これこそシスの復讐にふさわしい、至高の策謀だと。
だが、師が狂喜の声を上げれば上げるほど、シディアスの瞳の奥に宿る光は冷たく濁っていった。
プレイガスは、自らの弟子が成し遂げつつある政治的工作や、この完璧なプロットを、すべて「自分の偉大なる導きの手柄」だと錯覚していた。そしてあろうことか、シディアスが最高議長に就任した暁には、自らは「共同議長」あるいは影の統治者として表舞台に立ち、二人で銀河を二分して統治するという、シスにあるまじき愚かで甘い夢物語を本気で信じ込んでいたのだ。
(共同統治だと? 権力を他者と分け合うなど、シスの掟に対する最大の冒涜だ。銀河の絶対支配者は、ただ一人でなければならない。それに、あの老いぼれが執着する不死の技術とやらも、結局は自らが永遠の命を得て、私を永遠に都合のいい政治の操り人形として矢面に立たせ、使い潰すための欺瞞に過ぎん)
プレイガスから学ぶべき暗黒面の知識は、もうすべて吸い尽くした。もはやこの男から得るものは何もない。
これから自分が築き上げる、完璧にして絶対的な暗黒の帝国にとって、ダース・プレイガスという存在は、ただの目障りな障害物であり、過去の遺物に過ぎなかった。
何より、シディアスの殺意を決定的なものにしたのは、プレイガスの現在の「無様すぎる姿」だった。
少し前、プレイガスは表の顔である最高級金融グループの主宰「ヒーゴ・ダマスク」として行動している最中、コルサントの暗い路上で、あろうことかフォースも持たぬ凡俗な金融の商売敵が放った暗殺者たちに襲撃され、瀕死の重傷を負ったのだ。
喉を深く切り裂かれ、下顎の大部分を無残に破壊された。自慢のミディ=クロリアン操作による肉体治癒すら間に合わぬほど無様に狼狽したマスター・プレイガス。
現在の彼は、不快な機械の補助なしには、一瞬たりとも息をすることすらできない身体に成り下がっていた。
固く閉ざされた寝室の扉の向こうから、静まり返った廊下へと漏れ出てくるのは、かつて生命の真理を極め、神の領域に達したと豪語した暗黒卿の威厳ある声ではない。
――シュー……コー……。シュー……コー……。
それは、肺腑の代わりに空気を送り込む生命維持装置の、規則的で、ひどく脆弱な、悍ましくも哀れな機械の駆動音だった。
これこそが、かつて恐れられたシスのマスターの現実。もはや師にかつての力はない。一般人の刃に怯え、機械の管に命を繋ぎ止められている肉の塊。その無様な息遣いを聞くたびに、シディアスの胸中には激しい嫌悪感と、耐え難い失望が満ちていった。
(時は満ちた。今夜、この老いぼれの惨めな呼吸を、永遠に止めてやる)
シディアスは誰にも見えぬフードの下で口角を吊り上げると、フォースの力で寝室の幾重ものプロテクトを音もなく解錠した。
部屋の中は、生命維持装置が放つ微かな緑色のインジケーターの光だけが、不気味に壁を照らしていた。
巨大なベッドの中央には、仰々しい呼吸マスクを顔面に埋め込み、浅い眠りに落ちているプレイガスの巨躯があった。彼は、自らのプロットが着実に動き出したこと、そして弟子が自らのために議長の座を用意しつつあるという都合の良い妄想に酔いしれ、強い酒を煽って、完全に警戒を解いている。
この油断こそが、プレイガスの堕落を如実に表していた。
シディアスはベッドの脇へと、音もなく歩み寄った。
彼の全身の細胞から、長年、師の影で従順な弟子を演じ続けるために抑え込んできたドロドロとした憎悪、軽蔑、そして銀河の唯一無二の覇者となるための凶暴な殺意が、一気に解放される。
部屋の温度が急激に下がり、彼の周囲のフォースが激しく歪み、狂い始めた。彼の十指の先から、チリチリと、紫がかった青白い火花が散り始める。
「マスター・プレイガス。あなたの夢見たシスの新時代は、ここで潰える。これからの私の銀河に、あなたのその惨めな呼吸音は……いらない」
「シ、シディアス……!? き、貴様……何を……!」
あまりにも濃密な殺気の奔流に、プレイガスが生命維持マスクの奥の目を見開いた。慌ててベッドから起き上がろうとし、目に見えぬフォースの障壁を張ろうとする。自慢のミディ=クロリアン操作で、迫り来る死の因果をねじ曲げようと試みる。
だが、泥酔した肉体と、機械に頼り切って衰弱した彼の肺腑は、シディアスが長年貯め込んできた圧倒的な暗黒面の爆発を前にして、あまりにも、無力だった。
「防げるものか、老いぼれが! 貴様の小賢しい手品など、私の力の前には塵に等しい!」
閃光。
部屋中の空気を一瞬にしてプラズマへと変える、鼓膜を破るような轟音と共に、シディアスの両手から猛烈なフォース・ライトニングが解き放たれた。
「が、あ、ああああああああっ……!!」
激しい電撃の濁流が、プレイガスの巨体を容赦なくベッドごと飲み込んだ。
青白い稲妻が彼の全身を駆け巡り、肉を焦がし、神経を狂わせる。それと同時に、彼の顎に埋め込まれていた生命維持装置が激しく火花を散らし、内部の電子基板が次々と爆発して焼き切れていった。
シュー、コーという規則的だった機械の音は、一瞬にして絶望的なショートの悲鳴へと変わり、黒い煙を上げて完全に停止した。
プレイガスは喉を激しく掻き毟り、血を吐きながら細胞を再生させようと足掻いた。だが、シディアスの放つライトニングは、その再生の速度を遥かに凌駕し、彼の心臓と脳髄を容赦なく徹底的に焼き尽くしていった。
「消え失せろ、過去の遺物め!!」
シディアスは歓喜に顔を歪め、出力をさらに最大まで引き上げる。
部屋中の豪奢な調度品やガラスが粉々に砕け散り、凄まじい焦げた肉の臭いとオゾンの匂いが充満する中、かつて「賢者」と呼ばれたシスの暗黒卿の肉体は、ピクピクと痙攣する無残な黒焦げの炭へと変わっていった。
やがて、プレイガスの最後の明滅が完全に途絶え、部屋に凄絶な静寂が戻った。
シディアスは両手を下ろし、荒い息を吐きながら、己の震える掌を見つめた。
それは恐怖でも後悔でもない。千年のシスの悲願を、すべての権力を、この瞬間に完全に独占したという、途方もない全能感の震えだった。
ダース・プレイガスは死んだ。家族を葬ってから、彼は新たに『師』という鎖に縛られていた。だがその鎖は、今や完全に消滅したのだ。
「……存外あっけないものだな。もっと早くこうしていれば良かった」
シディアスが天を仰ぎ、そう吐露した時だった。
カチ、と。
それは、焦げ付いたオゾンと血の臭いが充満する寝室の片隅から、あまりにも静かに響いた。
まるで燃え盛る地獄の業火の中に、一枚の極薄の氷片が投げ込まれ、一瞬で空間の熱を奪い去りながらひび割れたかのような不吉な音。
その刹那、劇的な変化が部屋を支配した。シディアスが放ったフォース・ライトニングの余熱によって、赤黒く燻っていたベッドの残骸、激しく飛び散っていた火花、そしてダース・プレイガスであった黒焦げの炭から立ち上っていた不快な煙――そのすべてが、まるで時間が停止したかのように空間にピタリと固定された。次の瞬間、その煙は白く結晶化し、きらきらと輝く美しい霜となって床へと静かに落ちていく。
部屋の中のすべての熱が、文字通り「死」によって消滅していく。
シディアスは振り返ることをしなかった。背中を刺す、刃物のように鋭く、そしてどこまでも深い絶対零度の気配。それをもたらす存在が誰であるか、彼には火を見るより明らかだったからだ。フードの奥で、彼の唇は歪み、底なしの愉悦を湛えた笑みが刻まれた。
「……待たせたな、ルイナ」
パルパティーンがゆっくりと、しかし絶対的な覇者の威厳を纏って振り返る。
そこには、完全に静止した凍土の如き空間の中心で、ふわりと絨毯から数センチ浮遊したまま佇む一人の少女の姿があった。
重力をあざ笑うようにゆらゆらと波打つ、墨汁のように濃厚な黒髪。生き物としての脈動も、体温も、一切を拒絶したかのような、大理石を削り出したかのような蒼白の肌。
ダース・ルイナ。
フォースの「死」そのものを宿し、シディアスが解き放った究極の破壊の化身。
彼女は、シディアスがその十指から最初の一撃をプレイガスに浴びせる前から、すでにそこにいた。自らの存在を周囲の濃密な暗闇へと完全に同化させ、呼吸すら消し去り、気配の欠片すら残さずに潜んでいたのだ。
なぜなら彼女は知っていた。シディアスという男が、自らを縛り続けてきた「師」という名の鎖を、他の誰の手も借りず、己自身の凶暴な悪意と力だけで粉砕することを、何よりも欲しているということを。ルイナはその至高の瞬間を汚さぬよう、ただ静かに、愉しげに闇の底から見守っていたのである。
「ええ。貴方は自らの手で、この男を殺したかったのでしょう? それを邪魔するなんて、無粋なことはしたくなかった」
ルイナの口から紡がれる声は、凍てついた夜空に響く銀の鈴のように澄み渡り、同時に背筋を凍らせるほどの冷徹さを孕んでいた。
彼女は、かつて銀河の運命を裏から操り、神の領域に達したと豪語していたダース・プレイガスの、今や見る影もなく破壊された骸へと視線を落とした。顔面に焼き付いた生命維持装置の無残な残骸、煙を吐くのを止めた醜い肉の塊。それを、彼女は道端に転がる泥やゴミでも見るかのような、徹底して無感情な目で見下ろす。
「……やっぱり、こうなる運命だった。この男の命の灯火は、もうとっくに限界を迎えていた。フォースの強烈な反動によって喉を裂かれ、自らが蔑んでいたはずの凡俗な人間に怯え、醜い機械に命を乞う……。自分自身のミディ=クロリアン操作だけなら、こんな反動は無かったでしょうに。彼は迂闊過ぎた。シディアス、貴方にはもう、こんな壊れた肉塊は必要ない」
「その通りだ、私のルイナ。あの老いぼれの役割は、今この瞬間を以て完全に終わった。これからは、私が唯一無二の主だ。そして――」
シディアスは漆黒のローブを翻し、両腕を大きく広げた。まるで、新しく生まれ変わる銀河のすべてをその腕に抱きしめるかのように、堂々と胸を張る。
「お前だ、ルイナ。お前が私と共に、新たなるシスの時代を創るのだ。これまでの檻の中に捕らわれている演技を続ける日々は、今夜で完全に幕を閉じた」
その言葉がルイナの鼓膜を叩いた瞬間、彼女の胸の奥底で、かつてないほど巨大な熱量が爆発した。
表舞台に出る。
その事実が、彼女の冷徹な精神を、狂おしいほどの高揚感で満たしていく。
これまで、彼女は常に隠された存在だった。モーティスという神々の箱庭に囚われ、宇宙の調和という、課せられたあまりにも重く退屈な使命の奴隷として泣いていた頃。そして、シディアスに救い出されてからも、プレイガスの目を欺くため、鳥籠の中でシディアスを待ち続ける日々
だが、今からは違う。
ついに彼女は銀河という名の、広大で、愚かで、あまりにも壊し甲斐のある巨大な舞台へと解き放たれるのだ。
ルイナはふわりと宙を滑るように前進し、シディアスの目の前へと距離を詰めた。
彼女の漆黒の瞳。底なしの虚無が広がっていたその瞳の奥に、今やシディアスが放つ圧倒的な支配欲、そして銀河を蹂住せんとする邪悪な意志に完璧に共鳴した、微かだが劇的な『極彩色の熱』がパチパチと音を立てて燃え盛っていた。それは、破壊を渇望する「個」としての彼女が、自らの命の歓喜を叫ぶ瞬間の輝きだった。
シディアスは満足げに目を細めると、ゆっくりと太い手を伸ばした。そして、ルイナの氷のように冷たく滑らかな頬に、ライトニングの余熱を孕んだ熱い指先をそっと添えた。ルイナはその傲慢にして絶対的な支配の接触を、拒絶することなど微塵も思わず、むしろその熱を愛おしむように、じっと彼を見つめ返した。
「ルイナ。プレイガスという最大の障害が消え去った今、お前を銀河の盤上へ進める時が来た。お前を私の『養女』としてコルサントへと連れて行く。ナブー選出の善良にして、誰よりも慈愛に満ちた清廉な議員であるこのシーヴ・パルパティーンが、先の凄惨な地方戦争の火に巻かれ、すべてを失った哀れな孤児を、涙ながらに引き取った……という、この上なく美しく、胸を打つシナリオだ。愚者どもは、私の慈悲深い振る舞いにまんまと騙され、涙を流して私を賞賛するだろう」
シディアスの声は、かつて彼女を暗闇の中から誘惑した時と同じように、地響きのように重厚で、悪魔のように甘く、そして脳髄を麻痺させるほど蠱惑的だった。
シディアスの言葉が進むたびに、ルイナの身体の芯から、震えるような歓喜の波が押し寄せた。
可哀想な、すべてを失った悲劇の少女。
その仮面を被り、銀河の最高権力の中心へと足を踏み入れる。そこで思う存分、気の向くままに人間を堕落させ、破壊の限りをつくす。これほど愉快な遊戯が他にあるだろうか。
「表舞台では、戦争の恐怖に怯え、私の庇護なしには生きられない、従順で可哀想な娘として振る舞うがいい。そして裏では――我が最愛の弟子、暗黒卿『ダース・ルイナ』として、私と共にこの銀河を最高の絶望と混沌で塗りつぶしてやろう。共和国を内部から腐らせ、ジェダイの光を完膚なきまでに叩き潰し、お前が何よりも愛する『破滅の芸術』を、特等席で見せてやる。どうだ、ルイナ?」
シディアスの黄みを帯びた邪悪な瞳が、彼女の魂の最深部にある、純粋で獰猛な「快楽への渇望」を真っ直ぐに射抜いた。
ルイナの薄い唇が、ゆっくりと開かれる。
その大理石のような顔に、背筋が凍るほど無邪気で、しかし絶対的な悪意に満ちた、残酷極まりない微笑みが浮かんだ。
果たせない宿命に苛まれ、世界の終着点という記号でしかなかった少女は、もう完全に消滅した。今の彼女を突き動かしているのは、目の前にいる絶対的な悪の化身と共に、銀河という巨大な玩具を木っ端微塵に叩き壊し、その滅びの美しさを骨の髄まで味わい尽くしたいという、狂おしいまでの悦楽だけだった。
「ええ……喜んで、お父様」
ルイナは、シディアスの手のひらに自らの頬を擦り寄せるようにしながら、囁いた。その声には、抑えきれない高揚感による微かな震えが混じっていた。
「可哀想で、従順で、愛らしい悲劇の少女を演じてあげる。貴方の影として、世界の果てまで、どこまでもついていってあげる」
師プレイガスの、黒焦げになり煙さえ失った冷たい骸の傍らで。
唯一無二の主となったシスの暗黒卿と、フォースの死を司る美しき化身は、冷気と熱気が交錯する暗闇の中で、静かに、しかし決定的な契約を交わした。
嵐の前の不気味な静けさを孕んだ混迷の時代。
銀河の運命は今夜、滅亡への秒読みを狂喜と共に開始した。