雪と星のゴジラのアカデミア   作:lambdazero

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十年以上の月日と共に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界に来てから十年以上経過した。

 彼女、星野唯は魔王の庇護の元で匿われて、何とか生き長らえた。

 とは言うが、原作通りラスボスと魔王の巨悪二名は健在だし、良い生活を保障すると言うだけあった。

 魔王は、原作よりもビジネスマンだった。

 等価交換。ビジネスライク。

 青山あたりが個性という一生モノの対価を強請った代わりにスパイ程度で済まされていたのは、魔王なりの慈悲だったようだ。

 或いは、嫌がらせか。

 雄英にネズミを入れさせること自体が、彼のオールマイトへの嫌がらせ。

 因みにラスボスとは一回も顔を合わせていない。

 ずっと隔離状態だった。

 代わりにドクターがよく来ていた。

「恐ろしいのう、これが非対称透過フィールド……。体内で起こす電磁気によるバリア機能か。挙げ句にEMPまで発生して電子機器が死ぬ。ほれ唯ちゃん、対価じゃろ。ちょっと細胞の摘出するから切らせておくれ」

「……」

 当時、幼少時代の唯はドクターを信用せずに魔王が直接切ることを所望した。

 だが魔王がやると、抉り取って死んでしまう。

 爪先でちょっと削るぐらい出来るだろうが、妙に丁寧に扱われた。

「ドクターも知ってるだろう。最後のユーマ、ゴジラ。この子の個性の『ゴジラ』はそれとは恐らく別物だ。怪獣の記憶が風化しないこの国にとって、降臨した災禍だろうねぇ。唯、君は凄いよ。このゴジラの情報を僕にくれ。それだけでも、僕の個性で奪えずとも十分な対価だ」

「……いいよ。もう、私は関わった。逃げられない。魔王か、ヒーローか……。二択しかない」

 暴露してしまった。

 自分はこの世界の果てを知る輪廻転生を超えた怪物。 

 その果てを続けるレールを、この個性が破壊した。

 ヒロアカ世界に最後のユーマという名称でゴジラが居たのは想定外だったが、概ね知っている。

 魔王の目的は、世界の支配。全ての独占。

 魔王への憧れと全能の個性、AFO。

 この世界におけるアドバンテージを奪う、与える、神の奇跡。

 だが、魔王にとってもこのゴジラの個性は奪えない。

「ねえ、魔王。私の個性は、器の身体を上書きする。見た目だけなら背鰭の生えてきただけだと思うでしょ? でも魔王なら気付いてるよね?」

「そうだね。肉体が未知の金属を含んだ植物に似てる。超速再生、重力操作、電磁気操作、時空を破壊する光線や熱線としか言えないビーム。これらが全部身体を書き換えて、君を作り替えた。僕が出している電磁波も吸収して、僕には君が視認できないんだ。分かるのは飲まれた電波を逆探知して、君の内部を見ることだけかな。これはもう、人間の領域を超えているよ。素晴らしい! 神ってのが本当に居るんだな!」

「居たとしたら邪神も良いところだよ……」

 幼少時代に生えた背鰭は直ぐに変化して、水晶の欠片のような透明な背鰭に変わった。

 雪のゴジラでもない、アースでもない。彼女の背鰭。

「仮に奪えば僕の肉体もよく分からないその繊維みたいなものに書き換えて、僕の中の個性を食らう可能性がある。それじゃ魔王と言うより第二のゴジラだよ。生憎とゴジラには心は靡かないんだ」

「貴方に心って合ったんだ」

 魔王にも皮肉を言えた当初。

 四歳に有り得ない精神年齢。

 輪廻転生を超えた、前世の十代の精神が嗤う。

 昏い蒼の双眸は絶望しか浮かばない。

 壊した原作が、ドンドン破綻する。

 そもそも、星野唯という存在は居ない。

 緑谷出久、爆豪勝己は幼馴染み。それだけだ。

 そこに沸いて出た謎の枠、星野唯。

 こいつは、誰だ。

「少し待とう、ドクター。急ぐことはない。この子がオールマイトを全盛期の神にしたというなら、上等だと言わせて貰おう。僕は魔王だぜ? 神殺し、やってみようじゃないか!」

 盛大に手を叩いて、魔王は宣言する。

 魔王なら、神ですら打倒しよう。

 唯からはもう少し成長してから採取すれば良い。

 四歳当時は未熟すぎる。そう言って引き延ばした。

 数年後、氏子というドクターの事を渋々従って、皮膚を切った、が……。

「待て、皮膚に刃が通らん! これでは切れん!!」

「あれまぁ、柔軟性と耐久性が凄いね。本当に僕の爪でちょっと切るぐらいしないとダメか」

 透過フィールドを解いて切ろうとしたらメスが折れた。

 刺すにも刺さらず、切るにも切れず。

 魔王が直々に痛いのは申し訳ないとだけ言って、手の爪で軽く切った。

 血が、出ない。瞬時に治る。

「おっ……!? おいおい、凄いな。切った破片ですら僕を食おうと侵食してきたぜ」

 慌てて爪を切り落とす魔王が言う。

 鮮度が良いうちに培養して量産しよう。

 これが後に脳無に移植されて、下位の脳無ですら戦力が爆上がりした。

 彼女が脳無を検知できる、ある意味のアースの再現。

 彼女の細胞で作った試作の脳無が出来上がったと数年前にドクターが言った。

 試しに適当なヒーローに嗾けたら、瞬殺したらしい。

「超速再生の個性を複製せずとも肉体が再生できる。うほうほ、面白いのう。これが唯ちゃんの言うアースと言う奴か」

「……」

 培養して量産したら脳無の戦闘能力が爆上がり。

 但し、欠点があった。唯が不意に、呟く。

「五月蠅い」

 そうしたら、観察していた脳無が苦しみだした。

 無為に暴れて、そして。

「少し、黙れ」

 そう言うと脳無の機能が即座に停止した。

 移植した複製の個性ごと、完全に。

 ……停止した、というと不適切。

 死んだのだ。突っ立ったまま。

「ほぉ。オリジナルのゴジラの命令で、培養の細胞まで従えるのか。益々興味深いのう!」

「唯、脳無を無意味に殺すのはちょっと控えてくれないかな。アレでも貴重な戦力だ」

 王たるオリジナルのゴジラ、アースの命令で移植した脳無は唯に逆らえない。

 自由自在、超速再生に複数の個性も持てる代わりに。

 魔王以外で脳無を黙らせるストッパーが出来た。

「私の一部を使うのは良い。けど、忘れないで。アースの由来は、星の支配者」

「違う世界で地球を支配したゴジラ……。いいねぇ、僕の目指す世界に近い。物理最強とかロマンだよ!」

 魔王は子供のように燥いで言う。

 個性でなく、肉体の特性。

 唯は何も食えない。水さえ飲んでいれば良い。

 空腹を感じず、光を浴びて、渇きだけ潤せば。

「金属を含む植物由来の繊維みたいなものか。すっかり定着したね唯」

 数年後、もう諦めて慣れた唯に魔王は言う。

 身体が、小柄なのに異様に力が強い。

 軽いから小回りも利くし、高速で動ける。

 透過フィールドで防御も出来るし、熱線すら吐ける。

 体内で起こす電磁気操作も爆発的に上昇し、彼女にはおおよそ個性の攻撃が通用しない。

 個性を封じても、物理最強故に殴り殺せる。

 この頃には既に余所にラスボスがいて、嫉妬で会わせろと向こうは言っていたようだが。

 黒霧もこの頃にはいた。

 だが魔王が拒否していた。

 唯が興味が無いのと、鬱陶しいので吹き飛ばされたいのかと聞いたからか。

「どうでも良い。好きにやってよ」

 そう言って、無視していた。

 荼毘のことも知っていて無視。

 魔王の暗躍を放置していた。

 それに。雪のゴジラの能力が、まだ上手く使えない。

 最初の暴走のとき、周囲を無差別に巻き込んで時空に飛ばしたあの力。

 あんなの、知らない。雪のゴジラ自体が設定が曖昧でどう転がっているのか。

 時空を吹き飛ばして、異聞帯に繋げたりする光線しか分からない。

 身体は既にアースなのに、雪のゴジラの能力が足を引っ張る。

「……」

 それから更に数年後。

 彼女は相変わらず魔王の元にいた。

 出久が、オールマイトに出会って。

 オール・フォー・ワンを継承する約束をした。

 唯のことを引き摺っている事も知らずに。

 緩慢に、怠惰な怪獣は、魔王の謳歌を眺めていた。

 破綻させて、バグらせた戦犯に何が出来る。

 唯など居ないハズの世界で、何をする。

 それから、大体一年が経過した。

 今年で15歳。もう、十年以上経過したと思う。

 長いようで、短かった。

 こっちの人生の大半を魔王の庇護の元、隠れていた。

 彼女はずっと、とある病院にいた。

 田舎の目立たない病院。そこの一室で、世の中の動きすら知らずに、隔離されて。

 光と水さえあれば良い。植物とは、そう言うものだ。

(もう15歳……か。そういえば、雄英の入試って何時だろう? 原作始まってるのかな)

 同年代だから、季節的にも雄英に出久達が入学する頃。

 どうでも良いか、と思った……その時だった。

 脈動。

 鼓動。

 覚醒。

(……なに?)

 これは、雪のゴジラの個性。

 窓から外を眺めていた時だった。

 今日も日がな一日ボーッとしている平穏に。

 いきなり、雪のゴジラが目を覚ます。

(うっ……!?)

 着ていただぼだぼのジャージから突き破る背鰭。 

 周囲に、雪のような結晶を撒き散らす。

 冷たい感覚が、背骨に、背中に走る。 

 ……これは。あの時の、暴走の時の痛み。

「嘘……!? また、また暴走!?」

 空間が、病室が、軋む。

 雪花が舞い散る中で。

 急激に、個性が、雪のゴジラが、目覚める。

「止めろ……止めろォ!!」

 個性を抑える。アースの力で、透過フィールドで。

 輝き出す背鰭。

 彼女の周囲が無差別に転移しては抉られていく。

 だが、忘れていた。

 透過フィールドは、内側には意味が無い。

 外敵のための非対称透過フィールドは、自分が敵なら無意味だと。

 

「うわあああああああッ!!」

 

 ――ッ!!

 

 少女の声とは思えない、絶叫。

 その悲鳴が、金属を擦り合わせたような咆哮へと姿を変える。

 田舎に木霊する、ゴジラの咆哮。

 周囲が、明るく、眩く、霞む!?

 止まれ、止まれ。止まれェ!!

 アースの力ですら雪のゴジラには勝てないのか。

 もう、十分。これ以上、唯に痛みを、与えないで。

 だから……!

 

「――誰か、助けて……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は変わって、一年後の雄英の試験場。

 巨大な都市部を模したその場所で、彼はいた。

 あの時から、出久はオールマイトに誓った。

 この一年近く、鍛えて、心身を精進させた。

 爆豪には、何を必死になっていると言われたけど。

 それもこれも、この日のために。

 彼女が帰ってきたら、或いは絶望と恐怖で悲しむ誰かが居たら。

 絶対に、助けると誓ったのだ。

 その為に、雄英のヒーロー科に方向転換して、実技試験を受けていた。

 なのに……。

(点数を稼げる相手が周りにいない!?)

 出久は見事に失敗した。

 他の受験生がヴィランの為に用意されたロボットを破壊し終えて、残り時間は僅か。

 完全に出遅れた。挙げ句に。

 バカでかい得点にならないロボットが眼前に現れて。

 これが、試験の前に言ってた障害物。

 倒してもメリットはない。みんな逃げる。

 無意味なのだ、相手するだけ。

 その時だった。

 

 ――ッ!!

 

 上空で、突然青空の中で雷鳴が轟く。

 そして、国民なら誰しも知る、あの咆哮が響き渡る。

「……!?」

 戦慄する一同。

 ハッとするのは、出久だった。

 この、声。恐怖と絶望の、雄叫びは……!

 雲などない。虚空から、突如落雷が起きた。

 丁度それは、瓦礫で転んで動けない麗日お茶子の近くに着地。

「うわぁ!? なに!?」

 墜落した、その何かにお茶子はビビった。 

 ……あの雄叫び。皆が知る嘗ての災禍の王者、怪獣。

 その答えは、再び現れる。

「痛い……!! 痛い!! 痛いッ!!」

 のたうちまわり、悲鳴を上げる女の子。

 突如落ちてきた、謎の存在。

 雪色のロングヘアに、だぼだぼのジャージ。

 だが、その背中に生えた巨大な背鰭が、雪の花を振りまいて。

 涙を流して、叫ぶ。痛い。

 

 ――ッ!!

 

 その度に、怪獣の咆哮は木霊する。

 皆が見る。アレは、何だ?

 いきなり落ちてきた、女の子?

 モニターしていた教師も、ざわめいた。

 謎の乱入者。何だこれは。何が起きた?

 オールマイトに至っては、即座に対応していた。

 でも、きっと彼女にとっての幸運なのは。

 自分のことを、ずっと引き摺っていた、未練の少年が目の前に居たことだ。

 

「……唯ちゃん!」

 

 出久は駆け出した。

 苦しんでいた。また、あの時のように。

 彼女が、星野唯が。生き別れの、幼馴染みが!

(点数なんかどうでも良い! 今度は! 今度だけは!! 僕は……僕が!!)

 思い出せ。あの時、恐怖で苦しんでいた彼女を。

 他の受験生が冷静に止める。

 状況は危険だ。迂闊に近寄るな。

 だが、大声で言い返す。

 奇しくも、オールマイトに言いたかった言葉。

 嘗て、出来なかった言葉が。

 

「目の前で苦しんでる女の子一人助けられなくて……ヒーローなんか出来るか、バカ野郎ッ!!」

 

 思い切り、両足に力を込める。

 跳躍。ぶっ飛んだ。

 反動でアスファルトが粉砕される。

「助ける……! 絶対に、今度こそ!」

 目の前にいる巨大なロボット。

 敵意はない。ただの、障害物。

 邪魔だ。退け。

 今は、唯と、もう一人の女の子の為に!

 拳を握る。腕を振るう。個性を流す。

 痛い。両足が壊れて悲鳴を上げる。

 でも、それ以上に! 唯は! 痛いんだ!

「スマアアアアアアシュッ!!」

 心で叫べとオールマイトは言った。

 声に出せ。唯に言え。ここに居る。

 出久が、此処に来たと!!

「うわあああああああッ!!」

 怪獣の絶叫が響いて、ロボットが蹌踉ける。

 咆哮だけで衝撃波になって、周囲を攻撃する。

 速く、速く! 彼女があんなに苦しんでる。

 急げ、間に合え!

 思い切り、ロボットの巨体を殴った。

 浮き上がって後方に吹っ飛ぶロボット。

 腕が死ぬ感覚と激痛がする。

 それでも……!

「ぎゃああああああああっ!!」

 眼下で、彼女が劈く悲鳴を上げた。

 季節外れの、雪が暴風のように荒れ狂い出す。

 その暴風に巻き込まれた。

「ぐっ!?」

 無防備で回転する暴風域。

 その下で、唯は背鰭から眩い蒼の燐光を放つ。

 振り返り、後退するロボットに目がけて。

 小さな口を、大きく開いた。

 

 ――轟ッ!!

 

 ゴジラの、破壊光線。

 ロボットを易々と貫通し、敷地をぶち抜き、軌跡を空に打ち上げる。

 爆散するロボット。轟音をかき消す、怪獣の嘶き。

 爆風でお茶子と唯は吹き飛ぶ。

 軈てゆっくりと立ち上がって、唯は見た。

 虚空を、煙をあげて壊した敵を。

 蒼の双眸に知性は無く、ただの空虚を湛えていた。

 次は近くに居た、麗日お茶子。

「えっ……。待って、止めて……!?」

 怯えるお茶子。こいつは、何だ。

 この声。

 何時かオールマイトが倒したというゴジラ。

 それが、お互いに目に入る。痛い。痛い。

 これは、敵か? 痛い。

 こいつ、ヒロアカのメインヒロイン。痛い。

 出久に恋をする、普通の女の子。痛い。

 分かってる。痛い。違う。痛い。

 速く……! 痛い……!

「に……げ……て……!」

 個性が、雪のゴジラが。

 周囲を、無差別に、時空に巻き込み壊していく。

 雪の暴風、時空の歪み。雪花が舞う、試験会場。

 恐怖でお茶子は竦み上がる。立ち上がれない。

 怖すぎて、身体が、強ばって……。

 そこに、彼が来た。

 

「もう大丈夫、私が来たッ!!」

 

 ドンッ!! と突然現れる、ヒーロー。

 死にかけの出久を空中でキャッチしたオールマイト。

「唯ちゃん!! 僕だよ、出久だよ!! 思い出して!!」

 必死に脇に抱えられた出久が叫ぶ。

 その声に、ゴジラが反応する。

「い……ず……く……?」

 違う。もう止めろ雪のゴジラ。

 彼は主人公で。痛い。

 ここは、雄英の。痛い。

 試験会場? 痛い痛い痛い!!

「ぎゃああああああああっ!!」

 再び絶叫。貯め無しの光線を吐こうとする。

 怪獣の鳴き声が、衝撃波がオールマイト達を襲う。

「星野少女。本来であれば、此処は緑谷少年の出番だが……代打を許してくれよ!」

 一瞬、オールマイトが残像を残して消える。

 止まらない光線のモーション。

 ならば、どうするか。

「食らえ、とりあえずの即席スマッシュ!」

 真正面、眼前で急停止。

 顔面を地面に叩きつける、拳骨をぶち込む。

 結果、直撃。アスファルトに陥没する唯。

 倒れて気絶かと思ったオールマイト。

 然し。

 ぶうんっ! と空を切る音がした。

「おっと!?」

 薙ぎ払うように、巨大な尾がオールマイトの空いている脇から襲う。

 エネルギー状の尾が四方八方に振り回して暴れていた。

 本人が、めり込んだ身体で起き上がる。

「……」

 ダラリと、前のめりで立つ唯。

 知性のない、蒼の双眸がオールマイトを見た。

 敵だ。こいつは、敵だ。

 個性が勝手に判断する。

 雪のゴジラが荒れ狂う。

 怪獣の降臨。試験などとうに中止だ。

 受験生はもう自主的に逃げている。

「唯ちゃん!! 目を覚まして!」

 その必死な声に、死にかけの精神が蘇る。

 ああ、もう。存在しない仮初めの存在だというのに。

「……うるさいな……。聞こえてる、よ……」

 ガクッと一回項垂れて。

 顔を上げると、理性のある表情で唯は言う。

「久し振り……? ええと、出久君……?」

「唯ちゃん!!」

 出久の表情が明るくなった。

 オールマイトも問う。

「星野少女。……久しいな。で、大丈夫か?」

「オールマイト……。久し振り。今度は、私の光線食らってないよね?」

 雪のゴジラがまだ内部で暴れる。

 雪花が触れたモノを虚空に飛ばす。

「ちょっと、またダメっぽい。雪のゴジラが、言うことを聞かない……。オールマイト、一発スマッシュくれるかな? 強めに。アースでも、抑えが出来ないみたいで……」

「雪のゴジラ……? アース……?」

「私の中に居る、二体のゴジラ。異次元の『Godzilla』って、言った方が良い?」

「異次元のGodzilla……。正しく神の怪獣、か……」

 苦く笑って、個性のゴジラがオールマイトを攻撃しようとしているのを食い止めているから今のうちに、と。

 このエネルギー状の尾は雪のゴジラの一部。

 白いエネルギーをぶん回して背後のビルを薙ぎ倒す。

「前回みたいに、オールマイトを怪物にはしないよ。速く、決めちゃって?」

「分かった。緑谷少年、今回は私がやろう。済まない」

 そう謝罪すると、脇に抱えたまま不敵に笑うオールマイト。

 痛いのは、済まないと言っておく。

「もう十分痛いし……」

「では、手早く済まそう。……テキサス・スマッシュ!」

 抑え込んで棒立ちの唯に叩き込む、右ストレート。

 鳩尾にぶち込まれ衝撃波で背後の瓦礫が吹き飛ぶ。

 本人は踏ん張って、漸く気絶した。

「悪いな、星野少女。そして……」

「お帰り……唯ちゃん……」

 原作組との、合流であった。

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