「フー、何とか捕まえたわ」
「スミレぇー!」
ハイパーボールを手に額の汗を拭くスミレのもとへ、サトルが駆け寄る。
「!」
「良かった、無事で……! これは……?」
トロッゴンが居た場所に、何か光るものが散らばっていた。
「レイドバトルでボスポケモンが落とすアイテムよ、えーっと……」
「俺はサトル! ヨロシク、スミレ!」
サトルは右手を差し出した。
スミレはそれをはたくように右手で返した。
「よろしく……!」
「てて……当たりが強くないか……?」
「他人とはつるまないタイプなの。さて、今日はエンジンシティに泊まろうかしら……」
「えっ? その辺でテントを立てれば……」
「何言ってるの!?」
「!」
スミレは右手人差し指を立てながらサトルに詰め寄る。
「この辺は凶暴なポケモン達がわんさか居るワイルドエリア! そんなところでテントなんか立ててみなさい!! 寝込みを襲われて、大変なことになるわよ!? それに……」
「……それに?」
「きゃ……キャンプ場のスタッフでもないんだから……1人じゃできっこないでしょ!」
「?」
サトルは首を傾げ、ハテナ顔になった。
「何よその顔……」
「……」
「……?」
「君……」
「――!?」
サトルは俯き、おもむろに口を開いた。
「テントも張ったコト無いの?」
「グサァっ!!」
『サトルのつぶやく! こうかはばつぐんだ!』
――、
「そうよ……私は旅をしているのに、ろくにテントも張ったコトが無い……夜はポケモンセンターに泊めてもらうか、ホテルにお金を使うか、夜明けまで歩き続けるかの3択よ……」
「あっはは……(サバイバル能力ゼロか……)」
サトルは頭を掻いていた。
ムッとしたスミレはサトルに食って掛かる。
「笑ってるけど、そんなアンタはどうなのよ?」
「んー……俺は……リザードンの『火炎龍』が仲間になるまでは着火剤で焚火を起こして、明るくしてからテントを設営してたな……今は火炎龍の炎に頼っている。それで、火があればリュックに入っている鍋とかでカレーを作ってる……かな?」
「な……? な……!?」
ペラペラとソロキャンプ知識を経験談で語るサトルに、スミレは愕然として声も出なかった。
(コイツ……!)
スミレは両手をワイルドエリアの大地に突いた。
(私よりちゃんと旅してる――!!)
――、
「まぁまぁ、スミレ。気を落とすなよ」
「レイドバトル全然ダメなクセにぃ――! ムカつく!!」
話しながらワイルドエリアを進む2人の前に、1匹のポケモンが飛び出してくる!
「キャキャ!!」
『!?』
『キャモメが現れた!』
「キャモメか……進化前なら、お手のものだ。海龍!」
『サトルは海龍を繰り出した!』
「リュー!!」
「待って!」
「!?」
スミレは何か悟り、サトルに注意を促す。
「ここはワイルドエリア……野生ポケモンは総じて高レベルよ……」
「!?……あぁ!?」
サトルはポケモン図鑑を手に取り、キャモメのレベルを確認した。
「レベル……60!?」
「ほら……言った通りよ」
サトルは右手を握り締め、歯を食いしばる。
「くっ……! 海龍、『空を飛ぶ』!!」
「リュー!!」
海龍は天高く舞い上がった。
「キャモっ!」
『キャモメの『暴風』』
「いけないっ!」
スミレの叫びも虚しく、野生ポケモンの攻撃が海龍に襲い掛かる!
「ごぉぉおお!!」
キャモメが作った雨風は、上空に居た海龍の自由を奪った。
「リュー!?」
「あぁ!? 海龍!!」
サトルは海龍に駆け寄った。
「言わんこっちゃない……一旦、逃げるわよ」
スミレは『ピッピ人形』を投げた。
――、
「ワイルドエリアでは、『戦わずに逃げる』というのも生き残るための鉄則なの。ハイ、ピッピ人形。余ってるから5つあげるね」
「ピッピが……5体……えへへー////」
サトルがその人形を手に取り頬ずりをし始める。
「……分かってる? 投げれば、ポケモンから逃げられるの」
「え?」
「……」
溜め息を吐いたスミレは左人差し指を差しながら言う。
「あそこ……あの門をくぐれば、エンジンシティよ。街に付いたら、これでおさらばね」
「うーん……」
「何よ?」
「もうちょっと、一緒に旅しないか?」
「何でアンタなんかと!? 私は他人とつるまない主義……」
今度はサトルが人差し指を立てる。
「色々教えてよ。レイドバトルのコト。代わりに、テントの立て方とか料理、教えるからさ」
「――!」
スミレは俯き、暫く黙り込んだ。
「……よ」
「?」
「徹底的に教わって、1人で野宿できるようにして貰うわよ?」
「……モチロン!!」
2人はエンジンシティの門へと歩みを進めた。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。時田総司です。
ワイルドエリア回が一段落しますね。
レイドバトルがからっきしで、サバイバル能力のあるサトル。
一方で、レイドバトルに長けており、サバイバル能力皆無のスミレ。
互いを補い合えば、良いコンビになりそうですね。
さて次はエンジンシティへ――
ガラル地方の中心となる街は、どんな街なのでしょうか? お楽しみにっ!