「――で? お前の方は何でアローラ地方なんかに来てんだ?」
腕を組んだシゲオが、溜め息混じりにサトルに問う。一方でサトルは、頭を掻きながら、目を逸らした。
「実は――」
――、
「成程、理想の努力値にするために、木の実を――、か」
「そうなんだよ、シゲオ」
「だがなサトル、
ま だ 甘 い ぞ !!」
「!?」
シゲオが急に切り込んできたので、サトルはぎょっとした。
「努力値の他に、何が足りないんだ!?」
問うサトルに、シゲオは人差し指を立てながらヒントを与える。
「忘れてないか……サトル?」
「?」
サトルはアゴに手をやり数秒、考え込む。
「……ハッ!? ポケモン1体1体によって違う、個体値!?」
「そうだ、サトル。ここ、アローラ地方ではその個体値を『鍛える』コトができる場所もあるんだ」
「個体値を……『鍛える』!?」
「その通り。卵から孵った時や、野生で出会った時には決まっている個体値を、疑似的にMAXに上げるコトができる」
「個体値が低いコイツらでも、強くできるのか!」
サトルは目を輝かせた。
「金の王冠か銀の王冠を代価に一定以上のレベルのポケモンなら『すごいとっくん』を受けられて鍛えるコトができると、いった感じだ」
「そうか! それでシゲオ、その『王冠』はどうやって手に入れるんだ?」
「それは――」
――、
~ポニ島~
「釣れないな……」
サトルの垂らした釣り糸は、水面でそのままの姿勢でいた。
(回想)
「王冠を手に入れる方法、それは……」
「それは……?」
「釣りだ!!
白い泡ぶくが見えたら、釣って釣って釣りまくれ!! あとは運だ!!」
サトルは目を見開き、口をぽっかりと開けていた。
「運……だと……?」
(回想終了)
シゲオの話を聴いたサトルは、すごいとっくんを試そうと思い、早速釣りを始めていた。
「それにしても……」
太陽は天高く昇っている。サトルは両手を高く上げて伸びをした。ふぁあーと、欠伸をして一息ついてから再び独り言を呟くのだった。
「もう何時間たったかなぁ……? 釣れないなぁ、王冠……!」
ふと釣り竿を見ると、クッと先が何かに引っ張られていた。
「おっ! ついにお出ましか!?」
次の瞬間――、
「ザッパァ!」
「コイッコイコイコイ!」
大きな飛沫を上げて、何者かが姿を現した。
「こ……コイツは……!?」
『コイキングが現れた!』
「何だぁー、コイキングかぁ。逃がしてやろう。バイバイ、コイキング」
サトルは釣り上げたコイキングをキャッチアンドリリースする形で逃げしてやった。
「チャポン……」
そして気を取り直して釣りを再開するのだった。
――、
サトルの釣り竿の先がクッと引っ張られる。
「よし! 今度こそ!」
「ザッパァ!」
「コイッコイコイコイ!」
『コイキングが現れた!』
「またか――!? お前に用は無いわぁ――!!」
サトルは釣り上げたコイキングを逃がしてやった。
5分後――、
「ザッパァ!」
「コイッコイコイコイ!」
更に30分後――、
「ザッパァ!」
「コイッコイコイコイ!」
1時間後――、
「ザッパァ!」
「コイッコイコイコイ!」
――、
「……」
「コイッコイコイコイ!」
釣り上げられた1匹のコイキングは、サトルの横でピチピチと跳ねている。
「……なぁんでコイキングばかりなんだぁ――!? しかも全部♂! まさかとは思うが全部同じ個体!? 王冠釣り上げるより確率低いぞ!!」
「コイッコイコイコイ!」
釣り上げられた1匹のコイキングは、未だサトルの横でピチピチと跳ねている。
「……」
サトルの手は開いたまま固まっていた。
「ピロリロリ! ピロリロリ!」
「!」
ここでサトルのポケギアが鳴った。気があまり向かなかったが、やれやれ仕方ないなといった感じでサトルは電話に出てやるコトとした。
「もしもし……誰ですか?」
「サトル。オレだよ、オレ」
シゲオだった。
「何だ、シゲオかぁ。何の用?」
「驚けサトル、アローラ地方で釣りをしているようだが、ガラル地方やパルデア地方に行けば、他の方法で王冠をゲットできるみたいだぞ!」
「なっ……何だって――!?」
サトルのポケギアを握る手が震えた。
「どうせサトルのコトだ。全然釣れてなかったんだろう?」
「ギクッ……そーだよ……てか、その情報早く教えろよ!」
「まーまーサトル、さっき知ったコトなんだ。今パルデアに居る。さっきその情報を知ったばかりでさ」
「そっ……そうか。なら仕方ないか」
「サトル、せっかくアローラに居るんだ。木の実は実が実るまで時間がかかるから、そっちでも何個か集めてついでにサーフィンでも楽しんでからパルデアかガラルに来てみろよ。たくさん王冠ゲットできるぜ?」
「分かった、そうする」
「じゃあな」
「ピッ」
通信は途絶えた。
「あ゛――!!」
サトルは仰向けに寝転び、釣り竿を持った右手と空の左手を頭上に上げてバンザイをしていた。
「コイキング、キャッチアンドリリースするだけの時間だった――!! クッソー、木の実集める気にならないから、サーフィン楽しんでやる――!!」
広く澄み渡る蒼――、
「♪~」
サトルはアローラの各島々のビーチでサーフィンを楽しみ、意外な才能を開花させていた。
陽気な太陽をバックに、サトルのサーフボード(マンタイン)が波しぶきを上げる。
「おっ! 俺様の為のビッグウェーブがやって来たぜ?」
容赦なく人の命まで奪いそうな高波が襲ってきても、サトルにとってのそれは自身を輝かせるための引き立て役でしかなかった。
「フッ……オーバー☆THE☆ギャラドス……」
波の上を流れるように滑走するマンタインが、天高く跳ねた。
サトルは縦横無尽にサーフボード(マンタイン)を操り、次々と大技を決める。
その軌跡に――
星が流れた。
「♪~」
「ピィー♪」
「リュー♪」
「ガァアー♪」
「ギャース!!」
セクシーはサトルのサーフボードに乗り、
海龍は覚えたての波乗りで、
火炎龍は空を飛び、
おとんはそれに抱えられて――、
それぞれがアローラの波や風、太陽を満喫した。
「何だアイツは!?」
「スゲェ若者が居るぞ!!」
「この島のトップ、ナリヤ・オーキド超えか……」
サーフィンを楽しんでいた地元民や観光客も、サトルのサーフィンの腕前には舌を巻いて立ち止まり、賞賛の言葉を送っていた。
アローラの夕日が傾いていた――
「へっへっへー。景品のBP(ビーチポイント)大量ゲットぉ! 何に使おうっかなー?……とっておくか……」
貧乏性を発揮したサトルは、翌日、アローラ中の木の実を集め、大量の木の実とBPを持ってガラル地方に旅立つのだった。
読んでいただきありがとうございました!おかげさまで第10話です!
サン・ムーン時代、ポニ島で泡を狙ってひたすら釣り糸を垂らし、コイキングの山を築き上げた思い出を持つトレーナーの皆様……お待たせしました。サトルも無事にその地獄を味わいました。
しかもシゲオからの「今は別地方の店で買える」という非情な現実のコンボ(笑)。古参ファンとしては喜ぶべきか、「ワシらが現役の頃は」と新参トレーナーに対して口を酸っぱくさせるべきか……?
しかし、絶望からのマンタインサーフでまさかの才能を開花させ、大技『オーバー☆THE☆ギャラドス』を連発してBPを荒稼ぎするサトル。バトルの才能は無くとも、アウトドアな面でハイスペック男子だったり……。リザードンに抱えられて威勢よく鳴きながら空を飛ぶニドキングも頑張りました。
努力値リセットの木の実と、大量のBPを引っ提げて、舞台はついにガラル地方へ!
皆さんがアローラ時代に王冠をどうやって集めていたか、またはマンタインサーフの最高得点の思い出など、ぜひ感想で教えてください!