異世界アイドル道   作:ちーばば

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2話

「は……?」

 

目が覚める。

 

見知らぬ天井だった。

 

白い。

 

いや、白いというより豪華だ。

 

彫刻が施された天井。

 

シャンデリア。

 

どう見ても俺の六畳アパートじゃない。

 

「アルト様!?」

 

慌てた声が響く。

 

視線を向けると、そこには綺麗なメイド服を着た女性が立っていた。

 

二十代くらいだろうか。

 

美人だ。

 

いや、そんなことより。

 

誰?

 

「アルト様がお目覚めになられました!!」

 

女性は叫ぶように言うと、勢いよく部屋を飛び出していった。

 

その後ろに控えていたメイド達も一斉に動く。

 

「公爵様を!」

 

「奥様をお呼びして!」

 

「アルト様がお目覚めになられました!!」

 

パタパタと足音が遠ざかっていく。

 

そして部屋には静寂だけが残った。

 

「……夢か?」

 

ぽつりと呟く。

 

いや、でも妙にリアルだ。

 

俺は確か――。

 

ライブ帰りだった。

 

ミリリン最高だった。

 

推し仲間の女の子がいて。

 

信号無視して。

 

トラックが来て。

 

俺が飛び出して。

 

その後は――。

 

「……あ」

 

思い出した。

 

轢かれた。

 

俺、トラックに轢かれた。

 

頭がぐわんぐわんする。

 

考えがまとまらない。

 

夢なのか。

 

死後の世界なのか。

 

それとも。

 

「いやいやいや、そんな訳……」

 

そこまで言いかけて。

 

俺は違和感に気付いた。

 

声が高い。

 

そして。

 

視界に入った自分の手が。

 

やけに白くて小さかった。

 

「へ……?」

 

混乱がさらに加速する。

 

アルト?

 

今、俺のことか?

 

いや、それより。

 

なんか小さくなってないか、俺?

 

いやいやいや。

 

まず情報を整理しよう。

 

俺は確かトラックに――

 

そこまで考えた瞬間だった。

 

バン!!

 

勢いよく扉が開いた。

 

「アルト!!」

 

「アルトちゃん!!」

 

二つの声が重なる。

 

そして部屋へ飛び込んできたのは――

 

絶世の美男美女だった。

 

「……ほわー」

 

思わず見惚れる。

 

何だこの人達。

 

顔面偏差値が高すぎる。

 

映画俳優?

 

モデル?

 

いや、そんなレベルじゃない。

 

美形という言葉が服を着て歩いているような二人だった。

 

男性は金髪碧眼の威厳ある貴族。

 

女性は息を呑むほど美しい銀髪の美女。

 

二人とも現実離れしている。

 

「アルト! 大丈夫か!?」

 

「アルトちゃん! 心配したのよ!」

 

ものすごい勢いで駆け寄ってくる。

 

距離感が近い。

 

近すぎる。

 

完全に我が子を見る親のそれだった。

 

「えっ?」

 

俺は思わず声を漏らす。

 

誰?

 

いや本当に誰?

 

混乱する俺をよそに、美男美女は安心したように顔を見合わせた。

 

その時。

 

隣にいたメイドが咳払いをする。

 

「旦那様、奥様」

 

穏やかな声だった。

 

「アルト坊ちゃまも目覚めたばかりでございます」

 

「まずは落ち着いて差し上げてくださいませ」

 

「む……それもそうだな」

 

「そうね……ごめんなさいアルトちゃん」

 

二人は少し距離を取る。

 

だが視線だけはずっとこちらを見ていた。

 

まるで宝物でも見るような目で。

 

その視線を受けながら。

 

俺はようやく一つの可能性へ辿り着く。

 

……待て。

 

まさか。

 

これ。

 

異世界転生ってやつじゃないよな?

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