ウマ娘×STAR WARS   作:ムラサキメダカ

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ナブー上空では、クワイ⁼ガン・ジンとオビ⁼ワンが通商連合との会談に特使として赴いている。

最高議長は平和的な解決を最後まで願っていたが、彼らにはその場の空気からそれがもうかなわないものであろうことがわかっていた。

共和国の闇は既に、始まりの号砲に指をかけていたのだ。


選ばれし少年

ジェダイ聖堂のホロクロン保管庫をステイゴールドの師匠は歩いていた。

 

静かで、それでいて荘厳、古い記録と知識の海。

 

そこで彼は一人の小さな少女と向かい合う。

 

夜のような髪と静かな瞳をたたえたウマ娘。

 

既にジェダイとして、聖堂に籍を置くマンハッタンカフェだった。

 

少女は立ち止まり、ステゴのマスターを見る。

 

「…カフェ、だったかな」

 

「フォースが…揺らいでいます」

 

沈黙、マスターはローブの奥で少し口を引き結んだ。

 

「ですが…遠いのです…まだ…」

 

「あぁ…すごく遠い、だが確かだ」

 

「マスターヨーダも…感じられているようです…」

 

「きっと我々よりも先に感じ取っていただろうね。

…そして我々の先を感じ取ろうとしてくださっているのだろう」

 

師匠は少し遠くを見るように視線をあげる。

 

そして、優しく笑った。

 

「そうか、君も感じられたんだね」

 

カフェは唇を噛んでうつむく。

 

「大丈夫、全てはフォースの導きのままに、流れから目をそらさなければいい」

 

「はい…」

 

「しかし、なぜ私に?」

 

「あなたの…元パダワンの」

 

「ステゴ、彼女がどうかしたかい」

 

「…揺らぎが、彼女を…取り巻いているのです」

 

この時をカフェは後年まで覚えている。

 

あの日。

 

ステイゴールドのマスターが、カフェの言葉を聞いてどこか寂しそうに笑ったことを。

 

そして…

 

「何かあった時は、彼女に力を貸してあげてくれ」

 

そう言って肩に手をのせ、後ろに手を組んで歩き去っていく、彼の後ろ姿を。

 

 

ナブーの上空では既に危機が芽吹いていた。

 

特使による交渉の決裂、通商連合軍のナブー侵攻の激化。

 

戦艦に膨大な量のドロイド軍。

 

広まる混乱。

 

クワイ=ガンとオビ=ワンはどうにか窮地を脱し、運命の地へ導かれる。

 

その戦いの最中。

 

ジェダイ評議会。

 

ヨーダがふと目を開く。

 

隣にはキ=アディ=ムンディを筆頭に、ジェダイマスターたちが神妙な面持ちでヨーダの言葉を待っている。

 

しかし、ヨーダの口は堅く結ばれる。

 

言葉にするのもたばかられるのだろう。

 

杖を突きながらコルサントを一望できる展望へ、そして遠い宇宙へ。

 

口が開く、評議会が動き出す。

 

「フォースが暗くなっておる」

 

 

そして、彼らよりもさらに遠くを見つめるものがいる。

 

誰にも見えない場所、闇に身を隠した暗黒面。

 

黒いローブの男が微笑んでいた。

 

銀河を覆う闇の正体は、まだ誰も知らない。

 

長き歴史の中で、曇った権力や思想では、もうその存在に気付けない。

 

誰もが世界の分かりやすく、暗く、目立つところを見る。

 

 

ジェダイ聖堂の裏庭で、ステイゴールドのマスターが変わらぬ空を見上げていた。

 

風が吹く、木々が揺れる。

 

遠く、本当に遠くで、再び何かが動いた気がした。

 

フォースの揺らぎに近い、だが少し違う。

 

その時、後ろから声。

 

「マスター!」

 

ステイだった。

 

全力で走ってくる。

 

なぜか辺境生物を連れて、訓練ドロイドに追い立てられながら。

 

口には蛍光色の菓子を咥えて走ってくる。

 

マスターは思った、銀河の危機より、まずこっちを何とかしたい、本気だ。

 

「何をした?」

 

「助けたんだよ」

 

「なんだって」

 

「全部」

 

意味が分からない。

 

だが、マスターは笑ってしまう。

 

そして思う。

 

まだ大丈夫だ。

 

わたしの銀河は、まだ平和だ。

 

だから、この時間を大切にしよう。

 

その思いが、後になってどれほど重い意味を持つか。

 

まだ誰も知らない。

 

 

そして、ナブーから脱出したクワイ=ガン達は、

 

やがて双子太陽の星へ辿り着く。

 

タトゥイーン。

 

そこには。

 

運命の少年が待っていた。

 

 

タトゥイーン。

 

双子太陽が照らす砂漠の星。

 

共和国の法律は届かない。

 

ジェダイの権威も届かない。

 

奴隷商人、密輸業者、賭博師。

 

そんな人々が集まる場所だった。

 

クワイ=ガン達は歩いていた。

 

砂が靴に入る。

 

そして暑い。

 

「やだなぁ、ミーここ好きじゃない」

 

ジャージャーが拗ねたように声を上げる。

 

「もう遅い」

 

クワイ=ガンは笑う。

 

そして、侍女と偽って同行したパドメ⁼アミダラ。

 

彼女は言葉少なに彼らに同行していた。

 

R2-D2もまたビープ音を響かせながらついていく。

 

 

ワトーの店。

 

アナキンは部品を整理している、意地の悪い主人に命じられたのだ。

 

パーツの名前を口に出しながら、どこか機嫌良さげに。

 

そこへ、扉のベルが鳴る。

 

客かな、珍しい。

 

アナキンは顔を上げた。

 

そして、目を丸くした。

 

この辺りでは見かけない、不思議な雰囲気の二人。

 

すぐにワトーが間に入る。

 

売り文句を弾丸のように吐きつつ、飛び回る。

 

そしてすぐアナキンを呼びつけた。

 

そして用事を押し付けたくせに、何をしていたんだと怒鳴る、いつものことだ。

 

店番を言いつけられ、膨れながら店に立つ。

 

ワトーは一人とドロイドをバックヤードに連れて行った。

 

そして、アナキンはそこで運命の「天使」、パドメに出会う。

 

 

紆余曲折会って、アナキンはクワイ=ガン達を家に招待する。

 

母のいる家に、そしてポッドレースの話をする。

 

そしてクワイ=ガンとジェダイについての話も。

 

クワイ=ガンはジェダイであろうことも。

 

奴隷を、母を自由にする為にジェダイになる夢を見たという話も。

 

そしてクワイ=ガン達も自分たちの目的を語る。

 

コルサントへ帰るため、必要な修理パーツがないことを。

 

そのパーツを買う資金がないこと、恐らく強欲なワトーはびた一文まけることは無いであろうことも。

 

アナキンは自分がポッドレースに出て勝てば解決すると提案する。

 

母の反対にあい、クワイ=ガンにも窘められる。

 

しかし、アナキンはいう。

 

「ママはいつもこの世で大切なのは助け合いだって言ってるじゃないか…」

 

その言葉で、母は折れたのだろう。

 

アナキンのポッドレース参加を、最後には認めたのだった。

 

クワイ=ガンは少年を見る。

 

静かに、じっと。

 

フォースが揺れている。

 

穏やかな恒星みたいに。

 

 

ポッド―レース出場が決まったその夜、スカイウォーカー家。

 

小さな食卓、アナキンは嬉しそうだった。

 

ジェダイが家にいる。

 

夢みたいだった。

 

クワイ=ガンは話を聞く。

 

シミの話。

 

アナキンの話。

 

そして、奴隷としての暮らし。

 

静かに、ただ聞く、パドメも。

 

ジャージャーは意味もなく楽しげだったが、明るい食卓だった。

 

 

 

クワイ=ガンがシミとアナキンの出生について話しているとき、アナキンは自らのポッドレーサーを整備していた。

 

やがて同世代の子供たちに囲まれ、自慢げにポッドレースに出ることを話すが、すぐに笑いや心配を買い、何人かは去ってしまう。

 

肩を落としつつ、ジャージャーと整備をする彼のもとに、どこかで聞いた足音が響く。

 

その時だった、遠くから声がした。

 

「アナキンー!」

 

元気な声、聞き覚えがある。

 

アナキンが周囲を見回す。

 

そこにはこちらを目指して走るスズカがいた。

 

目の前にたどり着いた彼女は砂だらけだ、相変わらずだった。

 

「スズカじゃないか!」

 

アナキンが笑う。

 

「近くを走ってたら、ちょうどあなたが見えたから」

 

「目がいいんだね!

聞いてよ、実はね…!」

 

アナキンは嬉しそうだった。

 

パーツをもって来たクワイ=ガンはその様子を見る。

 

そして少し微笑む。

 

「友達か?」

 

アナキンが頷く。

 

「うん!」

 

即答だ、スズカは少し考えている。

 

そして…。

 

「そうね」

 

と答えた。

 

その瞬間、クワイ=ガンはどこか安心を覚えた。

 

この少年には様々な友人がいる。

 

それが嬉しかった。

 

「手伝おうか?」

 

「うん、助かるよ」

 

その瞬間、ジャージャーがポッドから迸る稲妻に触れて吹き飛んだ。

 

「…本当に助かるよ!」

 

 

夜。

 

アナキンは外に出た。

 

スズカもいる。

 

二人で空を見上げる。

 

星々。

 

無限の宇宙。

 

アナキンが言う。

 

「いつか行くんだ」

 

スズカは縁に腰かけながら同じように空を見上げる。

 

「どこへ?」

 

「全部!」

 

スズカは笑った、実に子供らしい。

 

「全部か、いいわね」

 

「うん、全部だ!」

 

アナキンは頷く。

 

本気だった、その瞳は真っ直ぐだ。

 

スズカは空を見る。

 

そして静かに言う。

 

「行けると思う」

 

アナキンが笑う。

 

「本当に?」

 

「うん」

 

少しだけ間が空く。

 

そして、スズカは続ける。

 

「でも」

 

「帰る場所は忘れない方がいい」

 

アナキンは首を傾げた。

 

意味は分からない。

 

まだ、分からなくていいのだろう。

 

「それより、アナキン。

あなた、腕を怪我してるわ」

 

「え…こんなのかすり傷だよ」

 

「だめよ、レース前は体調を整えなくちゃ」

 

スズカはふと家の方を見る。

 

そこにはクワイ=ガンが立っている。

 

手には薬をもって。

 

「お邪魔だったかな」

 

「いえ、私はもう行くところだったから」

 

「もう行っちゃうの?」

 

アナキンが寂しそうな声を上げる。

 

「レースは見に来る?」

 

「ええ、絶対に見に行く、あなたの速さが見たいから」

 

「約束だよ!」

 

「ええ」

 

スズカは軽やかな足取りで夜の町に消えていく。

 

その背を見送るアナキンを、クワイ=ガンの優しい相貌が映していた。

 




ブーンタ・イヴ、ポッドレースの日が来る。

運命は動き出す。

クワイ=ガンの賭け。

アナキンの挑戦。

そして、ジェダイ評議会を揺るがすことになる、シスの影。
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