異世界アイドル道   作:ちーばば

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第19話 sideグラン・アークライト

side グラン・アークライト

 

今日はアルトと共にルミナス邸近くの山まで遠出していた。

 

娘のセレスティアから手紙を受け取ったのは少し前のこと。

 

そこには信じられぬ内容が書かれていた。

 

――アルトが氷属性を持っていた。

 

しかも。

 

光属性との複合持ち。

 

何度も読み返した。

 

何かの間違いではないかとも思った。

 

だが。

 

実際に来てみれば間違いなどではなかった。

 

それどころか。

 

儂の予想を遥かに上回っていた。

 

「お祖父様!」

 

「見てください!」

 

「おお、どうした?」

 

「この花、葉っぱが光ってます!」

 

「ほう」

 

アルトは目を輝かせながら駆け寄ってくる。

 

その姿に思わず頬が緩んだ。

 

可愛い。

 

とにかく可愛い。

 

魔法を教え始めて数日。

 

本来ならば五歳児など、まず魔力を扱うだけでも一苦労である。

 

しかしアルトは違った。

 

教えたことを次々に吸収していく。

 

まるで乾いた砂が水を吸い込むように。

 

理解も早い。

 

集中力もある。

 

何より発想が面白い。

 

東京タワーなる謎の氷塔を作った時は笑った。

 

笑ったが。

 

あれほど精巧な構造物を初回で作り出す五歳児など聞いたことがない。

 

ついつい儂も熱が入ってしまう。

 

本当はもっとのんびり教えるつもりだったのだが。

 

あれだけ才能を見せられれば仕方がない。

 

「ほれアルト」

 

「これは魔光花という花じゃ」

 

「魔光花?」

 

「夜になるともっと光るぞ」

 

「へぇ!」

 

目を輝かせるアルト。

 

そんな様子を見ながら思う。

 

以前会った時はもっと子供らしかった。

 

走り回り。

 

転び。

 

笑い。

 

無邪気にはしゃいでいた。

 

だが今回再会してからは少し違う。

 

落ち着いている。

 

年齢不相応なほどに。

 

成長したのだろう。

 

喜ばしいことだ。

 

だが少しだけ寂しくもある。

 

そんなことを考えていると。

 

アルトが今度はトカゲ鳥を追いかけ始めた。

 

「おお!?」

 

「なんだお前は!?」

 

「待て!逃がさないぞ!!」

 

「わっはっはっは!」

 

やはりまだまだ子供じゃな。

 

少し安心した。

 

その背中を見ながら。

 

儂は別のことを考える。

 

アルトの属性。

 

氷と光。

 

希少属性同士の複合持ち。

 

儂ですら聞いたことがない。

 

六歳になれば教会で正式な魔力測定が行われる。

 

その時。

 

王国中に衝撃が走るだろう。

 

希少属性持ちは国への報告義務がある。

 

当然。

 

王家も知ることになる。

 

貴族達も知ることになる。

 

中には面白く思わぬ者もいるだろう。

 

利用しようと考える者もいるかもしれん。

 

実際に数年前。

 

神聖属性と認定された少女は、保護という名目で教会本部へ迎えられたと聞く。

 

無論。

 

悪い扱いを受けているわけではない。

 

だが。

 

自由に生きられるかと問われれば別の話だ。

 

「嘆かわしいのう……」

 

子供の才能を祝福するのではなく。

 

利用価値で測ろうとする者はいつの時代もおる。

 

才能ある子供ほど狙われる。

 

それが貴族社会というものだ。

 

だが。

 

もしもの時は儂が守る。

 

儂だけではない。

 

セレスティアもいる。

 

レオンハルト殿もいる。

 

それに。

 

今も世界のどこかを好き勝手に旅している前ルミナス大公爵夫妻まで出てくるだろう。

 

その時は大騒ぎになるじゃろう。

 

思わず笑みが漏れる。

 

「わっはっはっは!」

 

あの二人が孫可愛さに暴れ出したら誰にも止められん。

 

本当なら。

 

儂らの世代で戦争を終わらせたかった。

 

子供達に争いを残したくなかった。

 

だが。

 

それは叶わなかった。

 

人と魔族の争いは今も続いている。

 

ならばせめて。

 

この子達の世代が困らぬように。

 

儂に出来ることをしてやろう。

 

知識を。

 

経験を。

 

技術を。

 

全て伝えてやろう。

 

儂の持つ全てを。

 

この可愛い孫のためにな。

 

「お祖父様ー!」

 

遠くからアルトの声が聞こえる。

 

振り返れば。

 

トカゲ鳥を捕まえたらしく、嬉しそうに手を振っていた。

 

儂は大きく手を振り返す。

 

「おお!」

 

「よく捕まえたな!」

 

「今行くぞー!」

 

「わっはっはっは!」

 

その笑顔を見ながら。

 

儂は改めて決意を固めるのだった。

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