ガンダムビルドダイバーズ:EXPLODE   作:貸出票

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時間ができたので初投稿です。


号砲の鳴った日

ピピピピピピピピピピピピピピ…

 

朝だ。寝ぼけまなこを擦りながら体を起こし、スマホのアラームを止め時間を確認する。その時ちょうど机の上に置かれたプラモデルが目に留まる。そうだ、今日はこの新たな愛機と共に新しい世界に一歩を踏み出す特別な日だった。

 

天咲(あまさき)雅空(がく)は一人暮らしの大学生活の中、一ヵ月以上かけて完成させたそのガンプラを手に取り愛おしそうに触れた。

 

「今日からよろしく頼むぜ、俺の新たな相棒。」

 

朝の準備を済ませ、その機体をもってさあ出かけようという時にスマホから通知音が鳴った。確認してみると約束をしてた友人から。

 

『すまん 急な用事で行けなくなった 今日は一人でダイブしてくれ』

 

「マジかよ…」

 

呟きは嘆息と共に少し埃っぽい部屋の空気に溶けていった。

 


 

ガンプラバトル・ネクサス・オンライン 通称GBN

 

それが今世界中で絶大な人気を誇っている最新ネットワークゲームの名である。そのプレイヤーたちはダイバーと呼ばれ、ダイバーギアという機器を装着し文字通り電脳仮想世界に飛び込んで(ダイブして)いくのだ。

 

またこのゲームはその名の通りガンダムのプラモデル、通称ガンプラを持ち込むことが可能であり、そのガンプラでバトルをして腕を磨くもよし、精巧に再現されたガンダムシリーズのマップを冒険するもよし、世界中の人々とガンプラを通じてコミュニケーションをとるのだっていいだろう。

 

ある意味で現実よりも自由な世界、それがGBNなのだ。

 

そのような世界のある場所、具体的に言えば極東ベースのロビーに一人の少女がいた。軽くウェーブのかかった金髪、透き通るような水色の瞳には不安の色が浮かんでおり、瞳の色と同じブラウスも相まって迷子のお嬢様といった雰囲気だ。その左手は不安を押し殺すように右手首をぎゅっと握っている。

 

この少女、かれこれ十分ほどロビーを彷徨っており、普段なら声をかけるであろう親切なナビゲーターは不幸にも今日は不在のようである。

 

「初心者用のミッション…どこに行けば…」

 

仮想の自由な世界に憧れ一念発起してGBNに飛び込んでみたはいいものの。一緒に参加してくれる友人もいない、対人経験に乏しいため中々人に尋ねられないのダブルコンボ。正直もう泣きそうであった。

 

(私にはまだ早かったのかな…)

 

あきらめかけた時、彼女に声をかける人影があった。

 

「失礼、もしかして君も初心者?」

 

「えっ…ああえっと…はい…」

 

気遣った様子で話しかけてきたのは紺色の髪をショートウルフにして前髪をセンター寄りに分け、黒のライダースジャケットに身を包んだ大学生くらいの若い男だった。

 

「驚かせたならごめんね、でもちょうどよかったよ、俺と一緒にビギナーミッションやらない?俺も初めてで一人だと心細くてさ」

 

彼女が少し気圧されながらコクコクとうなずくと、男はホッとしたように笑い右手を差し出してきた。どうやら困っていたのは本当のようだ。

 

「ありがとう、そういえば自己紹介がまだだったね、俺はPN(プレイヤーネーム)『ガク』。よろしく!」

 

「えっと、ほし…じゃなくて『スバル』です!よろしくお願いします!!」

 

スバルが差し出された手を握るとガクもその手を握り返した。

 

胸の中を支配していた不安は不思議と消え去っていた。握った手は仮想のポリゴンのデータの集まりのはずなのに確かに暖かかった。

 


 

重い金属音をあげながら二つの機体が運ばれ、カタパルトに固定される。二人はそれぞれのガンプラのコクピットの中にいた。すぐにわきに設置されたランプが緑に点灯し機体が出撃待機状態になる。

 

カタパルト射出も久しぶりだな…よーし行こうか、ガク、機体はガンダムヘビーボンバーで出撃する!」

 

「あっえっと…スバル、アルデバラン行きます!」

 

まず先にガクの乗るヘビーアームズの改造機体『ヘビーボンバー』がカタパルトより射出され、紺色の全身に火器を備えた重武装の機体が空を舞う。

 

続いてスバルの駆るリゼル×トーラスの改造機体『アルデバラン』がMA形態で射出される。

 

「いやーやっぱりカタパルト射出はいいね!」

 

ちょっと怖かったです…

 

ガクは日常ではなかなか体験することのないスピード感に満足げだったが、こういったゲーム未経験にスバルには少し刺激が強かったようだ。二機は並んでしばらく飛ぶとシステムの誘導に従い一緒に受けたビギナーミッションの指定エリアに侵入した。

 

「今回のミッションは指定されたNPDを倒すだけだね。もうすぐ敵が出てくるはずだ、頑張ろう!」

 

「はいっ!」

 

「そんなに気張らなくていいよ、ゲームなんだ楽しもう。おっと話してる間に来たね。」

 

ガクが小さく笑いながらスバルをかばうように前に出る。レーダーにはNPDの操作する5機のリーオーの反応が映し出されていた。

 

「先手を打たせてもらう!」

 

射程内に敵が入ったのを確認するとガクはHB(ヘビーボンバー)の両手に装備したグレネードランチャを発射する。放たれた二発の弾頭は吸い込まれるように敵機に向かっていき二機のリーオーを火球に変えた。

 

「あっという間に二機も…すごい…きゃっ!」

 

その鮮やかな手際に見惚れていると残ったリーオーのうち2機がスバル目掛けて発砲してきた。右側の機体の装備するドーバーガンがアルデバランをかすめ機体が大きな揺れに襲われる。

 

「お願いアルデバラン!」

 

慣れない手つきで変形コマンドを入力すると、機体はモーターの駆動音を鳴り響かせながら戦闘機然としたMA形態からMS形態に変形し、スバルの意思に応えるようにトーラスによく似た顔面の大型カメラを発光させた。そのまま両手のビームライフルをドーバーガンを持った方に向けて乱射するとそのうちの一発が腹部に風穴を開けた。撃ち抜かれたリーオーは糸に切れた操り人形のように崩れ落ち爆発、爆炎はポリゴンの欠片に変わり消滅した。

 

「一機撃墜…やったぁ!あうっ」

 

喜びの声をあげた途端、またしても機体が揺れに襲われる。見るともう一機が片方に気を取られている間に接近しシールドバッシュを仕掛けてきていた。強い衝撃に体勢を崩し落下するアルデバラン。視界が反転し浮遊感が体を襲う。操縦桿を強く握りしめるが機体はいう事を聞いてくれない。

 

(落ちるっ?!)

 

「しまった今助ける!」

 

もう三機目と空中戦を繰り広げていたガクがそれに気づき、機体のハッチをわずかに開き空に向けて何かを発射すると落下するスバルの機体を追うがNPDがその隙を見逃すはずがなかった。

 

「後ろっ危ない!」

 

スバルがレーダーに写る二つの敵機の反応見て叫ぶ。どちらも急速に接近しており、背中を見せたガクを狙っているのは明白だ。ガクの機体はもうほぼスバルの目の前にありどちらかがよけられたとしてももう片方は被弾する絶望的な状況であった。

 

助けに来てくれたHB(ヘビーボンバー)がさっき堕としたリーオーのように火球に変わる光景を幻視してぎゅっと目をつむるスバル。しかし予測していた光景は訪れなかった。

 

アルデバランがHB(ヘビーボンバー)に支えられゆっくりと降下していく。その肩越しに二つの爆炎が花開くのが見えた。

 

「どうして…背中を向けていたはずなのに…」

 

機体を草原に着地させた後、状況を呑み込めぬままスバルが尋ねると

 

「ああ、カバーに入る前にミサイルを上に向けて山なりに発射してたんだよ、時間差で着弾するようにしてね。俺を狙ってる敵なら当てやすいでしょ。」

 

ガクは何でもないことのように言って笑った。スバルは胸にじんわりと安堵が広がるのを感じた。

 

【TARGET ELIMINATED! AREA CLEARED. TRANSITION TO THE NEXT STAGE!】

 

そうこうしていると空中にウインドウが表示され機械音声のアナウンスが鳴り響いた。それを確認したガクが気遣うように通信越しに声をかけてきた。

 

「これでこのエリアの目標は完了みたいだね。気分は悪くなったりしてないかい?」

 

「はい、大丈夫です!あと助けてくれてありがとうございます!!」

 

「気にしなくていいよ、初心者同士助け合いだ。概要を見るに次のエリアで中ボスを倒せばこのミッションはクリアみたい、張り切って行こう!」

 

そう言い終えるとガクはちょうど二人の機体の立つ地面の真上の空に出現したゲートに向かってHB(ヘビーボンバー)を飛翔させた。

 

(助けてもらったどころか気まで使わせちゃったな…)

 

スバルは小さく息をつき、アルデバランをMA形態に変形させHB(ヘビーボンバー)の背中を追うように飛び立たせた。

 


 

ゲートをくぐるとそこには一面の廃墟が広がっていた。そこかしこに崩れかけのビルが並び、見下ろす大通りには蜘蛛の巣のようにひびが入っている。敵が隠れていても簡単には見つけられなさそうだ。なにかが潜んでいるような感覚を覚え、わずかに機体を上昇させる。

 

次の指定ポイントに向けて機体を飛行させながら、スバルは先ほどから気になっていたことを口にした。

 

「その…ガクさんって以前何かこういう戦闘系?のゲームやってたんですか?」

 

「まあ…ね、だいぶブランクがあるから腕は少し鈍ってるけどね。」

 

ガクは少し歯切れ悪く答えた。しかしその声にはどこか過去を懐かしむような響きもあった。

 

バトルに関しては素人である彼女にもわかるほど先のステージでの彼の動きは初心者のそれとは一線を画していた。射撃の正確さ、すぐにカバーに入る視野の広さ、敵の動きを予測してミサイルを撒いておく頭の回転の速さ、どれもが今の自分では到底届きえないものだった。胸に小さな憧れが灯る。

 

他のゲームでこういった戦闘に慣れていたのならそれらにも説明がつく。納得する一方、鈍っていてなおあれほどなのかという驚きにスバルは黙り込んでしまう。するとそれに気づいたのかガクが沈黙を破るように陽気な声をあげた。

 

「俺からも一つ聞いていい?スバルはたぶんこういうゲームは初めてだよね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「それは…」

 

その答えは咄嗟には出てこなかった。彼の質問に答えるため頭を軽く振って思考を切り替える。GBNが流行っていたから?敵を倒して爽快感を感じたかったから?それともいろいろな人に出会うため?どれも要因の一つではあるが決定的な動機には遠いような気がする。手元に視線を落としながら逡巡する。

 

「私がこの世界に飛び込んだのは…」

 

スバルが答えようとした瞬間

 

Blip—! Blip—! Blip—!

 

二人のコクピットに鋭い電子音が鳴り響き、赤いランプが点滅する。

 

「ロックオン?!どこから?」

 

ガクが咄嗟にあたりを見回すと地上から高速で飛来するミサイルが視界に入った。

 

「スバル!下からだ!!」

 

「えっ」

 

スバルは慌ててレーダーに視線を移すが敵機を示す反応はどこにも見当たらない。そしてレーダーを確認したその一瞬が致命的な遅れとなった。

 

(やられる、避けられない!)

 

心臓が跳ね、背中を嫌な汗が伝う。引き延ばされたように感じる時間の中で、襲い来るであろう閃光と揺れから身を守るように操縦桿から離した両腕を前に突き出す。

 

しかしアルデバランが炎に包まれることはなかった。

 

(揺れが…来ない?)

 

恐る恐る下を見るとそこには、スバルを庇ってミサイルを受けたのか、火を噴きながら落下するHB(ヘビーボンバー)の姿があった。

 

「え…ガク…さん…?」

 

HB(ヘビーボンバー)はそのままレーダー範囲外に落下すると爆炎に飲み込まれた。

 

さっきまで繋がっていた通信は途切れ、『NO SIGNAL』の表示を示すばかりだった。




投稿は不定期になるけどエタらないように頑張ります。誤字脱字あれば指摘お願いします。
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