Side メイド長
私はルミナス大公爵家にてメイド長を務めさせていただいております。
リズと申します。
現在。
ルミナス邸は大変な騒ぎとなっております。
理由はただ一つ。
アルト坊ちゃまの六歳のお誕生日でございます。
「お花はこちらへ!」
「ケーキの準備は!?」
「プレゼントの整理が終わっておりません!」
朝から使用人達が慌ただしく走り回っております。
もちろん。
私も例外ではありません。
ですが誰一人として不満を口にする者はおりませんでした。
何故なら。
皆、アルト坊ちゃまが大好きだからです。
アルト坊ちゃまは不思議なお方です。
大公爵家嫡男。
将来の当主。
本来であれば近寄り難い存在。
ですが坊ちゃまは違いました。
使用人にも分け隔てなく接してくださるのです。
「おはようございます」
「ありがとう」
「お仕事お疲れ様です」
まだ幼いというのに。
自然と感謝を口にされます。
それだけでも十分素晴らしいのですが。
ここ最近はさらに磨きがかかっておりました。
朝は旦那様との剣術訓練。
午後は奥様との魔法講義。
毎日真剣に努力なさっております。
文武両道。
まさに理想の貴公子です。
そして何より――
可愛らしい。
銀色の髪。
宝石のような碧眼。
整った顔立ち。
その破壊力は凄まじく。
メイド達の間では定期的に尊死者が発生しております。
「坊ちゃまが笑った……」
「尊い……」
「今日も生きていて良かった……」
などという会話は日常茶飯事でございます。
最近では時折。
聞いたことのない歌を口ずさまれることもあります。
不思議な旋律。
優しい歌声。
思わず聞き入ってしまいます。
芸術の才能までお持ちなのでしょうか。
天は一体いくつ与えれば気が済むのでしょう。
そして迎えた誕生日当日。
屋敷には多くのお客様が集まっておりました。
旦那様。
奥様。
そしてアークライト侯爵家よりグラン様。
さらにお孫様のリリアお嬢様もいらっしゃっております。
残念ながら。
前ルミナス大公爵夫妻様はご不在でした。
現在も旅の途中とのことです。
ですが。
その代わりと言わんばかりに大量の贈り物が届いておりました。
大量。
本当に大量です。
部屋が一つ埋まりかけました。
流石に旦那様も苦笑されておりました。
「父上と母上は相変わらずだな……」
中には巨大な熊のぬいぐるみや。
旅先で見つけたという珍しい鉱石。
見たこともない言語で書かれた本も混ざっておりました。
どう考えても六歳の男の子への贈り物ではない物もございましたが。
お二人らしいと言えばお二人らしいでしょう。
きっと旅先でもアルト坊ちゃまのことばかり考えておられるのでしょうね。
そんな中。
主役であるアルト坊ちゃまは皆から祝福を受けておりました。
嬉しそうに笑う坊ちゃま。
それを見守る旦那様と奥様。
幸せそうに笑うグラン様。
実に穏やかな時間でした。
戦争が続くこの世界において。
子供達が笑顔で誕生日を迎えられることは決して当たり前ではありません。
だからこそ。
アルト坊ちゃまにはこれからも健やかに育っていただきたい。
その笑顔が失われることのないように。
私達使用人一同。
いえ。
ルミナス家に仕える全ての者が同じ願いを抱いていることでしょう。
私達はこれからも全力で坊ちゃまをお守りいたします。
アルト坊ちゃま。
六歳のお誕生日。
誠におめでとうございます。