雪と星のゴジラのアカデミア   作:lambdazero

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ゴジラのヒーローアカデミア

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、試験会場はめちゃくちゃだった。

 気絶して、翌日らしい日に起きた唯。

 試験こそ無事に終えたが、受験生達は愕然とする。

 大々的にュースになった。

 雄英の入試試験に突如現れたゴジラの再来。

 オールマイトが撃破して、対象は逮捕された。

 繰り返す、逮捕された。

 何もしてないのに……とは言わないが、人的被害は出してないのに。

「戻ってきたらヴィラン扱い? 私何かした?」

 ウンザリした顔で、パイプ椅子に捕縛布で捕まって抹消ヒーローに睨まれる唯。

 その後、雄英の施設の一室で、ヒーロー達が集まっていた。

 相澤というヒロアカのA組の担任も含めて。

 今回はヒーローとして、合理性に見て捕まえた。

「お前がゴジラの個性を持っているのは知っている。悪いが、尋問をさせて貰うぞ星野唯」

「私に人権を与えない癖に、よく言えるね」

 人として見る気が無いのはよく分かった。

 一同、特に校長の根津が唯に言う。

「悪いとは思うよ、星野唯君。でも君は十年以上前に行方不明になったまま、今になって突然現れた。この事実は、分かるね?」

 根津校長。唯一の作中の動物で個性を持つ相手。

 理論では前世含めて勝てないのは分かっている。

「んなことは理解してるよ。って言うか、戸籍上私どうなってんの?」

「君の両親はあの後離婚し、双方今じゃ再婚してるよ。君は行方不明から十年以上経過して、死亡扱いされていた。行政にも両親にも一応早急に君の生存を知らせたけど……両方とも面会も拒否された。今の生活があるし、今更君に会いたくない、と言っている」

「要するに実の親に捨てられたって?」

 離婚して再婚して、今じゃ普通に暮らしている。

 実の親ですら、唯は見捨てるのか。

 天涯孤独になった上に、親達はもっと自分の方が大切らしい。

「……だと思ったよ。ねえ、せめて普通に人の扱いしてくれない? これじゃただの捕虜だよ」

 捕縛布で拘束して、尋問とか人権侵害だ。

 訴えると、根津校長は。

「相澤君、解いてあげなさい」

「済みませんが、出来ません。彼女は国が指定した特定危険個性の持ち主です」

「それ以上に、自分の被害者だ。個性の暴走で苦しむ、子供だよ」

 人として見ない相澤と、子供として見る根津校長。

 プロとして、譲れない一線であり妥協でこれなのか。

「……舐められたもんだよね。この程度の布で、怪獣を捕まえたつもり?」

 ムカついてきた。人権侵害をヒーローの理屈で潰されて、捕虜以下の扱いにするのが。

「抵抗する気か? 立場を分かっているのか、星野」

「抗議してるだけ。私がそんなに怖い?」

「感情論ではなく、理屈で危険だと言っているんだ」

「それで怪獣の逆鱗に触れて、何度滅んだか歴史で知ってる癖によく言うよ」

「……」

 確かに怪獣の歴史において撃退を選び反攻したら撃破されたという当時の人類。

 その事を踏まえて言う。せめて普通に接しろ。

 拘束しているのが不愉快だ。

「相澤君、彼女は人だよ」

「いいえ。立派な怪獣です」

 根津校長が人と言えば、相澤は怪獣という。

 そろそろキレて良いだろうか?

「抹消ヒーローに怪獣と言われるの、スッゴい不愉快」

「……お前が出した被害は怪獣と大差が無いからそう言っている」

「なんだ。結局私は孤立してるんじゃん。味方なんか誰も居ない。これがヒーロー? 秩序のために法律が私を殺せって言うなら思いっきり抵抗してやる」

「相澤君、止そう。彼女が嫌がっている」

 漸く黙ってみていたオールマイトが口を挟む。

 追い込めば、それこそ逆鱗に触れて暴れ出す。

 個性が無くとも、恐らく彼女は、もう。

「オールマイト、然し」

「嘗て私を書き換えた少女だよ。怒らせれば、それこそ大惨事になる。皆も知っての通り、彼女はゴジラの個性を持つが私達の知る最後のユーマのゴジラではないそうだ。異次元のGodzilla。そう教えてくれた。詳細を聞くには、先ず彼女を拘束するのを止めよう。話し合いに、拘束は不要だ」

「……オールマイトもそう言うのではあれば。但し個性は抹消のままだ。良いな、星野」

 渋々拘束を解いて、自由になる唯。

 立ち上がって、水くれと要求する。

 却下された。ムカつく。

「そこには私は触れてないでしょ。抑えてくれる分は、ありがとう。雪のゴジラ、全く言うことを聞かないから。消えてる方が安心できる」

「……まだ、個性がコントロール出来ないのか?」

 十年以上前にオールマイトを神にした怪獣。

 その全容は、アースは兎も角雪のゴジラにはさっぱり理解できない。

 元々原典はゲスト出演のゴジラだ、詳細不明でこっちの個性でどうなっているのか分かれば苦労しない。

「そもそも、もう人止めてるしね」

 人権侵害だとは言うけど、実際は生態は人を止めた。

 人外の自覚はある。困惑する彼等に、唯は言う。

 で、自分は結局どうなる?

「君は戸籍上、死んでいるが生きていたと言うことで元に戻った。ただ、個性がゴジラである以上、普通の生活は無理だと思って欲しい」

 根津校長が、前置きしてそう言った。

 法律で決まっている、特定危険個性。

 本人に関わらず危険だと判断された場合適応される。

 使えばヴィラン扱いで逮捕。

 見つかった時点で隔離されて処置される。

 唯の場合暴走してもオールマイトが確保。

 本来であれば処置されるハズだった。

 だが幼少時、彼女は逃亡した。

 理由を聞かれて、言っても無駄だと切り捨てる。

 もっと言うと。

「この十年以上、何処で何をして生きていたか。言うつもりは無いよ。一応でも、お世話になった義理があるから。ヒーローには、言いたくない」

「その時点で大体想像つくからいいよ。そうか、君は案の定奴の場所に居たんだね」

「奴……?」

「悪いが秘匿義務がある案件だ。聞かないで欲しい」

「……はい」

 魔王のことを知っているから、根津校長は聞かずとも分かると言った。

 分からないのは他の教師達だけ。

 相澤は疑問を黙する。

「奴からよく逃げ出せたね、星野少女」

「暴走して知らないまま此処に来た。逃げたわけじゃない」

 オールマイトが思うに、これ程の個性なら奪ってもおかしくないのに。

 そう思うが、魔王が人間止める個性を欲しがると思うか、と聞かれると思うと改める。

 怪獣になる個性など如何に強力でも欲しがらないだろう。奴は魔王に憧れる邪悪だ。

 決して怪獣という存在には靡かない。

「まぁ、何か私を使って実験とかしてたけど。どうでも良いから無視してた」

「利用されていたのに看過していたのかい?」

 根津校長は唖然とする。

 モルモットでありながら自覚があるのに、何故抵抗しなかった。

 抵抗すれば、居場所が無くなる。

 ヒーローに追われる日々が来る。

 居心地は悪くなかった。悪びれないで、そう告げる。

「ヒーローは万人の味方。私みたいな災害の味方が、ヒーローに居るわけがないんだよ」

「……」

 オールマイトは敢えて黙る。

 やはりか。ヒーローに、心を閉ざす。

 ゴジラという個性は災禍だから、ヒーローには理解できない。

 それも承知の上で出久は命懸けで君を救おうとした。

 そう言えたら良かったが此処には私情は挟めない。

「君の過ごしていた居場所は何処かな?」

「だから言うわけ無いでしょ。仮にも十年以上お世話になった相手に、仇で返すわけにはいかないの。報復も怖いしね」

 保身的に唯は根津校長に言った。

 何をされても、口は割らない。

 開いたら光線が出ると思えと脅してきた。

「さて。じゃあ星野君。君のこれからの処分だが、上の人々はオールマイトによる駆除を要求している。言い方が既に私は不快感があるけど君のことが余程怖いらしい」

「結局私のこと怪獣扱いしてくるじゃん。良いよ、オールマイトとやり合ったら三日三晩は戦ってやる。ジリ貧で、街が幾つか焦土になる覚悟があるなら、来れば良い」

 唯は言い返す。殺せるモノなら殺してみろ。

 今度こそ、時空の彼方に吹き飛ばして戻れないようにしてやる。雪のゴジラの力さえ使えれば五部だ。

「上層部は君の存在を特定危険個性の最上級に認定した。この意味が示すのは、簡単に言えば見つけ次第ヒーローによる即時の死刑執行と同じだよ。凶悪ヴィランだって逮捕するヒーローが、明確に『駆逐』を国から命令されたんだ」

「……ねえ。私が何をしたの? そこまで徹底的に否定してさ、私に死ねって言いたいんだ。これが自前の秩序のために殺せって言うお題目?」

 根津校長は唯が聞いた質問に答える返答を出せない。

 常人を超える知性を持つ根津校長だからこそ、言えない。

 法律は万人のためにある。彼女の場合、まるで生まれた時の原罪で裁かれ殺されるような理不尽だろう。

 分かっている。だから彼女は魔王のところに逃げた。

 生き延びる為に、利用されても生きたいから。

「悪いけど非対称性透過フィールドがある限り、私に物理的な個性の攻撃は通用しない。EMPで電子機器も壊すからタルタロスにも投獄もできない。今みたいに抹消されても素で殴れば人を殺せるし、何を食らっても平気だし勝手に治る。その怪獣を、どうやって殺そうって言うの? オールマイトに今殴られても私は、死なないよ」

 もうそこまでアースの個性が成長しきった。

 アースの力はある程度コントロール出来る。

 アースはゴジラの部類でも物理的な意味合いで最強の地球の支配者に至った個体だ。

 それを使えると言うことは、事実上殺すことは不可能という意味。

 分からないのか。この個性は、人の手に余る。

 雪のゴジラさえどうにか出来てしまえば、魔王だってこの世界からドロップアウトさせて追放できる。

 ……戻ってくる可能性大だが。

「うーん……私はハッキリ言えば、刃向かう気満々だよ。雄英の校長として、何より君が万が一グレてヴィランになったらこの国は間違いなく滅ぶ。奴に協力していたのも私達との争いを避けるための必要悪だと割り切ろう」

「まぁ、衣食住十年以上提供して貰ったし……」

 根津校長は、上層部の判決に反旗を翻すと言い切った。

 相澤は流石に立場とか危ういから止めた方が良いとは言う。

 縦社会のヒーローも、管轄の国には逆らえない。

 だがここは天才根津校長。

 既に初回で駆除しようとしてオールマイトがまた得体の知れない光線を受けそうになったとでっち上げる作戦を立てた。

 つまり試験の時に既にオールマイトは殺すつもりで応戦していたと前提を勝手に作るのだ。

 実際目撃しているという受験生、麗日お茶子と知り合いだという緑谷出久から光線を撃とうとしていた言質は取れる。

 下手に刺激すると歴史の通りゴジラに日本は蹂躙される。

 それでも死刑執行を命じるのがどれだけのリスクか箇条書きで上に報告する。

 オールマイトが不死身になったトリガーをもう一度引けば不死身の反転、即死になる。

 平和の象徴と大人しくしている不発の怪獣。 

 どっちを天秤にかけるのか、舌戦で戦うらしい。

「私は君の十年以上の行いを、否定する気は無いよ。生き延びる為に、仕方なくやっていた事だ。この超常社会では君は危険すぎる。そうでもしないと、君は怪獣という第三勢力に成長して無駄な殺し合いを続けていたか、ヴィランになって私達ヒーローを追い込んでいたか。どっちかだったと思う」

「……私は、本来居ないはずの存在だから。こんなの聞いてないとしか言えない」

 そう。ヒロアカにいないハズのゴジラ。

 聞いてない。この対応は相応とは思うが、ヒロアカだからゴジラを認めないのも分かる。

「自己を否定してはいけない。君は生きて良いんだ。ヒーローって言うのは、ヴィランを捕まえるだけが仕事じゃない。君みたいに個性のコントロールを出来ない子供を、守るためにある。そうだろう、オールマイト?」

 根津校長はオールマイトに問う。

 彼は実際に唯の光線を受けて神に至ったヒーローの頂点。言わば当事者。

 その上で言えるなら。

「私は、星野少女の無事を祝いたいくらいだよ。よく、生きていた。よく、ヴィランにならずに居てくれた。今まで君に選ぶ権利など無かったのだろう。悪いのは、私だ。あの時君に恐怖を与えた、私という存在だったのだから」

 ああ、実にオールマイトらしいセリフを言う。

 自分が悪い。幼少時、恐怖を与え逃げ出すように追い込んだ自分に非がある。

「オールマイト……」

 相澤は困る。じゃあこの子どうするのだ? と。

 根津校長が言うには、雄英に身柄を預ける。

 監視という名目で、保護する。

 いざとなったら、彼女は最強に味方にしたい。

「ヒーローは私を殺せないなら飼いならすつもり?」

「君に選ぶ権利がまたないのは申し訳ないけど、ぶっちゃけ君の個性は社会の恐怖その物だ。ゴジラって言うのはそういう人の恐怖の概念。オールマイトみたいなもんだよ」

 ……最後のユーマ、ゴジラ。

 一体、いつ来た個体のことだ。

 歴史を知らない唯が問う。

 聞けば、個性が出るずっと前、世界大戦の集結から数年後に突如現れた謎の巨大生物。

 何度も日本に上陸して、そこら中を焦土に変えた。

 その中に。

「北海道の雪山に突然霹靂と共に出没したというゴジラも居る。君の言う雪のゴジラとは此奴のことかな」

 根津校長が聞いた。

 当時のこのゴジラはより不明。

 迎撃しようとしても相手はただ現れただけ。

 攻撃は通用しない。反撃しても原始的な範疇。

 当然人類の負けで、壊滅した。

 白いゴジラだったという。

 彼女の個性に何か関係があるのか。

(ヒロアカだから新幹線が居るわけないしそうか……。こっちの雪のゴジラは、凄く特異的なゴジラだったのか)

 なるほど、雪のゴジラのシチュエーションだ。

 多分似て非なる個体。

 こっちはコラボゴジラだから。

「私達が君に提示する条件はそう多くは無い。無闇に暴れない。個性の解明に協力する。それぐらいだね。雄英の校長として、君には特別枠の生徒としてヒーロー科のA組に迎えようと思う。君はヒーロー科になるけど、便宜上だ。相澤君の監視下で生活して貰う。質問は?」

「衣食住の提供だけでいいよ。どうせここ、厄ネタだから」

 そう。ここから雄英はあるネズミによって内通者が入り込み、何度も襲撃されて社会的地位を落とされる。

 迷惑な話だ。また選べない。生きていくのに精一杯。

 だけど魔王がそれを望むなら邪魔はしない。

 好きにすれば良い。唯は怪獣。人類の敵扱い。

 ヴィランだったら人権があるのに怪獣だから駆逐だの駆除だのと言われる。

「何でこうなるのかな……。ヒーローに守られるって、格好の火種じゃん。前の方がマシだよ……」

 溜息をついて、お手上げだとぼやく。

 相澤が睨むのを止めた。途端、まだ脈動が感じる。

 雪のゴジラ、まだ起きていたのか。今度は何だ。

「ぐっ!?」

 踞る唯。背鰭の水晶から雪花が飛び散る。

 近くにあったパイプ椅子。

 そこに触れた部分が、抉れて掻き消える。

「おい、言ってるそばからこれか!」

「いい、抑える……。消されてたら、覚えないよ……」

 ストッパーに頼っては自制もクソもあるまい。

 自分で抑えるだけやってみる。

 ……一体何がしたい、雪のゴジラ。

 お前の駄々に構っていられないのに。

 脈動は、強弱を繰り返す。

 舞い散る雪の花に触れるなと言っておく。

 何処かの時空に飛ばされる。大怪我じゃ済まない。

(……ん……?)

 雪のゴジラの個性を感じ取る唯。

 こいつは十年以上経っても分からない。

 ……でも、二度の暴走を経て、漸く見える。感じる。

 一種の防衛本能か。これは、個性の。

 個性にゴジラの意思などない。

 ただ、個性が発作のように爆発する。

 鬱憤のように溜まっていくパワーというか。

 定期的にガス抜きしないと、弾ける。

「マジか……。今回のは十年以上の不発弾の爆破って事?」

 どういう事か、よくわからないが感覚を専門の相澤に説明。

 彼等が聞き入った情報を訳し、纏めると。

 雪のゴジラ。

 この個性はエネルギーをただ溜めていく。

 適度に吐き出さないとゴジラのエネルギーである時空の雪を撒き散らす。

 で、酷いと今回の時空を曲げて転移する暴発。

 これはただの動力炉のような個性。

 時空用の意味の無いエネルギーを生み出す、炉心。

 それを雪のゴジラの真似事で、光線に出来る。

 暫定的だが、そう判断された。

「そう言う解釈とか聞いてないよ……」

 雪のゴジラが二度も暴走したのは、不発弾の爆発。

 発露時の暴走と十年以上の放置による暴走。

 コントロールは逆に常時吐いていれば、比較的容易だった。

 だって、思い切り爆発した後だ。

 今は、普通に勝手に起動しただけ。

 オンオフなら、入れっぱなしにして置けば良い。

 次第に落ち着く脈動。水晶の背鰭が蒼く燐光を纏う。

 雪が散り、結晶が塵になって室内に舞う。

 綺麗だ、と誰かが言った。

「落ち着いてきた。無理して我慢する方が逆効果かな」

「常時吐き出すつもりか?」

「そっちの方が今は楽」

 背鰭が燐光を纏いながら、普通に動ける。

 あの最後の尾は、暴走の成れの果て。

 行き場の無いエネルギーの臨界だったのだろうか。

「大丈夫かな?」

 根津校長に聞かれて首肯。もう平気。

 つまり、雪のゴジラのエネルギーをアースの電力や自前の時空の動力炉にする、複合個性。

「私の個性、ゴジラっていう核のエンジンじゃん!?」

 そういうのが一番分かりやすい。

 こっちでも核みたいなエネルギーを作り出すとは。

 クソ迷惑な個性であった。

「加減を覚えるようにしろよ、星野」

 相澤に言われて、頷く唯。

 不安しかない、ヒーローの揺り籠の中。

 ゴジラのヒーローアカデミア。

 ここに、開幕する。

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