~エンジンシティ~
「わぁ……でっかい歯車!……いたるところから蒸気が出て……倉庫や工場もいっぱい!」
サトルは初めて見るその街の様相に目を輝かせていた。
「蒸気機関によって急激な近代化に成功した街よ。ガラル地方に来て、間もないでしょ?」
スミレの言葉に、サトルはうんうんと首を縦に振っていた。
「ガラル地方は、人間とポケモンとが手を取り合って産業を発展させてきたの。例えば……」
「?」
スミレが右に顔を傾けたので、サトルもその方向に目をやった。
「ドテッコツ、これを運ぶんだ」
「ドッコツぅ!」
作業員がドテッコツに鉄鋼を指差している。
ひょいっと自慢のパワーでドテッコツがそれを片手で持ち上げ、運んでいった。
「あんな感じだったり……」
「!」
今度はスミレが右人差し指を立てたので、サトルはその先に視線を送った。
「おーい、マタドガスぅ! やってくれ」
「マータドガース!」
マタドガスは工場の煙突まで登っていき、そこから出る排気ガスを吸い込んだ。
「スミレ、アレは何を……? カントーのマタドガスとは違う形だけど……」
「ガラル地方のマタドガスはね、汚れた空気を吸い込んだ代わりに、綺麗になった空気を吐き出してくれるの」
「へぇー」
「近代化が進んで、公害などで自然環境が破壊されて問題になったこともあったの。それが酷くなるのを食い止めているのが、ガラルのマタドガスよ。私もカントー出身だから、初めはビックリしたわ」
「なるほどー。カントーのマタドガスとは真逆だな……」
サトルはすこしたじろぐ。
「さて、今日はエンジンシティのホテルに泊まるわよ。お金はある?」
「げっ! 早速サバイバル能力ゼロ発揮……」
「何か言った?」
「いいえ! お金……」
「?」
「技マシン、売ってきまーす!」
――、
~ホテル『スボミーイン』~
「わぁー! ロビーに銅像……本格的なホテルだぁ……」
サトルはスボミーインの内装に両手を握り、目を輝かせていた。
「いちいち驚かない! 因みに、私はワイルドエリアにくる際にしょっちゅう利用しているから」
(お金持ちなのね……)
2人は、チェックインを済ませる。
「部屋は同じ2階ね。明日は早めに出発するわ」
「あのぅ……」
「?」
サトルがもじもじとしながらスミレに話し掛けた。
「ポケギアの登録、しておかないか? 今後の為にも……」
「何企んでるの?」
「えっと……! レイドバトルのコト、スミレが居ないときにも教えてほしいから……」
「はいはい、そればっかりね」
2人は連絡先を登録した。
「よっしゃー!(レイドバトルにも勝って、シゲオに勝ちやすくなるぞー!)」
「ふー(そんなに喜んで……そんなに私の連絡先が欲しかったのかしら……)」
行動すら共にしても、2人の思惑は行き違っていた。
~205号室~
「フー、部屋だぁー。何か落ち着かないなぁ……そうだ! シャワー浴びるか……」
――、
「フッ……エンジンシティの夜景に乾杯……」
サトルは部屋に完備されていたナイトウェアに着替え、ペットボトルの水を一口飲み込んだ。
「さて、と――」
目を輝かせるサトル。そして次の瞬間――!
「とーう!」
ベッドにダイブした。
「はっははは! ふっかふっかだー! 皆も味わわせてやりたいけど、こんなに綺麗なホテルだから、汚せないなぁ……」
その時、机に置いていた4つのモンスターボールがカタカタと動いていた。
『カタ……(怒り)』
「! そうだ、スミレに連絡しよう! もしもし、スミレ?」
「何よ……?」
スミレは3コールくらいで出てくれた。随分と出るのが早い。
「スミレは何で旅をしているのかなぁーって思って!」
「そっ……そんなコト……ポケギアで聴くぅ!?」
「良いじゃん、別に」
「――! お金が……必要なの」
「へぇー」
「だからレイドバトルとかで道具を集めて、売っているの!」
「じゃあ何で、お金が必要なの?」
「プライバシー! もう! 切るわよ!?」
「あっ! ちょ……」
「ピっ!!」
通話は途切れた。
「切られちゃったかぁー。何のためのお金なんだろ?」
途切れたポケギアの先で、風呂上がりのスミレは顔を赤らめていた。
「他に……聞くこと、あるでしょ……もう!」
ホテルでの夜が更けていく。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
エンジンシティに、ホテル『スボミーイン』在り!
忘れていた方も多いのではないでしょうか。
2人の関係もあらぬ方向に進みつつある今回です。
野宿する時はどうなってしまうのでしょうか(笑)
次回もお付き合い宜しくお願いします。