「んー……」
母様が腕を組みながら唸っていた。
先程までの大騒ぎが嘘のように真剣な表情である。
「希少属性、しかも二つですか……」
「何か問題があるんですか?」
俺が尋ねると、母様は困ったように笑った。
「問題というより、教える側の問題ですね」
「教える側?」
「基本的なことなら教えられると思うのですが……」
どうやら悩んでいるらしい。
そこでふと疑問に思った。
「ちなみに父様や母様の属性って何なんですか?」
「ああ」
父様が頷く。
「私は火属性だ」
「へぇ」
すると父様は遠い目になった。
「そのせいで何でもわかーる君七号は大爆発したがな……」
「まだ引きずってたんですか」
「引きずるとも」
即答だった。
よほど怖かったらしい。
父様の視線は相変わらず何でもわかーる君十六号を警戒している。
完全にトラウマである。
そんな父様を見ながら母様が胸を張った。
「そして私は基本四属性を全て使えます」
えへん。
そんな効果音が聞こえてきそうなほど得意げだった。
とても可愛らしい。
だが。
少し待ってほしい。
火、水、風、土。
さっき聞いたばかりだが、それ全部では?
「それって凄いのでは?」
思わず聞き返す。
すると父様が苦笑した。
「凄いなんてもんじゃないぞ」
「え?」
「二属性使えればエリート」
「三属性使えれば天才」
「そしてお前の母様はその上だ」
「す、凄い……」
思わず目を見開く。
つまり母様は天才どころではないらしい。
改めて母様を見る。
本人はどこか誇らしげだ。
褒められるのは嬉しいらしい。
可愛い。
だが凄い。
何だこの母親。
すると。
しばらく考え込んでいた母様が、ふっと顔を上げた。
「やっぱりその方が良いですよね……。よし! 決めました!」
何か決心したらしい。
「何をだ?」
父様が尋ねる。
母様は満面の笑みで言った。
「お父様にも手伝って頂きましょう!」
父様が少し考える。
「グラン義父上か」
そして納得したように頷いた。
「義父上も氷属性の使い手だ」
「確かに良いかもしれん」
「だが急に頼んで大丈夫なのか?」
すると母様はくすりと笑った。
「可愛い孫のためですもの」
「それに」
そこで少し悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「自分と同じ氷属性だと聞いたら、きっと飛んできますよ」
「ああ……」
父様が納得したように頷く。
どうやら心当たりがあるらしい。
グランお祖父さま。
確か母様のお父さんだ。
何度か会った記憶がある。
会う度に抱き上げられ、お菓子を貰い、頭を撫でられていた気がする。
とても優しかった。
というか。
かなり可愛がられていた。
「早速手紙を書いてきます!」
母様は勢いよく立ち上がった。
そしてそのまま研究室を飛び出していく。
相変わらず行動が早い。
「あの」
母様を見送った後、俺は父様へ尋ねた。
「グランお祖父さまも氷属性使いで凄い方なんですか?」
すると父様は少し笑った。
「凄いなんてもんじゃない」
最近この台詞をよく聞く気がする。
「義父上は今こそ一線を退いているがな」
「現役時代は王国最高の魔術師だった」
「王国最高?」
「元宮廷魔術師長だ」
思わず目を瞬かせる。
それだけでも十分凄そうだ。
だが。
父様の説明はまだ続いた。
「特に氷属性に関しては別格だった」
「氷結の大賢人」
「そう呼ばれていたほどだからな」
「氷結の大賢人……」
何だろう。
めちゃくちゃ強そうだ。
「それはまた凄い方なんですね」
「まあな」
父様は苦笑した。
「そして間違いなく、お前を見たら大喜びするぞ」
何だか少し楽しみになってきた。
どうやら俺の魔法の先生は、とんでもない人物になりそうだった。