異世界アイドル道   作:ちーばば

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第20話 夢のカタチ

お祖父様との特訓は、途中で秘密の息抜きを挟みながらも続いた。

 

そして――

 

今日はついに特訓の最終日。

 

一ヶ月に及ぶ特訓の集大成。

 

お祖父様から教わった全てを出し尽くす日である。

 

「ではアルト」

 

「見せてみよ」

 

「はい!」

 

俺は深く息を吸った。

 

「――凍てつく壁よ!」

 

ごごごごごごごっ!!

 

地面から巨大な氷壁がせり上がる。

 

厚く。

 

硬く。

 

以前のような見た目だけのハリボテではない。

 

お祖父様は満足そうに頷いた。

 

「どれどれ」

 

杖が軽く振られる。

 

小さな氷塊。

 

だが。

 

以前とは比較にならない速度だった。

 

ひゅんっ!

 

次の瞬間。

 

ゴギィィン!!

 

激しい音が響く。

 

しかし。

 

俺の氷壁はびくともしなかった。

 

「ほう」

 

お祖父様が笑う。

 

「ではこれはどうじゃ?」

 

再び杖を振る。

 

今度は複数の氷塊が宙へ浮かび上がった。

 

「全て当ててみなさい」

 

「はい!」

 

俺は即座に魔力を練る。

 

「――凍てつく柱よ!」

 

ごごごごごっ!!

 

瞬時に氷柱が出現する。

 

お祖父様がやってきたあの日。

 

東京タワーを生み出してしまったのが懐かしい。

 

今では狙った形を作れるようになった。

 

次々に氷柱を出現させる。

 

迫る氷塊を迎撃。

 

砕く。

 

弾く。

 

防ぐ。

 

ガキィン!

 

バキィッ!

 

砕けた氷片が周囲へ散った。

 

全ての氷塊を砕き切った頃には息が上がっていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

極度の集中。

 

連続した魔力消費。

 

体が重い。

 

だが。

 

俺はお祖父様を見つめた。

 

「どうですか?」

 

お祖父様は少しだけ黙った。

 

そして。

 

大きく頷く。

 

「……うむ!」

 

「合格じゃ!!」

 

「よくやったのうアルト!!」

 

ぎゅううううっ!!

 

思い切り抱き締められる。

 

苦しい。

 

だが嬉しい。

 

「わっはっはっは!」

 

「ここまで出来る五歳児などどこを探してもおらんわ!」

 

「今すぐ宮廷魔術師に推薦してもよいぞ!」

 

「わっはっはっは!」

 

流石にそれはお世辞だろう。

 

それでも。

 

認められたことが嬉しかった。

 

努力が実ったことが嬉しかった。

 

そこへ。

 

見守っていた父様と母様もやって来る。

 

「アルト!」

 

「凄いぞ!」

 

父様が頭を撫でる。

 

「アルトちゃんは天才ね!」

 

母様も満面の笑みだ。

 

次々に褒められる。

 

少し照れ臭かった。

 

すると。

 

お祖父様が優しく頭へ手を置いた。

 

「アルトよ」

 

「以前も言ったがな」

 

俺は頷く。

 

「はい」

 

「魔法はイメージじゃ」

 

「知っている物が多いほど想像は広がる」

 

「見たことの無い物は想像できん」

 

お祖父様は空を見上げた。

 

「世界を知ること」

 

「それがお主をより強くする」

 

「精進しなさい」

 

ぽんぽんと頭を撫でられる。

 

「はい!」

 

自然と大きな声が出た。

 

すると。

 

お祖父様がニヤリと笑う。

 

「ではアルトよ」

 

「最後じゃ」

 

「最後?」

 

「お主の好きなように魔法を使ってみせよ」

 

「好きなように?」

 

「うむ」

 

お祖父様は頷く。

 

「以前のお主が作った塔でも良い」

 

「なんでも良い」

 

「今のお主の全力を見せるのじゃ」

 

全力。

 

俺は考える。

 

アイスストーム。

 

アイスバレット。

 

大規模氷結魔法。

 

どれも実力を示すには十分だろう。

 

しかし、お祖父様が教えてくれたのは

強い魔法だけではない。

 

魔法を楽しむこと。

 

想像すること。

 

世界を知ること。

 

なら――

 

頭に浮かんだのは。

 

幼い頃。

 

お祖父様が見せてくれた氷の城だった。

 

あれは綺麗だった。

 

そして。

 

もし俺が作るなら。

 

何を作る?

 

集中する。

 

イメージする。

 

未来を。

 

ドームを満員にしてライブをする俺。

 

だが。

 

今の俺にはまだ分からない。

 

本当にそこへ辿り着けるのか。

 

そんな迷いが浮かぶ。

 

駄目だ。

 

これでは中途半端になる。

 

だったら――

 

俺は知っている。

 

どんな会場だろうと。

 

どれだけ大きなドームだろうと。

 

一瞬で満員にしてしまう。

 

最強で。

 

最高のアイドルを。

 

俺が目指す先にいる人を。

 

「――凍てつく女神よ!」

 

瞬間。

 

膨大な魔力が溢れ出した。

 

ごごごごごごごごごごっ!!

 

「おおっ!?」

 

父様が驚く。

 

「まぁ!」

 

母様も目を見開く。

 

氷が形を成していく。

 

流石にドームほど巨大ではない。

 

今の俺では無理だ。

 

せいぜい一軒家程度。

 

それでも。

 

確かに完成した。

 

氷で作られたライブ会場。

 

客席。

 

ステージ。

 

そして。

 

その中央に立つ一人の少女。

 

美しく着飾った女神。

 

我らがミリリンである。

 

「わっはっはっは!」

 

お祖父様が大笑いした。

 

「凄いなアルト!」

 

「ここまでやるとは!」

 

「お祖父様」

 

「中にも入れます」

 

「なに!?」

 

お祖父様が目を輝かせる。

 

中へ案内する。

 

客席。

 

通路。

 

ステージ。

 

全て再現した。

 

しかも客席には小さな観客達がぎっしり。

 

まさに超満員。

 

そして。

 

全員が見つめている先には――

 

ステージ中央のミリリン。

 

「はぁ……」

 

尊い。

 

とても尊い。

 

「ほほう……」

 

お祖父様が感心する。

 

「これは誰じゃ?」

 

俺は胸を張った。

 

「僕の女神です!」

 

「そ、そうか……」

 

お祖父様は少し困った顔をした。

 

父様と母様も微妙な表情をしている。

 

だが。

 

俺は満足だった。

 

そして――

 

こうして。

 

一ヶ月に及ぶ。

 

氷結の大賢人グラン・アークライトとの特訓は。

 

無事に終了したのだった。

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